塚山〜太田部峠

天気:
メンバー:T
行程:矢納水源の森 7:15 …塚山古墳群 9:00 …塚山神社跡 9:10 …塚山(954m) 9:25〜9:35 …竹ノ茅山(978m) 10:15〜10:20 …三ッ山(849m) 11:10 …鞍骨山 11:25〜12:00 …太田部峠 13:10〜13:20 …矢納水源の森 14:35
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

この週末の天気予報は、土曜が曇り、日曜が雨となっていて、いまいち。トレーニングはしておきたいので、土曜に神流湖南岸の塚山に出かけることにする。塚山は地形図に山名が記載されているので、以前から一定の興味はもっていたが、植林に覆われた地味な山というイメージがあって、訪問を後回しにしていた山だ。塚山には失礼ながら、天気がいまいちでもトレーニングには手頃な山ではないかな、と。

しかし、出かけてみると、太田部(おおたぶ)の山村風景、山中にある塚山神社跡の磐座(いわくら)、三ッ山付近の岩尾根歩き、伐採地からの大展望、太田部峠の古の峠道歩きと見所が多く、タイミングがドンピシャの花見もできて、大変充実した山歩きが楽しめました。

桐生を未明に車で出発。R462で本庄、鬼石を経由し、神流湖北岸を走る。上空は灰色の厚い雲に覆われ、周囲の山々の頂は雲の中で見えない。途中にある長井屋製菓には、7時前だが営業中の看板が出ていた。帰りに立ち寄って、久し振りにまんじゅうを土産にしよう。

神流湖上流部に架かる狭く長い吊り橋(太田部橋)を渡り、県道吉田太田部譲原線を走って、太田部川の谷間に入る。周囲の山肌は急峻で、思ったより谷が深い。県道と太田部集落への林道(太田部峠2号線)の分岐点付近の路側スペースに車を置く。外に出ると小さな雨粒がポツポツと頰に当たったが、出発準備が整う頃には止んでいた。

県道が太田部川を渡る楢尾橋は真新しく、補修が完了したようだ。ただし、まだカラーコーンとバーで車両通行止めになっている(多分、近日中に開通)。まず、楢尾橋を渡り、対岸の矢納(やのう)水源の森の湧水地に立ち寄る。フェンスの後ろの低い崖の数か所から豊富に水が湧き出している。崖を覆う苔の緑が生き生きと鮮やかで綺麗。水は冷たくはないが、美味しい。


駐車地点(林道太田部峠2号線起点)


矢納水源の森

林道を太田部の集落に向かい、小さなS字カーブを過ぎた地点から枝沢左岸の踏み跡(地形図上の破線路)に入る。荒れてはいるが明瞭な踏み跡を辿り、砂防堰堤の下で切り返して山腹を登ると、山上の畑地に出る。畦道を登り、すぐに車道に出て左の谷間に少し下ると、曲がり角に「←太田部塚山古墳群」の古い道標があり、簡易舗装の脇道が分岐する。

丁度、車道の反対側から二人組ハイカーさんがやって来て、挨拶を交わす。同じく、塚山に登るとのこと。塚山には既に何度か登っているそうだ(後日、ヤマレコにこの日の山行記録がアップされ、お二人はkotakkyさんとpatochanloveさんとわかったので、以下、イニシャルで表記させて頂く)。


ショートカット入口


曲がり角から脇道へ

簡易舗装の脇道を上り、最初のY字の分岐は右へ。急な斜面に民家が散在する集落の中の細道を辿る。途中に道標はなく、初めてでは迷う分岐もあるが、K&Pさんが道をご存知で助かる。


民家の裏手を通過


民家の右を通る

集落を抜けて右折し、山畑の中の細道を登る。K&Pさんの前を、地元のおじいさんが歩いている。どうも、仕掛け中の罠の見回りをされているようだ。畑跡の枯草の間には旬の蕨が出ている。振り返ると、灰色の雲の下、谷を隔てた山腹に楢尾の集落が見える(現在は無人だそうだ)。


この花木は何?


