名草巨石群〜行道山浄因寺〜織姫神社

天気:
メンバー:T
行程:入名草バス停 8:35 …名草の巨石群 9:25 …藤坂峠 10:35 …馬打峠 11:55 …行道山浄因寺 12:35 …寝釈迦 12:50〜13:25 …石尊山見晴台(442m) 13:40〜13:50 …大岩山(417m) 14:00 …両崖山(251m) 15:15 …織姫神社 15:55 …JR足利駅 16:20
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

年度の替わり目の仕事で忙しかったため、3週間振りの山歩きとなる。雪山に行くには足が鈍っている気がするし、近郊の里山で新緑が綺麗な季節なので、トレーニングと新緑観賞を兼ねて、長めの行程の低山縦走をやろうかな。という訳で、足利市北部の名草巨石群から行道山浄因寺を経て織姫公園に至る「足利県立自然公園ハイキングコース」を考える。

このコースは、前半の浄因寺までが関東ふれあいの道の「山なみのみち」、後半が「歴史のまちを望むみち」として、自然歩道が整備されている。以前、逆コースで歩いたことがあり、そのときは赤雪山、仙人ヶ岳に足を延ばして、桐生まで歩き通した(山行記録)。この足利〜桐生縦走にはまたチャレンジしてみたいが、相当ハイペースでないと日帰りは難しい。今回は半分の行程にし、新緑と景色を楽しみながらのんびり歩いてきました。

JR桐生駅から両毛線に乗って、JR足利駅で下車。8:10発のあしバスアッシー入名草行きに乗車する。運賃200円は前払い。バスは10人乗り(だっけな)のワゴン車で運行され、乗客は他にご夫婦の二人。二人は途中で降りて、終点で下車したのは私一人である。

あしバスアッシー
入名草バス停にて
名草の巨石群に向かう

車道を歩いて、名草の巨石群に向かう。今日は良く晴れてポカポカ陽気、周囲の山々は新緑が鮮やかで、春爛漫。Tシャツ1枚になって歩く。藤坂峠への分岐の手前に、「←名草カタクリの里 藤坂地区群生地」との新しい看板と共に、「左三和村松田達 右弁才天社田保坂越飛駒達 大正七年二月建立」と刻まれた石造りの道標がある。田保坂越は地形図にも峠越えの破線路が載っており、どのような道なのか興味を惹かれる。

新緑の藤坂山(438m)
藤坂峠分岐の道標

藤坂峠への車道を左に分けて進み、名草巨石群入口の駐車場に着く。ここまでは車で来られる。厳島神社の赤鳥居を潜って、杉林の中の舗装道を緩く登る。石段を登って石鳥居を潜ると、大岩の上に社殿が建つ厳島神社に着く。説明板によると、弘法大師が水源農耕の守りとして弁財天を祀ったのが始まりで、明治の神仏分離で厳島神社となったとのこと。

名草巨石群入口
厳島神社

厳島神社から沢に沿って山道を登ると、「天然記念物名草村ノ巨石群」という石標が建ち、沢の中に苔むして丸味を帯びた巨石が堆積する。これが御船石で、その上には古い石祠が祀られている。これらの巨石は、粗粒の花崗岩が節理に沿って玉ねぎ状に割れ、水に洗われて風化した結果、玉ねぎの芯が残留して出来たそうな。学術的に貴重とのことだが、巨石と称するにはちと小粒な気もする。かつては御船石を割って「石割楓」なる楓が生えていたそうだが、今は残念ながら枯れてしまっている。

名草巨石群・御船石
関東ふれあいの道分岐

来た道を戻り、途中の道標にしたがって関東ふれあいの道に入る。杉林の中を登ると作業道に合流する。作業道はすぐに終点となり、丸太階段の急坂を登って稜線の上に着くとベンチがある。「←松田町 湯の沢歩道」との道標が反対側の斜面を下る道を指しているが、そちらの道型は判然としない。

杉林の中の丸太階段を登る
登り着いた稜線にベンチ

水を飲んで一息入れたのち、南へ雑木林の稜線を辿る。こちらはとても良い道だ。ベンチと案内看板のある426m標高点を過ぎると行く手の展望が開け、淡い新緑に包まれた稜線が藤坂山へと連なっているのが眺められる。陽射しをたっぷり浴びながら、稜線を下る。

426m標高点
藤坂山(左)を望む
新緑の稜線を辿る
ヤマツツジ

やがて杉植林帯に入り、緩く下って行く。深い切り通しに突き当たり、急な丸太階段をジグザグに下っていくと、車道が通じる藤坂峠に着く。車道を左に辿ると、高い法面の基部に「藤坂峠開通」の記念碑がある。

杉林の稜線を辿る
藤坂峠

反対側の丸太階段を登って稜線上に復帰。右手には低木の梢越しに深高山から仙人ヶ岳、赤雪山に続く山並みが眺められる。登り着いた小ピークには「319m」の標識がある。

丸太階段を登る
319m標高点

杉植林帯と雑木林の間を緩くアップダウンしながら稜線を辿ると、ベンチと石祠のある小ピークに着く。石祠があるので、山名があっても良さそうな山と思うのだが、無名峰らしい。ベンチに腰掛け、水を飲んで休憩。今日は暖かいを通り越して暑く、喉が渇く。

緩やかな稜線を辿る
石祠とベンチがある無名峰

この先はいくつかの小ピークも巻いたりして、起伏の少ない楽な道が続く。展望には恵まれないが、雑木林の新緑が綺麗だ。388m三角点の山頂も樹林に囲まれて展望に乏しい。ベンチの足元に三角点標石(点名:大辻)がある。

