宝登山・金ヶ嶽〜大平山(小林山)・鐘撞堂山
先月、長瀞北アルプスを歩いて以来、ちょっと興味を持っていた宝登山(ほどさん)で蠟梅が咲き始めたらしいので、早速、三連休の中日に出かけてみることにする。宝登山だけでは半日の行程で、少々歩き足りないので、同じく興味を持っていた金ヶ嶽(かねがだけ)と鐘撞堂山のハイキングコースに繋げて、通しで歩いてきました。
桐生を未明の5時に車で出発し、寄居駅に6時過ぎに到着。今日は寄居駅近辺に駐車して、秩父鉄道で長瀞駅に移動し、宝登山→金ヶ嶽→鐘撞堂山と歩いてここに戻って来る計画だ。しかし、当てにしていた寄居町役場の駐車場は閉鎖されている。どやんすー。隣の公民館や体育館は休日も利用者があるから駐車不可だろう。幸い、すぐ近くに有料駐車場が見つかり、24時間250円と格安だ。車を置いて急いで身支度し、予定通り、寄居駅6:37発の列車に乗る。
宝登山
長瀞駅6:56着。下車したのは私だけ。駅舎の玄関口には注連縄が張られ、正月の雰囲気が残る。15日までは松の内ということなのだろう。駅前は有名観光地に相応しく綺麗に整備されているが、まだ街灯がともる早朝なので、犬の散歩中の人しかいなくて静まり返っている。白く大きな一の鳥居に向かって幅広い参道が真っ直ぐに延び、右奥にゆったりとした山容の宝登山が見える。空は灰色の雲に覆われて寒々しいけれど、今日は晴れの予報だから、そのうちに天気は良くなるだろう、と期待して歩き始める。
「謹賀新年」の看板のある一の鳥居をくぐり、参道を緩く登る。宝登山神社の本殿は、右に曲がって二の鳥居をくぐり、階段を登ったところにある。階段には「上り下り」の大きな横断幕が掲げられ、元旦の参拝客の混み具合が察せられるが、今は誰もいない。社殿の両脇には門松と「奉祝天皇陛下御即位三十年」の垂れ幕が飾られている。
宝登山へは二の鳥居に戻り、奥宮参道の道標のある車道を登る。すぐに未舗装道になり、左に宝登山ロープウェイの山麓駅への道を分け、なだらかな山腹を大きくカーブして登る。「関東ふれあいの道」の標石あり。途中から、車道のカーブをショートカットする山道があるので、これを登る。
やがて伐採地脇の登りとなり、振り返るといつの間にか青空が広がって、不動山から雨乞山、陣見山の山並み(通称、長瀞北アルプス)がくっきりと眺められる。右手に小動物公園の建物を見て左折。上がって来たロープウェイ会社の軽トラに追い抜かれる(一般車は通行不可)。ツツジ園の中の石段を登り、鳥居をくぐって宝登山神社奥宮の境内に入る。
奥宮の社殿は、意外と小ぢんまりとしている。左右に狛狼の石像があり、筋骨逞しくて精悍だ。由緒書きによると、日本武尊が東国平定の折にこの山に入ったところ、荒れ狂う炎に囲まれて危機に陥ったが、山犬が現れて火を消し止め、助かったことから、山犬を神の使いと悟り、この山を火止山(ほどさん)と名付けた、とのこと。なるへそ。
奥宮の前には売店があるが、まだ営業時間前だ。南斜面が開けて蠟梅園となっているので、見て行こう。ロープウェイもまだ動いていないのに、蠟梅を観賞している人が既にちらほら居る。開花状況は、日当たりの良いところで五分咲きというところ。見頃はこれからという感じだが、仄かに良い香りがして、花見の雰囲気は楽しめる。展望も秩父盆地に向かって開けるが、今は朝靄に覆われて、蓑山の端正な山影が眺められる程度だ。
宝登山の頂上は奥宮裏の杉林の中にある。頂上直下の西斜面にも蠟梅園が広がるが、こちらは陽当たりの関係でまだ咲いていない。西に向かって展望が開け、破風(はっぷ)山から城峯山にかけての山並みや、その奥の両神山が眺められる。展望を楽しんだのち、「長瀞アルプス→ 野上駅まで約2時間」の道標に従って、長瀞アルプスの道に入る。
最初は一直線の下り坂で階段が断続し、なかなか急だ。下から続々と登って来るハイカーさんとすれ違う。長瀞アルプスを歩いて来たのかな。人気コースだな。右に折れて傾斜が緩むと、程なく林道に出る。道標の他、「毒キノコに注意」の説明板があるが、周囲は杉植林帯で、🍄が生えるような感じの林ではない。
