石裂山〜大滝山〜白鬚山

天気:時々
メンバー:T
行程: 石裂小学校跡 7:05 …加蘇山神社 7:25 …奥ノ宮 8:40 …東剣ノ峰 9:10 …石裂山(880m) 9:40〜9:45 …月山(890m) 9:55 …小川沢峠 10:35 …林道横根線 11:30 …大滝山(1070m) 12:15〜12:45 …白鬚山(1000m) 13:55〜14:00 …林道小川沢線 15:05 …石裂小学校跡 16:10
ルート地図 GPSのログを地理院地図に重ねて表示します。

最近は続けて遠出したので、この週末は近場の足尾山地でまだ登っていない山に行こうかな、と考えて、鹿沼市加蘇地区(旧加蘇村)の奥山で荒井川源流域の大滝山と白鬚山に登ることにする。この二つの山名は、どちらも地形図や山名事典に記載されていない。読み仮名は「おおたきやま」と「しらひげさん」でいいのかな。一般登山道はないが、ネット上にはその筋の方々の山行記録が多数あり、直近ではきたっちさん仮面林道ライダーさんが歩かれている。これらを参考にさせて頂き、再訪となる石裂山(おざくさん)から周回する計画を立てて、出かけてきました。

桐生を朝5時前に車で出発。鹿沼ICで高速を降り、荒井川沿いに走って、山深い石裂集落に着く。ここが今日の山歩きの起点だが、復路の車道歩きで自転車を利用するため、さらに奥へ。荒井川を遡り、寄栗(よりぐり)集落から小川沢線に入って急坂を上がる。この林道は舗装されているものの路面が荒れていて、悪路に弱いクロスバイクのRadon I号で大丈夫か、不安がよぎるが…。ま、いっか。

下山地点となる峠で、Radon I号をカーブミラーの支柱にチェーンロックしてデポ。石裂集落に引き返し、石裂小学校跡の校庭の隅に駐車する。リーバス上久我線終点の石裂山バス停の転回場になっているが、広いので車を置いても差し支えないだろう。

石裂小学校跡の隣に加蘇山(かそやま)神社社務所があり、広い境内を囲んで「石裂山」の大きな額を掲げた宿舎(これが石裂山荘かな)や神楽殿、遥拝所が建つ。以前は信仰登山で賑わったようだが、どの建物も古びて寂れた雰囲気がある。

石裂小学校(1873〜1964年)跡
加蘇山神社社務所(石裂山荘)

沢沿いの林道を歩いて奥の加蘇山神社本殿に向かう。神社前に無料駐車場(約30台)がある。20年前に石裂山に登りに来たときはここに車を置いた。うーむ、こんな場所だったかなあ。記憶が薄い(^^;)。登山者への警告看板「平成3年3月〜4年6月に遭難5件(内死亡3件)」云々は強く印象に残っている。まだ朝早いせいか車は1台もなく、広い駐車場はガランとしている。

まず、加蘇山神社に参拝。参道石段を登り、石鳥居を潜って杉の大木の間を通る。右側の杉は樹高約50m、推定樹齢約五百年だそうだ。拝殿も古びて寂れた感じ。左脇の登拝門の左右にも杉の大木があり、一方は推定樹齢八百年以上だそうだ。登拝門から出て、登山道に合流する。

加蘇山神社前の駐車場
加蘇山神社の参道石段
加蘇山神社拝殿
登拝門と杉の大木

小沢に沿って作業道のように幅広い山道を登る。杉木立が途切れて、ぽっかりと開けた所が多い。4年前の平成26年豪雪では石裂山も倒木被害が甚大だったそうで、倒木の片付けがようやく終わった結果、風景にも変化が生じたようだ。

鬱蒼とした樹林の中の山道に入ると、沢に清滝、続いて竜ヶ滝がかかる。どちらも小さな滝だが、豊富に水を落として涼しげだ。今日は歩いているうちに段々暑くなってきていて、既にTシャツ一枚で歩いている。

