一ノ倉岳〜谷川岳

天気:
メンバー:T
行程:土合橋駐車場 5:25 …西黒尾根登山口 5:45 …中芝新道入口 7:20 …一ノ倉岳(1974m) 11:00〜11:40 …オキノ耳(1977m) 12:50 …トマノ耳(1963m) 13:05 …ラクダのコル 14:15 …西黒尾根登山口 15:45 …土合橋駐車場 16:10
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

この週末の行き先を考えているとき、ネットで谷川岳の稜線の紅葉が見頃との情報を得た。それなら、一度歩いてみたいと思っていた中芝新道で一ノ倉岳に登るのに良いタイミングだ。一ノ倉岳からは谷川岳を経て西黒尾根を下る計画を立てて、出かけてきました。

桐生を深夜3時過ぎに車で出発。関越道を水上ICで降りて、まだ暗い中、土合橋の駐車場に着く。広い駐車場だが、昨日からの泊まりがけも多いのだろう、既に7割方埋まっている。身支度している間に夜が明けて、出発。数組のハイカーさんと前後してR291を歩き、まだ営業時間前で静まり返ったロープウェイ駅、登山指導センター、西黒尾根登山口を通る。


土合橋駐車場


西黒尾根登山口

R291を歩いているうちに、太陽が高くなり、朝日を前面から浴びたマチガ沢の岩壁が眼前に現れる。雲一つない青空に稜線がくっきりと描かれ、天気予報通りの快晴だ。テンション上がるな。ここからは、谷川岳東面の岩場を一つ一つ覗きながらの朝の散歩となる。

草深い巌剛新道入口を通り、ブナ林に覆われた東尾根を回り込むと、一ノ倉沢の岩壁がドドドーンと聳える。ここまでは何度か来て、見たことのある景観だが、今日は格別にクリアな眺めが得られて素晴らしい。早朝を狙ってカメラを構える写真愛好家も居られる。


マチガ沢


一ノ倉沢

一ノ倉沢を横切ると舗装が終わって砂利道となる。道の左脇の岩壁には、一ノ倉沢で遭難したクライマーの夥しい数の慰霊プレートがあり、見ると桐生の山岳会のものもある。

一ノ倉尾根の鼻で新道との連絡路を分けると、その先に旧清水越国道の石積が残っている。やがて頭上にのし掛かるように幽ノ沢の岩壁が見えてくる。大石が堆積した幽ノ沢を渡ると、道の脇に「ブナのしずく」と呼ばれる水場があり、湧き水が滴り落ちている。


旧清水越国道の石垣


幽ノ沢


ブナのしずく


新道分岐

やがて新道への連絡路が左に分岐する地点に着く。旧道にはトラロープが張り渡され、新しい案内プレートが掛かっている。曰く「注意!この先、芝倉沢までは林道が続きますが芝倉沢から先の旧道(登山道)は武能沢付近の崩壊が激しく滑落、落石の危険度が高いため新道の利用をお勧めします。残雪期や雨天時などは更に危険を伴います。」とある。この情報は、事前にネットで得ていた。

直進して林道を辿り、崩壊した涸れ沢を渡って、コンクリの洗い越しをドウドウと水が流れ落ちる芝倉沢の出合(中芝新道入口)に着く。沢を見上げると、巨石ゴロゴロの明るいV字谷で、意外にも先行するハイカーさんの姿が見える。奥には上越国境稜線が高々と見え、素晴らしい眺めだ。

中芝新道入口にも新しい案内プレートがあり、曰く「【警告】このコースは一般登山道ではありません。(地図上破線ルート)尾根の取り付き渡渉点までは崩壊個所が多く、状況によってはロープやバイルがないと通過できない事もある滑落、道迷いの危険度が高い上級コースです。雨天時は増水し渡渉困難。ルートも不明瞭で遭難も発生しています。不安を感じたら早めに引き返しましょう。」とある。一応、8mmロープは持って来た(結局使わず)。天気には不安なし。では、行ってみよう。


