戸隠山
桐生山野研究会のMさんに同行頂いて、戸隠山に登って来ました。戸隠山と言えば難所・蟻の塔渡りが有名。あまりの難所で、ハイカーさんの渋滞が生ずるとも聞く。そうなる前に通過したいので、早めの午前3時に桐生を出発。太田藪塚ICから北関東道、上信越道を経由して、信濃町ICで高速を降りる。霧が濃いが、鳥居川沿いに走り、標高が上がるにつれて晴れた。
登山口の戸隠神社奥社入口には6時10分程前に到着した。桐生からの所要時間は3時間弱、高速代は1,000円。高速のお蔭で、こちら方面の山もすっかり身近になった。広い駐車場にはツアー登山のバスが来ている他は、自家用車が数台あるだけだ。天気は快晴で、冷え込みが厳しい。車の中で朝食を摂った後、出発する。
鳥居をくぐり、奥社へ真っすぐ続く参道を歩く。茅葺き・朱塗りの随神門をくぐると、樹齢400年の見事なクマスギの並木が500mに渡って続く。緩い石段を登ってようやく身体が温まった頃、奥社に着いた。比較的近世の社殿にはあまり神さびた雰囲気はないが、頭上高く仰ぐ戸隠山のギザギザの稜線には、神様がおわすような荘厳さがある。
社務所の左手から登山道に入ると、樹林帯の中の急登となる。紅葉は色付き始めた頃合いで、緑とブナの黄葉の取り合わせが青空に映えて鮮やかだ。ところどころ樹林の隙間から戸隠山の主稜線を見上げることができる。頭上に岩壁が現れ、短い鎖場を登ると五十間長屋に着く。岩壁が回廊のように掘り込まれた奇観だ。
岩壁の基部を左に回り込むと、百間長屋がある。こちらも奇観で、雨が凌げるほど大きな庇の下を通る。庇の出口付近は岩壁が崩落し、登山道にも落下した岩屑が散乱しているので、注意しつつ急いで通り抜ける。
山腹をトラバースすると岩壁の下に出て、岩壁上部の岩窟から10m程の鎖が垂れ下がっている。戸隠山は今回が3回目というMさんは、ここは登ったことがないから挑戦すると言う。見事、上まで登って、降りて来た。見ているだけで冷や汗物なので、私はパス。このすぐ先の岩屋に「西窟」という標識がある。
次の20mの鎖場を登ると、左手に鎖が掛かった岩峰がある。Mさんはこれにもチャレンジ。岩の上にすっくと立つ。うーん、敵わん(^^;)
先行していたツアー登山一行に追い付いたと思ったら、鎖場で順番待ちとなっていた。ここはスタンスが大きいので、鎖でバランスを取る程度で楽に登れる。
この鎖場を登り切った所で、ツアー登山の先に行かせて貰う。左側に本院岳の鋭峰を眺めながら、急峻な稜線を登る。この辺が見返り岩だろうか。鎖場が続き、高度感も出て来て、徐々に緊張が高まる。胸突き岩という標識を過ぎると、フェース状の岩場が現れる。傾斜がきついが、鎖で容易に登れる。
胸突き岩を登りきって小ピークに立つと、いよいよ「蟻の塔渡り」が始まる。幅50cm、長さ20mのナイフリッジで、両側は断崖絶壁。特に左側はオーバーハングした約150mの絶壁で、高度感満点。絶対に下は見れない。ふらついたが最後、摑まる物がなく落っこちるので、四つん這いになって進む。最後は下り坂で特に狭い「剣の刃渡り」となる。距離は5m程と短いが、難関だ。とにかく慎重に、馬乗りになって越えざるを得ない。渡りきったときには、心底ホッとした。
蟻の塔渡りを越えれば、あとは難しい所はない。振り返ると、蟻の塔渡りの上を後続のハイカーさんが続々と渡っている。まさに蟻の群れのようだ。小さな岩場を鎖で越えると、八方睨の頂上に着いた。
八方睨からは、名前の通り四方八方に大展望が開ける。風当たりも強く、すぐに寒くなったので長袖を着る。西側には、深い谷を隔てて急峻な本院岳と西岳が聳える。P1尾根から西岳にも登ってみたいなあ。しかし、蟻の塔渡りが下山ルートになるのがイヤ過ぎる(^^;)。今日は素晴らしい天気で、遠方には白馬岳や槍ヶ岳など北アの山並みまではっきり見える。
北側を眺めると、高妻山がすっくと聳えて大きい。やはり、戸隠連峰を代表して百名山に選ばれただけのことはある。その両脇には、妙高山と雨飾山がちょこんと頭を覗かせている。戸隠山の向こうに見えているのは黒姫山、右奥は斑尾山のようだ。展望を楽しんでいる間に後続のハイカーさんも続々と到着して、山頂は賑やかになった。そろそろ出発しますか。
八方睨からは、展望と紅葉の縦走路を歩く。道は大変良いが、右側は断崖絶壁となって切れ落ちているので、転落注意。すぐに戸隠山の標柱(標高1911mと記されている)が立つピークに着く。高妻山の眺めが良いが、八方睨で休憩したばかりなので先に進む。
空は秋らしく晴れ渡り、木々は紅葉し、展望は断崖絶壁を見おろして変化に富む。この縦走路は楽しい。崖の縁にもリンドウが咲いている。遥か下には、奥社の屋根が白く光っていた。
小さなアップダウンを繰り返す。石盤の中央に十字が刻まれた三角点?のあるピークが九頭龍山のようだ。一旦下り、急坂を登ると最後のピークで、紅葉の間から高妻山と北アが眺められる。ここからひとしきり下って、一不動に着いた。
一不動避難小屋の中を覗くと、板張りの床で綺麗にしているので、中に入って昼食にする。私はお湯を沸かしてラーメンを作る。コーヒーも入れて、デザートにナシを食べる。満足、満足。
一不動から下ると氷清水の水場があり、冷たい水をたっぷり飲む。そのすぐ下に帯岩と滑滝の鎖場があるが、蟻の塔渡りに較べれば楽勝。あとはキノコでも探しながら、のんびり下るだけだ。
と思っていたら、キノコがありました!草に隠れた湿った倒木にナラタケが群生。Mさんも狂喜乱舞。通りがかった地元?のキノコに詳しいあんちゃん(やはり、キノコを取っていた)の話によると、ヤブタケともいうらしい。ちょっと時期が遅くて「流れた」ものが多いが、それでも食べ頃のものがビニル袋いっぱいに取れた。
秋の味覚をたくさん採集して、戸隠牧場に降りた。牧場には乳牛や馬が放牧され、観光客がソフトクリームを嘗めながら戸隠連峰の雄大な景観を楽しんでいる。戸隠キャンプ場から「さかさ川歩道」を辿って、奥社入口の駐車場に戻った。
帰りは鳥居川を下って、飯縄山東麓の霊山寺湖畔にある「むれ♨天狗の館」に立ち寄る(500円)。ここは飯縄山を望むロケーションが良く、浴室もゆったりしていて快適。露天風呂もあるし、お勧め。汗を流してゆっくり温まったのち、信州中野ICから上信越道に乗って桐生に帰った。
P.S. ナラタケは鶏肉、ナスと炒めて食べた。ぬめりが出て、大変美味かった。