五頭山〜菱ヶ岳
(前日の焼峰山の山行記録からの続きです。)
テントに枕や毛布を持ち込んだおかげでぐっすり眠れて、すっきり目覚める。今日も天気は良さそう。パンとコーヒーで簡単に朝食を済ませてテントを撤収し、奥村杉キャンプ場のすぐ上の菱ヶ岳入口の駐車場に、車で移動する。
この駐車場は3段に造成された広いもので、「五頭連峰山岳観光マップ」によると、160台収容となっている。元々は、この奥の五頭高原スキー場(十数年前に廃業)の駐車場だったらしい。早朝で駐車は少ないが、出発準備の間に何台かやって来て、ハイカーさんが菱ヶ岳に向かって行った。今日はここを起点にして、五頭山から菱ヶ岳へ周回する予定だ。
車道を上流に向かって暫く歩くと、かつてのスキー場のベースに着く。リフト乗り場やスキー学校の建物が、藪の中に侘しく残っている。ここが今回の登路のスキー場コースの入口だが、少し先のどんぐりの森キャンプ場に立ち寄ってみる。
車止めから橋を渡ってキャンプ場まで、100mほどの距離だ。尾根の末端の台地にテントサイトがあり、雑木林の中だが意外と明るい。WCはポットン式だが、山屋さんにとってはWCがあるだけで感謝、無問題だろう。こちらもなかなか良いキャンプ場だ。三ノ峰コースの登山口もある。水場で2ℓポリタンを満タンにして、スキー場コース入口に戻る。
スキー場コースに入ると、すぐに樹林の中の登りとなる。ところどころの木の間から、新緑の渓谷と残雪をちりばめた菱ヶ岳を望むことができる。谷から吹き上げる風が爽やかで気持ち良い。のんびり、ゆっくり歩く。
扇山キャンプ場分岐の道標を過ぎ、尾根の上に登り着くと、リフト降車場がある。新潟平野を俯瞰する展望の場所で、かつてはスキーヤーが山麓を目がけて滑って行ったんだろうなあ、と往時を想像する。
ここからの尾根は広く緩やかで、小さな登降を繰り返しながら徐々に高度を上げて行く。樹林は低くなり、笹も現われて、ちょっと暑い。
やがて六合目で、出湯温泉からのコースを合わせる。ピークを巻いて山腹を登ると、ブナ林に残雪が残る七合目だ。昨日は五頭山の山開きだったので、大勢の人がここを歩いたらしく、残雪の上には一本の道がついている。
七合目からは傾斜が増して、雨水で抉れた掘割道を登る。雪が溶けて泥濘だ。新潟の岳人が長靴を愛用するのも良くわかる(^^;)。少年自然の家からのコースを合わせ、残雪を踏んで登って行くと九合目。最後に雪の急坂を登ると、五ノ峰の頂上に着いた。
頂上は広く開けて賽の河原のように露岩が点在し、360度の展望が得られる。黄砂のため遠望は霞んで、新潟平野の向こうにあるはずの日本海までは見えない。雪に覆われた菱ヶ岳が意外と遠い。赤頭巾を被せられたお地蔵さんに手を合わせ、「友情の鐘」を一回鳴らす。吹きさらしでさすがに寒い。風を避けて、岩陰で一休みする。
五ノ峰からはカウントダウンしていって、四、三、二、一ノ峰を順に踏む。べったり雪が残り、照り返しが眩しい。今、かけている眼鏡もUVカットだから雪目にはならないだろうが。サングラスにして来るんだった。
小さく降りて登り返すと四ノ峰。ここにも赤い前掛けをした石像(なんだろう?)が祀られている。
三ノ峰には不動明王が祀られている。三ノ峰コースから、三々五々ハイカーさんが上がって来て、賑やかになる。頂上の一角には、かまぼこ型の避難小屋がある。中は綺麗な板敷きで、4〜5人は快適に泊まれそうだ。
