高峯山・水ノ塔山〜篭ノ登山・桟敷山
高峰温泉は、小諸市高峰高原の標高2000mの稜線上にある一軒宿の温泉で、以前から泊まってみたいと思っていた温泉宿の一つだ。今回、ここに2泊して、周辺の山でハイキングを楽しんで来ました。
桐生を車で発ち、新幹線で来たS&Sと11時に佐久平駅で合流。駅の観光案内所で貰ったグルメマップを参考にして、懐古園三の門入口にある老舗の蕎麦屋「草笛」本店で昼食とする。ここの天ぷら蕎麦はかなり美味くてお勧め。天ぷらのボリュームがたっぷりなので、夕食もご馳走がひかえている場合は食べ過ぎにならないように注意(と経験者談)。
この日は午後からの山歩きなので、行程が短い高峯山に向かう。車坂峠に上がり、高峰温泉の少し手前の高峯山登山口に車を置く。道路脇に1台分の駐車スペースがある。高峰温泉の広い駐車場に車を置いても、すぐ近くなのでOK。
高峰山頂へ1.4kmの道標を見て登山道に入り、針葉樹林と笹原の中を登る。樹林に遮られて展望はないが、一部で木の間から高峰温泉と水ノ塔山〜篭ノ登山の稜線が眺められる。
緩くひと登りして粒ヶ平に着き、車坂峠からの登山道と合流する。ここからほぼ平坦な稜線歩きとなる。散歩にぴったりのコースだ。マツムシソウやアキノキリンソウ、ヤマハハコなどが咲いていて、撮影しながらのんびり歩く。
地形図の上では2106m標高点が高峯山の最高地点だが、現地には特に何もなくて通過。少し下り始めると稜線上に大きな露岩があり、その上に小諸市が設置した「高峰山頂」の標識が立っている。その先は、大小の露岩が点在する展望が開けた尾根となる。今日は雲が多いが、山麓の小諸市辺りの眺めが良い。晴れていれば、八ヶ岳まで遠望できるだろう。
ひと際大きな岩があり、これを背にして高峯神社の祠が祀られている。脇にある由緒書きによると、平安朝時代に大室神社(諸区産土神社)の奥社として建立され、京都貴船神社の主神、高龗神(たかおかみのかみ)、闇龗神(くらおかみのかみ)を勧請して祀るとのこと。この二神は雨乞いの神で、夫神岳に登ったときにも出会ったことがある。
地形図には、高峯山から南に落ちる尾根の上に破線路の記載がある。高峯神社の参道と思われ、興味を惹かれるが、下り口を確認したら、「この先登山道不明」という看板が立っていた。微かな踏み跡はあるものの藪っぽく、残念ながら廃道化しているようだ。
短時間で登れるお手軽な山だが、頂上の雰囲気と展望が期待以上に良くて、大満足。休憩後、往路を戻って登山口へ。車で高峰温泉の前に移動し、チェックインした。
2日目の朝。上空を灰色の雲が流れているが、晴れ間も覗くまあまあの天気だ。今日は、水ノ塔山〜篭ノ登山を縦走し、湯ノ丸高峰林道を歩いて宿に戻るという計画で出発する。
高峰温泉のすぐ先の水ノ塔山登山口から登山道に入り、緩やかな尾根を登る。砂礫混じりの道の脇にはいろいろな花が咲いていて、とりわけシラタマノキとイワインチンが多い。標高が上がるにつれて、篭ノ登山への稜線が見えて来る。その稜線の一角には赤ゾレと呼ばれる崩壊地が突き上げ、なかなか険しく見える。稜線の遥か下方には樹林を縫って湯ノ丸高峰林道が通り、時折、車が行き交っている。
やがて大岩が散在する尾根となり、矢印のマーキングに導かれて登り詰めると、水ノ塔山の頂上に到着する。
針葉樹林を背景に露岩が点在する頂上は、高山的な雰囲気がある。展望は南面が開け、登って来た尾根が俯瞰できる。尾根の末端、高峯山との鞍部には高峰温泉の建物も小さく見える。露岩に腰を下ろし、ブドウを食べて休憩。もしも天気が悪い場合はここから引き返すことも考えていたが、まあまあ保ちそうだ。篭ノ登山へ向かおう。
水ノ塔山の下り始めは密な樹林を切り開いて頂上を巻く道で、大岩がゴロゴロで歩きにくい。しかし、それも短い区間で、巻き終わって稜線に出れば、あとは緩い登降の歩き易い道となる。赤ゾレの上部を横切る所から下の崩壊地を覗き込むと、遥か下を林道が通っている。落石注意。砂礫の斜面には鮮やかな黄のイワインチンのお花畑があり、見事だ。
水ノ塔山から篭ノ登山への稜線は、標高差約50mをゆるゆると下り、約80mを登り返す。高低差が少なくて楽だ。この縦走路は七千尺コースと呼ばれ、スキーツアーの古典コースとして知られているので、冬にも一度来てみたい。しかし、樹林に覆われた細い稜線なので、滑走が楽しめる種類のコースではなさそうだ。