林道を左に行くと「関東ふれあいの道」で根古屋へ。長瀞アルプスは林道を右に進む。杉林に覆われた薄暗い山腹をトラバースし、明るく開けた尾根を横切る所が奈良沢峠だ。ここから尾根上の山道に入る。冬枯れの明るい雑木林に覆われるなか、なだらかな尾根を小さく上下する気分の良い山道が続く。すぐに小ピークを越え、小鳥峠の道標を見る。
歩き易い尾根道が続き、多数のハイカーさんと交差する。尾根上は里山らしい散歩道が続くが、周囲は山また山で山麓が見えないから、ちょっと山奥の雰囲気もある。右に氷池に下る道を分け、さらにゆるゆると続く尾根道を辿る。途中、少し登りのあるピークは右から巻くこともできる。
やがて、左山腹をトラバースする道となり、途中で右に天狗山への道を分ける。長瀞アルプスのメインルートはここを直進だが、天狗山に興味があるので右折。稜線に出て少し登り、342m標高点に着く。山名標識の類は何もなく、展望も木立を透かして宝登山の山影が眺められる程度だ。
ここから稜線をだらだらと下り、小さな瘤に登り返すと、石垣の上に建てられた石碑の裏に登り着く。石碑の正面に回り込むと「御嶽神社」の額束を掲げた石鳥居と2基の石灯篭を備え、石垣の上に建てられた立派な物で、「御嶽神霊」と刻まれている。また、「御岳山」の山名標識あり。東側は急斜面で、木の間から山麓の荒川沿いの街並みを俯瞰する。
ここから山麓まで、御嶽信仰のモニュメントが多数点在する。石鳥居の前の尾根を下る道は見送って、東斜面を斜めに下る山道に入ると、まず「覚明神霊」の石碑がある。正月に飾り付けられたのか、どのモニュメントにも新しい注連縄が張られている。
さらに下ると「普寛神霊」の石碑と「←天狗山(白峯神社)」の道標があり、山腹をトラバースする道が分岐する。これは天狗山に行くでしょう。ちなみに覚明、普寛は木曽御嶽山の黒沢口、王滝口をそれぞれ開いて、御嶽信仰の教祖となった行者だ。
急な山腹を細い踏み跡でトラバースして尾根上に復帰すると、「白峯宮」の額を掲げた社に着く。ここには、御嶽神社前の尾根を真っ直ぐ下っても来られる。天狗山はこの社のある場所を指しているようだ。社の中に御嶽山の案内図が掲示されている。この案内図はどこに何があるかわかり易い。これは全部見てみよう(三笠山大神は見逃した)。
普寛神霊に戻って尾根を下ると、尾根上の平坦な広場に着く。広場の隅の石垣の上には「琴平神社」や「御嶽大神」等の石碑が建てられている。また、広場中央には「防山不動明王」の石像がある。防山はどう読むのだろう(後日調べると、御嶽山は防山(ぼうやま)と呼ぶのが正しいらしい)。
広場の先端には「八海山大神」の石碑が建つ。この先は転げ落ちそうに急な斜面となり、大きくジグザグを切って下る。途中には「秋葉神社」、「摩利支天」、「一心霊神」の石碑がある。
傾斜が緩んで杉林に入ると、山道から少し上がったところに赤い鳥居と社、「防山稲荷神社」と書かれたベンチがある。この神社は近世の物のようだが、荒れ気味。コンクリ舗装の階段を降りて石鳥居をくぐると、山麓に下り着く。あとは野上駅に向かって山麓の車道を歩く。途中でいくつかのスポットに立ち寄る。
まず、山の端を左(北)に向かうと、総持寺がある。お参りすると年配の住職が表にいらして、四方山話をしてしばらく過ごす。先日の長瀞アルプスでの滑落遭難の話を伺うと、天狗山分岐と万福寺の間の細尾根で起きたとのことであった。皆野アルプス(破風山)をお勧めされたので、前から興味は持っていたが、そのうち行ってみたい。
次に武野上(たけのがみ)神社に立ち寄る。創建は鎌倉時代と古く、元は丹生(たんしょう)神社と称した。本殿は享保十一(1726)年に再建された。水神の罔象女神(みずはのめのかみ)を祀る。御神木のケヤキの大木は樹齢約700年と言われているそうだ。