芝倉沢(中芝新道)に入る


右岸から左岸に渡る

まず右岸を登る。刈り払いされて歩き易い。黄色いマーキングに従って左岸に渡り、踏み跡を辿って滝を横目に登る。なおもロープを伝い、草付きの高いところをトラバース。先行するハイカーさんが崩壊地に突き当たり、下れる個所を探してちょっと迷って居られる。手前にマーキングとテープが見えるから、あそこを下ればいいんじゃないかな。


滝を横目に登る


崩壊地が見えてきた

水流近くまで下り、大岩の右を登る。ロープがぶら下がっているが、怪しげなので頼らず登る。この大岩を越えると沢は左に折れ、上流が見通せる。右岸の堅炭尾根の上部は赤い樹林帯と緑の笹原のパッチワークで覆われて、紅葉のいい時期に当たったようである。


大岩の右を登る


紅葉の堅炭尾根を仰ぐ

沢を飛び石伝いに右岸に渡り、草付きの急斜面を一直線に登る。非常に急ではあるが、良く刈り払いされ、岩場にはロープや鎖が設置されている。武能岳の稜線から切れ落ちたスラブを背にして、グングン高度を上げる。振り返って見下ろせば、沢の中をもう1組のハイカーさんが遡っているのが見える。なかなか人気のコースだ。


飛び石伝いで右岸へ


草付きの急斜面に取り付く


グングン登って沢を見下ろす


武能岳(右)を望む

先行する2人組おじさんのハイカーさんに追い付くが、どっちを見ても絶景という場所なので、写真を撮りつつ後についてのんびり登る。そうするうちに後続のハイカーさんが距離を縮めてきた。浮石を落とさないように注意して登る。

標高が上がるにつれて、芝倉沢の上流や茂倉岳と武能岳を結ぶ主稜線、振り返れば七ッ小屋山から清水峠、朝日岳へと連なる山並みが眺められる。岩場を鎖でトラバースし、小尾根を絡んで急登する。途中で後続のハイカーさんに道を譲る。


岩場を鎖でトラバース


堅炭尾根と茂倉岳(右奥)を仰ぐ

やがて頭上に小尾根の左に突き出た岩峰群が現れる。これが堅炭岩かな。ずっと付いてきたハイカーさんの先に出させて貰い、急登して堅炭岩の岩頭の近くに出る。眼下に横たわる湯檜曽川を隔てて、白毛門、笠ヶ岳、朝日岳と続く山並みが遮る物なく眺められる。そしてこの辺りから紅葉の間を縫って登り、岩場を交えた尾根道となる。


堅炭岩


堅炭岩の岩頭から朝日岳


堅炭尾根を見上げる


笹原の刈り払い道と紅葉

360度どちらを見ても絶景。左側は切れ落ちた断崖とその下はスラブとなり、湯檜曽川の白い河原が遥か下だ。振り返れば眼下の尾根は紅く染まり、清水峠の向こうには巻機山がせり上がって見えて来た。


左側は断崖とスラブ


紅葉の堅炭尾根を振り返る

さらに登ると、左側に幽ノ沢と一ノ倉沢の岩壁を横から眺める。あんなところ登れる気が1mmもしない。右側には先月登った武能岳が、小さいながらもスックと尖って聳えているのが眺められる。


一ノ倉沢(奥)と幽ノ沢の岩壁


武能岳を望む

紅葉を愛でる尾根道はまだまだ続き、特に右側の斜面を覆う紅葉は見事だ。芝倉沢の周囲の岩場や笹原の緑もいいし、互いに引き立て合っているな。


堅炭尾根の登り


紅葉と芝倉沢を俯瞰

芝倉沢の渡渉点から続いた急登も、笹原に覆われた一ノ倉岳の頂上が見え始めると、傾斜が緩んで一段落。笹原を綺麗に切り開いた道を辿る。紅葉の小岩峰を越え、最後は笹原が広がる斜面を登って、一ノ倉岳の頂上に着く。


