金剛萱

天気:
メンバー:M,K,T
行程:駐車地 10:50 …林道終点 11:40 …金剛萱(788m) 12:15〜13:10 …作業小屋 13:30 …駐車地 14:35
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

下仁田町の南部に、金剛萱(こんごうのかや)というちょっと変わった名の里山がある。「萱」で終わる山名は珍しく、全国でも例がないのではないかと思う。群馬300山の紹介記事やネット上の山行記録によると、頂上付近には多数の石祠や石像があるといい、以前から興味を持っていた。今回、KさんとMさんに同行頂いて登って来ました。

桐生を車で発ち、上信越道を下仁田ICで降りて、小沢岳の鋭鋒を眺めながら青倉川沿いの車道を走る。鹿の湯橋を渡って分岐する細い林道を上がると、大口径のポリエチレン管が放置された駐車スペースに着く。車が2台あるのは、狩猟と作業関係のようだ。林道は先に延びているが、歩く距離が短くなり過ぎるのでここに車を置いて歩き始める。結果的にはすぐ先で伐採作業中で、ショベルカーと伐採された杉が道を塞いでいたので、いずれにしても車は通れなかった。作業員の方に声を掛けて、ショベルカーの脇を通して貰う。

鹿の湯橋から入った
林道の駐車地
林道を登る

杉林に覆われた緩い斜面を林道に沿ってジグザグに登って行く。地形図では、金剛萱の西尾根に破線路が描かれている。この尾根に突き当たると、実際に尾根上に山道がある。下にはずっと続いているようで、昔の参道かも知れない。上へ辿ると、すぐに林道に再合流する。ウロノ平と書いた林業用の標識が立っていた。林道を辿ると終点となり、落ち葉がふかふかの山腹を斜めに登って、雑木林の尾根に上がった。

「ウロノ平社営林」の標識
明るい雑木林の尾根を登る

冬枯れの雑木林の中は明るく、尾根上には踏み跡があって快適に登る。右から西尾根を合わせて登ると、急坂の途中に石像があった。頭襟(ときん)をかぶり、右手に錫杖を持ち、高下駄を履いた山伏姿で、誰かが脇の木につけたプレートには普寛像と記してある。

さらに登ると、今度は石像と石碑、倒れた石祠がある。石像は同じく山伏の装束だが、長い顎髭を蓄え、目を見開いた異形な仙人の像だ。台座には「神變大菩薩」と刻まれている。神変大菩薩(じんべんだいぼさつ)とは、役行者(役小角ともいう)の別名だそうだ。脇の石碑には「三寳大荒神」と刻まれていた。

普寛像
文久四甲子年(1864)
神変大菩薩
慶應二丙寅年(1866)

神変大菩薩像の上には不動明王像がある。次々に石像が現われて、一同大喜び。この不動明王には特に年号が刻まれていないが、先の二つの像と同じ時期の物では、とはKさんの推測。さらに石祠をいくつか見て登ると、程なく金剛萱の頂上に到着した。

不動明王
金剛萱頂上

頂上は思ったより狭く、そこに石像と石祠6基が所狭しと祀られている。一番大きな像は御嶽山座王大権現で、台座には山二つ丸に三本線のマークが刻まれている。これは御嶽神社の神紋だそうだ。その他に石像が二体あるが、これは何だろう(2012-04-23追記:偏平足さんの記事「石仏376金剛萱(群馬)」によると金剛界大日如来だそうです)

御嶽山座王大権現
台座に御嶽神社の神紋
頂上の石像二体

頂上は雑木林に囲まれているが、南側は急崖で展望が開け、杖植峠から日向山、小沢岳にかけての眺めが良い。眼下の谷間には山村が点在し、西上州らしい長閑な風景だ。

シーツを広げて腰を下ろし、まずは缶ビールで軽く乾杯。雑木林に遮られて風が当たらず、日溜まりになっているので、暖かくて寛げる。いろいろな物(主にKさんの差し入れ)を食べて、持参のラーメンを食べる前にお腹いっぱいとなる。

金剛萱頂上から杖植峠〜日向山
金剛萱頂上から小沢岳

下山は稜線を東に下る。短い距離だが、急な痩せ尾根に枯れ葉が積もって滑り易い。鞍部に下り着くと、左折を指示するプレートが木に掛かっている。斜面を左(北側)に急降下して、すぐ下の平地に着く。樹林に覆われ、薄暗くて寒い。あとは急な個所はない。

東へ急な稜線を下る
鞍部から枯れ葉の斜面を下る

杉林の中の作業道を辿ると、作業小屋の脇を抜けて開けた平地に出る。正面にまだらに冠雪した浅間山を遠望する。ここは蒟蒻畑のようだ。電気柵が巡らされているが、中は枯れ草の原になっている。今も耕作されているのかな?

蒟蒻畑から浅間山を遠望
作業道を下る

蒟蒻畑を過ぎ、林道を下る。駐車地に戻るには、登りの林道に移らないといけないのだが、そちらに行く林道はないみたいだ。途中から左折して、杉林の中の踏み跡を適当に下る。うーむ、これぞ西上州の里山歩きだね(^^;)。

妙義山(奥)と大桁山(右)の眺め
道が怪しい

最後は妙に地面がスベスベな踏み跡(猪が通った跡?)を辿って、山麓の集落に出た。鹿の湯橋のひとつ下流側の橋の近くに降りたようだ。民家の間を抜け、青倉川沿いの車道を歩いて鹿の湯橋に戻る。そこから車を置いた駐車地までは、いくらの距離もなかった。

民家の前の礼拝堂?(撮影:Kさん)
山麓の青倉川から仰ぐ金剛萱

帰りの途中で下仁田町自然史館に立ち寄る。これは下仁田町が世界ジオパークへの加盟を目指すに当たって、旧青倉小学校に仮オープンした展示館だ。まだ仮なので、展示室は小学校の教室、展示物もこれから充実というところだが、説明頂いた若い方が下仁田の地質について大変博学で、下仁田町を東西に貫く中央構造線、跡倉クリッペ、金剛萱の下仁田ローム層など、下仁田の地質が如何に特殊で興味深いか、判り易く説明頂いた。ここはお勧め。地質の知識も仕入れてこの辺りの山を登ると、また興味が増しそうだ。