ほたる山・兄倉山・冨士山

天気:
メンバー:K,M,T
行程:ほたる山公園 10:20 …ほたる山(354m) 10:30 …ほたる山公園 10:35 …兄倉山(576m) 11:25〜11:35 …林道に出る 12:05 …ほたる山公園 12:25 …(車で移動) …冨士山登山口 13:50 …冨士山(453m) 14:10〜14:15 …冨士山登山口 14:30
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

この週末はどこに登ろうかな。予報によるといまいちの天気なので、少々降られても大丈夫な軽い山歩きを考える。昨年末、金剛萱に登った帰りに下仁田町自然史館に立ち寄り、展示を見たり解説を聴いたりして、下仁田の地質と地形について俄然興味を持った。そのとき、クリッペの代表例と紹介された兄倉山(御嶽山)が、短時間で登れて面白そうだ。時間に余裕があればもう一山登ることにして、Kさん、Mさんと共に出かけて来ました。Kさんの記事はこちら→ほたる山兄倉山ふじ山

当日の朝の桐生は雲が多く、雨粒がポツポツ落ちる天気。車で9時頃に出発し、高速を経由して下仁田へ。幸い、下仁田に着く頃には雨は止んで、僅かながら青空も見える。

まず、西牧川と南牧川の合流点にある青岩公園を訪れる。南牧村や上野村の山に登るたびにすぐ脇を通る場所なのだが、立ち寄るのはこれが初めて。川岸の駐車場に車を停めると、目の前の河原の中に巨大な石畳がある。これが青岩公園だ。この岩は、名の通り綺麗な青緑色を呈している。緑泥石という鉱物を含む三波川結晶片岩で、緑色片岩と称するそうな。歩道を伝って岩頭に立つと、川の流れや周囲の山々の眺めが良い。


青岩公園にて川井山を望む


青岩公園にて兄倉山を望む

青岩公園から兄倉山登山口のほたる山公園まで車で移動し、広い駐車場に車を置く。ほたる山公園は下仁田市街を俯瞰する見晴しの良い傾斜地にあり、バーベキュー場や遊具のある広場などの諸設備が整っている。ただし、今はシーズンオフなので他の車はなく、ひと気もない。駐車場から見る兄倉山は、標高差は大きくないものの、かなりの急角度で立ち上がっている。

兄倉山に登る前に、公園を挟んで反対側のほたる山に向かう。公園から標高差僅か50mの小山だが、下仁田九峰の一つと聞いては登らざるを得ないでしょう。ちなみに九峰とは、稲含山、大山、御嶽山、蛍山、富士山、大崩山、川井山、浅間山、伊勢山をいう(新ハイ№627の後藤信雄氏の記事による)。

謎の石柱の横からほたる山に続く尾根に入ると、杉林の中に「御神木お菊の杉跡」という銘の御影石の石標がある。傍らには社が建ち、中の墓碑にお菊の杉の由来が刻まれている。曰く、国峰城に才色兼備の春と菊という姉妹の侍女があり、殿様の寵愛を受けていたが、嫉妬した同輩の讒言により無実の罪で処刑されたのだとか。こわー。


ほたる山公園の駐車場より
兄倉山を仰ぐ


お菊の杉の社

尾根上の意外としっかりした山道を辿ると、最後は急登となるが、あっと言う間にほたる山の頂上に着く。樹林を透かして兄倉山が僅かに見えるくらいで、展望はほとんどない。「下仁田九峰の一つ ほたる山」と刻まれた標石があり、それによるとこの山は標高354m、小太郎山、小山(登記上)とも呼ばれ、ほたる山は通称とのこと。


ほたる山への登り


ほたる山頂上の山名標石

ほたる山公園に戻り、いよいよ兄倉山に取り付く。「←兄倉山登山口(御嶽山)」という道標に従って自然色舗装の坂道を上がると公園の管理棟(冬期閉鎖中)があり、その向かいから山道に入る。ここには「御嶽山登山口↑約50分です」という木の道標がある(実際、頂上まで50分だった)。山道に入ってすぐに新しい石祠、次に愛嬌のあるお狐様と安政四(1857)年の古い石祠がある。


ほたる山公園から仰ぐ兄倉山


お狐様と石祠
(安政四巳年十一月吉日)

左斜面に公園の広場を見ながら緩く登ると、「御嶽神社」の額を掲げた赤鳥居と新旧4基の石灯籠が建つ。鳥居を潜ると「訓導神戸善茂神霊」の石碑と小屋があり、その奥の石段の上には御嶽座王大権現を中心として普寛行者、子安観音、不動明王などの石像と石祠が祀られている。どの石造物も苔むして、年代を感じさせる。


御嶽神社の赤鳥居


御嶽神社の遥拝所


遥拝所の石像群


普寛行者

兄倉山はここから急に傾斜を増す。土砂に覆われて断層等は見えないが(見えても地質のど素人なので判別できないが^^;)、この辺りがクリッペの下盤と上盤の境界になっているのだろう。小屋の左手から山腹を回り込んで登り、急な尾根の上に出る。尾根道を登ると、途中には石祠や三十六童子の文字碑が点在する。木の間越しに下仁田市街を振り返りながらさらに急坂を登ると、不動明王像が現れる。彫りの深い火炎光が素晴らしい。安政五(1858)年の造立。傍らには三十六童子の一つの「虚空護」の文字碑がある。


