工石山・程野の滝
高知市に所用があり、その後の土日を利用して、高知県の山に登ってきました。
工石山
前夜は高知市中心街のホテルに投宿。朝、はりまや橋からバスで高知空港へ移動し、空港近辺のレンタカーでSUZUKI SWIFTを借り出して出発。今日は『分県登山ガイド 高知県の山』を参考にして、工石山(くいしやま)に登る予定である。
高知市街に戻り、県道高知本山線で小坂峠を越え、鏡川支流高川川の谷間をうねうねと走って、登山口の高知市工石山青少年の家に向かう。青少年の家は、高知市から土佐町へ抜ける赤良木(あからぎ)トンネルの入口にある。青少年の家で左折して林道に少し入った地点が工石山登山口で、路側にハイカーさんの車と思しき数台の駐車がある。登山口の少し先の路側に駐車。高知では昨日まで断続的に大雨が降る天気だったが、今日は陽射しがあり、良い山歩き日和になりそうだ。
登山口から未舗装林道を上るとすぐにWCがある。「野営場」の標識もあるが、そちらは廃止されて久しい感じ。少し先で工石山登山道と三辻山登山道の分岐に着く。三辻山の方には、伐採作業中で危険なため通行禁止、との貼り紙がある。実際、車で来る途中で広大な伐採斜面が見えた。
工石山への道に入り、大きくジグザグを切りながらゆるゆると登ると、杖塚と呼ばれる分岐点に着き、南回りコースと北回りコースに分かれる。どちらを行っても工石山の山頂に至るが、ここは左の南回りコースへ入ると、山腹をほぼ水平にトラバースする道となる。
良く整備されているが、樹林に覆われて、やや単調な山道が続く。途中に「おすすめポイント⑭ ヤッホーポイント」の案内板があり、山並みの間から土佐湾が見通せる。
尾根と谷の出入りのあるトラバース道を進むと、檜屛風岩に着く。斜面に屛風のように突き出た岩場で、足元はスッパリと切れ落ちて高川川の谷間を俯瞰し、高知平野や土佐湾を遠望できるポイントになっている。
檜屛風岩を過ぎると渓流を渡渉する箇所がある。ここが賽の河原で、休憩舎もある。説明板によると、この河原はサンショウウオが観察できるポイントだそうなので、河原の石をゆっくりはぐって探してみたが見つからず、残念(石は元に戻す)。遊んでいる間に年配のおじさんグループに追い付かれる。
賽の河原から広くなだらかな尾根に取り付いて登る。「風の谷」というおすすめポイントがあり、岩場の上から周囲の眺めが広がる。その名の通り、谷から吹き上がって来る風が気持ち良い。
少し先には「天空の窓」というおすすめポイントがあり、大岩に根を張って大きな木が生えている。これはヤマグルマ、別名トリモチノキと呼ばれる常緑樹だそうだ。根本を下から見上げると、天窓のような隙間がある。
瑞々しい緑に覆われた尾根を絡んで、ゆるゆると登ると、工石山の頂上に着く。
頂上は小広い平地で、南面の展望が開け、高知平野と土佐湾が遠望できる。良く見ると高知空港の滑走路も見出せる。数基のベンチがあり、その一つに腰掛けて、ペットボトル飲料とパンでランチとする。良く晴れて、日向にいると暑い。
休憩後、北回りコースで下山する。短い急坂を下ったところの平坦な鞍部が桜岩園地で、休憩舎がある。また左手に古い木鳥居がある。鳥居を潜って少し下ると、大岩の基部に工石神社の小さな社が建つ。なかなか神さびた雰囲気がある。神社の下にも鳥居があり、参道が通じているようだが、登山道としては整備されていない。
桜岩園地に戻って先に進み、少し登って「北の頂」のピークに着く。こちらのピークは北方の展望が開け、山間の棚田を俯瞰し、四国山地中央部の山並みを遠望する。展望板があり、それと見比べながら山座同定を試みるが、ところどころ雲に隠されて難しい。石鎚山辺りは雲の中、瓶ヶ森、鋭峰の伊予富士、寒風山はなんとか識別。工石山と赤良木峠を経由して峰続きの三辻山が見え、その向こうに奥工石山辺りの山並みを遠望する。見渡す限り山また山で、秘境感がある。四国の山、奥が深い。
北の頂から北回りコースへの下り口はちょっと分かり難く、GPSで確認。北西に下り、右に折り返して急斜面をジグザグに下ると、北東にゆるゆると延びる稜線に乗る。途中、トド岩という岩場があり、ここも北方の眺めが良い。
さらにゆるゆると尾根道を下ると、天然檜風倒根がある。昭和38(1963)年の台風で倒れた檜(推定樹齢200年)とのこと。根っこが巨大なオブジェと化している。
ここで道はY字に分かれるが、どちらを行っても先で合流する。右に進むと、赤良木展望台がある。岩場の上に苔むしたコンクリ製のテラスを設けたもので、三辻山が間近に眺められる他は木の梢に遮られて、見晴しはイマイチだ。
