霧ヶ峰
8月16日〜18日の2泊3日でS&Sと上諏訪温泉に宿泊し、中日の17日に霧ヶ峰を歩いてきました。7月中旬からずっと締め切り仕事に追われ、休日がほとんど取れなくて山歩きもできず、体が鈍りきってしまいましたが、なんとか仕事を片付けて、スッキリした気分で出発。温泉でのんびり骨休めし、軽い山歩きをリハビリがてら楽しんできました。
初日の16日は朝9時前に桐生を車で発ち、上信越道、新和田トンネルを経由して、上諏訪駅に正午頃に到着。列車で来たS&Sと合流する。
まず、諏訪湖岸を走って見つけた「そば処岳家」で昼食をとったのち、北澤美術館を訪ねる。ここはエミール・ガレのガラス工芸品のコレクションを展示しており、ひとよ茸ランプが目玉。これが見たかった。他の作品もジャポニスムの影響を受けて、和の趣のある見事なものばかり。なお、説明員の方といろいろ話をしていたら、長野県にはササクレヒトヨタケを食用で栽培している農園があり、コプリーヌという商品名でパック販売されていることを教えて頂いた。一度、食べてみたい。
ガラス工芸品を鑑賞したのち、今回の宿の「ぬのはん(布半)」にチェックイン。早速、温泉に浸かったのち、美味しい夕食を頂く。5階の客室からは湖岸道路を隔てて諏訪湖が一望できる。前夜は諏訪湖祭湖上花火大会という超大型の花火大会が開催されたそうだが(毎年8月15日開催)、夏期はその他の日も毎晩、花火を打ち上げているとのこと。この晩も20:30から始まって、客室に居ながらにして花火を楽しめた。
8月に入っても梅雨時のようなどんよりとした天気が続いていたが、2日目の17日は朝から晴れて、超久し振りに山歩き日和になりそうだ。朝食をしっかり頂いたのち、車で出発。太陽が高くなるにつれて、汗ばむような暑さになってきた。霧ヶ峰に向かって県道諏訪白樺湖小諸線を上がる。
途中、立石公園に立ち寄る。ここは諏訪湖の展望で有名なスポットで、最近ではアニメ「君の名は。」の聖地として話題になっているらしい。それはさておき、高台の展望デッキから諏訪湖を俯瞰して一望する景観は素晴らしく、おすすめ。訪れる人も多い。
さらにつづら折れの県道を上がると霧ヶ峰高原の一角に登り着いて、緩やかに起伏する草原が広がる。標高は1600mを越え、さすがに山上は涼しい。スポーツ合宿中らしい生徒・学生を見かける。ビーナスラインに入り、車山肩の駐車場(無料)に車を置く。ここも人気のスポットで、ドライブで立ち寄る観光客が多い。
登山靴に履き替えて歩き始める。駐車場から一段上がった尾根上にレストラン「チャプリン」、その裏手に山小屋「ころぼっくるひゅって」がある。山小屋の右手から車山の北斜面をトラバースする登山道に入る。車山湿原を隔てて、笹原に覆われたなだらかな円頂の蝶々深山(ちょうちょうみやま、1836m)を望む。青い空に白い雲、緑の笹原。いい眺めだなあ。久し振りの山歩きは、やはり気分が上がる。
左側に車山湿原(といっても緩斜面の笹原で水はなさそう)を少し下に見ながら、ほとんど水平な登山道を歩く。道端には夏から初秋の草花が点々と咲く。一番多いのはヨツバヒヨドリだろうか。斜面の下の方に数頭のシカがいるのを見つける。登山道には安山岩?がゴロゴロ露出した箇所があり、少し泥濘も残るので、足元はしっかりした靴が良い。
途中で左に蝶々深山・沢渡方面への登山道を分け、緩く登って程なく車山乗越に着く。右には車山がちょっと傾斜を増して盛り上がり、左には稜線上の笹原の中に細い踏み跡が分岐する。道標によると南の耳(1838m)、北の耳(1829m)、男女倉山(おめくらやま、1776m)を経て、八島ヶ原に至るとのこと。
この少し先で車山高原からの登山道に合流し、ハイカーさんや観光客の数がグッと増える。ビーナスライン沿いの車山高原から車山頂上まで2本のリフトを乗り継いで上がれるので、適宜リフトを利用してこちらのコースを往復する人が多いようだ。
車山への登りは擬木の階段が続き、結構急だ。振り返ればだいぶ標高が上がって、白樺湖の湖面を俯瞰する。その向こうには蓼科山があるはずだが、雲に覆われて残念ながら頂は見えない。
急な階段坂を登り、ひと汗かいてリフトの山頂駅に着く。リフトで来た老若男女の観光客、ハイカーさんを合わせて遊歩道を歩く。車山の頂上はすぐそこだ。
頂上には遠目にも目立つ大きなレーダードームが建ち、その手前の石垣の上に、四方に諏訪大社のような御柱を立てた車山神社がある。由緒書きによると、昭和の初めに霧ヶ峰のカボッチョ山にスキー場が開設された際、スキー神社が建立され、大山祇命(おおやまずみのみこと)が祀られた。その後、スキー場の主流が車山に移ったため、神社もこの地に遷座され、以前から山頂に祀られていた神様や、諏訪大社の主祭神の建御名方神(たけみなかたのかみ)、八坂刀売神(やさかとめのかみ)を合祀した、とのこと。新しい神社だが、それでも既に一世紀近い歴史がある。
三角点標石はレーダードームの裏手の広場にある。頂上一帯はなだらかで広く、360度の展望が得られる。今日は遠景が雲で遮られているが、北西に向かってなだらかに起伏する霧ヶ峰の草原とぽっかりと平野のように広がる八島ヶ原湿原が眺められ、彼方の美ヶ原に目を凝らすと頂上に林立するアンテナ群も判る。