下仁田市街を背にして急登


不動明王(安政五戊午之年)

5分程登ると、今度は不動明王の坐像が祀られている。こちらの火炎光は流れ落ちる滝のようだ。火炎の表現も様々で面白い。そのすぐ上には、口をへの字にした厳めしい武人の石像がある。これは八海山大神とのこと。文化三(1806)年の造立で、先の石像より少し古い。次々と山岳信仰のモニュメントに遭遇して一同大喜び。里山歩きはこれが楽しみだ。


不動明王(年代不明)


八海山大神
(文化三歳丙寅三月吉辰)

山腹を右に斜上して稜線に出れば、あとは緩い登りとなる。到着した兄倉山の頂上は小さな平地となっていて、奥の石垣の上に石祠と猪の石像が祀られている。簡素なベンチもあるので、一休みして何かお腹に入れるとしますか。ところで、石垣の前の地面を覆う青灰色のアスファルトみたいなものは何?…


兄倉山への稜線


兄倉山頂上

…と思って近寄ってよく見てみると、全部小さな羽虫!この大群が一斉に飛んだりしたら、パニックを起こしそう。刺激しないように少し離れて、Kさん持参のコーヒーやゆで卵を頂くが、どうも落ち着かない。この羽虫、よく見るとあっちにもこっちにもいて、地べたに降ろしたザックにも集り始めている始末なので、早々に頂上を辞すことにする。どうも羽化したばかりの虫が、寒さを避けるために寄り集まったようだ。


石祠と猪の石像


兄倉山から下仁田市街の展望

頂上からは往路を戻らず、山と高原地図で破線が引かれている東の尾根を辿る。礫岩が露出した尾根は痩せて、特に右(南)側の切れ落ち具合がすごく、遥か下に栗山川の流れが見える。尾根上の踏み跡は少々怪しく、小枝や倒木があるが、藪漕ぎはない。

ほぼ平坦な尾根を進むと、3基の石祠のあるピークに着く。主尾根は東南に折れて大山まで続いているが、まずV字のギャップがあって辿るのは難しそう。山と高原地図の破線に従って、北に落ちる支尾根を下る。


東へ痩せ尾根を辿る


石祠が3基

この支尾根も相当急だが、疎らな立ち木が頼りになり、地面も柔らかいので、下るのにそう困難はない。踏み跡もテープ等の目印も全くないので、尾根を外さず真っ直ぐ下る。杉林に入って、ようやく傾斜が緩まる。杉林の中を適当に下ると、兄倉山の北面を巻く林道に降り着く。あとは林道を辿ってほたる山公園に戻ると、管理棟の前に出る。


北へ支尾根を下る


北面の林道に降り着く


ほたる山公園に戻る


ほたる山公園から兄倉山を振り返る

昼食は下仁田市街でとることにして、車で移動。仲町の無料駐車場に車を置く。「まちなか体験Map(PDF)」で目星をつけた食亭エイトという店に入る。ここで私はジオパークに因んだメニューのジオ丼を注文。カリッと焼いてご飯の上に敷き詰めた豚肉が美味しかった。昼食後、紙屋という菓子店でジオどら焼きを買い求める。クリッペに因んで、栗が入っているらしい(^^)。そのあと、諏訪神社に立ち寄る。社殿の彫り物が素晴らしい。

雨がポツポツ落ちているが、まだ午後の早い時間帯なのでもう一山、兄倉山の東隣に岩峰を連ねる冨士山(別名、藤山、ふじ山とも)に登ることにする。

千沢集落への車道に入り、左手に神社を見て、その先で左に分れる狭い道に入る。民家を過ぎると急な作業道となるが、すぐに登山口に着く。車1、2台がなんとか置けるスペースがある。

雲が厚くなって薄暗いが、雨は落ちて来ないようだ。「冨士山登山口」の道標を見て山道に入り、急な支尾根を登る。意外とはっきりした道が続いている。


冨士山登山口


急な支尾根を登る

山道はやがて左に折れて、山腹を水平に横切る。左手には霧に煙る下仁田の市街が眺められる。落ち葉の積もった斜面をトラバースすると、「冨士浅間神社」の額が掛かる鉄製の赤鳥居に着く。


急な山腹を左へトラバース


冨士浅間神社の赤鳥居

鳥居の後ろの急斜面をジグザグに登ると、冨士山の頂上に着く。頂上は小広い平地で、石灯籠と冨士浅間神社の石祠が祀られている。また、頂上の隅には「冨士山山頂 標高453m」という山名標が掲げられている。冬枯れの木立の間を透かすと、南東の555m三角点に向かって鋸状の稜線が続いているのが見える。これは興味を惹かれるが、縦走はかなり難しそう。なお、新ハイの記事では、555m三角点を富士山(藤山、ふじ山)としている。


冨士山頂上


冨士山頂上の石祠と石灯籠
後方は555m三角点への稜線

登り僅か20分のちっちゃい山だが、登路はなかなか急、頂上は四方が切れ落ちて、西上州らしい面白い山だ。立ち休みで写真を撮ったのち、往路を戻った。