峰の松目〜硫黄岳
今年の梅雨はよく降って長く続き、山歩きに出かけられずに二ヶ月以上も経ってしまった。おかげで体力・脚力なまりまくり。関東甲信では7/29にようやく梅雨が明け、いきなりの猛暑となった。久しぶりの山歩きは、まずリハビリから。暑さを避けて高峰に登ることにし、八ヶ岳でまだ登っていない峰の松目と、硫黄岳に登ってきました。
桐生を深夜に車で出発。高速を佐久南ICで降り、大門街道を経由して八ヶ岳の西麓に出る頃には夜が明けて、曙色の空に八ヶ岳連峰のシルエットがくっきりと浮かぶ。今日は絶好の登山日和になりそうだ。ただし、予報では午後には天気が不安定になるとのこと。
三井の森の別荘地を抜け、唐沢鉱泉への道を左に分けて、登山口の桜平への未舗装(一部簡易舗装)の林道に入る。桜平には上・中・下の3箇所に登山者用駐車場があり、下はがら空きだが中はほぼ満車。早めに到着したつもりだったが、昨日から泊りがけの人も多いのだろう。幸い残り少ない空きに駐車できた。車の外に出ると、早朝に加えて標高1800mを越えた高所だけあって、空気がヒンヤリと冷たく、至極快適だ。準備を整えて歩き出す。
林道を緩く上がり、左に上の駐車場への道を分け、右の林道へゲートの脇を通って入る。渓流に向かって緩く下ると、行く手の谷の奥に高いピーク(峰の松目?)が聳え、ピークを覆う樹林に朝日が当たって輝く。なんてことはない眺めだが、こういう山らしい景色を久し振りに見て、やはり良いなあと思う。
渓流を渡ると最近できた砂防堰堤があり、その上流には建設中のものもある。渓流沿いで傾斜を増した林道を登ると、夏沢鉱泉に着く。軒先には冷たい水が流れている他、地元産のセロリが無料で提供されている。味噌をつけて食べると、水気と甘みがあってシャキシャキとした歯応えで美味しい。
林道は夏沢鉱泉のすぐ先で終点となり、渓流沿いの山道に入る。コメツガやシラビソ等の針葉樹林とコケに覆われた谷間を緩く登る。たっぷり雨が降っているから、コケも水気を蓄えて生き生きしている。木橋を渡ってジグザグに登り、傾斜が緩んで行く手に硫黄岳の稜線を高々と仰ぐと、オーレン小屋に着く。
小屋の前は、出立しようとしている登山者で賑わっている。細い渓流を隔てた向かいにキャンプ場があり、沢山のテントが張られている。もう出発したテント組も多いだろうが、意外と空いていて、居心地が良さそうなサイトだ。
キャンプ場を抜け、シラビソの樹林帯に入って、登山道を緩く登る。左に硫黄岳への直登ルートを分け、右の峰の松目への登山道に入る。道幅は少し細くなり、ひと気が途絶える。コケと針葉樹林に覆われた山腹を斜めに上がり、峰の松目の東の鞍部に登り着く。
ここから峰の松目を往復する。この登りは結構急だ。樹林に覆われて見晴らしはなく、一部で赤岳と阿弥陀岳が見える程度。傾斜が緩むと峰の松目の頂上に登り着く。
頂上は針葉樹林と青々と葉を繁らせたシャクナゲに覆われ、全く展望がない。入れ替わりで下ろうとするご夫婦と、展望がなくてちょっとがっかりですね、と言葉を交わす。三角点標石の他、「今此三界皆是我有」と刻まれた小さな石柱がある。何かの宗教モニュメントだろうか(後日調べると、法華経の一節らしい)。
ソロのおじさんと入れ替わりで山頂を辞す。八ヶ岳でもマイナーなピークと思ったが、結構訪れる人がいる。鞍部に戻り、稜線を直進して硫黄岳に向かう。樹林帯を緩く登ると、やがてハイマツ帯に入り、右側に横岳から赤岳、阿弥陀岳にかけての険しい山稜が現れ、その山麓に赤岳鉱泉を俯瞰する。
