大月雷電山〜天道山〜あわぎ山〜福徳山
建国記念の日の3連休の初日は休養に充てた。2日目は手軽かつ多少は歩き応えのある山歩きがしたい。という訳で、近場の足利百名山で未踏の山4座程を繋いで歩いてきました。
桐生を朝遅く車で発ち、足利市山川町の長林寺の駐車場に車を置く。ここは毛野大坊山ハイキングコースの起点で、2005年に大坊山〜大小山を歩いた際、電車とバスを乗り継いで来たことがある。既に十数台の駐車があり、ちょうど出発するハイカーさんもいる。今日は足利市街を歩いて大月町の鹿島神社に向かい、そこから山歩きをスタートして、ハイキングコースに合流して戻って来る予定なので、ハイカーさんとは逆の方向に歩き出す。
住宅街の路地を通り抜け、交通量の多い県道足利環状線を袋川沿いに北上する。行く手には足利北部の低山が広がり、その奥の遥か遠くに白い袈裟丸山と皇海山を望む。前々日は関東甲信越で雪が降ったが、見る限りでは、この近辺の山には雪は残っていない。
大麦工房ロアの大きな工場の手前で足利環状線を右折し、工場直売店の前を通って、大型ショッピングモール(アシコタウンあしかが)の裏通りを歩く。この辺りは大規模で新しい工場・商業施設が建ち並び、活気を感じる。街並みの東側に連なる低山の一峰が、今日、目指す足利百名山(以下、足百)の一つの天道山のようだ。
やがて閑静な住宅街に入ると、道端に大きな石灯籠がある。「雨降山」と刻まれており、どの山か気になる。「…弘化三星次丙午…」の銘も読み取れる。後日調べると弘化三(1846)年は江戸時代後期、関係ないが、アマビエが出現したとされる年である。
石灯籠のすぐ先でT字路に突き当たり、すぐ右に威怒(いぬい)神社がある。門前に「戌亥神社からのお知らせ」と題した今月の日付の掲示があり、お賽銭を神社の老朽化した雨戸の張り替えに充てたとのこと。見れば確かに新しい。
やまの町桐生の大月御嶽山の記事によると、ここから東の尾根に取り付くと御嶽山神社と奥宮がある、とのこと。興味が湧くが、取り付き付近は現在、和田耕地沢の砂防堰堤工事用道路の工事中(〜R4年3月25日)で、休日の今日も重機が動いている。御嶽山神社の探訪は工事完了後のまたの機会にしよう。
T字路の左の道を進み、低い丘の裾を回って北に向かう。鹿島神社の入口は、道路が拡幅されたためか何の目印もなく(かつては石灯籠と参道標柱があったようだ)、うっかり通過。蜜蔵院まで行ってしまい、尾根の末端を越えて鹿島神社に出、確認のため入口まで戻る(ルート地図では、この間のGPS軌跡は消去)。
仕切り直して、鹿島神社からようやく山歩きがスタートとなる(前段が長い😅)。石鳥居の前には「例大祭 鹿島神社 大月 毎年4月第一日曜日」と染め抜かれた新しい幟が立てられている。神社の裏手に回り、雑木林を切り開いた園地を左上に登って、すぐに尾根上の山道に入る。道型は明瞭で良く踏まれ、冬枯れで藪もないから快適に歩ける。
程なくベンチと石祠のある小平地に登り着く。ここが雷電神社だ。少々木立が邪魔するが、大月町を見おろす眺めが得られる。園地をジグザグに登って来る通路もあるが、そちらは枯れススキに覆われて藪っぽい。石祠には「發願主密藏院秀栄」の銘がある。
雷電神社から尾根を絡んで雑木林の斜面をひと登りすると、雷電山の頂上に着く。三角点標石と足百№53雷電山の古く朽ちかけた山名標識がある。木立に囲まれて展望はない。正午を過ぎ、そろそろ昼食休憩としたいが、もう少し進んでおこう。
雷電山から上下の少ないなだらかな尾根を辿る。冬枯れの雑木と常緑樹に覆われ、眺めはあまりないが、木立の切れ間から左手一面に広がるゴルフ場や、その向こうのつつじ山〜足利鉱山の稜線が眺められる。ゴルフ場からは、ときおり打球音が微かに聞こえて来る。
