五郎山・三国山
梅雨の晴れ間を縫って、長野県南佐久郡川上村にある五郎山に登って来ました。短時間で登れて正午過ぎには下山したので、ついでに三国峠まで車で上がって、上武信国境の三国山にも立ち寄って来ました。
桐生を車で5時に出発。北関東道、上信越道を経由し、佐久ICで高速を降りてR141を南下する。今日の天気は高曇りで、八ヶ岳や奥秩父の高峰は雲の中だ。
川上村に入るとレタス畑が一面に広がり、農家の人が早朝から収穫に勤しんでいる。箱詰めのレタスを満載した何台ものトラクターとすれ違い、集荷所のJAでは大型トレーラーが出荷のために待機しているのを見る。
千曲川支流の梓川を遡ると、緑深い森林の中に町田市自然休暇村がある。休暇村のテントサイトを通り抜け、梓川を渡って未舗装の林道を少し上がって、「↑幻の滝 林岩岳→」という道標のある林道分岐の路側スペースに車を置く。周囲はシラカバやカラマツの林で、レンゲツツジが群れて咲いている。この先の林道は雨裂が深い個所があるので、最低地上高が高い車でないと走行は厳しい。なお、道標の「林岩岳」とは何なのか、後日ネットで調べてみると、林岳と岩岳というハイキング向きの山があるらしい。
「幻の滝」の道標に従って、分岐左の林道五郎山線を歩く。先日、登山靴(zamberlan Pelmo GT)を新調して、今日はその履き初めだ。調子はどうかな〜。林道を緩く登ると、五郎山と幻の滝の分岐に着く。幻の滝には帰りに立ち寄ることにして、五郎山に向かう。この辺りの林道はカラマツの落ち葉が柔らかく積もって、足に優しい。要所の道標に従って林道を辿ると、行書体で「五郎山登山口」と彫られた立派な道標があり、ここから登山道に入る。
登山道は山腹を少しトラバースすると、急斜面を一直線に登り始める。おニューの登山靴はまだ固く、つま先上がりの急登では踵があたって少々痛いが、そのうちに馴染むだろう。大きな露岩を過ぎ、シラカバ林の中を急登する。前方から熊鈴が鳴っているのが聞こえて来て、先行者がいるようだ。
やがて林間から岩稜の上に飛び出すとそこはマキヨセノ頭の一角で、展望が一気に開ける。薄いガスがかかって靄っているが、山麓の自然休暇村の建物も良く見える。ここから先行の単独行氏と前後して、まだ蕾の石楠花や咲き終わった躑躅のある岩稜を登る。右側は切れ落ちた岩壁で、高度感がある。
マキヨセノ頭の頂上と思われる岩稜の最高点に着くと、行く手に五郎山の頂上が姿を現わす。周囲に岩壁を巡らせて、どこから登るのだろう、と不思議になる山容だ。展望を楽しんで、しばらく休憩する。
マキヨセノ頭からは少し下って、次のP2の岩峰は左から巻く。岩壁の基部をトラバースする明瞭な山道が付いている。
P2を巻き終わると、眼の前に五郎山の岩壁が立ちはだかる。鞍部に急降下して登り返すと、岩壁の基部に着く。見上げる岩壁はとても高い。岩場が大好きなMさんは、ここに鎖があって直登できたら凄いルートになるのになあ、と残念がっていたが、鎖が設置されていても高度感がありすぎて、多分命懸け(^^;)。
登山道はここから右へ、岩壁の中腹の狭いバンドを伝う。このルート取りは非常に巧みで、先人はよくぞ見つけたものだ、と感心する。密に木が生えているので危険はないが、バンドの下も高い絶壁だ。注意して進む。
岩壁を巻き終わり、稜線に上がって左に僅かに登れば、三角点標石のある五郎山の頂上に着く。南側は岩壁に面して展望が良い。三宝山や奥秩父主脈上の水師や富士見のピークを望み、三宝山の右肩には端正な三角形の甲武信岳のピークが頭を出す。国師ヶ岳や金峰山は雲の中、小川山は頂上に少し雲がかかって眺められる。山麓には瑞々しい樹林が一面に広がり、なかなか雄大な眺めだ。
先行者に教わって頂上から少し西に進んでみると別方面の展望が開け、マキヨセノ頭や川上村、遠くに天狗山と男山の鋭峰を眺めることができる。頂上で大休止とし、時間は少々早いが軽く缶ビールで乾杯、パンで昼食とする。
頂上で30分程のんびり過ごしたのち、往路を戻って下山する。相変わらずの曇り空だが、ガスが薄れて展望が少しクリアになった。岩場で転けないように注意し、展望を楽しみながら下る。
マキヨセノ頭から樹林の中を急降下し、林道に出る。帰りは幻の滝に立ち寄る。分岐点から山道を辿ると、すぐに沢沿いの踏み跡となって、5分程で幻の滝の下に着いた。花崗岩を2段に滑り落ちる落差15m程のナメ滝で、周囲は明るい緑に囲まれて涼味満点だ。これは一見の価値あり。
幻の滝を探勝したのち、林道を下って駐車地点に戻る。まだ正午を回ったばかりで時間があるので、三国峠から往復50分程で簡単に登れる三国山に行くことにする。桐生から三国山だけ登りに来ることはまずないので、ついでに登る山としては最適だ。
梓山の集落の外れで毛木平に向かう車道を右に分け、左の三国峠への車道に入る。幅は細いが三国峠まで全線舗装されている。レタス畑の中を通り抜け、曲がりくねりながら山腹を登ると、長野県と埼玉県の県境の三国峠に着く。
峠には「秩父多摩甲斐国立公園」の案内板兼ベンチがあり、川上村方面の眺めが得られる。十文字峠への縦走路の登山口があり、新しい道標もあるので良く整備されているようだ。一方、峠から先の埼玉県側の車道は、今年のGWに発生した土砂災害のため、三国峠〜王冠キャンプ場が当面の間通行止になっているとのこと。
もっとも、土砂災害がなかったとしても、埼玉県側の車道(旧中津川林道、現在は市道大滝幹線17号)は未舗装の悪路で、私の Freed Spike では走破できそうにない。峠の埼玉県側には、「この先悪路注意 18km間未舗装 地上高の低い車は走行出来ません 落石多数 タイヤ・車の破損の恐れあり 落石注意 悪路注意」などと物々しい警告文を書き連ねた看板が立っている。林道マニアにとっては、垂涎のコースかも。
峠の埼玉県側には山小舎風のWCがあり、その横が三国山への登山口となっている。
登山道に入ると、意外と自然林が美しい尾根道となる。樹林に覆われて展望はないが、一昨年の秋に登った蟻ヶ峰(川上村では神立山と呼ぶようだ)が眺められる。一方、埼玉県側は急峻で、深山の雰囲気がある。
途中、小さな岩場があってちょっと変化が付くが、急登はない。ゆるゆると登って、三国山の頂上に着いた。
頂上からの展望は僅かに南西方向の樹林が切れて、山麓の川上村の眺めが得られるのみだ。遠くの奥秩父の山々は灰色の雲が垂れ込めて見えない。頂上には「三国山1834m」と「三国山1828m」の2種類の山名標があるが、地形図では三国山の標高点は1834mとなっているので、こちらが正解ということで。
三国山から先には、北東の上武国境稜線、西の上信国境稜線とも踏み跡が続いているようだ。興味を惹かれる。少し休憩したのち、往路を三国峠に戻り、桐生への帰途についた。