鳴神山〜十二時山
この週末の山行は、アカヤシオを愛でる→♨に浸かる→風呂上がりにビール、というコンセプトで立案。駒形からアカヤシオが見頃の鳴神山に登り、最近、オッサンの山旅ややまの町桐生で紹介されていた丸山、十二時山へ縦走して、わたらせ渓谷鐵道沿線に下山し、水沼温泉に立ち寄るという計画で歩いて来ました。
桐生駅北口7:20発吹上行きのおりひめバスに乗車して、終点で下車する。乗客は最初から最後まで私一人だった。バス停から新緑に囲まれた谷川沿いの車道を20分程歩くと、登山口の広土橋に着く。アカヤシオの時期には、ここのずっと手前から駐車の列が続くが、今日は朝早いので、まだ車はそう多くない。
広土橋から沢沿いのハイキングコースを歩く。この一週間は雨の日が多かったので、沢の水は多い。登山道の上を水が流れているところもある。途中にある小さなゴルジュでは、周囲の高い岩場にアカヤシオのピンクの花をぽつぽつと見る。これは頂上のアカヤシオも期待できそう。
沢沿いの道ではニリンソウの群落が花盛りだ。急な斜面を足元のカタクリ(これはもう終盤)やハルトラノオを見ながら登り詰めると、肩の広場に出る。鳥居の前の小屋は、2年前に来たときは健在だったが、ペシャンコに崩壊していた。
まず、桐生岳に登る。頂上のアカヤシオは丁度見頃だ。蕾もかなりあるから、八分咲きというところかな。袈裟丸山を遠景にした定番の構図でアカヤシオの写真を撮る。今日は曇っていて、遠くの高峰の頂は雲の中だが、武尊山の中腹には雪が豊富に残っていて、白く輝いているのが目を引く。北にはこれから辿る稜線と丸山付近のピークが見えている。頂上には既に10人くらいのハイカーさんがいて、早めのランチを楽しんでいるグループもある。その後も続々とハイカーさんが到着するので、仁田山岳に移動する。
アカヤシオは仁田山岳の方が多い。頂上の北にある眺望の岩で、桐生市街から赤城山にかけての展望を楽しむ。赤城山の頂上を重たそうな雲が覆っているのが気になる。団体さんが登って来たので、場所を譲る。
仁田山岳から北へ下る。ここのアカヤシオはまだ蕾のものが多い。満開になったら奇麗だろうな。途中で4人組ハイカーさん1グループとすれ違い、大きく下って小さな石祠のある椚田(裏の肩)に着く。
ここから973m峰(子繫山)へ、まだ冬枯れで寂しい感じの尾根を登り返す。深緑のプレートに「座間峠⇔鳴神山」と白字で書かれた道標(このあとにも何枚かある)を見ると急な登りは終わり。露岩のある尾根には再びアカヤシオが咲いていて、風景の色彩に賑わいが戻る。973m峰には山名標も何もないが、南東方向に安蘇の折り重なるような山並みが眺められる。
973m峰からいくつかピークを越えて北に向かう。林間にササ原が現れると小平雨量観測所の塔がある。この先は尾根の左が雑木林、右側が間伐作業中の杉林で、切られた木が尾根道を塞ぐ個所もあってちょっと殺風景。
緩く登ると「鍋足沢の頭 1059m」という古ぼけた山名標があり、その右手の小さな高みが頂上になる。山名標がなければ気づかずに通り過ぎてしまいそうなピークだ。座間峠への縦走路は山名標の左に進み、無惨に破壊された道標で右に折れて急な山腹を下る。今日はそちらではなく、稜線をそのまま直進する。
灌木の小枝が少しうるさいが、はっきりした踏み跡を辿ると大きなアカマツと二つの石祠のあるピークに着く。石祠の屋根の前面には朱の字で「赤城山」と彫り込まれているが、樹林に覆われて赤城山は見えない。緩く下ると右手の山腹に立派に舗装された林道が上がって来ているのに気づく。杉林の尾根をひと登りした所が丸山の頂上だ。
