奈良部山〜丸岩岳〜熊鷹山

天気:
メンバー:T
行程:石鴨 9:45 …12m滝 11:10 …石鴨林道に出る 11:50 …石鴨林道終点 12:25 …奈良部山(985m) 12:45〜13:15 …丸岩岳(1127m) 14:00 …熊鷹山(1169m) 14:35〜14:40 …沢コース分岐 15:00 …石鴨林道に出る 15:30 …不死熊橋 16:10 …石鴨 16:30
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

奈良部山(ならぶさん)は丸岩岳から南東に派生した稜線上の一峰で、標高は丸岩岳よりも150m程低い985m。丸岩岳の衛星峰のような位置付けにも思える山だが、地形図に三角点マークと山名が記載されている点で、桐生周辺で私がまだ登っていない山の中では大物(^^)の部類に属する。

1999年11月に、石鴨から通称「山彦尾根」を経て丸岩岳に登ったことがある(山行記録)。このルートを久し振りに辿って、丸岩岳から奈良部山に往復する計画を立てて出かけて来ました。ところが10年も経つと山の様子も変わり、私の記憶も怪しくて山彦尾根ルートを見つけることができず、実際には沢を詰め上げて丸岩岳に直登しました。

自宅を車で発ち、桐生川の上流に向かって20分程で最奥の集落の石鴨に着き、天満宮の向かいのスペースに車を置く。今日は快晴で、暑いくらいだ。橋を渡ってすぐ左の桐生川の川岸に名水「石鴨の水」が湧き出しているので、立ち寄って飲んで行く。冷たい清水が美味しい。

石鴨の集落
石鴨の水

前回の記憶では、林道を奥まで進み、伐採された広く緩い谷を登って、途中から右手の尾根に取り付いた所が山彦尾根だった。ところが林道を先まで進んでも、記憶にあるような広く緩い谷が現れない。群馬・栃木県境付近で3つに分かれる谷のどれかがたぶんソレなのだが、どれも記憶とな〜んか違う感じだ。昔の私は一体全体どこをどう登ったのでしょうか(^^;)

山彦尾根を辿ることは諦めて、少し戻った林道分岐から丸岩岳に直接突き上げる沢に入る。この沢を登るのは初めてなので、頂上まで抜けられるかは不明が、だめならば尻尾を巻いて退却ということで。最初は沢沿いの古い作業道を辿る。「この付近は丸岩国有林です」と書かれた日光森林管理署(昔の大間々営林署)の看板のある地点で沢は二つに分かれ、作業道も二つに分岐するが、ここは右の本流へ進む。

左の林道に入る
沢沿いの作業道を辿る

小滝の下で沢を渡って、左岸に移る。ここにも日光森林管理署の看板がある。細々と続いていた作業道はこの少し先で完全に終わって、沢の中に入る。さーて、どこまで遡れるかな。悪場のないことを祈る。転石と倒木が多く、荒れ気味でスッキリした沢ではないが、幸い遡行に支障はない。周囲の新緑や水の流れなどを眺めながら、のんびり進む。

沢の中を歩く
苔の"花"

やがて、3段12mくらいの滝が現れた。この沢で唯一の滝だ。左が緩い斜面で、簡単に越えられる。

新緑の沢を遡る
12m滝

滝の上部はガレ沢となり、水流は途切れて傾斜も増して来る。炭焼き跡を過ぎるとルンセ状に狭まった沢となり、頭上に切り立った岩場を仰ぐ。傾斜がきつく足場の石がガラガラと崩れるため、登るのが困難になってくる。たまらず、右側の斜面を這い上がって、枝尾根に逃げる。尾根の上はカモシカ?のものらしい獣道が縦横についている。おかげで登りやすい。ただし、コロコロとしたフンが一面に落ちていて、フンづけるのは避けられない。

源頭は急峻なガレ沢となる
枝尾根に逃げて登る

芽を出し始めたカラマツ林の斜面を息せき切って急登すると、丸岩岳の頂上直下を横断する石鴨林道に出た。いやー、またまた変なルートを歩いてしまいましたが、これでホッと一安心。丸岩岳の頂上はあとひと登りだが後回しにして、今日の第一目標の奈良部山に向かって林道を辿る。途中、野峰へ向かうハイカーさん一行の後ろ姿を見送る。

それにしても今日は暑い!陽射しを遮る物のない林道歩きの途中でへばって、水を飲む。この石鴨林道はこの近辺の自然破壊No.1のように言われているが、供用されなくなって久しいらしく、だんだん自然に戻りつつある。展望がきいて、野峰や残馬山、遠くには赤城山の一部が霞んでいるが眺められる。

やがて、奈良部山への稜線の少し手前で林道は終点となる。新緑の木立を通して、奈良部山がもっそりとピークを擡げているのが見える。最初思っていたような丸岩岳の衛星峰というよりは、独立した立派なピークだ。山腹をトラバースし、丸岩岳から奈良部山への尾根の上に出た。

石鴨林道に咲くヤマザクラ
石鴨林道終点より奈良部山を望む

雑木林に覆われた尾根には明瞭な踏み跡があり、目印のテープの類いも多い。まだ芽吹いたばかりの林内には明るい陽射しが差し込み、トウゴクミツバツツジがちらほらと咲き始めている。尾根を緩く下って、ヒノキに覆われたピークとの鞍部に降り立つ。稜線上の岩場を右から巻いて通過する。この辺りは痩せ尾根で、なかなか奥山の雰囲気がするところだ。

