松岩山・世立八滝

2019年11月10日(日)
天気:
メンバー:T

群馬・新潟県境稜線のセバトノ頭(1890m)付近から南に派生し、四万川と白砂川の分水嶺をなす稜線は、木戸山(1732m)、相ノ倉山(1567m)などのピークを起こして暮坂峠(1088m)に至る。この山域の大半は登山道がなく笹が深い藪山で、もっぱら残雪期に登られている。桐生からは少し遠いこともあり、これまでは全く足を向けて来なかった。

先週、大戸谷山に登った際、深い谷を隔てて木戸山辺りの高くゆったりとした稜線を眺めて、(実際に見ると登りたくなる性分なので)この山域に興味が湧いてきた。

調べてみると、手強い藪山揃いのこの山域の中で、松岩山(1512m)には登山道が拓かれ、山と高原地図にも赤実線で記載されている。まず登るべきはこれだな。半日行程の山なので、山麓の世立(よだて)八滝にも立ち寄ることにして、出かけてきました。

松岩山

行程:上の登山口 7:40 …マタギ平 8:10 …天狗岩 8:50〜9:05 …十二山入口 9:20 …十二山 9:30〜9:40 …松岩山(1512m) 10:05〜10:45 …マタギ平 11:35 …上の登山口 11:55
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

桐生を未明の5時過ぎに車で出発。暮坂峠を越えて町道暮坂引沼線に入り、無名の峠を越えて八石沢川沿いに下る。世立八滝の上端の駐車場を過ぎ、「松岩山登山口」の道標に従って右折。舗装された林道を登ると山上に拓かれた畑地に出て、登山道入口の5台分程の駐車スペースに車を置く。他の車はなし。草津の温泉街と白根山の眺めが良い。白根山の頂には雲がかかり、雲の下の山肌は薄らと白くなっている。昨晩は雪が降ったのだろうか。

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上の登山口

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薄らと白くなった草津白根山を望む

ここには「松岩山まで3.7km」の道標があり、「藪山ファンが多い松岩山(1512.1m)への登山ルート。山頂には二等三角点があり、途中の天狗岩や十二山からの眺望が良い。笹が多いので、ルートの確認をしっかりと」という説明が記されている。英訳も付され、藪山ファンがKabukiyama fansと訳されていてウケる。まあ、確かに傾奇者には違いない。

登山道に入ると未舗装の作業道となり、なだらかな尾根の南面を絡んでゆるゆると登る。まだ朝の冷気が残り、路上の落ち葉はしっとりと濡れていて、晩秋の雰囲気。やがて日が高くなると、作業道にも陽が差し込んで名残の紅葉を照らす。木立を透かして、行く手になだらかな山影を望む。今のところ、急な登りがなさそうな優しい山だ。

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尾根を絡んで作業道を歩く

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行く手に山影を望む

やがて作業道は尾根上で三叉路となり、「マタギ平」の道標がある。ここから山道が分岐し、尾根上に通じている。丈の低い笹が繁茂しているが、道はきれいに刈り払われていて、ルートは明瞭だ。小さな突起は右から巻く。岳樺の白い幹が美しい。

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マタギ平

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山道を辿る

程なく平坦で広い鞍部に着き、「天狗の踊場」の道標がある。行く手の山影が近づいて来て、逆光の中に小さな鋭角三角形のピークが見える。あれが天狗岩かな。

山道はここで初めて急斜面に取り付き、大きくジグザグを切って登る。鞍部の上に登り着くと「天狗岩入口」の道標がある。右に分かれる脇道に入って小ピークに登ると、その先に岩稜が延びている。鉄平石のような石が積み重なり、両側は切れ落ちているので通行注意。岩稜の先端は360度の大展望が開ける。

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天狗の踊場

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急斜面を大きくジグザグに登る

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天狗岩入口

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天狗岩から草津白根山を望む

まず正面に、まだ少し雲がかかった草津白根山を望む。目を左(南)に転じれば、四阿山は雲に隠れ気味だが、湯の丸山から浅間山にかけての浅間連峰は、青空にくっきりとスカイラインを描く。その左には遠く八ヶ岳を望み、浅間隠山や菅峰も指呼できる。

