千頭星山〜甘利山
相変わらずの猛暑続きで、お盆休み前半の山の日三連休も暑くなりそう。土日は雑用があり、最終日の山の日に山歩きを計画。標高がある程度高くて涼める山に登りたいと考えて、南ア前衛の甘利山(1731m)と千頭星山(2139m)を思いつく。
甘利山にはS&Sと共に登ったことがある(山行記録)。そのときは軽い山歩きが目的で、広河原(甘利山駐車場)から20分程で甘利山に登頂。さらに30分程登って奥甘利山(1843m)まで足を延ばしたが、その先の千頭星山はあと登り1時間半かかるので断念。奥甘利山で引き返した。以来、千頭星山には是非登りたいと思っていたから、良い機会だ。
日帰り登山として考えると、甘利山駐車場から千頭星山の往復では遠出の割に歩き応えが少し足りない。甘利山中腹の椹池(標高1230m)から、これも興味を持っていた大笹池を経て、千頭星山と甘利山を周回する計画を立てて、出かけてきました。
桐生を深夜に車で出発。八千穂高原ICからR141を韮崎方面に向かう。今日は快晴で、野辺山を過ぎた辺りから八ヶ岳や南アの鋸岳、甲斐駒、鳳凰三山、さらには富士山が眺められてテンションが上がる。韮崎市街を通過、釜無川を渡って県道甘利山公園線に入り、つづら折れの車道を登って椹池に到着。白鳳荘の駐車場に車を置く。他には車が一台。湖畔のキャンプ場にはテントが一張あり、ソロキャンパーが居られる。前夜、ここでテント泊して登るというのも良い手だったかも(ただし、夏はヒルが出るとの情報あり)。
ここは既に標高1200mを超え、かつ、まだ早朝なので涼しい。熊鈴を付けて出発。白鳳荘(休業中)の左脇から登山道に入る。すぐ先で道が二手に分かれ、左の南甘利山への道に入る。山腹をトラバースして良く踏まれた登山道が通じている。
やがて新しい砂防堰堤が連続する涸れ沢に近づき、夏草に覆われた涸れ沢の中を登る。すぐに右岸斜面に山の神(石祠)が現れ、そこで沢から離れて再び山腹を左へトラバースする道に入る。平坦な枝尾根を越えるところで少々道が分かり難い。ここは赤テープに導かれて小さな涸れ沢を渡ると、さらに山腹のトラバース道が続く。
広く平坦な枝尾根に着くと登山道は右に方向を変えて、尾根上を一直線に登り始める。丈の低い笹原を下生えとし、雑木を交えた檜類の林(椹?)の中の気持ち良い山道が続く。
傾斜が緩んで平坦になると右に甘利山への道が分岐する。木立を透かしてそちらの方向を伺うと、そう遠くないところになだらかな甘利山の山影が見える。この分岐は「大笹池→」の道標にしたがって直進。すぐ先に苔むした転石が敷き詰められた平地があり、木の幹に「南甘利山1652m」の山名標識が掛かっている。鬱蒼と繁る樹林に囲まれて展望はほとんどなく、木の間から富士山が霞んで見える程度。
南甘利山から大笹池に向かい、ところどころ手摺のロープも張られた急斜面を下る。丈の低い笹原の下りとなり、右手に草に覆われて湿っぽい凹地を見る。なおも笹斜面を下ると水のない谷筋に下り着き、左右に道が分かれる。道標があり、左は清良平・大笹池、右は甘利山への道となっている。この分岐から大笹池に往復したのち、甘利山に向かう。
ちなみに清良平とはどこか、興味を引かれて後日ネットで調べると、御庵沢左岸を登る林道(2019年に水害で崩落し、現在通行止)の上部にあり、元滝と称する滝があるらしい。
分岐から左に進み、笹に覆われたなだらかな谷を下ると、またすぐに分岐があり、左に少し下ったところにひっそりと大笹池がある。水深は浅いが澄んだ水を湛えた池で、よく見ると水底からプクプクと気泡が浮き上がっており、湧き水があるらしい。池の水に手を入れるととても冷たい。池の中央には鮮やかな緑の藻が浮かぶ。岸辺を伝って反対側まで行くと、池の水がドウドウと流れ出して渓流を成し、壊れた木橋が架かる。こちらから眺めた大笹池は水面に甘利山を映し、なかなかの良い眺めだ。
