駒戸山
GWも今日が最終日。天気は良さそうだし、出かけないと勿体ない。GWの前半は遠出しているで、今日は近場の気になるスポットを訪ねる軽い山歩きにしよう。
今回の気になるスポットは、名草から飛駒の田保(たぼ)に抜ける「田保坂越」だ。きっかけは、先日、名草巨石群〜行道山浄因寺〜織姫神社を歩いたとき、藤坂峠と名草巨石群の分岐で見た石造りの道標に刻まれていた「右弁才天社田保坂越飛駒達」という案内文である。地形図にはこれに該当する峠道と思しき破線路が記載されているが、峠名はない。田保坂越については、激坂さんの「入山林道と白坂峠」と「足利名草の青面金剛」の記事があり、この峠は田保坂峠(または田保峠)と呼ばれているらしい。
さらにウェブで調べると、田保坂峠の北西の標高540m圏のピークには駒戸山城という城跡があること(山とんぼさんの「名草・駒戸山城跡」の記事を参照)や、駒戸山として足利百名山の1座に数えられていることもわかった。
という訳で、現在の田保坂峠とその峠道がどんな様子かを見るため、ついでに駒戸山もピークハントすることにして、出かけてきました。
桐生を車で出発。名草へは白葉峠、猪子峠、藤坂峠の三つの峠を越えて行けば直ぐである。名草巨石群の入口を過ぎ、入山林道を奥へ。田保坂峠の入口に車を置こうと思ったが、ここには名草イワナパークという釣堀があり、駐車スペースはすべて釣堀の駐車場になっているので駐めにくい。今日はお客の車が多いからなおさらである。約700m先の林道分岐のスペースに車を置く。ここには「←奥の院巨石群」との道標がある。
今日は軽い行程なので、デイパックにパンとペットボトル飲料を入れて出発。名草イワナパークまで戻り、東に分岐する林道に入る。入口には「林道田保沢線」の標識がある。
田保沢林道に入り、谷を奥に進むとすぐに谷はY字に分岐。左の谷間は大規模に伐採されて、真新しい防獣ネットが伐採地をぐるりと取り巻いている。破線路は左の谷間から正面の尾根に上がっているはずである。峠道、あるかなあ。嫌な予感がするなあ。
防獣ネットを開閉して中に入ると、伐採された斜面には縦横に作業道が通じて、斜面自体がズタズタのボロボロになっている。その中に峠道を探すと、あったあった。深く掘り込まれた峠道の痕跡が切れ切れにだが確かに見出せる。峠道はほぼ地形図の破線路の通りに続いて、尾根を上がって行く。
しかし、ここでひとつ問題に気が付く。この防獣ネットの出入口は一箇所だけで、つまり袋小路。新品・厳重なので、抜けられるような穴もない。ネットを攀じ登って越えることは御法度だろう。峠道の痕跡を辿っても、ネットの包囲から出られないのであ〜る。とほほ。仕方なく侵入した箇所に戻って退出する。
防獣ネットに沿って尾根を直登する案は、急な上に藪が酷いので却下。右の谷に林道が通じているので、それ辿って尾根の途中に復帰することにする。林道が右に曲がるところで、左の浅い窪を登る。杉の植林帯で藪はなく、ちょっとの頑張りで尾根の上に出る。
尾根上には防獣ネットと幾度も交差するように峠道の痕跡が続いている。峠道を横目で見ながらネットに沿って尾根を登ると、田保坂峠の弛みが見えてくる。
足利市界尾根に登り着いて弛みを進むと、2基の石祠を見つける。ここが田保坂峠だ。片方は伐採によって移動させられたのか理由は判らないが、ご無体な場所に置かれている。
もう一方の石祠は傾いているが、大きくて立派なものである。「享保十五戌(1730)年 上?駒村 小庭 出川 田? 九月吉日」との銘が刻まれている。後日調べると小庭と出川は共に飛駒の字である。飛駒側は杉植林帯で、そちらの峠道が残っているかどうかは定かでない。
次は駒戸山に向かう。防獣ネットに沿って進み、ネットから離れて薄暗い杉林を抜け、雑木林を登る。雑木の新緑が綺麗だが、低木の小枝が少々煩い。駒戸山の頂上は周囲に盛り土をしたような平地となっているが、杉が植林されていて、城郭の遺構だかなんだか素人目には判然としない。まあ、城跡マニアでもここを訪れる人は稀だそうだ。頂上付近は南北に平坦なので、適当に陽当たりの良いところを探して休憩。パンを齧る。
駒戸山の頂上も踏んだし、あとはどうしようか。往路を引き返すのも芸がないので、駒戸山の北西を通るもう一つの峠越えの破線路を探ってみることにする。
で、緩やかな市界尾根を進んで破線路の位置まで来てみたが、一体は雑木林に覆われて峠道は痕跡すら見当たらない。少し先の雑木林と杉林の境界から飛駒盆地を俯瞰できる。飛駒側の展望が得られるのはこの地点のみ。
こっちの峠道はどうもなさそうなので、さらに市界尾根を辿って、南側に降りられそうな所があれば降りることにする(が、結論を言うと長石(なげし)林道に達するまで降りられそうな所はなかった)。
杉林と雑木林の混じった稜線を進むと、左(南)斜面は全面が若くて密生したヒノキ植林帯となっている。これは藪漕ぎどころの騒ぎではなく、どこも降りられないな。
しばらく南面の眺めを楽しみながら歩き、樹林帯を登って523m標高点へ。ここで市界尾根は左に折れる。ゆるゆる登ると標高580m圏で今日の行程中の最高地点に着く。「番…」と刻まれた標石あり。
さらに市界尾根を辿ると、露岩が多くなりアカマツが現れる。木立の隙間から北西の眺めが開ける場所があり、鳴神山から残馬山にかけての山々やその奥に袈裟丸山を望む。
572m標高点を過ぎ、露岩が点在する細尾根を進む。この辺りは道型が明瞭で歩き易い。小ピークに上がると伐採地に出て、松田湖右岸の尾根や奥に深高山が眺められる。ちょっと戻って杉林の斜面をトラバース気味に下ると長石林道に出る。ここは長石林道が市界尾根を越える地点で、達磨杉峠と呼ばれている。GWの最終日をアウトドアで過ごそうというサイクリストやドライブ客が結構訪れている。
あとは林道を歩いて駐車地点に戻る。入山林道を下る途中、道端に「御即位記念 大正四年三月 名草中」と刻まれた石碑がある。大正天皇の即位を記念する碑のようだが、何故、人の訪れも少ないこんな山奥に建てたのか。多分、当時は往来が盛んだったのだろう。
駐車地点に戻り、帰途につく。久し振りに松田川ダムに行き、行楽客で賑わう湖畔キャンプ場に立ち寄ったりしたのち、桐生に帰った。