二ノ峰を越えると、一ノ峰との間の小ピークに五頭龍神碑と石像が建つ。ここも露岩のある広場となっていて、休憩適地。ハイカーさんがお弁当を広げていた。私も小腹が減ったので、ビスケットを齧って水を飲む。
龍神碑からひと登りで一ノ峰だ、短い笹に覆われた頂上から、菱ヶ岳へ連なる山並みが一望できる。次のピーク(三叉路)で五頭連峰の主稜線に接続する。まず、主稜線を北に辿り、五頭山の最高点を踏む。ベニヤ板の山名標がブナの幹に架けられているだけで、他には何もない。三角点が設置されているはずだが、標石は今は厚い雪の下だ。
三叉路に戻り、菱ヶ岳に向かって縦走を開始する。残雪が途切れた稜線を下ると、笹原に切り開かれた脇道があり、龍神清水の道標がある。水場までは遠そうなので、立ち寄らずに進む。菱ヶ岳方向から歩いて来た単独行の若い人とすれ違う。以降、大勢のハイカーさんと交差する。菱ヶ岳から五頭山へ縦走する方が、下りが多いので、メジャーなようだ。
再び雪が現われると、主稜線にはずっと雪が残る。阿賀町側の山麓を見おろすと、谷底には大きな雪渓が残っている。途中の中ノ岳で一休みし、クッキーを食べる。遥か遠くに見えた菱ヶ岳にいつの間にか近づいていて、頂上付近の稜線を歩いている人も見える。
少し急な斜面を登ると、与平の頭の標識のあるピークに着く。ここまで来れば、あとは大きな登りはない。菱ヶ岳に向かうと雪の段差があり、女性2人組が歓声を上げながらシリセードで下っている。楽しそうですね(^^)
五頭連峰の最高地点を越え、それより僅かに低い菱ヶ岳の頂上に到着した。5人程のハイカーさんが休憩している。頂上は小広く、360度近い展望が得られる。風を避けて残雪の上に腰を下ろし、五頭連峰南部の山々や、阿賀町側の緑に覆われた山麓を眺めながら、お湯を沸かしてラーメンで昼食とする。
のんびりしているうちにハイカーさんは出発して、頂上には私一人となった。そろそろ下山にかかるとしよう。新潟平野を見おろしながら、雪の稜線を下る。これは楽で爽快だあ。若葉が芽吹き始めたブナ林に入り、断続する残雪を拾って歩く。
やがて雪はなくなり、「碑佐藤敏子」と刻まれた遭難慰霊碑のある小ピークに着く。ここから樹林帯の踏み跡を急降下すると、降りた場所には「杉端↑残雪期は冬道」というベニヤ板の標識がある。一方、小ピークを巻く道の入口には「残雪期通れません」という標識が掛かる。少し進むと見晴しの良い小ピークがあり、振り返ると明るい新緑の中に黒々とした鋭峰(杉端。杉鼻とも)が盛り上がっているのが見える。菱ヶ岳はその後方で、もうずいぶん下って来た。
下山ルートで急なのはここくらいで、あとは新緑のブナ林に覆われた尾根を緩く下る。初夏のような陽気で暑い。山歿霊供養塔の石碑のある菱見平で、水を飲んで一休みする。
この少し先で村杉温泉へ向かう尾根道と分れて、谷に向かってジグザグに下る。木の間から五つのピークを連ねた五頭山を仰ぐ。中腹まで新緑が駆け上がっていて、白い部分は頂上のごく一部。山は一気に夏に向かっているようだ。
菱ヶ岳入口の駐車場に降り着いて、周回コースを無事踏破する。主稜線上は残雪、山麓は初夏という、900m級の低山とは思えない変化に富んだ山行だった。充実した山歩きの締めくくりは♨へ。車で移動して、宝珠温泉あかまつ荘に立ち寄る。2日間の汗をさっぱり流したのち、桐生への長い道のりについた。