大畑山

天気:
メンバー:K,M,T
行程:駐車地点 9:10 …愛宕社 9:25 …主稜線 10:20 …大畑山(754m) 11:05〜11:25 …789m峰 11:55〜12:45 …下降点 13:15 …林道終点 13:55 …駐車地点 14:20
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

先日、図書館で『勢多郡東村誌』を手に取る機会があり、その中でたまたま次の記事を見つけて読んだ(通史編342頁より引用)。

…小夜戸の大畑には、通称二百段と称するところがある。集落内にはり出した山の尾根の突端に愛宕社ほかの石祠があり、そこに直登するように非常にたくさんの石段が設けられてある。二百段の名称もそれに由っているのであろう。ところで、その石段の両側には、ぎっしりと多くの庚申塔が建てられてある。

こ、これは面白そうだ。とても気になる。ついでに、二百段のある尾根をそのまま上がって大畑山に登り、未踏の大畑山〜小夜戸(さやど)峠間の稜線を繫いで歩けば、さらに面白そうだ。ネットで調べると、オッサンの山旅にほとんど同じコースを歩いた「大畑山」の山旅記録があり、大変参考になる。日曜日は台風通過の余波で、なんとか降られずに済むかも、というイマイチな天気予報が出ている。遠出には向かないので、近場の気になるスポットを訪れるには良い機会だろう。Kさん、Mさんに同行頂いて歩いて来ました。

桐生を車で発ち、R122を花輪交差点まで走って右折。東瀬橋で渡良瀬川を渡って、小夜戸大畑地区に向かう。大畑は、山裾に民家が散在する閑静な集落だ。茂木(もてぎ)沢に架かる小橋を過ぎた辺りで、道幅が広くなった所の路側に車を置く。準備を整えて出発する。

小橋の袂から分岐する車道に入り、沢沿いの茂木峠道(地形図上の破線)を右に見送る。そのすぐ先の民家の角を右に入った所が二百段の入口だ。まだ冬枯れには時期が早く、入口は青々とした草藪に覆われている。苔むした地蔵が数体と石祠、大きな庚申塔がある。石祠の正面には「大日」と刻まれ、中には石像が鎮座ましましているが、外からは印を結んだ手しか見えない。


茂木沢に架かる小橋


二百段の入口


苔むした地蔵


大日如来の石祠と庚申塔

草藪を抜けて裏手の杉林に入ると、急斜面に幅40cmくらいの狭い石段が付けられていて、一直線に上に延びている。石段は傾き、土砂が被さって、登るのが難しい。もう、参拝されなくなってずいぶんと経つようだ。しかし、階段の脇には多数の倒れた庚申塔があり、かつては信仰が盛んだった様子が偲ばれる。石段を上がるにつれて高度感も出て来て怖くなったので、最後は道脇の木立の中に逃げて登る。


二百段の石段


石段の脇の倒れた庚申塔

二百段を登りきった場所は、杉の植林に囲まれた薄暗い尾根上の小平地となっていて、一本の檜の大木の下に庚申塔が建ち、その奥に3基の石祠がバラバラに祀られている。一番大きな石祠は倒木に当たって壊れたらしく、台座の前にお宮の本体が転がり落ちている。その側面は魚を抱えた猿?の浮き彫りで飾られ、絵柄が珍しい。台座には「文政八酉年南呂吉日」と刻まれている。後日調べると、文政八年は1825年、南呂(なんりょ)は陰暦8月のことだそうだ。


愛宕社


魚を抱えた猿?

石祠の裏手の藪を潜り抜け、檜や赤松に覆われた尾根を辿る。結構な急斜面の檜林を登ると、尾根の右側は幼い植林帯になって、背後の眺めが開ける。この辺りで一休み。渡良瀬川を隔てて花輪の集落や五覧田城址、その後ろには栗生山の意外と鋭い頂きが雲を纏って眺められる。天気が良ければ赤城山も視界に入るという話だが、今日は生憎、雲の中だ。


二百段から続く尾根を登る


大畑山付近を見上げる


570m標高点付近の展望


五覧田城址(左)と栗生山を望む

570m標高点付近が最も展望が開ける。そこを過ぎると、樹林に覆われた急な痩せ尾根になる。最後は相当な急傾斜になり、立ち木に縋ってずり上がると、大畑山と小夜戸峠を結ぶ主稜線に登り着いた。


