四ッ又山〜鹿岳
桐生を車で発った時には上空は薄い雲に覆われていたが、下仁田に近づくにつれて青空が広がって、四ッ又山と鹿岳(かなたけ)の怪異な形の稜線がすっきりと見えて来た。南牧川沿いの道から小沢橋を渡り、細い車道で谷間を遡る。今年9月の台風9号の被害で、片側交互通行や迂回路が数か所ある。
大久保の登山口は通り過ぎ、南牧ハーブガーデンの駐車スペースに車を置く。ここの手前の車道は水害で深く抉られているし、駐車スペースの周辺には深い雨裂が残されたままだ。ちょうど管理人のおばさんがいらして、駐車料500円を支払う際、台風が来た当時の話をいろいろ伺う。信じ難いことに管理小屋の前が川になったそうで、小屋が無事だったのは奇跡と言って良い。
先程通り過ぎた大久保まで車道を歩いて戻り、ハイキングコースの大きな看板を見て脇道に入る。西上州の山村らしい、急傾斜の畑に民家が点在する風景に久し振りに出会う。車道の終点には数台分の駐車スペース(私有地?)と、道標、丸太で作られたユニークなフィギュアがある。いろいろなHPの山行記録を見ると、このフィギュアは結構なペースで新作が披露されているようだ。
山道に入り、堰堤を越えてしばらく沢沿いに登ると、左にマメガタ峠への道を分ける。暗い杉林を抜けると山畑に出て、一ノ岳(鹿岳南峰)の親指を立てたような岩峰を仰ぐ。再び樹林帯に入り、急な斜面を登り詰めると大天狗の鞍部に着いた。右は小沢、直進は鞍部を越えて下郷への道になる。四ッ又山へ左に進むと、僅かに登った所に「大天狗 明治三十四年第三月吉日」と刻んだ石碑がある(明治34年=1901年、20世紀が始まった年だ)。
四ッ又山へは急な尾根を登る。まだ紅葉は残っているが、木々の葉はだいぶ落ちて、明るい陽射しが差し込んでいる。途中で、ご夫婦2組?の賑やかな4人パーティに追いつき、先に行かせて頂く。尾根を登り詰めると頂上直下に分岐がある。右へ少し登った所が四ッ又山頂上(P1)だ。
頂上にはなにやらご立腹の面相の石像がおわして、その後ろから、下仁田市街や鍬柄岳、大桁山、妙義山、鹿岳にかけての眺めが良い。隣りには、これも石像の有る四ッ又山P2、遠くには頂きが白くなった浅間山が望まれる。
空き缶が置いてあり、中に登頂記念ノートが入っていたので、記帳させて貰った。やがて、4人パーティも頂上に到着して、賑やかになる。4人揃っての記念撮影のシャッターを押して差し上げる。このあたりの山にはよく登っているそうで、埼玉からいらしたとのことだった。
4人パーティの後から、のんびり山頂を出発する。P1をロープのあるトラバース道で巻き、登山道からちょっと脇に逸れたP2にも登る。途中には烏天狗の石像、頂上にはすまし顔の石像がある。こちらも展望が良い。
P2から一旦下り、ロープのある岩場を登るとP3。ここの石像は横から見ると聖母マリア様(に見えなくもない)。岩場を下り、登り返すと石祠と四ッ又山という標識の有るP4。松の梢越しに鹿岳が少し大きくなって見える。
ここからマメガタ峠へは急な尾根の下りだ。途中に小さな露岩があり、峠を隔てた鹿岳の展望が良い。それにしてもマメガタ峠へはずいぶん下る。先行している4人パーティから、まだ下るの〜、どんだけ〜、と賑やかな声が聞こえて来た(^^;)
急坂を滑らないように注意して降りると、気持ち良い草地が開けたマメガタ峠に着く。4人パーティさんが休憩していて、記念撮影をとのことなのでシャッターを押す。水を飲み、のんびり休憩してから出発する。
鹿岳への登りも急だ。台風の後遺症で、倒木が多い箇所がある。倒れている木の根は広いが浅く、下の岩盤が剝き出しになっていて、薄い土の層に辛うじて根を張っていたことがわかる。こちらにも途中に展望の良い露岩があり、ぐっと近づいた一ノ岳の岩壁が迫力だ。振り返ると四ッ又山の紅葉に陽が当たって、鮮やかな色を見せている。
南峰基部の手前でランチ休憩の4人パーティに追いついて、先に行かせて貰う。見上げる一ノ岳の岩壁はすごい高さだ。ロープを伝って岩壁基部をトラバースし、二ノ岳(鹿岳本峰)との鞍部に出る。まずは一ノ岳に向かう。痩せ尾根を左に辿るとすぐに木の梯子があり、右に高原への下山路が分岐する。
木の梯子の上の登りは、すぐ左側が断崖なので慎重に。頂上は小広くて露岩があり、そのてっぺんには摩利支天と刻まれた石碑がある。頂上には5〜6人のハイカーさんが思い思いに食事や展望を楽しんでいた。とうに正午を過ぎていてお腹が減ったので、私もここで昼食にする。今日は温麺+うどんのたれ+野菜かき揚げ。この組み合わせも美味いな。
お腹を満たしたのち、南へ少し踏み跡を辿って、頂上から一段下がった南端の岩場に行ってみる。ここは一ノ岳の大岩壁の正に上で、覗き込むとおっそろしい高さだ。二子山や高岩の高度感も凄かったが、ここが No.1 じゃないかと思う。付近の岩を見ていたら、ロッククライミングの残置ボルトがあった。こんな所でなにしてたんだ〜(@_@;)
一ノ岳からの展望を堪能したのち、ちょうど4人パーティと入れ違いになって出発。鞍部に戻って二ノ岳に向かう。木の梯子を登り、岩壁の斜めのバンドを鎖を命綱にして登ると、眺めが開けた爽快な岩稜に出る。振り返ると、一ノ岳の崖っぷちの道を4人パーティが下っているのが見える。右手に見える痩せ尾根の山は紅葉が奇麗だ。しれいた山だろうか。
岩稜の登りは問題なく、二ノ岳の頂上に到着する。こちらも小広く、眺めが良い。
頂上から西へ稜線上の明瞭な踏み跡を辿って、隣りの小岩峰に行く。その上からは、一ノ岳と四ッ又山がちょうどいい重なり具合で見える。こちらから見た一ノ岳は、まるで地下から突き出た巨大なドリルの先端のようだ。二ノ岳の岩稜に4人パーティが上がって来て、絶景〜、という歓声が聞こえてきた。
二ノ岳から北へ、木々岩峠への稜線も良く見える。今日は余裕があれば木々岩峠にも行ってみたかったが、頂上からは稜線がすっぱり切れ落ちている。これは大変そう。今日はもう充分歩いたので、またの機会にしよう。
小岩峰から頂上に戻ると、4人パーティも到着していて、例によって記念撮影のシャッターを押す(^^)。木々岩峠方面の道を入口から覗いて偵察したが、やはり大変急な下りだ。
一ノ岳との鞍部に再び戻って、高原へ下る。最初は鎖のある岩場だが、すぐに杉林の中の急な下りになり、沢に降り立つ。台風で出水があったのか、ところどころ登山道がゴロゴロの沢になっている箇所があるが、踏み跡とテープに気をつけて下り、高原の登山口に着いた。車道を辿って南牧ハーブガーデンまでは、僅かな距離だった。
帰り道に久し振りにかぶら健康センターかのさとに立ち寄る。広いお風呂で気持ち良く温まって、桐生に帰った。