塩原温泉
お盆休みに塩原温泉に2泊して、周辺で観光と軽い山歩きを楽しんで来ました。
境の明神・御殿山
桐生を車で出発。東北道が渋滞して、予定より約30分遅れで那須塩原駅に到着。新幹線でやってきたS&Sと合流する。黒磯駅前の生そば冨陽という蕎麦処で昼食をとったのち、栃木・福島県境の「境の明神」に行ってみる。旧奥州街道(現R294)に面し、下野・陸奥の国境を挟んで、境の明神が二社並立する。玉津島明神と住吉明神がそれぞれに祀られる。このように二社並立する境の明神の存在が確認できる場所は稀だそうである。
次にR294を10km程南下した芦野にある那須歴史探訪館を見学する。まず、建物が外壁ガラス張りの平家で、とても瀟洒なのに驚く。内装も藁や和紙を使って和風の趣きがある。隈研吾氏による設計とのこと。那須町の歴史がメインテーマだが、昔の那須温泉の様子や変遷を示す古い写真や絵葉書などの展示が興味深い。
探訪館を見学したのち、裏手の御殿山(芦屋氏陣屋跡)に登ってみる。今日は酷暑で、低山に登る日和ではないのだが、比高が60mしかない小山なので大丈夫だろう。デジカメとタオルだけを持って、草深い歩道を登る。草に覆われた広場(二の丸)を経由してひと登りすると、広い平地に東屋と高野槇の巨木のある頂上(本丸)に着く。約10分の短い登りだったが、やはり暑かった。この山は鎌倉時代からこの地を支配し、江戸時代には三千石を領有する旗本であった芦屋氏が拠点として陣屋(居館)を構えた場所とのことである。
今日の観光はここまで。宿の塩原温泉郷・古町温泉の源泉遺産那須塩原別邸に向かう。別邸と言っても、温泉街の中心にある近代的なホテルである。お盆休みとあって、特に家族連れのお客さんが多い感じ。渓流に面した風情ある温泉に浸かったのち、生ビールと牛・豚・野菜串焼きや牛鍋などの料理を美味しく頂いた。
鶏頂山(途中撤退)
温泉旅行2日目は、予報によると午後に雷雨があるかもという天気だが、行程が短くて楽そうな鶏頂山(1765m)に登ってみることにする。
宿の朝食バイキングをしっかり食べたのち、車で出発。温泉街を通り抜け、日塩もみじラインに入る。雲は多いが青空も覗いて、今のところ良い天気だ。
鶏頂山は西口登山口から登られることが多いようであるが、少しでも標高の高いところからスタートしたいので、鶏頂山スキー場跡からのルートを取る。事前にネットで調べた山行記録では、スキー場の大駐車場まで車で入れた(ただし悪路)が、現在は入口からすぐの所に頑丈なゲートがあり、その先は一般車両通行止となっている。
仕方ないので、スキー場入口の広いスペースに車を置いて、歩き始める。「鶏頂山登拝口」の看板や「野洲藤原郷鶏頂山」の額束を掲げた新しい大鳥居、「鶏頂山奥社 鶏頂山暁鳥居 建立」や「平成天皇御即位記念之碑」と刻まれた新しい石碑がある。
荒れた舗装道を上がると、かつてのスキー場の大駐車場とベースステーション(鶏頂山荘)に着く。窓は破れ、草藪に覆われて侘しい雰囲気。「鶏頂山登拝コース」の案内看板も雑木の枝葉に覆われて、写真を撮るのに枝を一所懸命持ち上げなければならなかった。
ここからゲレンデ跡を登る。道標はなくて、最初真っ直ぐに登ったが、GPSの地図に記載されている登山道とはどうも違う。念の為、ベースに戻って、左のゲレンデ跡の草に覆われた作業道を登る。早くもススキの穂が出ている。道を覆う笹藪の朝露で足が濡れるが、まあ問題ないレベル。緩斜面をゆるゆると登る。そのうち、シダに覆われた斜面となり、両側の樹林は高く青々と繁って、意外としっとりとした奥深い雰囲気となる。
やがてゲレンデ跡の終点となり、樹林中の作業道を辿ると、「枯木沼」の石標と木の鳥居があり、その先に湿原が広がる。湿原の中には木道が通じているのだが、腐朽が激しくて、入口には黄色の立入禁止テープが張られている。しかしまあ、これは行かざるを得まい。注意して木道を渡る。湿原といっても乾燥しているので、仮に踏み抜いて落ちても泥濘にハマるようなことは多分ない。