起伏の少ない道が続く
388m三角点

稜線を緩く下っていくと、再び切り通しに突き当たって馬打峠だ。ここには「文化五戌辰(1808)六月吉日」と刻まれた塔身のみの石祠と「明和四亥季(1767)八月吉日 妙義山十三度講供羪塔 施主月谷邑酒井九良左衛門」と刻銘のある横倒しになった石碑があり、古の峠道の往来を偲ばせる。現在の峠には車道が通じる。説明板によると、峠の名の由来には、険しい峠なので馬の尻を打ちながら越えた、という説と、足利又三郎忠綱なる者が馬から落ちた、という説の二つがあるそうな。

関東ふれあいの道の標柱と道標
馬打峠

馬打峠から緩く登り、右に行道峠への踏み跡を分けて左に下ると林道に出、さらに下って行道山浄因寺への車道に出る。

行道峠分岐
林道に下る

車道終点に20台分くらいの駐車場(無料)があり、ここから浄因寺まで参道の階段を登る。参道に沿って「行道山くものかけはし」と称する乗車用モノラックがある。昨年10月に竣工したばかりだが、現在、冬期運行休止中。4月頃に運行再開されるらしい。

山門を潜って石垣の間の石段を登り、浄因寺の本堂に着く。集会テントが設置されているのは、4月上旬に行われた「厄除け一杯めし」の行事用のようだ。断崖絶壁に囲まれた山峡の寺で、大岩の上に清心亭と呼ばれる茶室も建ち、なかなか風情がある。ここまで登ってきた観光客も数組見かける。

行道山浄因寺駐車場
浄因寺山門
浄因寺本堂
浄因寺境内を俯瞰

浄因寺から先はハイカーさんの数も増える。本堂脇から山腹を急登して四十九院涅槃台(寝釈迦)に着く。浄因寺に聳え立つ岩壁の頂上にあり、岩場の上に小さな寝釈迦を中心として多種多数の石仏が祀られている。足利市北部の市街を一望し、ベンチもあって休憩にもってこいの場所だ。ここでもやし入りラーメンを作って昼食にする。

寝釈迦
寝釈迦の石仏群
寝釈迦からの展望
岩頭から浄因寺を覗き込む

休憩後、行程の後半に臨む。少し登って稜線に復帰したところが仏法僧峠。咲き残ったアカヤシオを見て稜線上を緩く登ると、石祠、東屋とベンチ、三角点標石のある石尊山見晴台に着く。ここも休憩適地だ。西方の展望が良く、深高山や吾妻山、霞んでいるが赤城山も遠望できる。

仏法僧峠
石祠(大天狗)
石尊山見晴台
赤城山を遠望

ところどころ展望の開ける稜線をゆるゆる歩いて、10分程で大岩山頂上に着く。ここにもベンチがあるが、展望は良くない。

尾根道を行く
八王子丘陵を望む
大岩山頂上
椿林を下る

大岩山からツバキ林の中をジグザグに急降下。降り着いた車道を右に少し辿り、道標に従って山道を下ると大岩山毘沙門天の大きくて立派な本堂に着く。745年に行基菩薩が開いたと伝えられ(本堂は1762年再建)、日本三大毘沙門の一つ(他は大和の信貴山と山城の鞍馬山)として知られているそうな。

大岩山毘沙門天
275m三角点

参道を下ってしばらく車道を歩いた後、稜線上の山道に入る。緩く登って275m三角点。この辺りから露岩の多い稜線となり、ツツジやアオダモの花が増えてくる。展望の良い岩場があり、稜線下を大岩トンネルで抜ける北関東道が俯瞰される。なるほど、北関東道を岩舟JCT方面に向かうと、この辺りの稜線が見えている訳ね。

車道を横断し、春にはカタクリが咲くという「おと坂」と呼ばれる坂道を左に分け、さらに雷電神社への道を左に分ける。花がたくさん咲いていて、撮影でしばしば足が止まる。

北関東道を俯瞰
雷電神社分岐
アオダモ
トウゴクミツバツツジ

いくつかの小ピークを越えて、タブノキ樹林に覆われて御嶽神社が鎮座する両崖山頂上に着く。御影石のベンチでは、普通の格好をした女性二人組が休憩中。足利市街からここまでは、市民の散歩コースである。

ヤマツツジ
両崖山頂上

両崖山から参道の石段を下ると展望台があり、足利市街を一望できる。市街を取り巻く山々の新緑が美しい。これから辿る稜線も新緑に覆われ、稜線の終点も見えてきた。

両崖山頂下の展望台
足利市街の展望

岩屑が散乱する山道を辿る。眺めも開けて、低山と思えない爽快な尾根道だ。ハイカーさんというか、散歩の人が多い。

新緑の尾根を辿る
鏡岩展望台

鏡岩展望台を過ぎると織姫公園の中に入り、吊り橋で車道を渡って機神(はたがみ)山上に建つ織姫公園レストラン棟(織姫山荘)の前に出る。頂上は芝草に覆われた古墳(機神山山頂古墳)となっていて、登ることは出来ない。

階段を下った機神山中腹に織姫神社がある。機業の街・足利の守護神を祀る神社で、新しい社殿は大きくて立派。参拝客も絶えない。広々とした境内からは、渡良瀬川と対岸の浅間山(せんげんやま)が眺められる。

織姫山荘
織姫神社

参道の石段を降り、市街を通り抜けて、ゴールのJR足利駅に到着する。約18kmの長丁場だったが、起伏の少ない低山縦走だったので、快調に歩けた。タイミング良く数分の待ち合わせで16:26発の列車に乗車し、桐生へ帰った。