紅葉の小岩峰を登る


一ノ倉岳頂上直下の登り

頂上は東西に長く平坦な笹原で、どこが最高点かはっきりしない。登り着いた所に山名標識、カマボコ型の避難小屋、「遭難之碑」石碑がある。三角点標石は見そびれた(後日、点の記を見ると、茂倉岳へ19m寄った所にあるらしい)。展望はもちろん360度。先月登った茂倉岳がすぐ近くに見える。主稜線なので、ハイカーさんの往来が多い。


一ノ倉岳頂上


一ノ倉岳避難小屋


一ノ倉岳から茂倉岳を望む
左奥に苗場山


一ノ倉岳から万太郎山を望む

頂上は少し風があり、長袖シャツの上にフリースを羽織る。笹の陰に腰を下ろし、鯖味噌煮を肴に缶ビールを飲み、カップ麺の天ぷらそばで昼食とする。40分程のんびり休んだのち、谷川岳に向かう。

一ノ倉岳の下りから眺める谷川岳は、左側が一ノ倉沢の荒々しい岩壁、右側は笹原に紅葉を混じえ、これまた絶景。前を行く単独行の女性も、度々スマホを構えて撮影している。


谷川岳への縦走路


オジカ沢ノ頭を望む

急降下して着いた鞍部から一段登り返した所に「ノゾキ」の標識があり、一ノ倉沢を覗き込めば途中の見えない絶壁の下にスラブと万年雪、R291の一ノ倉沢出合を俯瞰する。


一ノ倉岳を振り返る


ノゾキから一ノ倉沢を覗く

ノゾキからオキノ耳へは、岩場と紅葉を交えた緩い登りとなる。登り着いた小岩峰には富士浅間神社奥の院が祀られ、石鳥居と石祠がある。トマノ耳からここまで足を伸ばし、あちこちの岩場で休憩しているハイカーさんが多い。


オキノ耳への登り


奥の院と一ノ倉岳・茂倉岳(奥)

オキノ耳、トマノ耳の頂上は、どちらも記念撮影しようとするハイカーさんで大賑わい。少し下って、肩ノ広場で一休みする。天神尾根を登り降りするハイカーさんの行列が眺められる。西黒尾根はもう何回も歩いているし、一方、天神尾根は最近歩いていない(というのは口実で、疲れて楽したい)ので、あっちから降りようかな、とも思ったが、ロープウェイ料金1,230円をケチって(^^;)、やはり西黒尾根で下ることにする。


オキノ耳からトマノ耳を望む


肩ノ小屋とオジカ沢ノ頭を望む


西黒尾根を俯瞰


天神尾根を俯瞰

西黒尾根を下ると、ハイカーさんの数はグッと減る。しかし、登って来るハイカーさんもちらほら。東南アジア系のペアのハイカーさんと交差し、女性の方から、頂上まであとどれくらいですか、と尋ねられて、あとまだ少しあるかな〜、頑張って下さい、と答える。それにしても西黒尾根を登るとは元気だなあ。ロープウェイ代を節約したいのかな(^^)


ラクダの背を望む


西黒尾根と谷川岳を見上げる

しかし、ラクダのコルに向かって急降下しているとき(14時頃)、軽装の若いペアハイカーさんが登って来たのには驚いた。頂上着は15時過ぎだよ、大丈夫かな。肩ノ小屋があるから大事にはならないとは思うが。


鎖場から西黒尾根の下部を俯瞰


西黒尾根登山口に下り着く

ゆっくり下って、頂上から2時間40分で西黒尾根登山口に下り着く。いつの間にか空は灰色の雲に薄く覆われ、天気は下り坂のようだ。あとはR291を下って、16時過ぎに土合橋駐車場に戻る。ハイカーさんが帰宅して、駐車場の車は随分少なくなっていた。

帰りは久し振りに温泉センター諏訪の湯に立ち寄って、さっぱり汗を流す(300円)。水上ICから関越道に乗り、桐生への帰途についた。

P.S. この山行の4日後の10月5日に、谷川岳では初雪が降ったそうである。