沢に沿って登る
清滝
ムラサキゴケ
竜ヶ滝

竜ヶ滝のすぐ先に東屋と「奉献石裂山常夜燈」の銘のある石灯籠が建つ。この石灯籠は江戸時代後期のものだ。月山への山道を右に分け、少し傾斜を増した沢沿いの道を登ると、水際に生える千本桂に着く。樹高23m、推定樹齢千年!の大木だ。根元から10数本の幹が茂り、黄緑色の新緑が萌え出でて瑞々しい。「加蘇山の千本かつら」として県指定天然記念物になっている。

千本桂を過ぎて沢沿いの道を登ると、道端に生えるハート形の葉っぱの陰に、小さな釣鐘形の薄赤い花が咲いているのを見つける。地味な花だが、私は初めて見る花で珍しい。後日調べると、フタバアオイというそうだ。

石灯籠
天保五甲午(1834)年七月吉日
月山分岐
千本桂
フタバアオイ

東屋のある中ノ宮を過ぎ、梯子と鎖が架かる行者帰しの岩を越える。登山道から分かれて長い梯子を登り、奥ノ宮(石裂岩)に立ち寄る。地層の境界があるためか、岩壁にぱっくりと水平な裂け目が開き、湧き水が流れ出して、奥に祠が祀られている。これは奇観だ。

中ノ宮への登り
行者帰しの岩
奥ノ宮への梯子
奥ノ宮(石裂岩)

梯子を下って登山道に戻り、奥ノ宮の岩壁を左から巻いて登る。木の根、岩角を手掛り足掛かりにして急登。特に急な所には梯子や階段が架かる。ヒゲスリ岩という岩壁の下から桟道や鎖が手摺に張られた細い山道で急斜面をトラバース。下を覗き込むと、奥ノ宮への梯子が見える。斜面をジグザグに登って尾根上に出、一投足で東剣ノ峰頂上に登り着く。樹林に覆われて展望はない。

階段を交えた急登
東剣ノ峰頂上

ここからが石裂山のハイライト。「危険要注意」「転落注意」の看板を横目に急斜面を下り、その先の急峻な岩稜を長い梯子段で下る。空中に飛び出すような高度感があり、山慣れていない人にとってはちょっと怖いかも。

東剣ノ峰から梯子を下る
下った梯子を見上げる

下り着いた小ギャップから急斜面を登り返して、西剣ノ峰頂上に着く。右に張り出した尾根の上を展望台と称しているが、木立が育ってしまい、スッキリした眺めは得られない。頂上から石裂山に向かい、一段下がった所から、岩壁を巡らせた石裂山の本峰が眺められる。これはなかなかの景観。

西剣ヶ峰へ急登
西剣ヶ峰から石裂山

また長い梯子を下って、御沢峠に着く。左に賀蘇山(がそやま)神社へ下る道を分けるが、その入口にはトラロープが張られ、「この先通行危険」「危険 無理しないこと」と剣吞な文面のプレートが掛かる(このコースも滑落死亡事故が起きているそうである)。

西剣ヶ峰から梯子を下る
御沢峠
賀蘇山神社への道は通行危険
石裂山へ急登

石裂山の頂上へは岩場を交えた急登となる。稜線に登り着き、ちょっと左の脇道に入ったところが三角点標石のある頂上だ。樹林に囲まれて展望に乏しいが、木立の切れ間よりこれから向かう大滝山、白鬚山、その奥にもっこりと大きな男体山を遠望する。

石裂山頂上
石裂山から大滝山、白鬚山を望む

石裂山頂上から杉林に覆われた尾根を辿り、急坂をひと登りして、石鳥居と木の社がある月山(がっさん)頂上に着く。ウェブで、この社が完全に倒壊している写真を見たことがあるが、その後、不完全ながら建て直されたようだ。

杉林の尾根
月山頂上

ここから先が、私にとって初めて歩くルートとなる。西へ杉林の尾根を下ると、最初は藪っぽいが、すぐに防獣網に沿ってはっきりした踏み跡が現れ、グングン下る。やがて防獣網が尽きて傾斜が緩む。「石裂山頂…」と書かれた道標が朽ちて落ちていた。

