蟻ヶ峰〜大蛇倉山

天気:
メンバー:K,M,T
行程:車道終点 8:15 …昇魂之碑 8:50 …県境稜線分岐 10:15 …蟻ヶ峰(1979m) 11:10〜12:20 …県境稜線分岐 13:00 …大蛇倉山(1962m) 13:40〜14:15 …県境稜線分岐 14:40 …車道終点 15:55
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

3連休の2日目まではいまいちの天気だったが、最終日は良くなりそうなので、御巣鷹の尾根から群馬・長野県境稜線の蟻ヶ峰(別名、高天原山)に登る計画を急遽立案。Kさん、Mさんに同行頂いて登って来ました(Kさん作成の蟻ヶ峰・大蛇倉山の記事もどうぞ)。

桐生を車で朝6時に出発し、北関東道〜上信越道を走る。昨日までの雨でエアロゾルが洗い流されて、今日は澄みきった青空が広がっている。県北の山々はまだ雲に隠れているが、西上州や奥秩父の山々はくっきりと眺められる。下仁田ICで上信越道を降り、南牧村から湯の沢トンネルを抜けて上野村に入り、御巣鷹の尾根登山口に向かう。奥神流湖を過ぎると車道以外の人工物はなく、渓流と少し色付き始めた樹林が美しい。

スゲノ沢出合の旧登山口を過ぎ、車道終点の登山口まで車で入る。登山口の駐車場には既に5、6台の車があった。車を置いて出発の準備をする。谷間から振り仰ぐと、青空の中に御巣鷹の尾根の紅葉した上部が見える。

御巣鷹の尾根は、1985年8月12日に日本航空123便が墜落し、乗員乗客520名が死亡した現場である。25年後の今でも記憶に鮮明な大事件であった。御巣鷹の尾根までの登山道は慰霊のために開かれた道であり、今日の登山ルートの前半はそこをお借りして通ることになる。登山口の案内図によると、現在地(標高1359m)から昇魂之碑(標高1539m)までの距離は約800mである。


御巣鷹の尾根登山口


スゲノ沢沿いの慰霊登山道

スゲノ沢に沿って良く整備された登山道を進み、WCと休憩所から折り返して山腹を登る。広い急斜面のあちこちに氏名と享年を記した墓標が立ち並び、突然の悲劇で閉じられた夫々の人生に思いを致す。登り着いた尾根上に昇魂之碑があり、520名の御霊に黙禱を捧げる。遺族の方だろうか、生花を携えて供える人も多い。


御巣鷹の尾根の山腹を登る


昇魂之碑

線香の香り漂う尾根を登ると笹の下生えのあるカラマツ林に入り、「至 日航の頭」という道標がある。ここで慰霊の道は終わり、ここからは登山の道となって急な支尾根上の踏み跡を辿る。


「至 日航の頭」の道標


支尾根を登る

樹林に覆われた尾根を登り詰めると、県境稜線に出る。長野側は成長したカラマツ林が広がり、黄葉を透かして陽が差し込む。「60年日航機遭難地慰霊登山道」という古い道標があり、左(南)は三国峠、右(北)は三川に至ると記されている。


滑り易い急登が続く


県境稜線分岐点

少し休憩したのち、蟻ヶ峰に向かって県境稜線を南下する。疎らなカラマツ林を縫って進むと、見晴しの良い岩場がある。行く手にはほんのり紅葉した蟻ヶ峰、遠くには武甲山の鋭峰から始まる奥秩父の山並みが眺められる。


武甲山(左奥)を遠望する


蟻ヶ峰を望む

鞍部に向かってロープの張られた岩場を下り、シダの生い茂るカラマツ林を登り返す。道脇のシャクナゲ藪を抜けた先に、今度は長野側に開けた岩場があり、奥三川湖の湖面や御座山、八ヶ岳の展望が良い。今日のコースは大半が樹林中で展望に乏しいが、好天のおかげもあって、ところどころのビューポイントからの眺めが素晴らしい。