ここに登ったのは2回目。1996年5月に座間峠から鳴神山へ縦走した途中で、丸山という山名は知らずに立ち寄ったとき以来だ。当時はカラマツとアカマツの林が伐採されていて、日光浴をしながら昼食をとったのだが、10年余の間に植林がすっかり育って、日当りは良くない(今日は曇りというせいもあるが)。丸山の三角点は、「建設省国土地理院 / たいせつしましょう三角点」という白木の標柱と共に、切られた木の枝葉に埋もれていた。
丸山の頂上から北西に尾根を辿ると、林道の高い切り通しの上に出て下れなかった。頂上に戻り、進路を少し左に振って林道に降りる。林道が尾根を越える所に十二時山への踏み跡の入り口がある。林道をさらに進んだ地点からは草木湖の眺めが良い。
尾根上の踏み跡に入ると、十二時山の頂上へは僅かな距離だ。雑木林に囲まれているが、明るくて好ましい感じ。ここで昼食にする。缶ビールを飲んで餅入りもつ煮を食べていると、時刻も丁度十二時となり、山麓から風に乗って正午を告げるメロディが聞こえて来た。
当初の計画では、ここから稜線を西へずっと辿って、中野駅に降りる予定だ。中野駅発の列車は14:40発の次が16時台なので、14:40発に間に合わせたい。あと2時間ちょっとあるので、十分行けるだろう。食事を終えて、稜線を西に進む。雑木林の尾根で、木の間から渡良瀬川沿いの神戸あたりの集落が見おろせる。所々にはアカヤシオも咲いていて、気分の良い尾根歩きだ。
左手が伐採地となり眺めが開けると、共同テレビアンテナのあるピークに着く。ここで左に折れて若い植林帯の尾根を下ると鹿生(かりゅう)峠だ。ここにはちょっと恐ろしげな表情をした三面の石像があり、傍らの木に「毘沙門天」と書かれた白と青の小さなプレートがねじ止めされていた。(2009-05-21追記:hisiyamaさんから、毘沙門天ではなく馬頭観音であるとのご指摘を頂きました。右下の写真のキャプションを訂正しました。)
こんな立派な石像が祀られているということは、かつては往来が繁くあったのだろう。現在も地形図には峠を越える破線が描かれているが、南の小平に降りる谷は広範に伐採されたあとに藪が繁茂して、道は全く見当たらない。しかし、北の鹿生へは明瞭な道型がジグザグに下っている。これを見たら、辿ってみたくなった。計画を変更して、峠道を鹿生へ下ることにする。
この道は歩く人もいないようで、崩れた岩が散乱して荒れているが、最初の内は急斜面に丁寧にジグザグが切られていて、問題なく歩ける。しかし、下るにつれて崩壊が激しくなり、とうとう道型も消えて、ガレた急斜面を下る。滑落に注意して降りると、ようやく傾斜が緩くなり、杉林に入る。沢沿いの作業道を拾って歩き、未舗装の林道を横切ってさらに杉林の中を下ると小夜戸と鹿生を結ぶ車道に出た。やれやれ、最後はとんだバリエーションルートを歩いてしまった(面白かったけど)。この道は完全に廃道なので、もしも歩こうとする場合には注意して下さい。
ここからは中野駅より小中駅の方が近いので、そちらに向かう。小中川の奥に袈裟丸山を眺めながら車道を歩き、送電線の下を通過して左の枝道に入ると、渡良瀬川に架かる吊り橋(下松島橋)がある。この辺りの山間の長閑な風景には和んだ。橋を渡ると無人の小中駅はすぐで、予定の列車にちょうど良い時刻に到着した。
小中駅14:36発の列車に乗ると、2両編成の車両は観光客で賑わっていた。水沼駅で下車して、温泉センターへゴー。風呂でさっぱりしたあと、休憩所でタラノメとウドの天ぷらをつまみに生ビールを飲む。うーむ、うまい。1杯では足りんな(^^;)
ちなみに休憩所のカラオケは廃止されていた。以前は近在のじっちゃんばっちゃんで賑わっていたものだが、人も少なくなったようだ。静かなのはいいけど、少し寂しいかも。一品物のつまみも種類が減っていた。のんびり過ごしたのち、次の16:26発の列車で桐生に帰った。