痩せて急な尾根を登る


主稜線を大畑山に向かう

主稜線は雑木林に覆われているが、藪はなくすっきりとしている。歩く人もいるようで、微かな踏み跡が続いている。まずは大畑山に向かう。数回の緩いアップダウンを経て、大畑山の頂上に着いた。

大畑山に登るのは、私はこれが2回目だ(前回の山行記録)。相変わらず頂上の真ん中をマスプロ・アンテナが占拠していて、如何にも生活圏内の里山という雰囲気を醸し出している。前回は完全に草枯れの時期で、明るさが少しあったが、今回は草が生い茂り、木の間越しの僅かな展望も木の葉で遮られている。2枚の山名標の他、R.K標高プレートがあるのはさすがR.K氏。

あまりパッとしない頂上だが、何はともあれ、三角点脇の草地に腰を下ろして、おやつ休憩とする。Kさん差し入れの柿が、乾いた喉を潤して美味しい。


大畑山頂上


山名標は新しくなっていた

大畑山から稜線を引き返し、小夜戸峠に向かう。頂上から僅かに東に進んだ地点に稜線を南北に乗り越す道型があり、ここが茂木峠らしい。数分先の稜線には、行きには気がつかなかった石祠がある。しかし峠からはちょっと距離があるので、多分、峠道とは関わりがなく、山仕事の祭神ではないかと思う。


茂木峠道?(花輪側)


茂木峠近くの石祠

少し黄色に色づいた自然林の稜線を辿る。この辺りの稜線歩きは、なかなか風情がある。Mさんによると、この山域で最初に出たガイド本『渡良瀬源流の山々』にも大畑山からこの稜線を歩くコースが紹介されていたそうだ。この稜線の雰囲気の良さが、ガイドに取り上げられた理由かな、とちょっと思った。

途中の789m峰でちょうど良い時間となったので、昼食にする。曇り空の下だが、まずはビール。その後、おにぎりやゆで卵、お湯を沸かして作った春雨スープ(意外と腹に溜まる)を食べる。


主稜線を小夜戸峠へ向かう


789m峰付近

789m峰から、さらに稜線を北東に辿る。次の786m峰は左の山腹にはっきりとした巻き道があり、これを辿る。稜線に戻って鞍部に降りると、稜線を横切るしっかりとした踏み跡がある。地形図上の小夜戸峠道の破線はもう一つピークを越えた鞍部を通るので、それとは別の道だ。しかし、天気がそろそろ怪しく、雨が落ちて来そうなので、稜線歩きはここで終了して、この踏み跡を小夜戸側へ下ることにする。鞍部の直下まで林道が延びているので、そこに降りられるはずだ。

下り始めは明瞭な山道で、山腹を斜め右に下る。檜林に入っても道型が続くが、谷からの土砂の押し出しを横切る辺りから様子がおかしくなり、さらに山腹を巻いて小尾根を回り込んだところで、植林帯に突き当たって道は消えてしまった。うーん、最初はとても良い道だったのになあ。まあ、里山歩きでは良くあることではある。


下降点


最初は明瞭な山道だったが…

もう林道終点が近いはずなので、傾斜の緩い場所を選んで谷の押し出し近くまで戻り、そこから谷へ下降する。足元にゴロゴロと散乱する苔むした石に注意し、藪を搔き分けて下る。しかし、それも僅かな間で、すぐに林道終点に出た。これで一安心だ。


そのうち道は消えて、谷を下る


林道終点に降り着く

後は林道をてくてく下る。雨が一時的にぽつぽつ降ったが、雨具を出すまでには至らない。やがて林道は谷から離れてジグザグに下り、山麓の舗装道に出た。左に僅かに進めば二百段入口で、無事に周回コースを歩くことができた。


林道から舗装道に出る


馬頭観音と庚申塔

帰りは山麓を車で軽く巡って、面白い物がないか探索する。立派な庚申塔を見たり、ドコモの巨大なパラボナアンテナに驚いたのち、ひと風呂浴びに水沼温泉センターに立ち寄る。お客さんが結構多く、ツアーの団体さんも来たりして繁盛しているのはなにより。ほっこり温まったところで、とっぷり暗くなった帰り道についた。