草津白根山から右(北)には上信国境稜線が連なる。稜線には白い雲がかかり、一つ一つの峰までは判らないが、稜線が大きく窪んだところは、野反湖へ越える富士見峠で間違いない。実に雄大な眺望で、これを見ただけでも今日、この山に登りに来た甲斐があった。

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天狗岩から浅間連峰を遠望

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天狗岩から野反湖富士見峠を遠望

元の山道に戻り、冬枯れの雑木林に覆われた尾根を辿ると、「十二山入口」の道標がある。左に分かれる脇道に入ると、小ピークを越えて結構下り、次のシャクナゲに覆われた小ピークも越え、短い急坂で三つめの小ピークに登り着くと「十二山神」の石碑のある十二山に着く。石碑の傍には赤錆た鎌が供えられている。

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十二山入口

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シャクナゲが繁茂する小ピークを越える

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十二山の小ピークへ急登

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「十二山神」石碑
(大正十二年七月建立)

十二山の頂上も、北側が立派な松の木に遮られる他は、ほぼ360度の展望が開ける。特に、小さな谷を隔てて眺める松岩山は何やら風情がある。草津白根山を眺めるとだいぶ雲が外れて、その左奥には四阿山の鋭峰がくっきりと現れる。

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十二山から松岩山を望む

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十二山から四阿山(左奥)と
草津白根山を遠望

再び元の山道に戻り、尾根の左を巻いたのち、松岩山の頂上への最後の急坂を登る。頂上の直下で女性のソロハイカーさんと交差し、挨拶を交わす。私が天狗岩や十二山に立ち寄っている間に追い越されたらしい。

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尾根の左を巻く

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松岩山頂上への登り

頂上は笹原に覆われ、切り開き道の終点に三角点標石と山名標柱がある。唐松や岳樺に囲まれ、浅間連峰の方向のみ眺めが開ける。明るくて爽快な頂だが、展望に関しては登山口の道標に記されていた通り、天狗岩と十二山の方が優れている。

まだ10時を過ぎたところだが、朝食が早かったせいでもう腹が減っている。道端に腰を下ろして昼食とし、鯖味噌煮とカップ麺の鴨だしそばを食べる。

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笹原に覆われた頂上に登り着く

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松岩山頂上
浅間連峰を遠望

下山は往路をのんびりと散歩気分で戻る。天狗の踊場を過ぎた辺りの紅葉が見頃で、朝方は不足していた陽がたっぷり差して、良い色を出している。ゆるゆると下って、登山口に帰り着く。草津白根山はすっかり晴れて、頂上部の白いものも消えていた。

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紅葉を楽しみつつ往路を戻る

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作業道辺りの紅葉

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登山口に帰り着く

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世立のしだれ栗
(県指定天然記念物)

次は世立八滝だ。その前に世立集落に立ち寄る。世立は、松岩山西麓に拓かれた高台に民家が散在する長閑な山村だ。ふるさと活性化センター「よってがねぇ館」は開館していなかった。すぐ近くのしだれ栗を見に行く。樹齢250年余で、枝が奇っ怪に捻れて垂れ下がり、お化け屋敷の木のようだ。栗には珍しい姿だそうで、栗の中の傾奇者と言えよう(^^)

参考ガイド:吾妻の里山(上毛新聞社、2019年)

世立八滝

行程:滝見ドライブイン 12:30 …段々の滝 12:55 …金比羅山(998m) 13:15〜13:20 …殺人の滝 13:30 …仙の滝 14:00 …滝見ドライブイン 14:20
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

世立八滝は、野反湖方面に出かけてR405を走るとその入口を通り掛るので、以前からちょっと気になっていたスポットだ。正直、松岩山が存外に良くて満足していたので、サクッと割愛しても良いかな、とも思ったのだが、入口まで来てみるとこの辺りの紅葉は見頃。この機を逃す訳にはいくまい。滝見ドライブインの駐車場(無料、WC有)に車を置く。観光客の車も数台ある。ドライブインはオフシーズンなのか、営業していない。