左側には西と東の天狗岳や遠く蓼科山を望む。展望を楽しみながら緩く登ると、赤岩の頭の頂上に着く。頂上と言っても、すぐ目の前がオーレン小屋と赤岳鉱泉を結ぶ道が越える鞍部で、ほとんど標高差がないから、ピークというのはおこがましい感じ。鞍部から若者3人グループがやって来て、この先(峰の松目の方向)はオーレン小屋に下れますか、と尋ねられたので、良い道で問題ないですよー、と答えて見送る。
硫黄岳へは砂礫を踏んで登る。やっぱり久し振りの山歩きで鈍っているせいか、緩い登りで3時間半程しか歩いていないのに足が重い。立ち休みして振り返れば、峰の松目が小振りながらスックとした綺麗な山容を見せている。その右に広がる樹林の底にはオーレン小屋の屋根も見えている。巨石帯を右から巻いて登ると、広く平坦な硫黄岳の頂上に着く。
頂上では、八ヶ岳の主稜線を縦走中のハイカーさんも合わせて、大勢が休憩している。私も頂上の一角の大岩に腰掛けて、360度の大展望を楽しみながら一休み。まだ昼食には早いので、レトルトの鯖味噌煮と缶ビールだけを頂く。硫黄岳は大昔に赤岳から縦走して来て以来、2回目の登頂だが、そのときこんな好展望だったかどうかは記憶にない。
一休みしたところで、爆裂火口跡の絶壁の縁に沿って、ちょっと歩いてみる。崖っぷちは崩壊の危険があり、道を囲んでロープ柵が張られている。途中、広い緩斜面の僅かに下がった所に石祠がある。ロープ柵で近づけないので、年代は不詳。絶壁の縁の道は、途中で行き止まりとなる。この先の三角点まで行きたかったのだが、通行不可なので引き返す。
硫黄岳からは夏沢峠を経由して下山する。この下りは長いが、正面に天狗岳、右手に硫黄岳の爆裂火口跡の岩壁を眺めて、なかなか爽快だ。岩壁の周辺にはツバメの群れがスイスイと飛び交っている。中程まで下ると、夏沢峠の山小屋の屋根も見えてくる。
砂礫の斜面をジグザグに下り、樹林帯に入ると程なく夏沢峠に下り着く。山びこ荘ともう一つ(今日は休業)山小屋が建つ。ここは昨年、東天狗〜根石岳を歩いたときに来ているから、記憶に新しい。そろそろ昼時で腹が減って来たので、ここで昼食とし、カップ麺を作って食べる。
あとはオーレン小屋を経由して、桜平の駐車場に下るだけだ。オーレン小屋への道は、石がゴロゴロして少々歩き難いが、緩い下りで20分程で着く。オーレン小屋の前は昼食休憩のハイカーさんで、相変わらず賑わっている。
オーレン小屋から夏沢鉱泉までは、写真を撮りながらのんびり下る。夏沢鉱泉からの簡易舗装の林道を下っている途中で、なにやら足止めを食っている大人数のグループに追いつく。どうもメンバーの一人が足を挫いて(チラと見えた感じは重傷)、助けを呼んで待っているところらしい。何でも無い所でもこういうことがあり得るから注意しよう。
桜平駐車場まで標高が下がると、さすがに暑い。帰途、林道を走っていると救急車に追い付く。先程の怪我人の他にも何かあったようだ。帰りは尖石温泉縄文の湯に立ち寄る(600円)。ここも標高は1000m程でそこそこ高いのだが、今日は猛烈に暑い。さっぱり汗を流したのち、大門街道経由で帰る。途中、蓼科山の北麓で猛烈な雷雨に遭い、山の中で降られなくて良かったと思いつつ、帰桐した。