紅葉の走り


ロープのある岩場を下る


カラマツ林を登る


奥三川湖と御座山、八ヶ岳連峰

カラマツ林の山腹をトラバースし、最後に急坂を登ると蟻ヶ峰の頂上に到着した。樹林に囲まれているが、南西の長野側が開けて小川山から金峰山にかけての奥秩父主稜線がよく見える。長野側は人里が近く、すぐ下に山村と黄金色の田圃が広がる。遥々秘境を旅して着いた所が人の家の裏庭みたいで、ちょっとがっくり来る(^^;)。まずは三角点のまわりに腰を下ろして、缶ビールで乾杯し、昼食とする。


蟻ヶ峰への道


蟻ヶ峰頂上

因に、群馬300山や山と高原地図によると、蟻ヶ峰は高天原(たかまがはら)山とも、また、神立(かんだち)山、ショナミの頭、カリヤス山とも呼ばれているらしい。また、三角点の点名は蟻ヶ峠で、蟻ヶ峰という名前と関係がありそうだ。どれが最も正統性のある山名かは分からないが、この山行記録では一応、蟻ヶ峰ということにしてます。

食後に果物などを頂いていると、ご夫婦のハイカーさんが頂上に到着した。話を伺うと、三国峠から蟻ヶ峰を経て大蛇倉山まで往復した帰りとのこと。大蛇倉山の頂上自体は眺めはないが、すぐ近くに展望の良い岩場があると聞く。大蛇倉山は当初の計画には入れていなかったが、これは行かずんばなるまいて。


金峰山(中央)と小川山


白峰三山(左奥)と甲斐駒ケ岳遠望

長居した蟻ヶ峰を辞して、県境稜線分岐まで戻る。途中、横着してピークの巻き道らしい脇道に入ったら、長野側にどんどん下る。これはしまった、道間違いだ。カラマツ林の急斜面を直登して稜線に登り返したら、丁度、県境稜線分岐に出た。

余計な労力を払ったが、時間も元気も十分に残っているし、折角の好機なので大蛇倉山に往復することにする。県境稜線をわずかに進むと「三川に至る」という道標がある。道標の指し示す先には道型はないが、かつては南相木村三川から慰霊登山道が通じていたようだ。

稜線を登って着いた1922m峰には「日航の頭」という山名標がある。奥秩父に似た針葉樹林を抜けて急坂を登ると、シャクナゲとシラカバに囲まれた大蛇倉山(おおだくらやま。だいだくらやまとも言う)の頂上に辿り着いた。頂上の枯れ葉に覆われた小平地は樹林に囲まれて、展望はない。しかし、頂上からわずかに南西に下ると、蟻ヶ峰でハイカーさんから聞いた通りの岩場がある。


大蛇倉山へ向かう


日航の頭


大蛇倉山頂上


展望の岩場

岩場の上に立つと、眼下には色付いた県境稜線がうねうねと横たわり、その向こうには御座山が顕著な高まりを見せている。奥三川湖の湖面も見え、その向こうには天狗山と男山の鋭峰、遠く八ヶ岳連峰が眺められる。さらに奥神流湖と流域の山々が一望の下で、浅間山、榛名山、関東平野の一部までが遠望できる。これは大蛇倉山まで足を延ばして良かった!


小川山と遠くに南アを望む


奥三川湖と御座山、八ヶ岳の眺め


浅間山を遠望する


奥神流湖と榛名山遠望

展望に感激したのち往路を戻り、県境稜線分岐から滑り易い急坂を注意して下る。御巣鷹の尾根には午後3時を廻っても慰霊に訪れる人が絶えない。既に日が短い季節となり、スゲノ沢を下って登山口に帰り着いた時には夕暮れが迫っていた。


御巣鷹の尾根付近から
両神山(奥)と帳付山(右)


墓標が並ぶスゲノ沢を下る

浜平しおじの湯に立ち寄って汗を流し、信濃屋嘉助で和菓子を買ったのち、帰途につく。3連休最終日とあって、下仁田ICで上信越道に乗ったとたんに渋滞につかまり、藤岡JCまでノロノロ運転となった。