桑ノ木山

天気:のち
メンバー:T
行程:しゃくなげ公園 6:30 …十字峡 7:35 …導水管上端 8:00 …1338m峰 10:50 …桑ノ木山(1496m) 11:50〜13:00 …十字峡 15:25 …しゃくなげ公園 16:55
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:十字峡〜桑ノ木山の往復と復路)を地理院地図に重ねて表示します。

新潟県南魚沼市の三国川(さぐりがわ)上流の十字峡から、桑ノ木山、ネコブ山を経て新潟・群馬県境の下津川山(しもつごうやま)に至る尾根は、以前から残雪期に歩きたいと思っていたルートです。今回はその偵察のつもりで、出かけて来ました。急登にへばってネコブ山には届かず、桑ノ木山まで往復するのがやっとでしたが、越後三山から丹後山、本谷山、下津川山へと連なる県境稜線の雪山の大展望を楽しむことができました。

桐生を夜中に車で発ち、赤城IC〜六日町ICは高速を1,000円で通行して(ほんと、ありがたい制度^^)、三国川ダムに向かう。前日は晴天だったが、今朝は高曇りの天気だ。しかし、気温が高いと雪が柔らかくなって踏み抜きで難儀することになるので、これくらいの天気が都合が良い、と楽天的に考える。

三国川ダムの下に着くと、しゃくなげ湖の右岸道路は入口に柵があって通行止だったので、右の左岸道路に入る。しかし、こちら側もダム下のしゃくなげ公園で通行止。柵の横から入って先に進めなくもないが、しゃくなげ公園の駐車場に車を置く。ここから十字峡までは車ならば約5分の距離だが、歩けば約1時間かかるだろう。この時点で、ネコブ山まで往復するという最初の目論みは、桑ノ木山まででもいいか、に後退する。

今日の雪の状態はどうだろうか。柔らかそうだとは言ってもスノーシューを使う程ではなさそうだ。むしろ、急斜面で固いと困る場合があるかなと考えて、12本爪アイゼン(←実際は無用だった。これが重くてへばった原因の一つ)とピッケルを携行して出発する。

道端に大量に顔を出したフキノトウを横目で見ながら車道を辿り、ダムの上に出る。車はダム天辺を渡って対岸の管理棟までは入れるらしい。左岸道路はトンネルの中で再度通行止の柵があり、車で通る余地はないようになっていた。

トンネルを抜けるとしゃくなげ湖上流の展望が開けて、中ノ岳前衛の日向山や県境稜線の兎岳付近の残雪の山々を眺めながら、車道を歩く。トンネルをいくつか抜けると除雪終点となり、路上に雪が残っている。一部、雪が斜めに車道を覆っている箇所があるが、通過に支障はない。

三国川ダム下のしゃくなげ公園に
車を置く
しゃくなげ湖左岸道路を歩く

1時間程歩いて、登山口の十字峡に到着する。ここも例年に比べると雪は少ないようだ。発電所の奥に見える導水管(水圧鉄管)の横の鉄製階段が桑ノ木山への入口となる。導水管の麓には駐車場とWCがあるが、この時期はどちらも使えない。

階段は非常に急で梯子に近く、雪に覆われていたら登るのは難しい。幸い、もう雪はない。手摺をしっかり摑んで登る。上部は傾斜が緩まってコンクリの階段となるが、雪にこんもりと覆われた箇所があり、注意して越える。管理小屋が建つ導水管上端まで、たっぶり25分掛かって到着し、小屋の横から黒又沢の奥に白く輝く八海山を眺めて一休みする。

東北電力五十沢第一発電所
導水管の横の階段が登路
導水管上端の管理小屋から
八海山を望む

小屋の裏手はコンクリート吹付法面となっていて、右側から登る。高度感のある風化した岩場になっているが、案ずる程のことはなく小岩峰の上に立つ。振り返ると、十字峡の発電所が足元に見える。痩せ尾根を渡って、樹林に覆われた急な尾根を登る。はっきりした踏み跡があり、藪はほとんどない。

管理小屋裏手の岩場
急峻な尾根を登る

イワウチワがポツポツと咲き始めているが、写真を撮る余裕があったのは最初のうちで、次第に荷物の重さが応えて来る。今日は何だか、足が重い。立ち木を手がかりに頼る登りが続く。漸く尾根上の傾斜が緩むと、きれぎれに雪が現れる。雪の上には動物の足跡の他に、形が溶けた靴跡も残っており、最近登った人がいるようだ。ところどころで開ける八海山や日向山の眺めで息をつきながら登って行く。

イワウチワ
残雪が現れる

やがて残雪が連続するようになり、先行者はその上をワカンで歩いたようだ。尾根が広くなり、歩きやすい所を拾って進む。標高が上がって、日向山に隠れていた中ノ岳が見えはじめる。尾根から三国川に落ちる山肌には、一面にべっとり雪が残っている。冬の日本海からの季節風が最初に吹き付ける顕著な稜線なので、積雪が多いのかな。三国川沿いの林道に、6月下旬までスノーブリッジが残る訳だなあ。