湿原の中の十字路を右折し、湿原を抜ける。樹林中の平坦な道を進むと、西口登山口からの立派な登山道を右から合わせる。この合流点から枯木沼方向にはロープが張り渡されて、一応通行止になっている。再びゲレンデ跡をゆるゆると登って、他方向からもゲレンデ跡を合わせると、旧鶏頂山スキー場トップに着く。半分開けた場所で、ベンチ代わりの板切れもあるので一休みして、パンを齧る。灰色の雲が空を覆って、天気大丈夫かなー、と思っていたら、遠くでドーンという雷鳴。これで鶏頂山の頂上は諦める(S&Sは元々、弁天沼までの予定)。大沼まではあと少しの距離だから、そこまで行って引き返そう。
スキー場トップから薄暗い樹林に入り、緩く下って行くと「大沼入口→」の石標がある。登山道から右に分かれて踏み跡を辿ると、樹林に囲まれた大沼に着く。湖面を薄い靄が流れて、静寂に包まれた神秘的な池だ。写真を撮っているうちに、水面にポツリポツリと雨粒の波紋が広がり始めた。そろそろ下山にかかろう。
幸い大した降りにはならず、往路を枯木沼まで戻る。木道を湿原の奥に辿ってみる。この先に大きな沼がありそうなのだが、木道の崩壊っぷりが激しくなってきたので、途中までで引き返す。ちょっと心残りだ。ここの木道は再整備して欲しいなあ。
あとは往路をそのまま戻る。途中、ちょっと雨が降って、折り畳み傘を差しながら歩くが、ベースに戻る頃には止んでいた。鶏頂山に登頂できなかったのは残念だが、山の様子は分かったし、紅葉や雪のある季節に登りに来てみよう。
帰りはドライブがてら日塩もみじラインを鬼怒川温泉側に下る。高原山の山裾を左回りに大回りして塩原温泉に戻る途中、鬼怒川温泉あたりで猛烈な降りの雷雨に遭遇した。天気予報的中。山を歩いている時に降られなくて良かった(同じ頃、東京23区もゲリラ豪雨で、ニュースとなった)。
天狗岩
温泉旅行最終日は、塩原温泉街の入口、R400を見おろす天狗岩と呼ばれる岩山に登ってみることにする。
宿をチェックアウト。R400を西那須野塩原IC方面に戻り、福渡橋の手前の無料駐車場に車を置く。「天狗岩線歩道」の案内看板があり、天狗岩頂上まで480m(約30分)とある。
ガソリンスタンドの前に天狗岩入口があり、ここから山道に入る。しばらく国道沿いに歩き、野立岩への近道を分けると、巨石が堆積した急峻な谷を登る。周囲は見上げる高さの岩壁だ。鉄階段など、道は良く整備されているが、急峻なので、足元は山歩き用のしっかりした靴が良い。
谷を詰め、左の山腹をトラバースして枝尾根の上に出る。天狗岩の頂上は枝尾根末端の岩稜で、すぐの所だ。
頂上は箒川に向かって突き出た岩稜の先端で、擬木の手摺でガッチリ囲われていなければ、怖くてとても立てない場所だ。箒川の渓谷や車を置いた駐車場を俯瞰し、下流側から上流側まで眺め渡す。これは素晴らしい展望だ。
下りは元来た道を戻る。R400へ近道経由で下ると、箒川の渓谷の中に野立岩と呼ばれる巨石があるので、立ち寄ってみよう。二階建ての一戸建て程もありそうな巨石で、鉄橋を渡ってその上に立つことができる。野立岩の周囲は激流岩を嚙み、天狗岩の岩壁を頭上に仰ぐ。なかなかの渓谷美だ。
この下流にも渓谷美を探勝する遊歩道がいくつかあるが、天狗岩の急な登りで結構汗をかいたので割愛。もみじ谷大吊橋だけ立ち寄ってみる。この吊橋は塩原ダム湖(塩原湖)に架かる全長320mの歩道専用の橋だ。渡橋料は300円。メジャーな観光地で、大きな駐車場と土産物屋があり、大勢の観光客で賑わっている。一応、往復して渡ってみた。橋の上は風が吹き抜けて、意外と涼しい。
温泉旅行の最後は、藤城清治美術館に立ち寄る。那須ICから那須湯本へ向かう那須街道を上がって、一軒茶屋前の交差点を左折。閑静な別荘地の中にある。那須街道はお盆休みで遊びに来た車で大渋滞。ようやく目的地に辿り着く。しかし、展示(右図のような影絵)が多数あって見応えがあり、来た甲斐があった。お勧め。人気も非常に高い。
このあと那須塩原駅に向かい、駅西口の「平成」という食堂で昼食を摂ったのち、新幹線で帰るS&Sと別れて、桐生への帰途についた。