梅田忠霊塔〜三峰山

天気:のち
メンバー:Mご夫妻、K、T
行程:梅田忠霊塔 9:15 …栗生山(341m) 9:40 …494m峰 10:50 …妙見宮 11:05〜11:20 …三峰宮 11:45〜11:50 …三峰山(697m) 12:00〜13:55 …金沢峠 14:25 …兼宮神社 15:35
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

先月、『野山歩きのヒント』に掲載されている「川内大崩から梅田忠霊塔」のコースの前半を歩き、川内側から三十六童子を経て三峰山に登りました。今回は残りの後半の区間をトレースし、「やまの町桐生」のメンバーと梅田側から三峰山に登って来ました(Kさんによる記事はこちら)。

下山予定地の兼宮(かねのみや)神社脇の広い路側に車を1台置き、もう1台の車で梅田忠霊塔に移動して、高沢川沿いの道路の脇の空き地に駐車する。予報がいい方に外れて、良く晴れた穏やかな天気だ。参道の急な階段を登ると、山の中腹に白亜の忠霊塔が建つ。右隣のレトロな装飾の小屋は納骨堂のようだ。

忠霊塔への階段を登る
忠霊塔

忠霊塔の向かって左側から、けもの道くさい踏み跡を辿って、尾根を登る。冬枯れの季節でないと、藪がちょっと嫌かも。すぐに2基の石祠があり、人の歩く道ではあるようだ。やがて葉の落ちた雑木林の明るい道となり、振り返ると桐生川沿いの集落を見下ろすことができる。晩秋らしい、快適なハイキングだ。急坂を登ると栗生山で、四等三角点の標石がある。一息ついて木の間を透かすと、結構遠くに鳴神山脈の主稜線が見える。

少し藪っぽい尾根を登る
栗生山の四等三角点

栗生山からはヒノキ林と雑木林に挟まれた尾根を辿る。整備された登山道ではないが、藪も薄くなって歩きやすい。紅葉に日差しが当たって、終盤の輝きを見せていた。途中、道に沿って大きな杉が一列に並んでいる場所があり、参道の杉並木のようにも思える。

やがて、『野山歩きのヒント』では刈払地と書かれている場所に出る。現在はヒノキの植林地になっていて休憩にはもう適さないが、まだ植林が育っていないので、三峰山から大形山にかけての主稜線の眺めが良い。

終盤の紅葉
刈払地(現在は植林地)から
三峰山を眺める

再び樹林に入って、眺めのない尾根を緩く登ると、四等三角点が置かれた標高494mの小ピークを通り過ぎる。点名は金沢だが、特に山名はないようで、R.K氏の標高プレートが木の幹に掛けられているだけである(2013-04-16追記:494m三角点峰は筬沢山(おさざわやま)と呼ぶそうである)。赤松が混じる雑木林の尾根が続き、落ち葉をカサコソと踏んで登る。

494m峰(四等三角点、点名:金沢)
明るい雑木林の尾根を登る

露岩のある小ピークに登りつくと、石祠が鎮座ましまして待ち受けていた。小さい割に流造の屋根がぶ厚い立派な祠で、屋根の前面には「妙見宮」、土台には「村内安全」、「文政十二…十月吉日」と彫り込まれている(文政十二年=1829年)。また、祠の左右の側面には亀と蛇の浮き彫りがそれぞれ施されている。合わせて玄武(北の守り神)を表し、また、妙見とは北極星を信奉する信仰だそうだ。あまり見たことのないタイプの石祠で、面白い。一同、大変興味を持って、じっくり調査する。

妙見宮
側面に亀の浮き彫りが見える
反対側の側面の蛇の浮き彫り

妙見宮を過ぎて右側に伐採地を見ると痩せ尾根となり、小さな岩場を越えると、次の石祠が現れる。屋根の前面には「三峰山」、土台には「眷属守護」と彫り込まれており、秩父三峰山から分地された三峰山信仰の奥の院にあたる祠だ。奥の院からは短いがかなりの急坂となり、息を切らせて登りきると三峰山頂上に飛び出た。

三峰宮
三峰山頂上へ最後の急登

先月訪れた時と比べると、山頂周囲の樹木はすっかり葉を落として、晩秋の様相だ。Mさんは頂上の石像を熱心に調べている。この像は大山祇神(おおやまづみのかみ)とも言われているが、Mさんは御嶽山座王大権現ではないかと言う(やまの町桐生の三峰山の記事を参照)。三峰山は鳴神山〜吾妻山縦走路上の目立たないピークだが、実は御嶽山信仰、秩父三峰山信仰、妙見信仰など、いろいろな信仰が集合している興味深い山だ。

頂上で昼食をとったのち、三十六童子の下端の石像まで再び見に行く。Mさんによると右下の写真の像が三笠山大神で、この下の岩場にある八海山大神と、三峰山頂上の座王権現がトリオを組んでいるそうな。石像・石祠の類はどれもこれも古く見えるが、三十六童子のひとつの金剛童子の石塔には「安政三丙辰」(1856年)と彫り込まれているから、妙見宮より約30年新しい。この間に三峰山にいろいろな信仰が集まってきた社会的な背景にも興味が湧く。

三峰山頂上
石祠と石像がある
三十六童子下端の石像
(三笠山刀利天宮?)

三峰山頂上に引き返し、金沢峠に向かう。途中、縦走路から寄り道して、枝尾根上のピークに立ち寄る。何か宗教モニュメントがあるかもと期待したが、雑木林に囲まれた静かな頂きがあるだけだった。

金沢峠からは梅田側に下る。鏡石を再び見るが、だんだん曇って来て、日の光の反射は見えない。杉林の中をジグザグに下るとすぐにコンクリート舗装の林道に出て、かなりの急勾配で一直線に下って行く。杉林に囲まれた味気ない道なので、ここは登路にしない方が吉かも。

金沢峠
林道を下る

すっかり石仏、祠の類に興味を持った一行。最奥の民家に出て、道端に石祠や記念碑?、庚申塔を見つけると、逐一じっくり見て回る(^^)。このあたりから枝尾根(大黒尾根)を辿って三峰山に登る参道が、かつてあったらしい。

記念碑
庚申塔

鄙びた山間の集落の中を下り、車を置いた兼宮神社に戻った。社殿の裏手にある銀杏の黄葉が鮮やかだ。兼宮神社の前には「秩父分地三峰山道」と刻まれた石の道標がある。上部の灯籠の窓は日と月の形に刳り抜かれていて、なかなか風流なデザインだ。

兼宮神社
「三峰山道」の道標

これにて今回の三峰山の山岳信仰を訪ねる山歩きは終了。忠霊塔に置いた車を回収し、散会となった。