大行山

〜24日(日)
メンバー:M,H,T
ルート地図 GPSのログ(赤:1日目、緑:2日目)を地理院地図に重ねて表示します。

大行山(だいぎょうさん)は、尾瀬アヤメ平から南に派生する支稜上の一峰である。登山道のない山だが、積雪期には山スキーやスノーシューでよく登られていて、ネット上の山行記録も多い。地形図の等高線を読むとわかるように、中華鍋を伏せたような穏やかな山容で、確かに山スキーに向きそう。同じ山域では皿伏山白尾山に残雪期に登ったことがあり、次は大行山にテレマークで行きたいなー、と興味を持っていた。

今回、Mさんから、雪山で幕営して宴会したい、とのリクエストがあったので、大行山はどうでしょ、と提案。大行山の東麓には田代原という幕営適地があり、入山口のスノーパーク尾瀬戸倉からのアプローチも短く容易で、宴会山行にもってこいである。Mさん、Hさんと私の3人パーティで、週末に出かけて来ました。

3月23日
天気:
行程:スノーパーク尾瀬戸倉 10:00 …富士見下山荘跡 11:30 …田代原 12:30〜13:30 …大行山(1780m) 14:50〜15:15 …田代原 15:55

大間々に集合し、Freed Spike号に乗り合わせて尾瀬戸倉に向かう。R401(沼田街道)を北上して鎌田を過ぎた辺りから、行く手に尾瀬前衛の山々が見えてくる。右のつんと尖った山が荷鞍山、中央の真っ白な稜線がアヤメ平、左のもっそりした山が目指す大行山だ。最近、異常に暖かい日が続いて雪解けが進み、もう雪はないかもという心配もあったのだが、山はまだまだ白くて安心する。天気も良く、青空が広がって、絶好の雪山日和だ。

スノーパーク尾瀬戸倉に到着し、係員に誘導されてスキー場の駐車場に車を置く。我々はスキー客じゃないんだが、800台収容の大駐車場かつ無料なので、問題はなかろう。広い駐車場は、シーズン終盤の滑りを楽しむためにやってきた車で2/3くらい埋まっている。

準備を整えて出発。今回、私はテレマーク、Mさんは山スキー、Hさんはスノーシューだ。Mさんは数年前にスキーで骨折して以来のスキーで、しかも現場がここ尾瀬戸倉。あまり良い思い出がないらしい。3人とも各自幕営装備を持っているため、背中の荷物がでかい。今回の私のザックはおニューで、昨年の夏に長期テント泊縦走をやりたいと思って買った OSPREY Aether 70。これまで使う機会がなく、ようやく出番がやって参りました。

大きなザックを背負って、スキーヤーとボーダーで賑わうゲレンデのベースを突っ切る。場違いで浮いている感じがありまくり(^^;)。ゲレンデを出て富士見峠への林道に入ると、すぐにスキー場の喧噪から遠ざかって、林道と平行して流れる硫黄沢の瀬音とシールを滑らせる音だけが聞こえるようになる。


ゲレンデベースを横切る


富士見峠への林道を辿る

硫黄沢の左岸から右岸へ、ガードレールの高さまで雪が積もった橋を渡ると、富士見下山荘跡は近い。林道が大きく左に曲がる角で一本立てる。後ろからスキーの2人パーティが上がってきて、同じ場所で一休み。片方の人はファットタイプのテレマーク板だ。次シーズンはあのタイプに新調したいなあ(ちなみに私の板は10年物のBDである^^;)。


硫黄沢を右岸へ渡る


富士見下山荘跡で休憩

ここから林道はつづら折れが続くので、ショートカットして登る。途中は結構急な斜面で、一汗かく。やがて傾斜が緩くなり、浅い窪に入って登る。スノーモービルの跡が付いているのは、冨士見小屋の人が小屋開けのために通っているようだ。


田代原への登り(撮影:Hさん)


田代原の雪原に出る

浅い窪を上がると、広い雪原となった田代原に着く。開放的で気分が良い。原の東側に僅かに上がったブナの疎林の中の平地に三つのテントを張る。正面に田代原と大行山に続く稜線が眺められ、至極快適なテントサイトだ。

明日は曇りとの予報なので、天気が良い今日のうちに大行山の頂上まで登ることにして、まずは昼食を摂る。スコップで雪を四角に掘ってベンチ兼風除けにし、ガソリンコンロで雪を融かしてお湯を沸かし、カップスープをつくってパンを食べる。余分に作った水0.5ℓを飲用としてポリタンに入れておく。


田代原にテントを張る(撮影:Hさん)


大行山方面を望む

腹拵えができたところで、必要最低限の装備だけを持って、ほとんど空身で大行山に向かう。OSPREY Aether 70 は、ザック本体から取り外した雨蓋を大きなウエストバッグ(シールが余裕で入る)として使えるので、こういう時はなかなか便利だ。

大行山への最短ルートは傾斜がきつそうなので、ちょっと遠回りになるが緩そうな斜面を選び、大行山北側の最低鞍部を目指す。それでも結構急な登りとなり、また一汗かく。広く緩やかな最低鞍部に登り着いて、やれやれである。あとは楽勝かな?


