物語山
この週末も関東以北の山地では寒気が厳しく、雪が降りそうな天気。西上州ならば晴れ間が出そうということで、Kさん、Mさんと共に物語山に出かけてきました。私にとっては、8年振りの再訪となります(前回の山行記録)。
桐生を車でのんびり9時に出発。高速を経由して、登山口のサンスポーツランドに11時前に到着する。駐車場には5台程の車があり、遠方の県のナンバーもある。
山支度を整えて出発し、沢沿いの林道を登る。今年は4月に入ってもまだまだ寒さが残り、周囲の山林も冬枯れから脱していない。しかし、沢のナメ滝を流れる水は軽やかで、雰囲気は明るい。
30分程林道を歩くと、遥か頭上にめんべ岩が現れる。この岩には、落ち武者が追手を逃れて蔓を手掛かりに登ったものの、蔓を切ってしまったために降りられなくなって自害した、という物語がある。下から見上げるめんべ岩は青空に向かって屹立し、蔓や鎖が掛かっていたとしても、とても登れそうにない。
1時間弱で登山口に到着し、林道から分れて、杉林の中をジグザグに急登する山道に入る。もう下山のハイカーさん数組とすれ違う。まあ、我々の出発が遅い訳だが。小尾根に登り着いて一休みしたのち、今度は明るい雑木林の中をジグザグに急登する。足元にはスレート状の石が散乱し、踏むたびに石と石が触れ合ってカラカラと乾いた音を立てる。この石は、頂上部を構成する安山岩溶岩が薄く割れたものだそうだ(末尾の参考文献による)。
急登一息で鞍部に登り着く。吹き付ける風が冷たい。まず、左手の西峰に登る。崖っぷちを通る道を上がると、北側が開けた西峰頂上に着く。神津牧場に薄らと雪が残る物見山から、日暮山、妙義山にかけての西上州の山々が眺められる。それより遠くは、群雲に隠されて見えない。
鞍部に戻り、物語山の本峰に向かう。こちらの頂上も北側の眺めが得られるが、西峰の方が展望は良い。少し東に進むと、石祠が祀られている。
他のハイカーさんは疾うに下山して頂上に居るのは我々だけなので、三角点標石の周りに陣取って昼食とする。今日は軽く缶ビールで乾杯。ようやく飲める陽気になってきた。軽い行程でカロリーを消費していないせいか(^^;)、ビールとツマミでお腹いっぱいになったので、主食は省略する。
下山は往路を戻る。時間があるので、阿唱念ノ滝にも往復することにする。市ノ萱川に沿って、対岸のR254の車の往来を見ながらしばらく歩き、支流の渓谷に入る。コンクリ舗装の歩道に土砂が押し出して少々荒れ気味だが、通行に支障はない。
渓谷を奥へ遡ると、南無阿弥陀仏、一千年来山色新などと刻まれた立派な石碑が現れる。駐車場にあった説明板によると、この一帯はかつて空居上人が阿唱念山吉祥院瑞光寺を建立して、一大霊場にしようとした遺跡とのこと。
石碑の奥は高い岩壁にぐるりと囲まれた伽藍となり、正面に阿唱念ノ滝が細々と水を落としている。水量は少ないが、落差のある立派な直瀑だ。左手の岩壁の下には不動明王像が祀られている。風化を免れて新しく見えるが、天保七(1836)年建立の古いものだ。これも空居上人の遺物とのこと。
滝の下には○○○童子と刻まれた石像がある(○は読めない漢字)。さらに滝の岩壁の中腹にも不動明王らしい石像があるが、近づくことはできない。滝と石像・石碑を探勝したのち、往路を戻った。
参考文献:下仁田自然学校文庫⑤『下仁田町と周辺の地質』