温泉ヶ岳
冬の奥日光と言えば寒気は厳しく風は強烈で、そんな天候の時には奥日光2000m級の山には登る気になれない。しかし、この週末は冬型の気圧配置が崩れて弱い高気圧に覆われ、午後から曇るというものの終日穏やかな天気との予報。今シーズンは少雪だし(山上でちょうど良い?)、雪質も13日に金精峠に登ったときには(あまりに急で途中敗退したが)スノーシュー向きで良かった。
という訳で、奥日光スノーハイクの次の2000m級ターゲットに考えていた温泉ヶ岳(ゆせんがたけ)に登ることを計画。ネットで調べると、温泉ヶ岳から南東へ日光湯元に向かって落ちる尾根(南東尾根)を登った記録がいくつかあり、地形図で見ても、湯元から中間の2061mピークまでは急な登りだが、そこから頂上までは広く緩い斜面が続いていて、スノーシューで歩くのに良さそう。この尾根を往復して登って来ました。
桐生を未明に車で出発。いろは坂の路面には雪が全くない。戦場ヶ原に出ると、朝焼けの温泉ヶ岳が青空の中にくっきりと見える。いつもなら地吹雪が舞う戦場ヶ原に今日は風もなく、天気は上々。期待感でテンションも上がる。
湯元の駐車場に車を置き、スノーシューと念のためにアイゼン、ピッケルを持って出発する。湯元泉源でスノーシューを履いて、金精道路まで上がる。雪は13日より減っていて、ガードレールの高さよりも10cmくらい低い。これから登る南東尾根を見上げて、さて、気合いを入れて行きますか。
しばらく金精道路を西へ辿り、南東尾根末端の西側斜面から尾根に取り付く。南東尾根の上に出ると雪が薄く積もった中に背の低い笹がパラパラ出ている状態だ。しかし、藪はなく歩き易い。スノーシューのトレースがうっすらと残っていて、最近登った人がいるようだ。
尾根を登るにつれて積雪も増え、スノーシューで快調に上がる。針葉樹林に囲まれているが、ところどころから於呂倶羅山や、湯ノ湖・男体山の眺めが得られ、しばし立ち休み。きつい登りが続く。
ようやく、傾斜が緩くなると右手に展望が開け、温泉ヶ岳と東へ連なる雪の稜線が見える。遠目にちょっとスキーで滑ってみたいような斜面もあって、雪山らしい開放的な眺めが素晴らしい。
2061mピークは台地の上に少し盛り上がったコブに過ぎない。登ってみたが、コメツガの幼木に覆われて展望はなかった(藪っぽいので、帰りは南側を巻いた)。テルモスのココアで暖をとり、パンを食べて休憩する。
2061mピークからは広く緩いスノーシュー向きの尾根を歩く。先行者のトレースは(登っていたとしても)わからなくなっていた。白根山には雪雲がかかり始めたが、風は弱く、天気はまだ持ちそうだ。
栃木・群馬県境稜線に近づくとぐっと積雪が増え、樹林にも雪がべったりと付いてモンスター状態になっている。見通しが利かない中をとにかく上へ登って行くと、温泉ヶ岳の南西の肩(2265mの等高線)に出た。
出たといっても、樹林が密生する平らな場所だ。ここから僅かに下って、温泉ヶ岳への最後の急な登りにかかる。群馬県側を見下ろすと、金精道路や菅沼の凍った湖面が見える。最後は密生する低い樹林帯に突き当たり、枝を摑んで強引に突破。樹木に打ち付けられた夏道の標識を見ると、すぐに頂上に到着した。
栃木県側は雪雲に覆われ始めて、高薙山までが見える範囲だが、群馬県側はまだ晴れていて、遠くまで見える。根名草山の緩やかな稜線の向こうには燧ヶ岳が白く輝き、その左の平ヶ岳、至仏山も真っ白だ。
風はそう強くないが、さすがに寒気は厳しい。ココアを飲んで残りのパンを食べているうちに、ちらほらと雪が降り始めた。15分程滞在した後、下山に取りかかる。夏道の標識を辿るとふかふかの雪の急斜面に出る。往路にここを登っていたら大変だったが、下りは快適。GPSで現在位置を確認しながら下り、登りのトレースに合流。あとはこれから離れないように下る。
スノーシューで足任せに下って行くのは楽しい。2061mピークを過ぎ、尾根の急な部分に差し掛かったとき、躓いた拍子に足の筋を伸ばして、肉離れを起こしたかとヒヤッとする。下りでちょっと調子に乗り過ぎました。以降は慎重に。それでも登りに4時間以上かかったところを、下りでは2時間を切る。
金精道路に降り立った頃には雪がシンシンと降る天気になっていた。車に戻ると屋根の上に10cmくらい積もっている。雪を下ろして湯元旅館まで車で移動。♨で温まって小一時間後に表に出たら、また、車の上に10cmくらい積もっていた。