空身で大行山に向かう


雪の斜面を登る

しかし、ここから1752m標高点へは短いが意外と急な稜線上の登りがあり、またまた一汗かく。大きく波打つ雪をジグザグに登って一段上がれば、あとは広くて緩い稜線が続く。

雪庇の上から東側に眺めが開ける地点があり、谷を隔てて荷鞍山の双耳峰がすっくと聳える。この山域の次のターゲットは荷鞍山で決まりだな。その右には金字形の燕巣山と傾いた鈍角三角形の四郎岳が並び、日光白根山から錫ヶ岳にかけての稜線が遠望できる。

田代原を見おろすと、我々のテントが三つの点となって見える。下から見ると対した登りには思えなかったが、意外と高度感がある。


荷鞍山(中央左)を望む


日光白根山(中央奥)を遠望

ダケカンバとオオシラビソが疎らに生える広い稜線を緩く下って登り返すと、ほとんど平らな頂上となり、最高地点(1780m圏内)と思われる場所のオオシラビソの幹に山名標が打ち付けられている。ここで記念撮影して、少し進んだ開けた場所で一休みする。大行山の三角点(1772m)はさらに先だが、ここより低いし、三角点標石は雪の下で見つかるはずもないから、まあ行かなくても良いだろう。


広く緩やかな稜線を進む


大行山頂上

シールを外して、さあ滑降である。頂上から稜線上を緩く下り、1752m標高点は右を巻く。モナカ雪で木立もあり、テレマークターンはちょっと自信がないので自粛。安全にボーゲンとパラレルっぽいターンで滑って行く。しかし、それでも十分面白い。

下に田代原が見えてきたところで右の尾根を下り、左の谷に滑り込む。この辺りは木立が疎らな広い斜面で、斜度もちょうど良く、大きくジグザグを切って滑る。スノーシューのHさんは真っ直ぐにガシガシ快調に下っている。

やがて谷が狭まって急になる。ここを横滑りで通過するとカラマツ林の緩斜面となり、林間を滑って田代原の雪原に出る。標高差約200mの短い滑りだったが、今シーズン初の山スキーということで、なかなか楽しかった。


稜線上を滑る(撮影:Hさん)


広い尾根を下る


谷に向かって下る


田代原から荷鞍山(中央左)

テントに帰り、早速、宴会を始める。まずは缶ビールで乾杯。ひと山登ったあとのビールは最高!太いソーセージをボイルして、つまみにする。そのあとは、ワイン、白州のウィスキーに各種つまみで宴会は進む。日射しがある間は風もなくポカポカと暖かいが、陽が稜線の向こうに落ちると急に寒くなる。餅入りラーメンを作って夕食とし、一番大きなMさんのテントの中で宴会を続行。最後の方は酔っぱらってお開きとなり、自分のテントに戻って、シュラフに潜り込んだ。

3月24日
天気:
行程:田代原 8:15 …富士見下山荘跡 8:45 …スノーパーク尾瀬戸倉 9:25

夜半に小雪が降り、朝起きたときはテントの外側に薄氷が張っていた。田代原は濃い霧に包まれ、周囲の山は全く見えない。予報通りの天気で、昨日、大行山に登っておいて良かった。今日は滑って下るだけのお気楽行程である。

朝食にラーメンを食べ、テントを撤収して下山開始。林道に出た後は、林道に沿って滑る。スノーモービルの轍で雪面がガタガタで、かなり滑りにくい。つづら折れを大回りするので、ショートカットするスノーシューのHさんとあんまり速さが変わらない。しかし、富士見下山荘跡からは真っ直ぐな林道なので、さすがにスキーが速い。快適に滑って、スノーパーク尾瀬戸倉に到着した。


ガスに覆われた田代原


林道を滑って下る

帰りは尾瀬方面の定番、鎌田の寄居山センターに立ち寄る(500円)。2011年10月にリニューアルされた後に来るのは初めて。開館時間の10時丁度に到着。地元のお年寄りが、もう朝風呂に来ている。リニューアルされて売店が充実し、受付と休憩スペースが奇麗になっていた。湯船にゆっくり浸かって温まる。それから尾瀬ドーフにも立ち寄って、ざる豆腐と生豆腐を土産に買ったのち、桐生への帰途についた。