観音山〜前仙人ヶ岳
春先からコロナへの対応で忙殺され、漸く一段落ついたと思ったら今度は梅雨に入って雨空の週末が続き、前回の山歩きから3ヶ月近くも間があいてしまった。この日曜日は梅雨の最中の貴重な晴れ間が得られそうなので、山歩きに出かけよう。運動不足で足も鈍っているので、まずは何度か歩いたことのある近場の低山のコースでリハビリをしてきました。
自宅から歩いて出発。最寄りのコンビニでペットボトル飲料とパンを買ったのち、桐生川に架かる幸橋を渡る。橋上から上流を眺めると、河原に茂る樹木も奥に連なる鳴神山稜もすっかり緑が濃くて、今年は春をすっ飛ばして夏が来た感が深い。
一時、パラパラと雨粒が落ちてきたが、すぐに止む。普門寺入口から参道階段を登って普門寺に立ち寄ったのち、ハイキングコース登り口に向かう(普門寺入口から右の車道を直進して突き当たりが登り口)。登り口には駐車場(普門寺私有地)や道標がある。
山道に入ると、歩く人が極端に少ないせいか、すぐに道が怪しくなる。植林帯を抜けると伐採跡地の斜面に出て、荒れた作業道をジグザグに登る。周囲の笹藪は深く、藪漕ぎは御免だ。枝分かれの多い作業道で、何度か袋小路に入り込んでは引き返す。
伐採跡地を抜けて樹林帯に入り、明瞭な踏み跡を辿ってガッチン山と観音山の鞍部に着く。こう書くとずいぶん歩いたみたいだが、裏山を歩き始めて20分位しか経っていない。しかし、久し振りの山歩きはやはり良いな。楽しくなってきた。
以降はハイキングコースらしい良い山道となる。ガッチン山頂上に立ち寄り、桐生市街を眺める。樹木がだいぶ成長して、展望を遮りつつある。
南麓の文昌寺、東麓の泉龍院への山道を分けて観音山に向かう。少し登ると草藪に覆われた平地があり、松の木の根元に雷電神社の石祠が鎮座する。ここから樹林に覆われたなだらかな斜面を登ると、観音山の頂上に着く。
ここと雨降山を結ぶ山稜、およびその周辺には「桐生市菱町(金葛)歩道」と称する遊歩道が整備されていて、しばしばジョギングで通っているところだ。それにしても、まだ1時間しか歩いていないのに、既に結構疲れている(^^;)。今日は前仙人ヶ岳(通称。地元名、仙ヶ沢)まで往復しようと思うのだが、木立の間から垣間見える前仙人ヶ岳はやけに遠く感じる。ベンチに腰掛けて休んでいると、若い男性のソロハイカーさんが通りかかった。今日は久し振りの好天の週末だし、ハイカーさんにもそこそこ会いそうだ。
観音山から稜線上の良く整備された歩道を辿る。市街から150〜200m標高が上がっただけだが、それだけで風通しが良く、稜線を吹き渡る風が涼しくて気持ち良い。次のピークには三角点標石と「一色山」の新しい山名標識、涅槃像(泉龍院が2002年に建立)がある。
さらにアップダウンのある稜線の歩道を辿ると、東屋のあるピークに着く。案内図には展望の丘と記載され、現地には金狐山の標識がある。コンコン山と読ませるらしい。桐生市街を見渡す展望が良く、お勧めのスポットだ。ジョギングではここまで来て、一休みして引き返すことが多い。空気が澄んでいれば秩父山地まで遠望できるが、今日は雲がかかって霞んでいる。既に正午を回っているので、ここでパンを齧って昼食とする。
展望の丘から北に稜線を少し下り、左に簡易舗装の林道を分けて直進。道標から再び山道に入る。ここから雨降山を経て前仙人ヶ岳への道を歩くのは、2006年5月(山行記録)に逆コースで歩いて以来、超久し振りだ。幅広い山稜を緩く登ると雨降山頂上に着く。新しい簡易ベンチや山名標識が整って、登る人が増えたことが窺える。
雨降山から緩やかな稜線を辿る。366m三角点のある平坦なピークを過ぎ、雑木林に囲まれた尾根を登る。前回はこの辺に急坂があったことを思い出しながら進むと、男坂、女坂の道標があり、急坂を右から絡んで登る道が新たに出来ている。ここは女坂へ。途中、傘に明瞭な条線のあるタマゴタケを多数見る。湿り気が十分にあるせいか、キノコが多い。
すぐに男坂と合流し、なだらかな尾根を登る。相変わらず稜線を涼風が吹き渡って、あまり暑さを感じない。やがて、幹に焼け焦げのある植林帯に入る。まだ緑の木もあれば、枯死した木もある。右斜面の山林は林床まで明るい日差しが届いて、雑草が繁茂している。
右から尾根を合わせると、右(南)側は2014年4月の山火事跡地で広大に伐採された斜面となり、境界の新しい防獣ネットに沿って稜線を辿る。山火事の前はほとんど眺めのない地味な尾根であったが、皮肉にも好展望の尾根となっている。
登り着いたピークは前仙人ヶ岳の一つ西の峰だ。北面は意外と険しく切れ落ちて、桐生川の谷を隔てて鳴神山が眺められる。ここでソロハイカーさんとすれ違う。短い急坂を下って、鞍部から登り返す。地形図には鞍部から左に下る破線路が記載されているが、根返りの倒木が多く、道型は見当たらない。多分、道はないんだろうな。しかし、興味が湧く。
鞍部から短い急坂を登って、三角点標石と新しい山名標識・道標のある前仙人ヶ岳の頂上に着く。ここも以前は樹林に囲まれて展望のない地味な山頂であったが、南面には桐生近郊の山ではNo.1か2と言って良いくらいの広大な眺めが開けている。陽射しを避けて木陰に腰を下ろし、風に吹かれて涼みながら展望を楽しむ。なかなか快適な頂だ。
眼下の黒川を取り囲む斜面は山火事の跡がすっかり片付き、伐採地は雑草の緑に覆われて、荒廃した感じはかなり薄れている。右手には観音山の整った三角形の山容が遠く低く見え、その奥に桐生市街や緑の帯状の八王子丘陵を遠望する。黒川を隔てて群馬・栃木県境の稜線、その向こうに深高山〜石尊山の稜線を望み、関東平野を一望する。また、頂上から仙人ヶ岳の方に少し下れば、小ピークを連ねた先に仙人ヶ岳の頂が眺められる。仙人ヶ岳は鬱蒼と自然林に覆われた急峻な山肌を見せ、奥山の雰囲気がある。
展望を堪能したのち、往路を戻って下山にかかる。復路では男坂を下る。展望の丘〜観音山のアップダウンは疲れたのでごめんして、展望の丘の前で往路から外れて右に下る。
簡易舗装の林道をジグザグに下り、車止めを過ぎると、新しい石碑(鳥獣慰霊之碑)が建っている。この辺りの山にはイノシシやクマが生息し、人里近くでクマが目撃されて騒ぎになったこともある。猟期はハンターにも注意。山麓の駐車場はこのすぐ先だ。ここに車を置いて金葛遊歩道を散歩する人が多い。今日もバイクと車があり、お年寄り2人が砂防堰堤の池の畔のベンチで話し込んでいる。
あとは桐生川沿いの車道に出、堤防上のサイクリングロードを歩いて自宅に向かう。市街は風が生暖かく、木陰のない堤防の上で陽射しに炙られて汗を絞られる。最後は久し振りの山歩きで筋肉痛を覚えながら帰宅。しかし、一風呂浴びたあとの冷えたビールは格別に美味かった。