山畑跡の細道を登る


谷を隔てて楢尾集落を望む


杉林内の山道を登る

山端から杉林に入り、山道をジグザグに登る。やがて山腹をトラバースする作業道に出る。「塚山古墳群↑」の道標にしたがって作業道を横断。さらに山道を辿る。


作業道を横断(道標あり)


山道を辿る

再び、作業道に出る。この作業道は真新しく、K&Pさんによると前回あった山道がなくなっているそうだ。作業道を離れて道のない植林帯に入り、塚山古墳群を探すが、それらしいものは見当たらない。Kさんがスマホで過去ログを見て位置を確認し、ようやく「塚山古墳群」という標柱を探し当てる。周囲を見渡しても植林帯の緩斜面が広がるばかりで、どれが古墳なのかは、さっぱりだ。しかし、見るべきもの(=標柱)は見たので、気分はスッキリする。


塚山古墳群


塚山神社跡の石灯籠

塚山古墳群から杉植林に覆われた緩斜面をトラバースして進むと、一対の石灯籠があり、その奥に苔むした大岩が積み重なった磐座が現れる。この磐座が塚山神社だ。ヤマレコのyamadanuki氏の山行記録によると、以前は城峰神社と張り合うほどのにぎわいを見せたそうである。今は、磐座の前に石塔や石垣が残るのみ。天辺には石祠がある。磐座の周囲は平坦な草地となり、忽然と大岩が積み重なった様子は自然の造形というには不思議で、信仰の対象になったのも頷ける。これは一見の価値あり。この奥にも小振りの磐座があり、天辺に石祠がある。


磐座の上に石祠(大天狗)


奥の磐座の石祠(小天狗)

塚山神社の奥をひと登りして稜線に出る。反対側斜面は広大な伐採地で、晴れていれば大展望が開けそうだが、今はガスに覆われて何も見えない。ここから稜線を左に辿り、雑木林の急斜面の登りに取り付く。


稜線上に出る


塚山へ急登

急登をこなしてTVアンテナの脇を通り、小広い平地に三角点標石のある塚山の頂上に着く。南と東は植林に覆われて薄暗い。北と西は雑木林で、木の間越しになんとか眺めが開ける。少しガスが薄まり、西に埼玉・群馬県境上のピークが眺められる。

先に到着していたK&Pさんと、この先はどちらへ、という話になり、何と同じコース取りであることがわかって、双方びっくり(この後も互いのペースを保ちつつ、付かず離れずで進むことになる)。


塚山頂上


埼玉・群馬県境上のピークを俯瞰

しばらく休憩したのち、先行したK&Pさんに続いて、西へ稜線を下る。急降下すると右手が伐採地となって眺めが開け、眼下に神流川、その向こうには東御荷鉾山から雨降山にかけての稜線が、ガスを通して薄らと眺められる。天気は徐々に良くなっているようだ。稜線上に通じる作業道を辿って、急坂を下る。


伐採地から神流川北岸の山々を望む


稜線上の作業道を辿る

鞍部に下り着いて、稜線の右下を通る作業道に出合う。作業道と分かれて、稜線伝いの踏み跡を辿る。檜林に覆われた細尾根となり、小さくアップダウンしながら進む。稜線の右下には作業道が並走する。


作業道と並行して細尾根を辿る


塚山と竹ノ茅山の鞍部から北面の眺め

やがて広く急な斜面の登りとなり、一直線に上り詰めると2基の大きな電波塔が建つ。その一方には「群馬県防災無線万場中継局」の銘板あり。竹ノ茅山の頂上は電波塔のすぐ先だ。標高978mは今日の行程中の最高点だが、檜植林に覆われて、展望は全くない。


竹ノ茅山へ急坂を登る


竹ノ茅山頂上


頂上の2基の電波塔


南面を急降下

竹ノ茅山の頂上から南へ、杉林の斜面を急降下する。地面が適度に柔らかいので歩き易いが、振り返って見上げると、かなりの急傾斜だ。サクサク下ると傾斜が緩み、小さなアップダウンのある尾根歩きとなる。

やがて、北面が大規模に伐採された地点に出て、大展望が開ける。眼下の斜面と谷間は至る所が伐採され、これだけ広範囲な伐採地はあまり見たことがない。正面には塚山の丸みを帯びた山容がもっさりと大きく、左に竹ノ茅山まで植林帯の稜線が連なる。塚山の右には神流湖の湖面が見える。谷間には太田部集落、さらに右奥には城峯山を遠望し、ここから城峯山へと連なる山並みが眺められる。


尾根を辿る


広大な伐採地から塚山を望む


城峯山(左奥)に続く稜線


三ッ山へ岩尾根を登る

左に伐採地を見ながら鞍部に向かって急降下。鞍部にはK&Pさんが見え、その先の岩場を交えた稜線にはポツポツとピンク色が見える。これは期待。

鞍部から急登して岩尾根の上に出ると、瑞々しくて正に見頃のアカヤシオがたくさん咲いている。そればかりかヒカゲツツジも群生していて、こちらも旬だ。どちらも全く予期していなくて、かなり嬉しい。ベストタイミングで、天気が悪いのに来た甲斐があった。


アカヤシオ(1)