そろそろ腹が減ったので、R140に出たところにある香林坊という台湾料理の店に入って昼食とする。実はここでの昼食は計画していたもの。開店が11時なので、途中のんびりして、時間を調整していたのであった。豚骨ラーメンと焼き餃子を食べる。味はまあまあで値段はリーズナブル。ガテン系のお客さんで繁盛している。
香林坊から野上駅へは、R140を渡ってすぐの距離だ。続いて、荒川を隔てた対岸の金ヶ嶽に向かう。
金ヶ嶽〜大平山(小林山)
野上駅北側の踏切を渡り、小さいながらも尖った金ヶ嶽を正面に見て歩く。荒川を高砂橋で渡り、T字路を秩父・皆野方面へ右折すると、直ぐに「村社春日神社」の石標と石鳥居がある。ここが金ヶ嶽の登山口だ。「金ヶ嶽(かねがだけ)」と題する説明板があり、春日神社(琴平神社を合祀)の小祠のある山頂まで約30分、と書かれている。
石鳥居をくぐり、作業道を緩く登って、小さいながらも両岸が険しく切り立った谷間に入って行く。入口には「ながとろ遊々ハイキング」の「チェックポイント5」の道標がある。その後も要所に同種の道標があり、コースが分かり易く整備されている(以下、チェックポイントをCPと略)。やがて山道となり、CP6の地点で左に金ヶ嶽頂上へ直登する参道を分ける。しかし、そちらは「荒れ道のためお勧めできません」との但し書きがあるし、実際に出だしから荒れまくりなので、ここは素直に右の通常コースに進む。
右岸を大きく切り返して登り、再び谷を詰める。CP7で左へ折れて緩斜面をトラバースする。稜線に出たところにCP8があり、ここから金ヶ嶽まで僅かな距離を往復する。
金ヶ嶽の頂上にはCP9の道標と「春日神社」の額がかかる新しい覆屋が建つ。玄関の窓の穴から中を覗くと、立派な木の社が納められている。頂上は三方が切れ落ちている。神社正面の尾根の上には道型があり、これが旧参道だろう。ヒノキ林に覆われて展望に乏しいが、旧参道の先には木の間から荒川の流れが眼下に俯瞰される。
CP8に戻り、その先の尾根を辿る。直ぐにCP10があり、左の小ピークの上に「御嶽大神」の石碑が建つ。ヒノキと雑木に覆われたなだらかな尾根を辿る。左側の斜面は結構急で、そちら側に木立を透かして谷を隔てた稜線を眺める。あの稜線の最高点が大平山だろう。
左斜面を巻き、尾根に戻るとCP11があり、右に二十二夜堂・植平・塞神峠への道を分ける。左の尾根道に進むと直ぐにCP12で、左に階段を下って岩根神社・葉原峠への作業道を分ける。尾根を直進するとちょっと登りとなり、最後に山腹を巻いて長瀞・寄居町境稜線に出たところが植平峠だ。CP13と石柱の道標がある。稜線を右に辿ると日本水・釜山神社に至る。ここは稜線を左へ。すぐに舗装道が稜線を越える葉原峠に着く。
葉原峠から先の町境稜線にもはっきりした道型があり、これを辿って大平山に向かう。途中、右斜面をトラバースする明瞭な道型に引き込まれて、大平山のピークを半周巻いてしまうが、反対側から楽に上がることができて、大平山の頂上に着く。三角点標石(点名:小林山)と「小林山」の小さな山名標識、「三角点登頂記念」の木の杭がある他は、樹木に囲まれて展望もなく、至って地味な頂だ。
頂上から稜線上の踏み跡を下って、葉原峠に戻る。往復30分の軽いピークハントでした。ここからは「岩根山コース」と呼ばれるハイキングコースを辿って、波久礼駅に向かう。峠から車道を少し下り、「小林みかん山を経て波久礼駅へ」の道標に従って作業道に入る。再び分岐があり、ここから落ち葉の積もるなかなか良い感じの山道を下る。
やがて三叉路となり、ここはどちらをとっても小林みかん山に至るが右へ。細かくジグザグを切った尾根道を下って車道に出る。車道を左に進むと、南向きの斜面一面でみかんが栽培されている集落が現れる。ここが「小林みかん山」で、山といってもそういうピークがある訳ではない。みかん狩りシーズンは10月中旬〜12月中旬で、もう過ぎて観光客の姿もないが、まだみかんの実がたくさん成っていて放置されているのは、勿体無い気がする(^^;)。まあ、旬を過ぎると美味くないのだろう。