緩い尾根となって雪も増える
左手に中ノ岳を望む

稜線上は木立がなくなり、緩く広くなって、開放的な雪の尾根歩きとなる。天気も良くなり、青空が見え始めて、Tシャツ1枚でも寒くない。県境稜線の山々の展望が素晴らしい。しかし、かなり疲労して来て、時々立ち休みを入れて進む。

雪の尾根を辿る
阿寺山(左)と八海山を振り返る

途中に小さな雪のピーク(1338m標高点)があり、登ってみる。行く手には雪に覆われた尾根が横たわり、その向こうののったりと丸いピークが桑ノ木山のようだ。白一面で距離感が摑めないせいか、ものすごく遠くに感じる…。休んでいると、単独行のお兄さんがワカンで軽快に下って来た。話を聞くと、ネコブ山にテント泊して下津川山まで登って来たそうだ。天気が佳くて良かったと喜んでいた。しかし、テント泊の荷物を背負って十字峡からの急登をこなすとは凄い(@_@)

1338m峰付近の展望
桑ノ木山はまだ遠い
1338m峰付近より中ノ岳

360度の素晴らしい景観の中、ゆっくりゆっくり歩を進める。この標高でも雪は柔らかく、つぼ足では踝から足首くらいまで潜る。問題ないレベルだけれど、軽量のワカンだったらもっと楽に歩けるだろうか。

広大な雪原を横切って、ようやく桑ノ木山の頂上に辿り着いた。三角点はもちろん雪の下なので、GPSで位置を確認してこの辺だろうとザックを降ろす。やれやれ、疲れたー。さらに延びる広大な尾根はその先でグッと大きく盛り上がってネコブ山のピークとなっている。あそこまで行くのは、もう全然無理。桑ノ木山までで大満足。下津川山もネコブ山の左に見えているが、しっかし遠いなー。

雪の上にマットを敷いて腰を下ろし、上着を着込んで、まずはチーズちくわをつまみに缶ビールを開ける。うまーい。こんなにうまいビールを飲んだのは久しぶりかも。背中に当たる陽射しがチリチリと暑いので、サングラスを外してみたら太陽が強烈に眩しい。コンビニで買った鍋焼きうどんをガソリンコンロで煮て食べる。展望を楽しみながらのランチは最高やね。

茫漠とした桑ノ木山頂上付近
桑ノ木山頂上より
ネコブ山と下津川山(左奥)
桑ノ木山頂上
背景は本谷山付近の県境稜線
桑ノ木山頂上より巻機山を望む

食べ終わって立ち上がろうとしたとき、左足の腿裏から脹ら脛にかけて激しくつって冷や汗をかいたが、なんとか回復する。広い雪原を歩き回っていろいろな方向の展望を楽しんだのち、往路を戻って下山する。

下りは楽だ。三国川の深い谷を隔てて県境稜線の山々のパノラマを眺めながら、鼻歌混じり足任せて降りて行くのは極楽〜。残雪の山はいいね。この開放感がたまらない。

中ノ岳を眺めながら下る
雪の砂漠
丹後山
越後沢山(左)と本谷山
桑ノ木山を振り返る
阿寺山(左)と八海山

尾根上の雪が切れると、急な痩せ尾根の下りとなり、ぐんぐん降りる。まあ良く登ったなと思うくらい、急。一汗かいて導水管上端に降り着き、足を投げ出して休憩する。疲れたー。最後に階段を慎重に下って、十字峡に到着した。やれやれ、これで一安心。

車を置いたしゃくなげ公園までは、しゃくなげ湖の右岸道路を経由して戻ることにする。十字峡の落合橋から見た三国川上流への林道の雪は、少ない様子だった。

導水管上端の岩場から
十字峡を見下ろす
十字峡・落合橋より
三国川上流の様子

十字峡売店(まだ冬期閉鎖中)のベンチで残りの食料を片付けて、車道を歩く。十字峡から桑ノ木山への尾根を見上げて、満足感に浸る。今度は鍛え直して、下津川山まで1泊2日で行きたいなあ。

右岸道路は途中の大戸沢で雪代のため、路上に大量の土砂が堆積していた。周辺の山腹は新緑が芽吹き始めて、ネコヤナギやヤマザクラが咲いている。ダム管理棟からダム天辺を渡り、桑ノ木山の尾根を最後にカメラにおさめて、駐車場に戻った。

十字峡より桑ノ木山への
尾根を見上げる
三国川ダム天辺より
桑ノ木山の尾根を望む

帰りは畔地に久しぶりに立ち寄って、足の疲れを癒す(300円)。運動して相当カロリーを消費したせいか、腹が減ってたまらないので(^^;)、近くの定食屋で焼肉定食を食べたのち、六日町のコンビニで大好きなエチゴビールを買い込んで、桐生への帰途についた。