丸山〜十二時山〜小夜戸山
渡良瀬川左岸の山稜のうち、未踏の鹿生(かりゅう)峠と小夜戸(さやと)峠の間の稜線を辿ることを目的として、山歩きは二か月振りのKさん、残雪の山が2週続いたのでたまには里山もいいかと言うMさんに同行頂いて歩いて来ました。
Mさんと私の車に分乗して桐生を出発し、大間々から小平川に沿って山深い上流域に向かう。途中、小平の大杉で青面金剛を見たり、かつては参詣を集めたそうだが今はすっかり寂れている岩穴観音に立ち寄ったのち、下山予定地の小友の落合橋の近くにMさんの車をデポする。
桐生市街ではとうに散ってしまったサクラだが、山間のここではちょうど満開だ。道端には鹿生峠と像容が良く似た馬頭観音や、「右山道、左さやと」と刻んだ石の道標など、これから巡る2つの峠にゆかりの物がある。
もう1台の車に乗り合わせ、林道小平座間線をつづら折れに登って、丸山の肩の林道最高点まで上がる。この林道は舗装されているが落石が多く、運転注意。最高点からは草木湖や白浜山、男体山の展望が開ける。サイクリングの一団も上がって来ていて、車でも長くてちょっと嫌になる林道だが、その筋の人には“楽しいコース”だそうだ(^^;)
駐車地点から微かな踏み跡を辿って急な斜面を登ると、あっと言う間に丸山の頂上に着く。今日の行程はここから十二時山、鹿生峠、小夜戸山、小夜戸峠を経由して小友までほぼ下り一方という超お気楽コースだ。
丸山から林道に戻り、十二時山への稜線に入る。こちらにははっきりした踏み跡がある。緩い稜線を辿ると、僅かな距離で十二時山の頂上に着く。雑木林に囲まれて、丸山の頂上よりはずっと雰囲気が良い。林の切れた個所から、山麓の神戸(ごうど)辺りの集落や草木湖、袈裟丸山から男体山にかけての展望が得られる。
十二時山から西へ、雑木林の稜線を緩く下って鹿生峠に向かう。前回、同時期にこの稜線を歩いた時(山行記録)はアカヤシオが咲いていたので、今回も期待していたら、果たして咲き始めていた。ただし、今年は春先も寒い日が続いたせいか、まだ2分咲き程度。
途中、峠道のような切り通しがあり、はっきりした道型が稜線を絡んで続いているが、地図で見ると地下に導水管が通じ、その関係の通路らしい。次の急な小ピークは左山腹の明瞭な道型で巻く。左側はまだ若い杉の植林帯となり、これから辿る稜線や赤城山が望める。アンテナの立つピークで左に折れ、杉林と雑木林の境界を下って、馬頭観音が祀られる鹿生峠に到着した。
馬頭観音の台座には「施主大沢中居野?生助力狸原」と刻まれている。このうち、大沢は北麓、狸原(たぬきわら)は南麓にその名の集落がある。この石像は、群馬300山には毘沙門天と記述され、現地の脇の木の幹にもそう書いた小型名板がネジ止めされているが、これは誤りなので撤去させてもらった。
峠の陽当たりが良い小平地は、休憩にうってつけ。時間は少し早いが、ここでビール&昼食とする。前回はここから峠道を北側に下った。出だしは相変わらずはっきりとした道型が残っているが、その先は廃道化している。一方、南側は伐採跡地の谷間を藪が埋めており、改めて探しても峠道の痕跡はなさそうだ。
鹿生峠からさらに稜線を西へ進む。ここからが未踏の区間になる。今回のコース唯一の急登で865m標高点を越え、明るい雑木林の稜線をゆるゆると下る。標高が下がったこのあたりのアカヤシオは、ちょうど満開だ。なかなか良い場所だなあ。
稜線の左側は浅く緩い谷で、園地のような佇まいが好ましい。ピークとまで言えない小さな高みに登ると、そこが小夜戸山の頂上だった。日溜まりに乾いた落ち葉が散り敷いて、昼寝にもってこいの頂きだが、真ん中をTVの共同アンテナが占領しているのは頂けない。
小夜戸山から西に下って小夜戸に至る峠道にも興味津々だが、今日は車をデポした小友に戻る。南の尾根を下って小さな岩稜を通過し、峠道にしては急な坂を下って小夜戸峠に着く。切り通しらしい窪みがあり、もしかしたら峠道は小夜戸山を巻いていたのかも。
小夜戸峠から小友への下り始めは杉の植林で、峠道の痕跡は全くない。すぐに作業道に出てしばらく下ると、「右山道、左小夜戸道」(道の字は共通)と刻んだ道標があるから、ここが峠道だったことは確かだ。傍らには百番供養塔と猿田彦大神の石碑も祀られ、2本の杉の大木に守られて神さびた雰囲気がある。
あとは谷間の林道をてくてく下る。春らしく、足元にはネコノメソウやミヤマカタバミ、ニリンソウなどが咲いている。数軒の民家を過ぎ、道端のエイザンスミレの群落を見ながら簡易舗装の急坂を下ると、落合橋はすぐだ。
後はデポした車に乗って林道最高点に置いた車を回収の手筈が、ここで問題発覚!デポ車のキーを上の車の中に置き忘れ(^^;)。林道を歩いて登ると2時間はかかる。携帯も圏外なので、民家の方に事情を縷々説明して電話を拝借し、Mさんの奥さんにSOS。小一時間かかって自家用車で救援に来て頂き、無事に上の車を回収、帰宅の途についた。