ゆるゆると尾根道を辿り、山神宮と刻まれた石祠を通過。短い坂を登って小岩峰の頂に着く。岩の上に立つと展望が開け、足利市街を俯瞰し、北部の山々、遠く袈裟丸山や皇海山を望む。西に落ちる枝尾根には赤松が立ち並び、その下には工場の大きな建物の屋根が見える。明るく気分の良い場所なので、ここで昼食にしよう。All-Freeで喉を潤し、久し振りにガソリンコンロを使ってお湯を沸かし、カップ麺の天ぷらうどんを作って食べる。
近づく足音にハッと気づくと、雷電山の方から男性ソロハイカーさんがやって来た。こんなマイナーな里山を歩く人が他にいるとは喫驚。挨拶を交して先に向かわれた。しかし、登山SNSを覗くと足百を登った記録は増えているから、もうマイナーではないのかも。
のんびり休憩した後、縦走を再開。小岩峰から一旦下り、露岩と松が多く、里山にしては風情のある尾根道を緩く登る。御嶽山の頂上は気づかずに通過。日陰には僅かに雪が残る。小さくアップダウンし、文字の掠れた古い道標があるなと思ったら、長林寺〜大坊山のハイキングコースに合流していた。小岩峰から20分弱で着き、意外とあっけない。
ハイキングコースを長林寺方面に向かい、ちょっと登ってベンチと道標がある220m圏ピークに着く。ここでハイキングコースから一旦外れて、天道山に往復して来る。道標には「←天道山 15分」と書いたテープが貼られ、所要時間がわかってありがたい。
天道山に向かって、西へ分岐する枝尾根を辿る。道型は明瞭。小さな岩場を登り、南北の眺めが良い展望地に出る。北には辿って来た雷電山からの尾根、その向こうに山王山から鳩ノ峰にかけての山並みを望む。また、南にはこれから辿る山川浅間山が見える。やまの町桐生では、この展望地を大月山と仮称している。
展望地から先へ、結構大きく下る。登り返すと新しい御影石の石祠(月之宮)が南向きに建つ。天道山の頂上はこのすぐ上だ。頂上の岩場にはこれも新しい石祠(日之宮)と石碑、足百№45天道山の新しい山名標識がある。石碑には「昭和五十八年二月二十三日焼失 再建費寄付者芳名」「天道山 日月神社」と刻まれている。
頂上から先には山麓の大月町からの参道が通じ、石灯籠や手水があるそうだが、それを見に行くのは今日は割愛。往路を戻り、えっちらおっちら登り返して、ハイキングコースに復帰する。途中で先程のソロハイカーさんとすれ違う。多分、つつじ山方面に立ち寄って来たのだろう。ハイキングコースから天道山往復はちょうど30分かかった。
ハイキングコースを長林寺方面に向かう。少し急な坂を下り、鞍部で右に初心者(シルバー)コースを分ける。ここは直進して健脚者コースを登る。
健脚者コースと言っても露岩が多い急な坂道なだけで、すぐにあわぎ山の頂上に登り着く。前回、逆コースでここを歩いたときも健脚者コースを歩いたから、この頂を踏んでいるはずだが、当時は足百№33あわぎ山の山名標識はなかったし、そもそもあわぎ山の存在を知らなかった。
再訪してみれば、露岩が点在する山頂は360度の展望があり、開放的で雰囲気の良い頂である。東には谷を隔てて、昨年末に歩いた大坊山とつつじ山(山行記録)を望み、谷間には鹿島園の大きな建物を俯瞰する。南にはやはり露岩の多い尾根が落ち、その先にこれから向かう山川浅間山やぽっこりと丸い頂の福徳山(ふっとくやま)を見おろし、関東平野を一望する。