奈良部山への稜線
ヒノキのピーク付近

ヒノキのピークを過ぎ、雑木林の尾根を緩く登ると、山名標と三等三角点がひっそりと待ち受ける奈良部山の頂上に着いた。樹林に囲まれて展望はないが、木の間から熊鷹山らしきピークが見える。まずは腰を下ろして、缶ビールで喉を潤す。今日は暑いのでうまーい。その後、お湯を沸かしてラーメンを作る。人っ子一人いない静かな頂きでのんびり過ごすのは、安らぎのひとときやね。陽気のせいで羽虫が多いのが珠に傷(^^;)。しかし、自然が豊かに残るいい山だ。訪れて良かった。

奈良部山への登り
三角点のある奈良部山頂上

奈良部山から先の稜線にも明瞭な踏み跡が続き、面白い尾根歩きが楽しめそうだが、またの機会ということで、往路を丸岩岳に戻る。石鴨林道への分岐を過ぎ、稜線上の道を丸岩岳に向かう。下生えのミヤコザサがきれいな尾根だ。行く手に丸岩岳のゆったりと丸いピークが眺められる。

小戸川へ下る山道を分けると、石祠が鎮座ましましている。かつては根本山への参拝者がこの前を通っていたのだろうか。この先で再度、小戸川へ下る山道を分け、短い急坂を登って丸岩岳の頂上に着いた。

往路の稜線を丸岩岳へ
トウゴクミツバツツジ
小戸川分岐

丸岩岳には5回目の登頂で、昨年末にも来ている(山行記録)。雑木林に囲まれて展望がなく、特徴もない山頂だが、いつもひっそりとしているところが何気に好みだ。

丸岩岳手前の石祠
丸岩岳頂上

丸岩岳から先はどこを歩こうか。山彦尾根を探して下るという案も考えたが、ちゃんとルートがあるんだか、今日の様子では怪しい。熊鷹山までの稜線は雑木林とミヤコザサが続く散歩道で気持ちよい尾根だし、熊鷹山の展望櫓からの眺めも楽しみだ。という訳で、熊鷹山に向かうことにする。

この縦走路は、傍らに根本山参道の丁目石がポツポツと残る歴史の道でもある。ササ原の中に倒れた「二十三丁目」と、「二十一丁目」の石碑を見た。

熊鷹山に続くササの尾根
二十一丁目の石碑

緩い尾根道を進み、左に石鴨林道へ下る道、右に作原(小戸)へ下る道を分け、古びた木の鳥居を潜る。石祠の横を通って、展望櫓のある熊鷹山の頂上に着いた。

熊鷹山手前の鳥居
展望櫓のある熊鷹山頂上

熊鷹山はこの山域で人気の山とあって、3組程のハイカーさんが休憩していた。展望櫓に登り、周りを見渡す。気温が高いために霞んでいるが、北には男体山や白根山のまだ白い山々が見えた。十二山を経て根本山までの稜線は、芽吹き始めたばかりの感じだ。その向こうの皇海山あたりの山々には、雪はほとんど見当たらない。

振り返ると丸岩岳から奈良部山にかけての稜線が一望できる。奈良部山は一段低いけれど、やはりどっしりとした山容だ。東には大戸川の谷を隔てて、今年の2月に歩いた氷室山神社参道(山行記録)の稜線が延々と続いている。その稜線直下に建設中の林道が、山肌を切り裂くように延びているのはちょっと残念な光景だ。

熊鷹山から霞がかかった
男体山(右奥)遠望
熊鷹山から奈良部山(左)と丸岩岳

熊鷹山の頂上にはツツジが多いが、まだ蕾が膨らみ始めたくらいだった。

熊鷹山からの展望を楽しんだのち、さらに十二山までミヤコザサの散歩道を辿る。傾いた「十三丁目」の石碑の傍らを通り、右へ三滝への道を分け、倒れた「六丁目」の石碑を見る。十二山の手前で、左の沢を下るコースに入る。ここも10年前に歩いたコースだ。現在では下り口に立派な(というか派手な)道標がある。

カラマツの落ち葉がふかふかと積もった斜面をジグザグに下ると沢に降り着き、あとは沢沿いの細い作業道を辿る。あまり歩かれていない様子で、途中の桟道は朽ちていたので通行注意。

十二山手前の沢コース下り口
沢コースを下る

最後は本流が小ゴルジュになっていて、右の小さな浅い窪に避けて下る。沢を渡れば石鴨林道は近い。林道との合流地点には「不死熊橋 石鴨↓→熊鷹山」と書いた太田ハイキングクラブの道標があった。沢コースは一部踏み跡が不明なので、登りにとると迷い易いと思う。

石鴨林道との合流地点
石鴨林道から
新緑の山々を振り返る

ここからは石鴨林道の長い車道歩きとなり、周囲の新緑を眺めながらのんびり下る。この好天で三境林道入口の駐車場に車を置いて根本山や熊鷹山に登ったハイカーさんも多かったと思うが、16時を過ぎて駐車場に着いたときには、さすがに時間も遅いので、残った車は2、3台だった。桐生川の渓流美を探勝しながら、石鴨の駐車地点に戻った。