海谷駒ヶ岳
(前日の天狗原山〜金山から続く)
前日の夜は小谷温泉でテント泊。朝食に餅スープを食べ、テントを撤収して、車で駒ヶ岳の登山口に移動する。駒ヶ岳は一度、大神堂から登ったことがある(山行記録)。大岩壁をぐるりと巡らせた険しい山だ。Mさんは駒ヶ岳〜鬼ヶ面山〜鋸岳の三山縦走にご執心だが、天気があまり優れないのと、綿密な計画が必要になりそうなので、今回は短時間で登れる海谷三峡パークからの往復とする。
小谷温泉から中土に出て、姫川沿いのR148を下り、根知川から駒ヶ岳北麓の御前山の集落に向かう。山麓から見上げる駒ヶ岳は、テーブル状の特異な山容だ。御前山から三峡パークへ向かう林道の分岐点には「海谷渓谷入口」の案内看板がある。これに従ってつづら折れの車道を走ると、三峡パークに着く。
三峡パークは駐車場、芝生のテントサイト、WC、炊事場など、キャンプ場として良く整備されている。しかも無料。なかなか快適なサイトで、昨夜はここに泊まった方が良かったかも。まあ、露天風呂がない点が小谷温泉よりちょっと劣るか(^^)
三峡パークは、海谷渓谷を眺める覗き窓のような位置にある。真っ正面には千丈ヶ岳の大岩壁が視界を塞ぐように峙ち、渓谷の上流を展望すれば両岸に見上げるような断崖絶壁が続き、奥には海坊主のような山容の鉢山がぬーっと聳えている。これらの大景観は、海底火山の隆起と浸食によって出来上がったものらしい。三峡パークから渓谷中間点の海谷高地までは遊歩道があり、1時間強の行程とのこと。興味を惹かれるが、今日は割愛する。
駒ヶ岳への道は、最初は林道を辿る。林道入口に水場があり、冷たくて美味い水がバンバン流れている。林道を辿ると芝生の広場に出て、「ロッジこまがたけ」という瀟洒な三角屋根の建物がある。ロッジといっても、これは個人用途のものらしい。ここに「駒ヶ岳登山口」という道標と「白馬山麓県立自然公園」という看板があり、スラブを抱いた駒ヶ岳を間近に仰ぎ見ることが出来る。
登山道に入り、背丈を超す草藪を切り開いた平坦な道を歩く。色づき始めた藪の中で、マユミの赤い実がひと際鮮やかだ。
小さなゴーロを何度か渡ると、いよいよ駒ヶ岳の懐に着いて、急な登りに取りかかる。最初は長い梯子が現れる。上部が針金で固定されているだけで、不安定極まりない。次は急なスラブの横を、ロープを頼りに登る。岩が滑り易い。
一旦、樹林帯の中に入るが、再びスラブを眺めながらロープを手繰る急登となる。草藪の中をトラバースすると、縄梯子が掛かる岩場に出る。ここもなかなか不安定。
縄梯子を登ると、小尾根上の急登となる。ところどころにロープが下がり、とにかく急峻だ。曇って湿度が高いせいもあって、汗だくになる。途中、踊り場のような小平地で一息つく。この登りは結構長い。
ようやく急坂を登りきり、ブナ林が広がる緩斜面に入る。「二本杉」という杉の巨木を過ぎると、ブナ林から湧き出した水場がある。塩ビパイプからちょろちょろと流れ出す水を手柄杓で掬って飲む。うーむ、冷たくて美味しい。
黄葉が始まったブナ林をゆるゆると登り、やがて小尾根の上に出る。標高が上がるに連れて紅葉も進み、ツツジの類いは既に真っ赤、カエデの類いは端から黄色になり初めている。ぽつぽつ雨粒が落ちて来て、搔き分けて歩く枝葉からの雫で少し濡れる。幸い長くは降らず、じきに止んだ。大神堂からのルートと合流すると、そのすぐ先が駒ヶ岳頂上だ。
前回、駒ヶ岳に来たときは、頂上は樹林に囲まれて展望がなく、縦走路を少し進んだ地点から鬼ヶ面山を眺めた。その後、周囲の木が切られたようで、今回は頂上からの展望が開けている。靄が掛かってクリアな眺めではないが、阿弥陀山や鬼ヶ面山、雨飾山、遠くに火打山、焼山、昨日登った金山も見える。
頂上には石祠の他、簡易なベンチとテーブル代わりの電線ボビンが置かれている。これをありがたく利用させて貰い、お湯を沸かしてカップスープを作り、パンで昼食とする。食べ終わった頃、数パーティのハイカーさんが到着したので、ベンチを譲る。
下山は往路を戻る。ブナ林の緩斜面の下りは気楽に歩けるが、その先の急降下は滑り易く、神経を使う。長い梯子を下れば、漸く急坂も終了となる。三峡パークに着き、水場の冷たい水をゴクゴクと飲んだ。
帰途は、来海沢を経由して糸魚川に立ち寄り、お土産に海産物とお酒を買う。それから、滝ノ湯という銭湯(15時から営業。390円)で汗を流したのち、糸魚川ICから北陸道に乗る。連休渋滞を避けて関越道に迂回し(上信越道経由と距離はほとんど同じ)、赤城ICで高速を降りて帰桐した。