展望台からジグザクに下り、盆栽岩という大岩の下を通る。この先で北回りコースに合流。尾根の右斜面をジグザグに下る。この区間には全国各県の県の木が植えてあるそうで、木の名のプレートが架けられている。同じスギでも、立山杉(富山)、神宮スギ(三重)、北山杉(京都)といろいろな種類がある。因みに群馬はクロマツらしい。
やがて、「工石山県民の森」の石碑やベンチのある広場に下り着く。この直ぐ先が杖塚の三叉路だ。この辺から三辻山への登山道が分岐しているはずだが、何故か見落とした。三辻山にも登る予定だったが、工石山だけで十分に満足したので、まっいいか。そのまま下って、駐車地点に戻る。
三辻山を割愛したこともあり、時刻はまだ13:20で、帰るには早い。他にも立ち寄ろうと考えて、分県ガイドにも掲載されている「程野の滝」を見に行くことにする。
程野の滝は、東滝、西滝、権現滝、大樽の滝の4つの滝の総称で、落差は50〜100m。東西約4kmの断層崖にほぼ等間隔に滝が架かる点が全国的にも珍しく、興味を惹かれる。
工石山青少年の家から赤良木トンネルを抜け、県道高知本山線を下って、地蔵寺川沿いのR439に出る。この辺り、棚田が広がる山村風景が素晴らしい。地蔵寺川を遡り、郷ノ峰トンネルを抜け、R194に出て北上。仁淀川支流枝川川沿いの狭い車道に入る。途中、にこ淵と呼ばれ、仁淀ブルーと渓谷美で有名な観光地があり、大勢の人で賑わっている。
「グリーンパークほどの」を過ぎ、林道程野支線を上る。展望台があるので立ち寄ると、眼下に東滝を見る。大きな滝であることは分かるが、全貌は見えない。東滝上駐車場まで進んで、車を置く。WCも有り。ここまでのドライブは、とにかく山奥を走って楽しい。
森林公園に続く車道を右に見送り、左の歩道に入る。最初は整備された幅広い道だが、途中、木橋で渡る枝沢は増水して洗い越しのような状態になっている。やがて、左に東滝渓谷への道が分かれるので、そちらを往復してみる。
短いが急な階段道を下ると、「東滝渓谷」の標識があり、東滝の落ち口に着く。さらに滝壺まで道があるようだが、この先は増水した沢を渡渉しなければならないので、ここで引き返す。東滝の全貌が見られず、残念。
分岐まで戻り、西滝に向かう。右側は見上げるような岩壁、左側は樹林に覆われているが急斜面で切れ落ちたトラバース道を歩く。一応、整備された山道ではあるが、大雨のためか荒れている。滑落しないように注意して進む。
やがて岩壁に鳥居と祠のある山神荒神の前を通る。岩壁の上からは、水が簾状に落ちて来る。この辺りは道型が流出して、分かり難く、そろそろ引き返そうかと考え始める。しかし、「←西滝へ0.43km」の道標を見たので、西滝までは行ってみよう。
次の沢には簡易鉄橋が架り、すぐ上流にかなり高い滝が落ちている。無名の滝だが、大増水しているせいもあり、見応えがある。
橋を渡り、岩場を石段で登る。流水を渡り、トラバース道を進む。やがて「←西滝へ0.1km」の道標があり、右に滝の上へ向かう踏み跡を分ける。あと僅かの距離だ。
トラバースして極浅い谷間に入ると、巨石が積み上がった沢に出て、膨大な量の水が滝上から落ち、水飛沫が暴風雨のように吹き付ける。これは物凄い迫力だ。普段の水量はどれくらいだろう。この西滝も見えている範囲は一部で、全貌は窺えない。登山道は沢を渡渉し、さらに権現滝、大樽の滝まで続いているが、もう夕刻だし、ここの渡渉も危険だ。迫力ある西滝を見ることができたので、これで満足して往路を引き返す。
東滝上駐車場に戻ると、駐車が1台増えていて、水着から着替え中の若者が2人。話を聞くと沢を下って、東滝まで行ったらしい。さすがに落ち口までだろうが、チャレンジャーだなあ。彼らが帰ったのと入れ替わりに別の若者5人グループの車も来て、歩道の方に歩いて行ったが、観光の格好なのでどこまで行けたかな。いずれにしても、程野の滝の探訪は軽いハイキングではなく、完全に山歩きと考えた方が良い。
帰りは仁淀川沿いにR194を走り、高知市街の宿に向かう。仁淀川は、中流ではV字谷の底を谷幅いっぱいに流れ、下流では幅広くゆったりと流れて、大河の風格がある。眺めも良く、ドライブしていて楽しい。
宿に帰着し、シャワーで汗をさっぱり流したのち、街に出る。和食処で夕食とし、🍺や黒霧島、ぶりかま塩焼きやイサキの焼き物を美味しく頂く。明日は三嶺に登る予定だ。ワクワク。