最低鞍部から見上げる篭ノ登山は、円錐形の山容が立派だ。樹林帯に入って急坂を登ると篭ノ登山の頂上に着く。
篭ノ登山は、私は2回目の登頂だ(前回の山行記録)。岩屑が散乱する広い頂上には、ハイカーさんがポツポツと休憩している。我々もパンで昼食とする。雲に遮られて遠望は利かないが、待っているうちに雲間から水ノ塔山への稜線や、湯ノ丸山、烏帽子岳の眺めが得られた。
西篭ノ登山への往復は割愛して、池の平に向かって下る。こちらのコースは登って来るハイカーのグループとしばしばすれ違う。真っ直ぐの植林カラマツとは異なるいじけた樹勢が興味深い天然カラマツの林を通ると、池の平の駐車場に降り着く。
時間に余裕があるし、天気も大丈夫だ。ついでなので、池の平にも立ち寄ろう。こちらは観光客も多い。浅い皿のような地形の池の平に緩く下ると、ほんのり色づいた草原が広がる。木道を歩いて湿原を横断し、鏡池に向かう。咲き残ったヤナギランがポツポツ。池の周辺には、今が旬のエゾリンドウの瑞々しい紫色の花が多い。
鏡池からは尾根コースを戻る。三方ヶ峰は遠回りになるので割愛し、見晴岳に立ち寄る。ガスがかかっているが、山麓の東御市の眺めが開ける。この付近の砂礫の斜面には、時期になればコマクサが咲くそうだ。
雲上の丘などと名前が付いた尾根の上から眼下に広がる池の平の草原を眺めつつ、池の平の入口に戻る。ここから湯ノ丸高峰林道を歩いて戻る。林道歩きとは言っても車は少ないし、篭ノ登山〜水ノ塔山の高山的な稜線を見上げながら歩くので、眺めが良くて楽しめる。1時間程で宿に戻ることができた。
宿に帰ったら、早速、温泉で汗を流し、風呂上がりのビール。今日は結構歩いたので、冷えたビールがますます旨い。ヤングなでしこ対ナイジェリア戦をTV観戦したのち、近年新設されたという露天風呂にも入る。宿の裏手の丘の上にあり、シャクナゲ藪を切り開いて小さな湯船が置かれている。眼下に深沢川の谷を眺めつつ浸かる温泉は最高。風呂のあと、やはり展望の良い食堂で美味しく夕食を頂く。極楽〜(^^)
最終日は再び軽い山歩き。篭ノ登山の北にお椀を伏せたような山容を見せる桟敷山に登る。宿をチェックアウトし、車で地蔵峠から嬬恋村に少し下ったところにある桟敷山登山口に移動する。こんもりと盛り上がる桟敷山を背にして、コンクリ敷の広い駐車スペースがある。昔の鹿沢スキー場の駐車場跡かな?既に1台の駐車があり、先行者がいる模様。
今日はカラッと晴れた良い天気だ。疎らな白樺林の中、笹原を切り開いた登山道を登る。白樺の黄葉が少し始まっていて、秋の訪れを感じさせる。雰囲気の良い道だ。
やがて、小桟敷山への道を右に分けると森に入り、木陰にはキノコが傘を開いている。
登山道は急な山腹に差し掛かり、大きくジグザグを切りながら高度を上げて行く。途中で3人グループとすれ違う。下生えに笹原が広がるカラマツ林となって傾斜が緩むと、台地状の山の上に出る。笹原の切り開き道を進むと分岐点があり、右の道は道標に依ると展望台への道のようだ。そちらは帰りに立ち寄ることにして、左の桟敷山頂上への道を辿る。
小さな高みに登ると、ほどなく桟敷山の頂上に着く。北面の展望が開け、正面には緩やかな稜線を引いた大きな山容の四阿山が眺められる。また、その山麓には嬬恋村の田園風景が広がる。大きな湖面が見えるのは、田代湖だ。右手前には、桟敷山と同じ様な山容の村上山がちょこんと聳えている。これも浅間・烏帽子火山群のひとつだ。今回登り残しの小桟敷山と合わせて、紅葉の季節に歩くと楽しそうだ。
頂上には古い石祠の他に遭難追悼碑がある。と言ってもここで遭難したのではなく、望郷の地に碑を建てたようだ。頂上で軽く食べて休憩。爽やかな風が吹き抜けて気持ち良い。
下山は往路を戻るが、展望台に寄り道してみる。台地の縁の樹林の中に大岩があり、ここだけ樹林が切れて、篭ノ登山から地蔵峠、湯ノ丸山にかけての展望が開ける。なお、展望台の手前から左に分れる新しい切り開きがあり、小桟敷山に山道が通じているようだ。この道で桟敷山と小桟敷山を周回するのも面白いかも。
登山口に戻り、帰途につく。地蔵峠で名物のソフトクリームを食べ、東御へ下る途中で通りかかった山水庵という蕎麦屋で昼食にする。ここの蕎麦も大変美味かった。今回は食べ物がどれも超美味かったなあ。食欲の秋近し。高崎でS&Sと別れ、桐生に帰った。