大笹池から分岐に戻り、甘利山に向かう。笹に覆われた浅い谷の中を登る。最初は傾斜が緩くて直線的な登りだが、途中から笹深い急斜面となり、丁寧にジグザグが切られた山道を登る。最後は樹林から抜け出し、千頭星山や奥甘利山を眺めながら登って、甘利山〜奥甘利山間の登山道に合流する。前回の山行では、この地点で「大笹池 御庵沢林道」という道標を見て、大笹池に興味を引かれたが、「急坂難所 往復1時間45分」という道標もあり、恐れをなして割愛していた。今回、訪れることができ、訪れた甲斐もあったので嬉しい。
暑さと大笹池からの急登ですっかりバテたので、木陰にへたり込んでしばらく休憩する。稜線上は風が通るので涼しい。15分程で復活。奥甘利山に向かい、急坂を登る。疎らな樹林の間から千頭星山を仰ぎ、どっしりとした山容の櫛形山を遠望する。振り返れば甘利山を見おろし、その右奥にはうっすらと富士山の山影を望む。
傾斜が緩むと、笹原の中にマルバダケブキの黄色い花が群れて咲いている。やがて「奥甘利山→」の道標のある分岐に着く。脇道に入ってちょっと登り、奥甘利山の頂上に着く。
頂上は小広く平坦で、女性ハイカーさん2人組が休憩中。三方をカラマツ林に囲まれ、東から南にかけてだけ笹原で展望が開け、富士山や櫛形山を眺め、甲府盆地南部を俯瞰する。
奥甘利山分岐に戻り、千頭星山に向かう。ここから眺める千頭星山は、樹林に覆われた急峻な山肌の上に長々と平坦な稜線を広げ、どっしりとした山容を示す。奥甘利山から疎らなカラマツ林と笹原の斜面を緩く下って、広くなだらかな鞍部に着く。この鞍部にもマルバダケブキのお花畑がある。
鞍部から登りに転じ、尾根の左斜面を斜め上に急登する。木陰に入れば谷から吹き上がる風が冷たくて涼めるが、日なたは日差しが強烈で、暑くて敵わん。時々、木陰で立ち休みを入れつつ、ゆっくり登る。
踊り場的な平地が2段あり、最後に広い斜面を登って行くと、途中に「御所山・青木鉱泉→」の道標があり、右に山道を分ける。ようやく頂上稜線の一角に登り着いて、一息入れる。あとは千頭星山まで標高差約100mで、大きな登りはない。
緩く登ってカラマツ林を抜けると、なだらかな稜線上に丈の低い笹原が帯状に続き、笹原の中に登山道が通じる。明るく開けて気分の良い道だ。行く手のそう遠くないところに、樹林に覆われてこんもりと盛り上がる円頂がある。あれが千頭星山の頂上のようだ。
ゆるゆると笹原の中の山道を辿り、最後に短い急坂を登ると三角点標石と山名標識のある千頭星山の頂上に着く。頂上は小広く平坦。樹林に覆われて展望は全くない。ここまで数組のハイカーさんとすれ違ったが、頂上には誰も居ない。腰を下ろして昼食休憩とする。まずは鯖味噌煮と缶ビール。それからカップヌードル・チリトマトヌードルを食べる。
下山は往路を戻って甘利山に向かう。千頭星山の直下で一組のハイカーさんとすれ違う(あとは甘利山まで誰にも会わず)。上空は白い雲が増え始め、奥秩父の上には積乱雲が湧いている。笹原の平坦な稜線を辿り、御所山・青木鉱泉への道を左に分けて、急坂を下り始める。行く手に甘利山を俯瞰し、甲府盆地を一望する。燦々と日に照らされた盆地は水蒸気の膜に覆われたように霞み、見るからに暑そうだ。下から吹き上がって来る風も、往路に比べるとぬるくなったり、暖かい空気の塊と冷たい空気の塊が混じっていたりする。