みかん山から山麓の谷間を見通すと、かんぽの宿寄居の建物が見える。あとはあの辺りまで、山村風景を楽しみながら車道を下る。
山腹を車道でジグザグに下り、風布川沿いの車道に合流する。車道をテクテク歩くと谷が開けて、かんぽの宿寄居に近づく。風布川に夫婦滝(めおとだき)という滝がかかっているので立ち寄る。落差3m程の小さな滝だが、二筋に分かれて落ちているので、この名があるのだとか。滝周辺は整備された園地となっている。
山麓の住宅地を抜け、満々と水を讃える荒川を寄居橋で渡ると、R140の「波久礼駅前」の交差点に出る。波久礼駅は左のすぐ先に見えている。
小林みかん山からの車道歩きはちょっと疲れたが、頑張って次の鐘撞堂山に向かう。
鐘撞堂山
「波久礼駅前」交差点からR140を寄居方面へ少し歩き、かんぽの宿寄居に向かって踏切を渡ったところで「少林寺」の道標にしたがって右折。山の端の田園を歩く。途中の小川には「西行戻り橋」という橋がかかる。説明板をざっくり要約すると、歌人として名高い西行が歌の修行のため秩父に向かってこの橋まで来たとき、ここで話し掛けた地元の子供や小娘から意味不明な言葉を返され、意味を聞き返すことも出来ずにすごすご引き返した、との伝説があるそうだ。メンタルが豆腐だな(^^;)。
要所の道標にしたがって、山麓の田園地帯を少林寺に向かう。住宅街を抜け、少し山に分け入ったところに少林寺がある。戦国時代の永正八(1511)年に開山したという古刹だ。
少林寺本堂の左手から山道に入って裏山をジグザグに登る。道端には五百羅漢と呼ばれる石像がほとんど途切れることなくずっと立ち並んでいる。これは壮観。石像はどれをとっても同じものがなく、様々な表情やポーズを取っていて、面白い。
登り着いた頂上には大きな石仏がある。説明板によると、釈尊と脇侍文殊、普賢の二菩薩が祀られているとのこと。山麓から山頂までの羅漢石仏は510余体、また、少林寺から右側を登る別ルートには960余の千体荒神の石碑があり、関東一の数だそうである。
頂上から円良田(つぶらた)湖側へ、階段が整備された山道を下る。三叉路に下り着き、車道を歩いて鐘撞堂山を源とする小さな谷に入る。入口には廃屋が立ち並び、陽が傾き始めたこともあって、ちょっと薄気味悪い。車両進入禁止の古い標識もあり。
入口を過ぎて谷に入れば、緩やかな斜面に囲まれて里山らしい明るい雰囲気となり、浅い谷間に沿って未舗装道を辿る。谷の最奥から笹を切り開いた山道となり、少し登って稜線に出る。
稜線上を緩く登り、大正池からの登路を合わせ、最後に階段が続く急坂を登ると、鐘撞堂山の頂上に着く。頂上は小広い平地で、三角点標石の他、鐘や東屋、展望台がある。周囲の樹林は疎らで、寄居市街を俯瞰し、関東平野を一望する。標高330mの低山だが、この展望は訪れる価値ありと思う。既に夕闇が迫る時間帯だが、散歩代わりの軽装で(特に東尾根から)登って来る人がパラパラとあり、地元で親しまれている山のようだ。あとは寄居駅まで1時間程の行程が残るだけなので、ゆっくり展望を楽しむ。
とはいえ、だんだん風が冷たくなって来たから、そろそろ下山にかかろう。頂上から南へ稜線を下り、高根山への道から左に分かれて、大正池へ下る道に入る。なだらかな斜面を下ると、密生した竹林を幅広く切り開いた山道となる。
竹林を抜けるとアオキが繁茂する谷間に降りて、作業道を歩く。やがて舗装道となり、住宅地に入る。あとは車道を歩くだけだ。途中の大正池は溜池で、湖畔が公園として整備されている。WCもあり。山間から平野に出、R140を経由して寄居駅の駐車場に戻った。
帰りは、かんぽの宿寄居の温泉に立ち寄る(日帰り入浴の受付は18時まで)。鐘撞堂山からの最後の車道歩きでは、さすがに足が棒になった。湯船で良く温まって筋肉の凝りをほぐした後、花園ICから高速に乗って桐生への帰途についた。