戸谷峰〜六人坊〜三才山〜烏帽子岩

天気:
メンバー:T
行程:三才山出合ドライブイン 6:20 …戸谷峰(1629m) 7:45〜8:10 …六人坊(1619m) 9:30〜9:40 …三才山(1605m) 9:50〜10:25 …三才山峠 10:30 …烏帽子岩分岐 11:05 …烏帽子岩(1621m) 11:15〜11:25 …三才山出合ドライブイン 13:10
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

桐生を未明の3時過ぎに車で出発。上信越道を走って長野県に入ると、行く手にまだ雪を残す北アの連嶺がずずずぃーっと見えて来て、テンションが上がる。良く晴れて、今日は絶好の山歩き日和だ。高速を東部湯の丸ICで降り、丸子町を経て、R254を松本方面へ向かう。上田・松本市境の山岳を三才山(みさやま)トンネルで抜け、下り坂の途中にある三才山出合ドライブインの駐車場に車を置く。駐車場の片端に二八そばの看板を掲げた小店舗があるが、シャッターが下りていて、久しく休業中な様子。

今日はここから戸谷峰に登り、六人坊、三才山へ縦走して上田・松本市境の三才山峠に至り、烏帽子岩を経由して戻る周回コースを歩く予定だ。数台の駐車があり、多分、同様のコースを歩くハイカーさんの車と思われる。

戸谷峰へは、R254を挟んで駐車場の向かいの法面の傾斜路が登山口となる。かっ飛んでくる車に注意してR254を横断。登山口には「戸谷峰2.2km」の小さな道標が雑草に埋もれてある(戸谷峰までは美ヶ原高原ロングトレイルとして整備され、要所に道標がある)。

三才山出合ドライブイン(休業中)駐車場
R254を挟んで向かいに登山口
「戸谷峰2.2km」の道標あり

傾斜路を登り、頑丈な防獣柵をゲートで通過し、急峻な山腹を斜め右上に登って行く。急斜面の下方はR254だから、万が一にも石を落とさないように気を使う。良く踏まれて快適に歩ける山道が深い樹林中に続く。ところどころでゴーロの急斜面を横断する。

急な山腹をトラバース
ところどころでゴーロを横断

樹林が切れた所から、三才山峠辺りの稜線やV字の谷底に光るR254の路面が眺められる。陽当たりの良い所ではハルゼミが盛んに鳴いていて、早くも初夏の雰囲気。谷間に入り、ゴーロの多い斜面をジグザグに登る。途中、上方の斜面でゴソゴソ音がするなと思ったら……🐻🐻だ!2頭のクマが斜面を横切っている。急いでレンズを向けたが、既に視野から去っていた。熊鈴の音でこちらに気付いて逃げたようだ。鉢合わせせずに済んで良かった。

三才山峠方面を望む
「戸谷峰1.2km」の道標あり
ジグザグに登る
支尾根に登り着く

やがて支尾根の上に登り着くと「←戸谷峰0.7km」の道標がある。ここから支尾根上の登りとなる。露岩の多い急坂を越え、傾斜が緩んで幅が広がった支尾根をジグザグに登る。

支尾根を急登
幅が広がった支尾根を登る

左へ斜上して頂上稜線の一角に登り着き、四賀金山町を登山口とする登路を左(西)から合わせる。「←四賀金山町5.7km 戸谷峰 0.1km→」の道標があり、頂上まであと僅かだ。

四賀金山町からの登山道を合わせる
頂上稜線を辿る

樹林も少し低くなり、ところどころで旬のヤマツツジが咲く稜線を辿る。程なく、三角点標石と山名標識のある戸谷峰の頂上に登り着く。

ヤマツツジ
戸谷峰頂上

頂上は平らで小広く、樹林に囲まれているが雰囲気は明るい。西側の樹林のみ伐採され、松本盆地や槍穂連峰の眺めが開ける。今日はこれが見たくて来た。持参の双眼鏡でじっくり展望を楽しむ。左には乗鞍岳がどっしりと大きい。前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳が並び立ち、常念岳と大天井岳の間に槍ヶ岳の鋭峰が見える。前衛ながら黒々とした台形の山容の有明山が目を惹き、その右に餓鬼岳が意外と高い。右は蓮華岳まで見える。素晴らしい山岳展望だ。これを見ると、この夏は北アに登りたくなるな。