防獣網沿いに下る
古く朽ちた道標

杉林に覆われた地味尾根のアップダウンが続く。それから大きく下って登り返すと、右斜面が若いカラマツ植林帯となって、白鬚山が眺められる。あれっ、小川沢峠を過ぎてしまった(^^;)。鞍部に引き返すと「横根山」と「石裂山」の二つに折れた道標の残骸があり、確かにここが小川沢峠だ。安谷氏の山行記録「石裂山から横根山」によると、かつては南麓に「小川沢キャンプ場」があり、ここから下る道もはっきりしていたようである。

杉林の尾根を下る
小川沢峠の朽ちた道標

峠からまた登り、右側が植林帯となった尾根をモノラックに沿って歩く。枯れススキの間には大きくなったワラビがたくさん生え、もう少し早く来ていれば採っていくところだ。標高が上がるに連れて遠くの鶏鳴山や天気山が見えて来て、展望を楽しみつつ登る。

カラマツ植林帯から白鬚山を望む
モノラックに沿って登る

樹林に覆われた尾根に入ってもモノラックはしばらく続くが、やがて尾根から離れて行く。ふと、枯れススキを搔き分けて歩いて来たことが気になって、トレッキングパンツのおもてをチェックしたら、小さくて丸く赤い虫が5〜6匹張り付いている(T_T)。謹んで強制的に退去頂く。この辺りの藪山歩きの時期もそろそろ終わりが近いな。

杉林の尾根を辿る
切り通しの上から白鬚山を望む

杉林の尾根を辿り、林道横根線を横切る。対面の切り通しは右から登って尾根に復帰。しばらく尾根を辿ると急斜面に突き当たり、左寄りに逃げつつ尾根上に出る。新緑の雑木林に覆われた尾根となり、小ピークを一つ二つ越える。ちょっとした岩場が現れるが、右から簡単に通過。

林道横根線
檜と雑木の混じる尾根を辿る
木の間から横根山を望む
岩場の登り

さらに急な岩場の下りがあり、直進してバンド状を下る。鞍部から大滝山の頂上への最後の登りとなり、左側がヒノキ植林帯で小枝の藪が少々煩い急坂を上って、三角点標石と「栃木の山紀行」さんの設置した山名標識のある頂上に着く。

小鞍部へ岩場の下り
下った岩場を見上げる
大滝山へ最後の登り
大滝山頂上

頂上は樹林に覆われて狭く、展望は全くなくて、地味な頂である。それはさておき、正午を過ぎて腹が減った。錆びたワイヤーで括られた丸太に腰掛けて、まずは缶ビールと鯖味噌煮。それからカップ麺を作って食べる。

余談だが、大滝山の山名は、荒井川源流の大滝沢(参考:st8108氏の記事。もちろん大滝は「寄栗の大滝」をさす)の源頭にある頂ということを考えると、納得できる。また、上都賀郡誌の大滝の記事に「加蘇村大字上久我字寄栗大滝山にある。」の一文があり、この山の一帯が大滝山と呼ばれていたことが窺える。

腹拵えを完了して出発。頂上から白鬚山に向かって北東へ雑木林の尾根を下る。うっかり一本西の枝尾根に引き込まれかけるが、直ぐに気がついて進路を修正。鞍部に下って登り返すと、作業道終点のぽっかり開けた広場に出て、しばらく尾根上の古い作業道を辿る。

明るい雑木林の尾根
作業道終点

急に人工物が現れてちょっと拍子抜けだが、折から青空が広がり、作業道を囲む新緑を照らして、雰囲気は明るい。陰々鬱々の杉植林帯に覆われた尾根歩きよりかは気持ちが良いかな。作業道はやがてY字に分岐して、どちらの道も尾根を離れる。その先は大きな落石で塞がれていて、車の通りが途絶えて久しい様子。

尾根上の作業道を辿る
作業道から離れて尾根を直進

Y字分岐で作業道から別れて尾根を直進すると、直ぐに右斜面が開けた展望地がある。左に峰続きの白鬚山を望み、羽賀場山やかまど倉、紅白鉄塔が目印になる鳴蟲山、二股山、石裂山などの山々を一望する。今日の行程中、最も開けた展望が得られる地点だ。

