毛無山〜十二ヶ岳〜節刀ヶ岳〜鬼ヶ岳

天気:
メンバー:M,T
行程:毛無山登山口バス停 8:20 …毛無山(1500m) 9:50〜10:00 …十二ケ岳(1683m) 11:20〜11:40 …金山(1686m) 12:10 …節刀ヶ岳(1736m) 12:25〜13:20 …金山 13:35 …鬼ヶ岳(1738m) 14:00〜14:05 …鍵掛峠 14:55 …根場民宿 16:00
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

(前日の竜ヶ岳の山行記録からの続きです。)

根場(ねんば)民宿村の民宿山彦に宿泊して翌朝、ぐっすり眠ってすっきり起床する。窓から外を見ると、白い富士山が青空にくっきり聳えている。今日は快晴だ。朝7時にがっつり朝食を頂き、チェックアウト。今日は、車を宿の駐車場に置かせて頂いて、路線バスで毛無山登山口に移動。毛無山、十二ヶ岳、鬼ヶ岳を縦走して、鍵掛峠から宿に戻ってくる計画だ。私はほぼ同じコースを1981年4月に歩いており、約30年振りの再訪となる。

宿から根場民宿バス停に向かうと、途中に慰霊碑がある。1966年9月25日、台風26号の記録的な豪雨によって発生した土石流が根場と西湖の二つの集落をそれぞれ直撃し、死者・行方不明者94名という大災害となった(足和田土石流災害)。集落は壊滅し、その後、全世帯が安全な場所に集団移転して、民宿村として復興したのが現在の根場民宿村と西湖民宿村である。慰霊碑の背後には、そのとき土石流を押し出した鬼ヶ岳から王岳かけての山々が、屛風の如く急峻な山肌を巡らせているのが眺められる。

民宿山彦
慰霊碑より鬼ヶ岳を仰ぐ

バス停で富士山駅行きのバスを待つ。定刻の08:09に少し遅れてバスが到着。乗客は我々だけだ。運転手は割と若い女性で、乗車中に「このバスは遅れているので、列車の予約等がある場合、間に合わないかも知れませんが、大丈夫でしょうか」と訊ねられたので、「毛無山登山口バス停で降りるので大丈夫」と答える。ここは路線バスの他にレトロバスという別系統のバスが走っていて、毛無山登山口バス停はレトロバスのバス停で、実は路線バスの本来のバス停ではないらしいのだが、親切にも降車させてくれた。

毛無山登山口バス停は文化洞トンネルの河口湖側出口にあり、ここに登山者用の広い駐車場がある。既に駐車が多いのでびっくり。昨日の竜ヶ岳と同様、こちらの山も人気が高そうだ。駐車場の端から登山道に入り、一段上がったところにある旧文化洞トンネルの脇を通って、足和田山(五湖台)と毛無山を結ぶ稜線上に出る。

文化洞トンネル駐車場
文化洞トンネル上の尾根を登る

稜線を毛無山の方へ辿ると旧峠道があり、「天明五乙巳(1785)年五月吉日立」の銘のある馬頭観音をはじめ、数体の石仏が置かれている。右に長浜ルートへの巻き道を分けると、尾根上の急な登りとなる。色付いた樹林が綺麗だ。

旧峠道に祀られた馬頭観音
紅葉した尾根を登る

急登は1242m三角点峰で一段落。カラマツ林を透かして、毛無山から十二ヶ岳へのギザギザの稜線が見える。紅葉した雑木林の中を緩く登ると、右から長浜コースを合わせる。頂上直下は展望の良いカヤトの斜面となり、富士山を背に急登すると毛無山の頂上に着く。

長浜分岐手前の紅葉
毛無山頂上直下のカヤトを登る

小広い毛無山の頂上からは、南面の展望が抜群だ。河口湖の湖面を俯瞰し、湖岸を行き交う車が蟻の列のように見える。足和田山を間に置いて、青空に雄大なスカイラインを描く富士山に対峙する。風もなく、日差しが降り注いで暖かい。昨日とは打って変わって、今日は最高の天気だ。富士山の勇姿を堪能したのち、十二ヶ岳に向かう。

毛無山頂上
毛無山から富士山を望む

毛無山から十二ヶ岳への稜線上には、一ヶ岳から十一ヶ岳まで順番に名前のついたピークがあり、全てに山名標識が設置されている。毛無山から僅か数分で最初の一ヶ岳。自然林に覆われた稜線上を小さく登り降りして、二ヶ岳、三ヶ岳、四ヶ岳を越える。四ヶ岳を過ぎた辺りからは、行く手に十二ヶ岳の岩峰が雄々しく聳えているのが眺められる。

