夫神岳・子檀嶺岳
大晦日から長野県小県郡青木村の沓掛♨おもとや旅館に宿泊して年を越し、元日と2日に周辺の里山に登って来ました。
31日は、高崎駅でS&Sをピックアップし、R18、碓氷バイパスを経由して上田へ。上田城跡公園を散策した後、沓掛温泉に向かう。沓掛温泉は青木村の奥、夫神岳(おがみだけ)の西山麓にあり、数軒の宿と共同浴場からなる閑静でこじんまりした温泉だ。
宿に早く到着したので、かつてウォルター・ウェストンが訪れて、北アの展望を絶賛したという保福寺峠に車で出かけて見たが、残念ながら途中から冬期通行止め。ここは昔、東山道が通っていた峠道なので、機会があれば古道の跡などを辿って訪問してみたい。
宿に戻って温泉に浸かる。35.3℃の源泉掛け流しのぬる湯(男湯のみ)と加温した湯船があるが、温泉通ならここは長湯できるぬる湯へ(^^)。風呂上がりに地ビールのOH!LA!HO BEERを飲み、夕食でご馳走を頂き、うつらうつらしながらTVを見て大晦日の夜を過ごした。
穏やかに晴れた2007年の元旦。朝食に雑煮を頂いた後、宿を出発する。共同浴場の左脇から始まる小倉山遊歩道の途中にある炭焼釜が夫神岳登山口で、新しい道標がある。
登山道に入り、山腹を左にトラバースして行く。杉林に入り、小沢を丸太橋で渡ると未舗装の林道に出る。ここからしばらく林道を辿り、ジグザグに杉林の山腹を上がって行く。
数カ所ある林道分岐には道標が立っているが、一か所、全く道標のない分岐がある。このコースは地形図にも載っていないし、他の情報もない。左じゃないかという意見もあったが、ここは一発、新年初の運試し。道の様子+山勘のみで右の道を選ぶ。結果は正解でした(v^^)。
うっすらと雪が積もった林道をなおも登って行くと、杉林の中に「月波(つくば)の泉」という道標があり、ちょろちょろと水が湧き出している。その近くには石祠と「くらおかみ大明神」と刻んだ石碑があり、この泉や石祠、夫神岳の由来について、次のように記されていた。
この祠は寛文五年(1665)に立て替えられたもので、祭神はくらおかみの神である。おかみ信仰は高龗(たかおかみ)と闇龗(くらおかみ)の二柱神である。共に雨の神、水の神であり、古来、たかおかみは夫神岳の山頂に、くらおかみはここの湧水の脇に祀られている。いずれも遠い昔の雨乞いの歴史を今に伝えるのである。このおかみ信仰がもとになってこの山を夫神岳と呼び、麓の村は夫神郷と呼ばれるようになった。この社に夏祭りの時奉納されるしなり織りは雨の神、龍神の姿をあらわすものとされている。
龗(雨の下に口口口、その下に龍)とはまた難しい漢字だが、後日、検索してみると、結構ポピュラーな雨乞いの神様のようです。
ここから山頂までは道標に1.5km(40分)とある。山腹をトラバースする山道を辿り、「あと600m」と記された道標を見ると、幹が真っすぐな赤松林の尾根上の急登が始まる。これを登り詰めると、夫神岳の山頂に到着した。
山頂は芝の広場となっていて、中央に2基の石祠と三角点がある。樹林に囲まれているが、西から北にかけては素晴らしい展望が開ける。西には白銀の後立山連峰が連なり、爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳、唐松岳のピークが数えられる。北には青木村の平野部を俯瞰し、その向こうには頂上直下に岩壁を擁した子檀嶺岳(こまゆみだけ)、遠くに白い妙高連峰が見える。
風は冷たいが天気は穏やかで、お茶を沸かしてパンで昼食とする。展望を楽しんだ後、往路を下る。道標がない林道分岐まで車で上がって来た2人パーティとすれ違った他は、全く人に会わない、静かな山だった。
2日は子檀嶺岳に登る予定だが、往復2時間と短い行程なので、その前に修那羅峠の石仏群を訪ねることにする。
2泊をのんびり過ごした沓掛温泉を発ち、青木村中心部のコンビニで昼食を買い足した後、修那羅峠を越えて、筑北村側から安宮(やすみや)神社へ車で上がる。こんなところに、と思うくらい山奥の山上にある安宮神社の境内は、初詣の参拝客も一段落したのか、ひっそりとしていた。お参りをした後、社殿の裏手に回ると、総数860体という石仏がここそこに散在する。近郷の村民によって納められたという石仏はどれひとつ同じものがなく、個性的なものばかりだ。
安宮神社から往路を戻り、子檀嶺岳の田沢嶺裏コースに向かう。登山口への車道はネジ工場へのアクセス道路で、正月休みで除雪されていないためか、雪に覆われていた。工場正門の手前で右の林道に入り、少し先でゲートに突き当たる。ゲートの鍵は開いていたが、ゲート前のスペースに車を停めて、ここから歩くことにする。
ゲートを過ぎ、カラマツ林の中を大きくジグザグを切って緩く登る林道を辿る。林道の分岐には道標が完備している。林道終点から短い登りで尾根に出ると、左はカラマツ林、右は松林の稜線歩きになる。
右の松林は松茸山になっているらしく、入山禁止の張り紙とビニールテープによる柵が張り巡らされている。尾根の左右は結構な急斜面だ。右から急坂の村松西洞コースを合わせると、三つの祠が祀られる子檀嶺岳頂上に到着した。
頂上南面は青木村の平野に向かって切れ落ちており、夫神岳に勝るとも劣らない展望だ(見える方角が異なるので、甲乙付けがたい)。青木村のほぼ全域が視界に収まり、上田から軽井沢にかけて広がる平野の向こうには噴煙を上げる浅間山が遠望される。昨日登った夫神岳の山容もよく見え、その向こうにはキザキザの稜線を見せる独鈷山、遠くには美ヶ原、蓼科山の白い峰も見える。
展望を楽しみながらお湯を沸かし、パンとカップスープの昼食をとる。頂上に焚火の跡があるところを見ると、元旦には大勢?の人が初日の出をここで迎えたようだが、今日は、壮年男性一人が地下足袋で登って来た他は誰も訪れない、静かな山頂だ。
下山は往路を戻る。村内の田沢♨の共同浴場・有乳湯(うちゆ)に立ち寄って、一風呂浴びる(200円)。こちらの温泉は車で訪れた入湯客で賑わっていた。さっぱりしたのち、下道を走って高崎駅までS&Sを送り、桐生に帰った。
参考URL:今回の山行の計画に際しては、信州うえだトレッキングナビの夫神岳、子檀嶺岳のガイドを大変参考にさせて頂きました。