戸谷峰から槍穂連峰の展望
戸谷峰の山名標識と三角点標石

展望を楽しんだのち、六人坊に向かう。が、初手から方向を間違えて、北尾根に迷い込む。しばらく平坦な尾根を辿ると、柱に大日如来と刻まれた石祠がある。この先で、道は尾根を急降下し始めたので、念の為GPSで確認したところ、ルートミスが発覚。いやー、うっかり。石祠が見られたのは怪我の功名で良かった。なお、北尾根の道は保福寺町に通じているようである。

北尾根に迷い込む
大日如来を祀る石祠

頂上まで戻って、仕切り直し。東へ尾根を辿る。急坂で、一部にロープも固定されている。やがて傾斜が緩んで、下生えにシダや草の緑が広がる尾根となる。樹林に覆われているが、行く手に六人坊のこんもりとしたピークが垣間見える。

六人坊への縦走路はこちら
急降下ののち傾斜が緩む

やがて送電鉄塔を通過。梢越しに木曽御嶽山が遠望される。幅広くなだらかな尾根となり、小さくアップダウンして進む。ハルゼミがシャワシャワ、ギーッ、チッチッと合唱して賑やかだ。二つめの送電鉄塔を過ぎると登りに転じ、露岩の多い細尾根を急登する。

一つめの送電鉄塔
送電鉄塔から木曽御嶽山を遠望
なだらかな尾根を辿る
二つめの送電鉄塔
ここから急登
細尾根を辿る

1562m標高点付近の平坦な尾根から急坂を経て、再び平坦になると三角点標石のある六人坊の頂上に着く。傍の松の幹に文字が消えかけた山名標識がある。樹林に囲まれて、展望はほとんどない。

六人坊頂上
「六人坊」の山名標識
六人坊の三角点標石
イワカガミ

平坦な稜線をさらに東進。咲き残ったイワウチワを見る。アオダモのポワッとした白い花が綺麗だ。平坦な稜線の終点が三才山の山頂で、側の立ち木に小さな山名標識がある。ここも樹林に囲まれて、展望はない。時間は早く、場所もちょっと狭いが、今日の行程の半ばまで来たし、ここいらで昼食にしよう。レジャーシートを敷いて腰を下ろし、缶ビールに鯖味噌煮、カップヌードルカレーを食べる。麺を啜っていたら、女性のソロハイカーさんが通過。挨拶して話を伺うと、同じコースを歩いておられるとのこと(この日、山中でハイカーさんに遭ったのは、この方のみ)。

平坦な尾根を進む
アオダモ
三才山頂上
三才山の山名標識

昼食後、三才山の頂上から急坂を下って、三才山峠に着く。峠には市境稜線を絡んで未舗装の林道が通じているが、路面は荒れて、車両の往来は稀な感じ。峠には「三才山峠」と刻まれた御影石の石標、「三才山トンネル通過地点 林道蝶ヶ原線管理委員会」の看板が建つ。三才山峠の由来を記した説明板もあり、それによると江戸時代は松本城主が参勤交代で通行したが、保福寺越が使われるようになり、脇道になったとのこと。また、西麓の奈川や一ノ瀬の白木の材を牛に積んで、この峠越えで運んだとのことである。地形図には峠道らしき破線はなく、昔の峠道はどこを通っていたか、ちょっと興味が湧く。

急坂を下る
三才山峠

松本側の山腹を僅かに登り気味にトラバースする林道を辿る。樹林に覆われているが、一部切れた所から戸谷峰〜六人坊・三才山の稜線を望み、北アを遠望する。また、行く手の稜線には小ピークがこんもりと盛り上がり、その左に棘のような岩塔が見える。あれが烏帽子岩だろう。

林道蝶ヶ原線を歩く
戸谷峰を望む
右奥に烏帽子岩を望む
烏帽子岩分岐

やがて道標のある烏帽子岩分岐に着く。「←武石峠1.7km」の道標があり、左(東)へ稜線伝いの山道を分ける。烏帽子岩へは右(西)の山道に入る。入口には「烏帽子岩0.4km」の道標がある。なだらかな稜線を絡んで山道を辿り、巻道を右に分けて短い坂を登ると、烏帽子大権現の赤鳥居に着く。烏帽子岩(烏帽子大権現)についての説明板があり、次のよう書かれている。

古代より神が降る磐座(いわくら)として崇められ、山の神として、また女鳥羽川の源流の水神として信仰された。 御射神社秋宮や一の瀬・稲倉の水口神社の奥宮でもあり、古くから雨乞いが行われた。