一ヶ岳の頂上
四ヶ岳付近より十二ヶ岳(左)を見る

五ヶ岳、六ヶ岳を越え、七ヶ岳は小岩峰で左から巻く。尖った岩を見ると登らずには居られないMさんは、小岩峰の登攀にチャレンジして、見事、天辺に立ち、後続の大学生と思しきカップルの連れの女の子に、すごーい、と感心される。次のピークは順番通りに「八ヶ岳」という名前がついており、本場とのスケールの違いを面白がりつつ通過する。

九ヶ岳を過ぎ、岩稜の右をトラバースして下る。ここはロープが張られている。十ヶ岳も岩峰で巻く。左に落ちる急峻なルンゼを見て、十一ヶ岳の登りに取り付く。太いロープが架けられた岩場を登る。

八ヶ岳付近の稜線
十一ヶ岳へ岩場の登り

十一ヶ岳の頂上から望む十二ヶ岳は、ひと際高く聳えている。十二ヶ岳との間の鞍部に向かって下ると、長いロープが架けられたガリー状の岩場の上に出る。先行していた女性三人組が一人ずつ下っているところで、えー、こんなところ下れるのー、と不安がる声が聞こえる。「この先、私でも行けるんでしょうか」と訊ねられたので、「以前、家族で登ったことがあるので、まあ大丈夫じゃないでしょうか。登ったのは30年前ですが」と答える。全然当てにならず、申し訳ない(^^;)

十一ヶ岳から十二ヶ岳を望む
キレットへ下る

鞍部はキレットとなっており、吊り橋が架かっている。太いケーブルに金属製の渡し板が付いた頑丈な吊り橋なので、渡る際に大きく揺れることはないが、山慣れていない人には恐怖かも。渡った先は岩場に突き当たり、ロープを手繰って登る。その上は脆い岩場の急登となる。ロープも張られていて困難はないが、後続がいるので、落石を起こさないように慎重に登る。このキレットの通過が十二ヶ岳のハイライトで、スリルがあって面白い。

キレットに架かる吊り橋
十二ヶ岳への登りから
十一ヶ岳を振り返る

急坂を登りきると平坦なピーク(1683m標高点)に着き、桑留尾からのコースが合流する。十二ヶ岳の頂上は次のピークで、僅かな距離だ。

頂上は狭く、休憩しているハイカーさんでいっぱいだ。こちらの頂上も南面の展望が開け、西湖を俯瞰し、足和田山を挟んでゆったりと聳える富士山を眺める。富士山から視線を右へ転じると、昨日登った竜ヶ岳と、その峰続きの毛無山が遠望できる。頂上には最上権現の石祠と朱塗りの祠、山梨百名山の山名標がある。頂上は混み合っているので、もう少し先に進んだ静かなところで昼食にしよう。

十二ヶ岳頂上から西湖、
足和田山、富士山の展望
ハイカーさんで賑わう十二ヶ岳頂上

十二ヶ岳の頂上からロープの下がった岩場を下る。次のピークも岩場の登りだ。稜線上に展望の良い岩場があり、ここから振り返ると南面が切れ落ちた十二ヶ岳が眺められる。眼下には西湖湖岸の桑留尾の集落が見え、行く手には鬼の角にも見立てられる険しい山容の鬼ヶ岳を望む。

岩稜が続く
鬼ヶ岳を望む

この岩場を越えると雰囲気がガラッと変わって、黄葉したカラマツ林に覆われた穏やかな稜線となる。右に大石ペンション村への道を分け、ゆるゆると登ると金山の頂上に着く。御坂山地の主脈と十二ヶ岳の支脈のジャンクションになっているが、顕著なピークではない。頂上は平坦な草地で、樹林に覆われて展望はない。

大石ペンション村分岐
金山頂上

金山から、前回は余裕がなくて登頂できなかった節刀ヶ岳(せっとうがたけ)を往復する。黒岳に続く御坂山地の主脈をちょっとだけ辿る。シラビソに覆われた緩やかな尾根だ。主脈から分岐してひと登りで節刀ヶ岳の頂上につく。節刀とは変わった山名だが、後日調べると、古代において将軍の出征に際し天皇より賜る刀のことらしい。平坦で緩やかな稜線の端に頂上がちょこんと飛び出た山容を刀に見立てたのかな。

頂上には三角点標石と山梨百名山の標識がある。疎らにヒバが生えているが、西から南にかけて展望が開ける。富士山の眺めもバッチリだ。まずは腰を下ろし、ラーメンを作って昼食とする。