展望地から白鬚山を望む
展望地から南東を遠望

雑木と檜の混じる尾根を緩く登る。1034m標高点を越えた辺りに、M字形で水色のプレートが木の幹に掛かる。また、数は少ないが、満開で少し散りかけのシロヤシオを見る。

岩場を下ると、1034m標高点と白鬚山の間の最低鞍部だ。ここから急坂を登って小ピークを越え、露岩の多い尾根を登り上げて、白鬚山の頂上に着く。

M字形(M大WV?)のプレート
 岩場の下り
鞍部から登り返して…
白鬚山頂上

頂上は、大滝山よりは広いが、樹林に囲まれて展望はなく、同じ様な地味な頂である。二基の石祠が南向きに祀られ、それぞれ「明治十二年四月吉日 」「願主 湯澤嘉藤治 世話人 寄栗坪中」の銘がある。願主は加蘇山神社神主の湯沢家の人かな。

その他「白鬚山 標高1000m」の山名標がある。この山の名の「ひげ」には、多くは鬚という漢字が当てられている。後日調べるまで知らなかったのだが、「ひげ」の漢字は鬚・髭・髯の三つがあり、鬚はあごひげ、髭はくちひげ、髯はほおひげを表す。白鬚山の山名の由来は不明だ。もしかしたら、嘉藤治翁が立派な白鬚をお持ちだったのが由来かも(^^;)

少し立ち休みしたのち、自転車デポ地の峠に向かって、南東へ杉林の尾根を下る。小鞍部からちょっと登り返して、868m標高点のピークに着く。

杉林の尾根を下る
868m標高点からこの尾根を下る

868m標高点からは尾根が細くなり、やがて岩根に杉の根がみっしり絡んだ痩せ尾根となる。左右は切れ落ち、下を覗き込むと高度感があって肝が冷える。続いて鋸歯状の岩稜が現れ、右を巻いて、急斜面をトラバースする踏み跡を下る。下ってから岩稜を振り返ると、登りならば直登できそうな感じである。

痩せ尾根を辿る
岩稜は右から巻いて下る
岩稜を振り返る
左側を下った
杉林の尾根を直線的に下る

このあとは難場はなく、一ヶ所、尾根を右折する地点を過ぎれば、杉林の尾根を直線的に下るだけである。どんどん下って林道小川沢線の切り通しに突き当たり、右に下って路面に降り立つ。

デポしていたRadon I号に乗って、林道を下る。急勾配で荒れた路面の道を、ブレーキかけっぱなしで、尖った石を踏まないように注意して下る。あと少しで林道が終わって路面の良い道に出るという所でプシューッという音が聞こえて、前輪が見事にペシャンコ。安全地帯まで僅かに届かなかった orz

仕方なくRadon I号を押して歩く。下りなので、自転車を転がすのに力が要らなのは幸い。小川沢線の入口には「右古峰山」「下石裂山」と刻まれた石の道標があり、往時の往来を示す。

林道小川沢線の峠
石の道標「右古峰山」

途中、蕎麦が美味しいと評判のお店の様子を外から見たり、4体の石仏をお祀りするお堂を見たりしてのんびり歩き、1時間ちょっとで石裂集落に戻る。まあ、今回は歩きでも大した時間はかからず、ダメージは少なかったが、パンク対策は何か考えないといけないな。

古民家蕎麦処うえ田
寄栗薬師堂
クマシデの果穂
石裂集落に戻る

社務所の前には空の貸切バスが止まっていて、運転手さんが外で休憩中。フロントウィンドウの名札には「槍ヶ岳に登り隊」とある。槍ヶ岳登頂のため、各地の山を訓練で登るシリーズのツアーらしい。私も槍ヶ岳に登り隊が、人が多過ぎる点がネックになっている。

帰りは鹿沼市高齢者福祉センターに日帰り入浴で立ち寄る。ここに来るのは3回目。以前は利用料600円だったのが、400円に値下げされている😊。さっぱり汗を流したのち、下道をのんびり走って桐生に帰った。