中ノ岳
この日、当初は本谷山(1860m)に登るつもりで、桐生を夜の2時に車で出発。予め見ていた「群馬山岳移動通信」の本谷山の記録には、途中で水が得られず、熱中症で危機一髪だったことが書かれている。これは読むとかなり怖い。そんなことも頭にあって、2リットルポリタンの水の他に、麓のコンビニで1リットルペットボトルと350ml缶ビールを買う。これで水分は十分だろう。
しゃくなげ湖の奥、十字峡小屋を少し過ぎた落合橋のたもとの駐車場に車を置く。他に車があるのは釣り人だろうか。本流の三国川(さぐりがわ)は雪解け水で、ものすごい水量だ。
出発準備を整え、本谷山の登山口を目指して、三国川沿いの林道に入る。林道入口は車が入れないように厳重なゲートがあり、そこに木の板にマジックで手書きされた次のようなメッセージが残されていた。
このすぐ先(200m位)地点の雪(林道上のスノーブリッジ)が悪くなり始めています。歩行者は注意して下さい。6/24AM10:00(記)
…(@_@;)。これは昨日のことではないですか。取り敢えず、様子を見に先へ進んでみる。すぐに最初のスノーブリッジが現れる。早朝なので雪が固く、少し滑りやすかったが(もし滑ると激流の中に落ちる)、最後は1mくらいの段差を飛び降りてなんとか越える。しかし、次のスノーブリッジはえらい代物だった。
林道上では厚さが3〜4mあるが、川を跨いでいる部分の一番薄い所には亀裂が入っていて、今にもポッキリ逝きそうである。川の中には最近落ちたらしい大きなブロックもある。昭文社の山と高原地図には、この地点に「6月上旬まで残雪が道をふさぐ」と記されているが、6月も終わろうというこの時期にこの状態とは。やはり、今年の雪が如何に多かったか、ということだろうか。
この先に進むことは諦めて引き返す。最初のスノーブリッジを念のため軽アイゼンを着けて越え、車まで戻った。
本谷山へはいずれ出直すことにして、今日は十字峡から中ノ岳へのピストンに変更する。中ノ岳は1981年7月に越後三山縦走で登っているが、十字峡からのルートはいつかは歩いて見たいと思っていたので、ちょうどいい機会だ。
中ノ岳登山口まで僅かな距離を車で戻って、売店のそばの駐車場に車を置く。コンクリののり面に付けられた階段が中ノ岳への登山口である。仕切り直して、さぁ、行きましょうか。
最初は鬱蒼とした樹林帯を登る。ところどころから、朝靄がかかった深い谷間越しに雪渓を抱いて聳える八海山が垣間見える。一合目の標識を過ぎると水場(→60m)という標識がある。行ってみたがちょろちょろで、あまり当てには出来なさそうだ。
短い鎖場を越えると枝振りの良い松が立ち並ぶ痩せた尾根となる。振り返るとしゃくなげ湖が既に下の方だ。
二合目から三合目は見晴らしの良い尾根が続く。行く手にはこれから越えなければならない日向山が高い。山頂には雨量計測所の建物が見えている。四合目付近は鬱蒼としたブナの林の中の登りとなる。既に日差しがきつくなってきたので、木陰がありがたい。
四合目から樹林の中をひたすら登る。道の真ん中を水が流れているなと思うと、突然、雪田の上に出て、前方に中ノ岳の大きな山容が姿を現した。五合目の日向山に到着だ。眺めが良いし、このあとどれだけの登りがあるのか目処がついたので大休止。ここまででペットボトルの半分の500mlを飲んだが、ポリタンの水は手つかず。まぁ、いい消費ペースでしょう。
雨量計測所は左手のピークにあるが、登山道は右を巻いて先へ続く。五合目からしばらくは、ほぼ平坦な帯状の残雪を辿る楽しい行程だ。生姜畑というところで、夏ならば池塘のある草地だそうだが、今は厚い雪の下だ。六合目の標識はその雪の下になっているのか、気づかずに通過。三角形の形の良いピークに取り付いて登る。登りきると七合目(小天上)だ。ここで標高1680m。頂上まで残り標高差400mである。日差しを遮るものがない灌木帯の急登で、少々ばててきた。道の脇にはコイワカガミなどが咲いているのだが、鑑賞する余裕はあまりない。
左手には八海山、右手には兎岳〜丹後山の稜線と素晴らしい景観の中、中ノ岳への最後の斜面を登る。周囲の谷筋には豊富な残雪があっても風がほとんどなく、全然涼しくない。八合目で一休み。だんだん休憩の間隔が短くなって来た。久しぶりに足が上がらない感覚。なんとか足を運んで、ようやく稜線に辿り着いた。九合目の池ノ段だ。振り返ると、登って来た日向山の尾根が眼下だった。やれやれ、よく登って来たなぁ。頂上まであとちょっとだ。
タテヤマリンドウも咲いている稜線を登ること僅かで、ようやく中ノ岳山頂に到着した。まずは、速攻で頂上直下の残雪で缶ビールを冷やして、ぐいっとあける。うまい! 頂上で飲む、こんなにうまいビールは久しぶりである。コンビニでたまたま買ったエチゴビールだけど、これ、コクがあってうまいなー。
登る途中から素晴らしい展望が開けていたが、頂上からはまさに360度の大展望である。まず、天険オカメノゾキを隔てて八海山。そこから右へ目をやると、中ノ岳避難小屋の向こうにすっきりとした三角形の越後駒ヶ岳。さらに、鋭峰をもたげる荒沢岳。そして、兎岳、丹後山へと稜線が繫がる。遠くには平ヶ岳や至仏山まで見えた。前回登ったときはガスの中だったので、今回、展望に恵まれて良かった。
この日、頂上では他に2人の登山者。上り下りで会った人を合わせても10人くらい。静かな山だ。登りでペットボトルが空になったので、ポリタンの水で昼食のパンを食べる。しかし、暑さでグロッキー気味なせいか、食欲がない。
下山は往路を戻る。十字峡に着いたときはやれやれ、だった。ポリタンの水もほぼ消費。登山口の売店で買って食べたオレンジシャーベットが、これまた冷たくって甘くってうまかったー。
山にいる間も暑かったが、下界の暑さで今日の天気の異常さを改めて知る(この日、唐松山では熱中症で救助された登山者がいたらしい)。畔地♨で汗をさっぱり流し、コンビニでエチゴビール+八海山泉ビールを買い求めて帰った。