黒岳への縦走路
節刀ヶ岳頂上

節刀ヶ岳からの展望は、頂上手前の露岩のあるところの方がさらに良い。ここからは黒岳に続く御坂山地の主脈や三ツ峠、河口湖、毛無山から十二ヶ岳へのギザギザの稜線、金山、鬼ヶ岳、そして富士山がずずずぃーっと眺められる。

節刀ヶ岳から黒岳と三ツ峠を望む
節刀ヶ岳から毛無山〜十二ヶ岳の
ギザギザの稜線を望む

腹拵えして展望を満喫したのち、金山に戻って鬼ヶ岳に向かう。こちらも緩やかな稜線だ。南の雪頭ヶ岳(せっとうがたけ)へ岩峰を連ねる鬼ヶ岳を見ながら短い急坂を登ると、鬼ヶ岳の頂上に着く。

鬼ヶ岳への稜線
鬼ヶ岳頂上

頂上には露岩が点在し、その上に登ればほぼ360度の展望が得られる。富士山は言うまでもなく、御坂山地、南アのほぼ全山、甲府盆地、八ヶ岳、奥秩父、大菩薩連嶺は滝子山まで遠望できる。こちらから見る十二ヶ岳は岩壁を峙てて、険しい山容が目を惹く。前回は雨に降られて展望が皆無だったので、こんなにも好展望の山頂だったのかと感慨深い。

鬼ヶ岳から節刀ヶ岳、黒岳を望む
鬼ヶ岳から十二ヶ岳を望む
鬼ヶ岳から王岳への稜線
鬼ヶ岳から南ア北部、
甲府盆地、八ヶ岳を遠望

鬼ヶ岳から鍵掛峠に下る。入口に「この先通行不能」という標識が掛かる山道を右に分けると、痩せた稜線の急降下となる。左側の東入川は急峻な谷で、その下方には根場民宿村が見える。やがて岩峰が行く手を塞ぐ。ここは左側に巻き道があるが、間違って直進しやすい。前回も岩峰に登って行き詰まり、鬼ヶ岳に引き返した人がいたのを覚えている。

鍵掛峠への稜線
根場民宿村を俯瞰

眺めの良い岩稜を絡んで下ると、痩せた稜線上の鍵掛峠に着く。南北の斜面はどちらも急勾配で、峠道も険しそうだ。北側は芦川の流域に降りる。御坂山地は峠が多く、特に芦川流域には富士山麓に越える峠道(鍵掛峠もその一つ)と甲府盆地に通じる峠道が多い。これらの峠を訪ねる山旅が面白そうなので、芦川は以前から興味を惹かれているエリアだ。

岩稜を下る
鍵掛峠

南面の山肌も相当の急斜面だが、峠道は綺麗にジグザグを切っているので、案ずるよりも非常に歩き易い。見事なブナ林に覆われ、傾きかけた日差しを浴びて光る黄葉が美しい。下るに連れて緑が混じるが、それもまた趣が深い。

支尾根を絡んでジグザグに下り、途中から右の山腹をジグザグに下って、急峻で荒れた涸れ沢に出る。沢に沿って下ると砂防堰堤があり、その先で作業道に出る。急なアップダウンの多いルートを歩いてきたので、足が結構ガクガクだ。なかなかの健脚向けコースと言えよう。前回は家族でまあよく登れたものだ。両親はこのコースをどんな風に覚えているかな。今度、訊いてみよう。

紅葉の峠道を下る
ブナ林の黄葉
色付き始めたブナ林
砂防堰堤の作業道に出る

作業道を下ると谷が開け、水害前に根場の集落があった平地に出る。現在では、西湖いやしの里根場として、かつての集落の姿が復元され、茅葺屋根の民家が立ち並ぶ観光スポットとなっている。結構多くの観光客が訪れている様子だ。

右に王岳への直登ルート(これも面白そう)を分け、大通りに出て左に曲がると民宿山彦はすぐそこだ。外出から帰って来た宿のおばあちゃんと折よく出会い、無事下山を報告すると、お疲れ様でしたと、親切にも冷たい乳飲料を頂いた。喉が渇いていたので、美味しくて感激。御坂山地はまだまだ未踏の山が多いので、また来たいな。

西湖いやしの里根場
根場から鬼ヶ岳を仰ぐ

帰途は河口湖ICから高速に乗る。しかし、中央道上り線で渋滞25km、通過に2時間との情報を得る。さすがに2時間は嫌過ぎる、ということで、大月JCTで左折、下り線勝沼ICで中央道を降り、雁坂トンネル経由で桐生に帰った。