奥甘利山へゆるゆると登り返し、頂上への分岐を通過して、甘利山に向かって急坂を下る。大笹池分岐を過ぎ、甘利山に向かって樹林の中をゆるゆる登る。
すぐに樹林を抜け、レンゲツツジやシダ、夏草に覆われた平坦な頂上に着く。頂上の広場には「甘利山頂上 標高1731m」の山名標識がある。標高が下がり、加えて昼過ぎの一番暑い頃合いなので、日なたでは暑過ぎて、とてもではないが休憩できない。数少ない木陰にハイカーさんが集まって休憩中で、私もそこで一休みする。レンゲツツジの開花期には大変賑わうそうだが、盛夏はシーズンオフなのか、ハイカーはちらほら見かける程度だ。
甘利山からレンゲツツジ群落の中の木道を下る。「鍋頭 標高1722m」の標識とベンチがあって見晴らしのよい台地を過ぎ、甲府市街を俯瞰しながら下って樹林帯に入る。途中、1672m三角点の近くに東屋がある。暑さに加えて寝不足も応えてきたので、東屋のベンチにしばし寝っ転がって休憩。屋根の日陰に入れば風が通ってまあまあ涼しく、快適だ。
元気を回復し、甘利山駐車場に下る。登り口には「つつじ苑」というコテージ風の店があり、営業中のようだ。駐車場の車はあまり多くない。日傘をさした観光客が散歩している。駐車場の奥はキャンプ場になっているようだ。駐車場の一角に水道があり、冷たい水が飲めて生き返る。ここからは県道とショートカット道で椹池に下る。
駐車場の入り口に「登山道」という文字の掠れた古い道標があり、ここからショートカットの山道に入って下る。案の定、あまり歩かれていないようで笹藪が被さるが、道型は明瞭だ。途中、草深い作業道を横断し、山腹を斜めに下る。笹が低くなり、歩き易くなると作業道に出、すぐ先で県道に合流する。合流点には「甘利山→」の古い道標あり。
県道を下っていくと再びショートカットの山道が現れ、ガードレールを跨いで山道に入る。結構良い山道だが、県道からの入口が分かり難い(逆コースの場合も然り)。途中、「←甘利山 椹池→」の道標があり、山道にも古い木の階段があるから、だいぶ前に整備されたのだろう。
山道を下ると中途に道標があって道が分かれ、左は甘利神社、右は県道・椹池とある。左の方が道幅が広いが、ここは右に進む(すぐ後に分かったが、左が正解だった)。すぐに県道に出て、しばらく県道を歩く。
県道が左に折れ、山腹をトラバースして右に折れる地点で上から降りて来る山道に合流。「登山近道→」の道標がある。このすぐ先に「甘利神社入口」の道標があり、合点。さっきの分岐で左の甘利神社の方に行けば、ここに降りて来れた訳だ。疲れて来たので甘利神社は割愛し、県道を下ると「…池→」と読める古い道標があり、右に山道が分岐する。
この山道に入り、丈の低い笹原に覆われた樹林中の緩斜面を下る。これはなかなか良い雰囲気のフィナーレ。程なく幅広い遊歩道となり、往路の南甘利山コースの分岐を通って白鳳荘に帰り着く。白鳳荘は戸や窓が開け放たれて灯りがついており、熊鈴の音を聞きつけて管理人さんが出ていらしたので、千頭星山に登って来ましたが疲れました、と挨拶する。小屋は営業していないとのこと。メンテのために開けておられるようだ。
帰りは甘利山山麓で韮崎市神山町にある武田乃郷白山温泉に日帰り入浴で立ち寄る(700円)。この温泉は、当地出身で2015年にノーベル医学・生理学賞を受賞した大村智博士がオーナーとなり、2005年にオープンしたそうである(隣接して美術館や蕎麦処もある)。汗を流してゆっくり浸かったのち、桐生への帰途につく。三連休最終日のためか、上信越道の横川SA〜甘楽PA辺りで断続的な渋滞に巻き込まれたが、そう遅くならずに帰桐した。