八滝を一周すると2時間かかり、急坂続きの山道とのことなので、ザックに水とフリースだけを入れ、登山靴を履いて出発する。まず、入口から大仙(おおぜん)の滝へ。両岸に岩壁が峙つ八石沢川の峡谷に入ると、すぐに滝が現れる。深く大きな釜を持つ豪快な滝だ。

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世立八滝の入口

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大仙の滝(高さ15m)

入口に戻り、尾根上の急な階段道を登る。大きなカメラを抱えたおじさんが、ぐったりと疲れた様子で降りて来る。この道は観光客にはちょっと厳しい。階段道は急峻な岩稜を登ると、今度は谷底に向かって急降下。階段と手摺が完備しているものの、踏み外したらタダでは済まない急勾配だ。対岸の岩壁に、天狗の足跡と言われる大きな窪みを見る。

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急峻な岩稜を登る

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天狗の足跡

峡底に降り立って、ゴルジュ状の渓谷を遡ると段々(だった)の滝が現れる。二段に落ちる優美な滝だ。滝の左側の岩壁をアルミ製梯子で登る。まじ、険谷。次の箱の滝と九内(きゅうない)の滝は近寄れず、谷底に垣間見るだけだ。

右岸を登って尾根上の鞍部に出ると、左に仙の滝への道を分ける。右の道を進むと岩壁を階段道で急登し、痩せ尾根に上がってまた急登。台風19号の被害か、松の大木が倒れて手摺柵を押し潰し、道を塞いでいる個所がある。

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段々の滝(高さ20m)

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金比羅山へ向かう

急坂に喘ぎつつ、石祠と山名標柱のある金比羅山に登り着く。こりゃ、松岩山より登りがしんどいな(^^;)。頂上は北側の樹林が切れて世立の集落を一望し、背景には大高山辺りの上信国境稜線の山々が連なる。これは絶景だなあ。石祠はここからこうして集落を見守り続けて来たのだろう。

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金比羅山頂上の石祠

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金比羅山から世立集落を望む

金比羅山の少し先で若者二人が休憩中。チェーンソーがあるので、倒木の片付け作業中なのだろう。話をすると、やはりそうだった。お疲れ様ですと礼を述べて、先に進む。

平坦な尾根を少し辿り、それから渓谷へ急降下すると、殺人(さつうじん)の滝という物騒な名前の滝がある(実際に人が殺されたとの伝説があるらしい)。手前の木が邪魔だが、中段から水が跳ね上がる見事なヒョングリ滝だ。八石沢川の滝はこれで終わりで、上流は平凡な河原となる。下流にはあと二つの滝があるそうだが、遊歩道からは見えない。

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尾根上の紅葉

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殺人の滝(高さ20m)

ヒイコラ登って尾根に戻り、平坦な尾根を先に辿ると諏訪神社が建つ。このすぐ先が今朝、通った町道暮坂引沼線で、駐車場がある。

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見頃の紅葉

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諏訪神社

尾根を引き返し、金比羅山を下って、分岐点から八滝最後の仙の滝に向かう。この滝だけ依田尾川にある。仙の滝へは岩壁の下をトラバースする。土砂の押し出し、落石や倒木によって手摺柵が倒壊し、道が荒れている。

巨石の間を縫って進むと、仙の滝が現れる。尾根の上から落ちてくるような不思議な形の滝で、左に岩塔が立っているのも特徴的だ。

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仙の滝

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仙の滝落口の岩塔

これで八滝の見物は終了。遊歩道を下り、依田尾川を橋で渡る。林道の広場を横切ると、木立に囲まれた小さな高台の上に天狗神社が建つ。背後には岩峰が聳え、神錆びた雰囲気がある。草藪っぽい遊歩道を下ると、R405に着く。滝見ドライブインは目と鼻の先だ。

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依田尾川を渡る

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天狗神社

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R405に下り着く

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不動大橋より八ッ場ダム湖を望む

帰りは、道の駅六合にある応徳温泉くつろぎの湯に立ち寄る(400円)。それから長野原を経由して、八ッ場ダム湖を通る。台風19号による大雨で一夜にして満水に近づいて話題になったダム湖を見ようと多くの観光客が来ていて、湖畔は賑わいを見せていた。


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