巻道を右に分けて直進
烏帽子大権現の鳥居

鳥居を潜ってすぐ上が頂上で、切れ落ちた崖を背にして二つの祠が建つ。祠の背景には市境稜線が横たわり、浅間山を遠望する。頂上の一角には「故和合一彦君」と読み取れる石碑があり、遭難慰霊碑のようだ。祠から右へ少し下って岩場に立つと、武石峰と女鳥羽川の源流域を背景にして、ぐっとそり返って聳える岩塔を見おろす。これが烏帽子岩だ。迫力ある奇観で、美ケ原高原ロングトレイルの烏帽子岩コースの案内で、全国の烏帽子岩の中で3本の指に入る、と紹介されているのも頷ける(ところで、残りの2つはどこだろう)。

烏帽子大権現
烏帽子岩(背景は武石峰)

烏帽子岩の天辺は斜めに切り落としたような鋭いエッジをもつ面となり、岩全体の形は鑿や旋盤のバイトを連想させる。良く見ると、天辺には残置ピトンとロープがあり、あな恐ろしや、ロッククライミングした人がいるらしい。それにしても絶景だ。お勧め。

見事な景観を堪能したのち、下山にかかる。少し下った小鞍部で山道を外れてガレ場を下り(足元注意)、烏帽子岩を見上げる写真も撮ってみる。こう見るとあれだ、🍆だな😅

女鳥羽川の源流域を覗き込む
烏帽子岩を見上げる

右から巻道を合わせ、なだらか尾根上の山道をゆるゆると下る。1572m標高点付近は尾根の左斜面を巻き、1522m標高点の手前から右斜面を大きく下ってトラバースする。この辺り、カラマツ林の下生えが一面のオシダの大群落で、なかなか綺麗で壮観である。

巻道と合流
ゆるゆると尾根を下る
オシダが繁茂する山腹を下る
新道を左に分けて右へ

尾根上の道に戻るとY字の分岐に道標があり、どちらも「三才山一の瀬」を指している。右の道は地形図に破線で記載されている。左の道は記載なしなので、多分、新道だろう。ここは右の道を辿ってみる。しばらく、浅い窪の中をなだらかに下り、斜面をトラバースして、送電線の下を潜る。送電線に沿って樹林が切り開かれて、戸谷峰を仰ぎ見る。

浅くなだらかな窪を下る
送電線の切り開きから戸谷峰を仰ぐ

再び樹林に入り、小さな起伏の多い山腹をジグザグに下る。やがて浅い窪に入ると湧水がある。しばらく水流に沿って下り、やがて沢から離れて左岸の急斜面をトラバースする。足元注意。下方から微かに車両の走行音が聞こえて来て、R254に近づいたことがわかる。また、標高が下がるに連れて気温が上がり、暑いくらいになってきた。

水流に沿って下る
急斜面をトラバース

山腹を斜めに下って左に回って行くと、左から新道を合わせる。新道の方が距離は短そうだ。作業道に出、道端の花を眺めながら下ると舗装された林道に出る。この地点には道標がある。林道を辿り、防獣フェンスをゲートで通過(逆コースの場合、この地点はY字路になっていいて、左右にゲートが並ぶが、道標はない。烏帽子岩は右のゲートを通る)。

尾根末端を回り込んで下る
新道を左から合わせる
作業道を下る
アヤメ
林道に出る
防獣ネットのゲートを通過

ゲートから林道を直進すると、すぐに車道に出る。この地点には道標あり。車道を右へ上がる。道端には養蜂の巣箱が並んで置かれ、大勢の蜜蜂がブンブン飛び回っている(危険はない)。振り返ると、下って来た尾根を見上げ、右の谷の奥には武石峰辺りの市境稜線を垣間見る。なかなか山が深い。

車道に出て右へ
下って来た尾根を振り返る

R254に出て上田側に少し上がり、三才山出合ドライブインの駐車場に帰着する。駐車は5台程に増えていた。今日のコースは良く整備されたハイキングコースで快適に歩けたし、距離や急登がある点で、日帰りの山歩きに適度な歩き応えがあった。また、戸谷峰頂上の展望と烏帽子岩の奇観は特筆に値すると思う。

三才山出合ドライブインに帰り着く
大塩温泉共同浴場

帰りは鹿教湯温泉の東にある大塩温泉の共同浴場に入浴で立ち寄る。お客さんは誰もいなくて独占状態。利用料金は200円。備え付けのシャンプーや石鹼はない。ここは源泉湯温が約34℃と低いが、今日のような暑い日は丁度良い加減だし、浸かっているとポカポカ温まる。穴場で好みだ。汗をさっぱり流したのち、桐生への帰途についた。