黒檜山〜小黒檜山(赤城)
一月末にMさんと共に黒檜山に登り、頂上から小黒檜山を目指したが、降雪直後でふかふかの深雪だったため、頂上北の展望台まで行って断念した(山行記録)。それ以来、次の機会を窺う。残雪期に入ってもう雪も締まった頃合だし、この週末の土曜日は天気が良さそう。という訳で、再びMさんと小黒檜山に挑戦してきました。
前回は平野でも薄く雪が積もり、赤城道路に入ると地吹雪が舞い、北登山口まで車で上がれるか危ぶまれる天気だったが、今回は道中何の困難もなく北登山口に到着する。早くも数台の駐車があり、県外のナンバーも多い。さすが黒檜山、ハイカーさんで賑わっている。登山道が踏み固められて凍結していそうなので、アイゼンを履く。ちなみにこの12本爪アイゼンを使うのは6年振りで2回目である(^^;)。ちょっと嬉しい。
登山道に入って、固い雪の上をサクサクと登る。猫岩の上から大沼と地蔵岳がくっきりと眺められる。大沼の凍結した湖面は、雪が風で吹き払われて氷が表に現れ、透明な輝きを放っている。
数パーティのハイカーさんと前後しながら登る。途中で、駒ヶ岳から周回して早くも下山する単独男性のハイカーさんと行き会う。駒ヶ岳の登りが断続的に凍結していて、アイゼンを脱いだり履いたり大変だった、と零しておられた。それは確かに。こちらからの登りは幸いに堅雪が続いているので、快適だ。黒檜山の頂上に登り着くと展望が広がるが、北の展望台まで進んでしまおう。
展望台からは青空の下、苗場山から谷川連峰、朝日岳、巻機山まで上越国境の山々が真っ白な稜線を連ねている。そのさらに右には武尊山、至仏山、燧ヶ岳、四郎岳、日光白根山、皇海山、袈裟丸山がずらーっと眺められる。雪のある季節にまたあの辺の山にも登りたいなあ。下方に逆S字形にうねる白い稜線を横たえているのが小黒檜山だ。そちらに向かう前に腹拵え。強風を避けて雪の窪みで軽くパンを食べ、テルモスの熱いココアを飲む。
ここからはワカンを履く。展望台から小黒檜山に向かって下り始めると意外なことにトレースがあり、最近、小黒檜山を目指した人がいるようだ。雪は深いが、これで労力がだいぶ軽減される。Mさんが先に立ち、雑木林の中の急な雪斜面を、時々踏み抜きながらもグングン下る。
やがて尾根の形がはっきりして来て、傾斜も緩まる。ダケカンバ林の間から、小黒檜山の頂上がもう同じ位の高さに見える。
黒檜山から標高差200mを下って、小黒檜山との鞍部に着く。雪はまだまだたっぷりあるが、左(西)側斜面は一部雪が消えて笹原が顔を出している。稜線を少し登ると、地形図で「小黒檜山」の山名が記載されている南北に長い頂稜の上に出る。
雪の積もった平坦な稜線上を淡々と歩く。右に分かれる桐生・沼田市界尾根の分岐はそれとは気づかずに通り過ぎ、小黒檜山(1644m標高点)への雪の稜線の急な登りにかかる。振り返ると黒檜山が大きく聳え、なかなか立派な山容を見せている。
ほどなく電波反射板が見えて来て、小黒檜山の頂上に着く。あっさりと登頂できて少々拍子抜けの感もあるが、雪の状態と天気が良いお陰だろう。頂上は周囲の樹林が切り払われて、北と東に展望が開ける。ここで大休止して昼食とする。Mさんから少しビールを頂き、残りのパンを食べてココアを飲む。陽当たりが良く、風も穏やかになって暖かい。残雪の山頂で、好展望を楽しみながら憩いのひと時を過ごす。
ゆっくり休憩したのち、下山にかかる。県道沼田赤城線(赤城北面道路)に下って北登山口に戻る予定だが、黒檜山と小黒檜山の西面はどこも急峻で、沢筋には涸れ滝もあり、過去には滑落遭難死亡事故が起きている。下山には気を引き締めてかかる必要がある。
往路の稜線を少し戻り、西面の疎らな雑木林に覆われた広い山腹を下り始める。かなりの急傾斜で、雪が適度に柔らかいからなんとかワカンで下れる。途中で先行者のトレースに合流して、それを辿る。下るにつれて徐々に傾斜が緩むが、気の抜けない下りが続く。県道に降り着いたときはホッとした。
県道は厚い雪で覆われている。陽射しと照り返しが強く、暑いくらいだ(この日は関東各地で最高気温が25度を越える夏日となった)。オーバージャケットを脱ぎ、長袖の腕をまくって県道を辿る。斜面に積もった雪が陽気で剝がれ落ちて、面白い物が出来ている(右下の写真)。こんな天気が続くと、雪はどんどん消えるだろうな。
県道が大きく蛇行する区間を近道するため、カーブNo.50の標識のある地点から県道を離れて登る。林間に雪の窪みが続き、どうも道型があるようだ。僅かな登りで峠を越えると、笹の中をジグザグに下る明瞭な道型が現れ、再び県道に降り着くところまで続く。
(後日ネットで調べたところ、この道型は根利と赤城を結ぶ旧道で、峠は新五輪峠と称するらしい。ちなみに、現在の五輪峠は旧五輪峠と呼ばれていたそうだ。)
県道を辿って、もう一度カーブをショートカットすると、車を置いた北登山口に戻る。駐車の数は少し減っていて、次々とハイカーさんが帰ってくる。出発時には路面を覆っていた薄雪も、融けてすっかり乾いている。GWのような陽気の中、桐生への帰途についた。