車山頂上から西へ、草原の緩やかな斜面を下って、車山肩に向かう。地形図の実線路(幅1.5m以上3m未満)を辿るが、ちょっと幅の広い登山道で、多分昔の作業道だろう。展望を楽しみながら大きく蛇行して下ると道端にベンチがある。車山肩はすぐそこに見えているが、正午を過ぎているので、ここで休憩。パンとペットボトル飲料で昼食とする。眼下の緩斜面をトラバースしてビーナスラインが延び、車の往来が見える。
昼食後、車山肩の駐車場に戻る。休憩込みで約2時間半の軽い行程の山歩きだったので、もうちょっと歩きたいなということで、次の八島ヶ原湿原に車で移動する。
ビーナスラインを車で移動して、八島湿原駐車場に車を置く。こちらも人気のスポットで、車の誘導員がいるほど。駐車場の周りには数軒の土産物屋兼山荘がある。
ビーナスラインの下をくぐり抜けて、八島ヶ原湿原を一望する広場に出る。なだらかな丘に囲まれて草原が広がり、その奥にもっさりとした車山を遠望する。湿原と言っても、八島ヶ池など、いくつかの池があるほかは、あまり水気はない。約8mもの泥炭層が堆積した高層湿原だそうで、よく見ると平坦ではなくて、緩やかな起伏がある。周辺には様々な花が咲き、車山より種類・数とも多いように思う。木道を下って湿原を一周する遊歩道に出、反時計回りの方向に歩き出す。終始、眺めが良く、開放的で気持ち良い所だ。
ほぼ平坦な木道を歩いて行くとヤナギヤンの群落があり、振り返ると鷲ヶ峰(1798m)が湿原の向こうに見える。樹林に入るとヨツバヒヨドリの群落があり、数匹のアサギマダラが花の間を舞っている。
鹿除け柵のゲートを通り、樹林を抜けると湿原の東南端は近い。湿原の幅も狭まって小さな谷となり、微かにゴウゴウと水音が聞こえてくる。やがて旧御射山(もとみさやま)へ直進する道から分岐して左折。旧御射山には遺跡や神社があるそうで興味津々だが、今回は割愛。
すぐに沢を木橋で渡る。湿原から流れ出る沢(観音沢支流)で意外と水量が多い。広い砂利道のような遊歩道に出て、ここで道端の大石に腰掛けて一休み。ビーナスライン開通前には、この砂利道を鎌ヶ池まで小型バスが走っていたそうである。
再び鹿除け柵のゲートを通り、右にフェンスで隔てられた牧場(跡地?)の緩斜面を見ながら、平坦な砂利道を歩く。この辺りはススキの穂が出ていたり、アキアカネがたくさん飛んでいたりして、どことなく里山の雰囲気がある。
ほどなく砂利道のT字路に着く。右の道は物見石・車山湿原に至る。ここは奥霧キャンプ場跡地で、現在休止中の看板があるが、周囲の建屋は無人となってかなり久しい感じ。T字路を左に進むと再び木道となり、鷲ヶ峰を正面に見ながら歩く。
やがて左の草原の中に鎌ヶ池が現れる。木道を歩いて湿原を一周し、駐車場に戻る。八島ヶ原湿原は、新田次郎の『霧の子孫たち』の舞台で、実際はどういう所なのか、昔読んで以来、興味を持っていたので、訪れることができて良かった。
霧ヶ峰は俗化しているとは言え、草原や湿原が広がる景観はやはり独特で素晴らしい。今回登っていない峰や辿っていないコースがたくさんあるので、また来たい。
八島山荘でソフトクリームを食べたのち、宿に帰投する。フロントの人の話では、下界はかなり暑かったようである。今日は軽い行程ながら久々に山歩きが楽しめたから、風呂上がりのビールと夕食のビールがうまい。日本酒も飲んだら酔っ払って布団にバタンキュー。花火大会が始まったのにも気づかずに熟睡する。
諏訪大社下社春宮
最終日の18日は朝から雨降り。今日の山歩きは中止して、観光にあてる。宿をのんびり9時半過ぎにチェックアウトし、諏訪市原田泰治美術館に向かう。原田泰治と言えば、昔、A新聞日曜版に絵が連載されているのを見て、気に入っていた画家である。日本全国の素朴な田舎の風景を素朴に描いた絵が展示され、こういう風景見たことあるなあ、と懐かしみながら鑑賞する。
美術館を出る頃には、雨はほとんど上がっていた。次は諏訪大社下社春宮に向かう。諏訪大社は諏訪湖の周りに上社本宮、上社前宮、下社春宮、下社秋宮の四つの境内地のある神社で、だいぶ昔に上社本宮はお参りしたことがある。
下社春宮の門前の駐車場(無料)は参拝客で満杯。少し待って、車を置くことができた。大きな石鳥居を潜り、雨に濡れた石畳を歩いて、鬱蒼とした鎮守の森に囲まれた境内に入る。正面に神楽殿があり、その後ろに幣拝殿があるという変わったレイアウト。両脇には御柱が立つ。さすが最古の神社の一つで、神さびた雰囲気が半端ない。
境内から左に出、雨で水量を増した砥川の渓流の対岸に渡って、万治の石仏に向かう。巨石のお身体の上に頭がちょこんとのったユニークかつユーモラスな石仏だ。周りを3周するのが正式?のお参りの仕方だそうで、参拝客はみんな律儀に3周している。
これにて観光を終了。諏訪はまだまだ見所があるし、温泉もあるので、また来たいなあ。門前のそば処で昼食に冷やしおろしきのこそばを食べたのち、列車で帰るS&Sと上諏訪駅で別れ、桐生への帰途についた。