ヒカゲツツジ


アカヤシオ(2)


アカヤシオ(3)

簡単な岩場を登ると、石祠を祭る岩峰の天辺に着く。ここは、ほぼ360度に眺めが開け、なかなかの好展望。南西には父不見山を遠望し、南には秩父市北部の山並みと谷が広がる。あちら方面の山はまだ登ったことが少なくて疎いので、確かではないが、奥に見える左右に長い稜線は白石山(小鹿野町)かな。興味を惹かれる。


岩峰に登る


岩峰の上に石祠


白石山(奥)を遠望


父不見山(右奥)を遠望

岩峰を下り、岩稜を左から躱して次のピークに登ると「三ッ山849m」の山名標識がある。面白い岩尾根の区間は短くて、ここで終了。再び植林帯の稜線となる。大伐採地を左に見ながら、新しい防獣ネットに沿って歩く。


三ッ山頂上


大伐採地の縁を辿る

小さくアップダウンして、「鞍骨山850m」の山名標識のある小ピークに着く。そろそろ腹が減ったので、ここで昼食にしよう。展望を楽しみながら缶ビール、レトルトサバ味噌、カップ麺の「横浜もやしそば」をいただく。このそばは、ニラととろみのあるスープが美味いな。


鞍骨山頂上


鞍骨山から塚山を望む

昼食後、縦走を再開。鞍骨山から少し進んで右折、伐採地から離れる。植林に覆われた小尾根を下ると、林道上武秩父線に出る。しばらく、舗装された林道を辿る。車の通行は全くない。803m標高点の小さな高まりを左に見て通過。左の稜線が低くなったところで、林道から稜線上の山道に復帰する。


竹ノ茅山を振り返る


尾根を急降下


林道上武秩父線に降りる


林道から稜線上の山道に復帰

植林の尾根をちょっと急登すると、再び伐採地に出る。城峯山にだいぶ近づいて来て、頂上に建つ電波塔が視認できる。


植林の尾根を急登


左は広大な伐採地

左には太田部の集落を俯瞰し、その向こうには神流川北岸の雨降山がどっしりと大きい。伐採地の縁を登ると、標高855mの三角点標石(点名:幕岩)のある平坦な頂に着く。ネット上のいくつかの山行記録では太田部山と称しているが、山名標識の類はない。


太田部の集落と雨降山を望む


855m三角点峰

稜線をさらに東進すると伐採地が尽き、左側は雑木やカラマツの混じった樹林となる。緩く下って、太田部峠に着き、先行していたK&Pさんに追い付く。峠の大木に「太田部峠」の小さな標識が架かる。石造物の類はない。道型が明瞭な峠道が南北に通じている。


稜線上の踏み跡を辿る


太田部峠


太田部峠の道標


太田部側へ峠道を辿る

北へ太田部に下る峠道に入り、雑木林に覆われた山腹をトラバースする。この峠道は廃道化しているのではと予期していて、藪漕ぎも覚悟していたが、古の峠道の風情を残す気持ちの良いトレールで、これは嬉しい誤算だ。


雑木林をトラバース


伐採地の縁を直進

しばらく良い道を進むと、伐採されて開けた場所に出て道が消えるが、伐採地の縁を突っ切ると、再び窪んだ道型が現れる。窪みに溜まった落ち葉を踏んで緩く下ると、やがて杉林に覆われた尾根上の道となり、杉の枝葉を踏んで下る。


植林に覆われた尾根上の道を下る


途中の石祠

途中の石祠を過ぎると、左側が伐採地となって眺めが開ける。塚山を仰ぎ、その山腹に太田部の山畑と集落を間近に望む。山村には陽が差して、長閑な風情だ。


塚山と太田部の集落を望む


伐採地の縁を下る

一方、峠道の方は、里に近づくにつれて道型が怪しくなる。尾根通しに下ると作業道に出て、これを辿る。作業道は大きくジグザグを切っているので、ショートカット。さらに尾根通しに破線路を辿るK&Pさんと別れて、作業道を下る。縦横に作業道が分岐するが、適当に下って林道に着く。あとは林道を歩いて、駐車地点に戻る。前沢橋を渡った袂にWCのあるスペースがある。1台駐車があり、多分、K&Pさんの車だろう。


作業道を下って車道に着く


前沢橋を渡る

冴えない天気の下の山歩きであったが、花や展望が楽しめて、満足して帰途につく。帰りがけ、長井屋製菓に立ち寄るが、まんじゅうは既に売り切れ。相変わらず人気が高い。次は行きがけに買おう。桜山温泉で立ち寄り湯をしたのち、桐生に帰った。