展望をカメラに収めていると、先程のソロハイカーさんが登って来て三度目の遭遇となる。速いな〜。写真を撮って、ささっと戻って行かれた。私は南へ尾根を下る。小さな岩場を下ると初心者コースに合流し、ベンチのある見晴台に着く。富士山や赤城山の方向を示す古びた大きな道標があるが、今日は薄雲が広がっているので、残念ながら遠望は得られない。
見晴台の直下で再び初心者コース(左)と健脚者コース(右)に道が分かれ、ここは右へ。ザレと岩場のある急斜面をジグザグに下り、初心者コースと合流して、「大坊山周辺案内図」の看板とベンチのある広場に下り着く。ここからは174m三角点峰の山腹をトラバースしてほぼ水平な幅の広い道となり、程なく自衛隊道路に出る。
自衛隊道路を横断し、再び山道に入る。長林寺に下る初心者コースを右に分け、山川浅間山の登りに取り付く。小さな鎖場を越え、小尾根を登る。振り返るとあわぎ山の頂とその奥につつじ山の頂が眺められる。ひと登りで山川浅間山の大きな石祠のある頂上に着く。石祠の傍の立木に足百№66山川浅間山の山名標識がある。木立に囲まれて展望はない。
頂上を過ぎると、行手に木立を透かしてぽっこりした頂きの福徳山とぺったんこな頂きの荒神山が見える。長林寺への近道を分け、尾根道を進むと広場に出る。鉄柱や「紀元二千六百年記念」と刻まれた石柱、「清風翁頌徳之碑」の石碑などの宗教的遺物がある。ハイキングコースはここから長林寺へ下っている。
広場から、まず荒神山を往復する。荒神山に向かう尾根の入口は笹藪に覆われて、さてどこから入るのやら。夏は絶対行きたくない所だ。藪の僅かに薄い所から踏み込んで微かな踏み跡(多分、けもの道)を辿ると、笹藪を抜けて樹林に入り、踏み跡が現れる。
最後にちょっとだけ登って、荒神山の頂上に着く。山頂は石畳状の岩場となっている。付近は赤松の枯れ木や倒木が多くて、乱雑な印象。足百№76荒神山の古い山名標識を確認。木の間から麓の住宅街を間近に見おろし、隣りにぽっこりとした福徳山のピークを望む。
広場に戻り、福徳山に向かう。こちらは明瞭な踏み跡が通じている。最後に急坂を登って、三角点標石のある福徳山頂上に着く。山頂は小広く平坦で、松の梢越しに足利の中心市街や太田金山、八王子丘陵の眺めが得られる。市街地に突き出た岬状の里山で、麓の幹線道路の交通や両毛線の列車の音が聞こえて来る。あとは下るだけだし、小腹が減ったので、少し休んでチョコレートを齧る。
福徳山から南麓へ下る。露岩と赤松のやや急で広い尾根を下り、常緑樹林に入る。道型ははっきりしているが、樹林中は落ち葉がふかふかで、歩かれている様子はあまり窺えない。途中にあるという秋葉神社はうっかり見逃した。
最後は笹藪にすっかり覆われた擬木の階段を下り、崩壊土砂防護柵の隙間を通る。ここには「福徳山→」の標識がある。柵を降りた所の左手に天満宮の社殿があり、お参りして門前の車道に下り着く。
あとは車道を歩いて長林寺に戻る。この道もハイキングコースに設定されているようで、民家の軒先に道標を見る。駐車場の車はだいぶ数が減っていた。約5時間の軽い行程の里山歩きだったが、足利の山らしい露岩と松の尾根の道が続き、変化に富んで楽しめた。
帰りは足利鹿島園温泉に初めて立ち寄る。鹿島園は以前から興味を持っていたが、HPのセンスが怪し過ぎて😅、訪問は二の足を踏んでいた。
実際に来てみたら、開けた谷間を占拠してゴルフ練習場と巨大な建物が建ち並び、昭和のレトロで摩訶不思議な雰囲気が横溢。建物に入り、1F受付で入浴料600円を払う。大浴場はB1にあり、窓がなく天井には配管が剝き出しで、温泉情緒は全然ないが、湯船は広く、湯加減も程よい。100%天然温泉(単純温泉)とのこと。お客さんも結構多い。この辺りでは貴重な温泉だし、山歩きの後に立ち寄るのは悪くない、と思った。