アド山
この週末も安蘇山塊のまだ登っていなくて気になる山へ。葛生のアド山に登る。ネット上に多くの山行記録があり、最近ではハイトスさんが登っておられる。『栃木の山150』(随想社)にもガイドが掲載され、一般的なハイキングが楽しめる。登り約1時間の小さな里山なので、久し振りに山歩きがしたいというKさんに同行頂いて、出かけてきました。
なお、アド山という珍しい山名は、阿土山城という城の名に由来するそうである。
桐生を車で出発し、約1時間で葛生に到着。山歩き自体は約3時間の短い行程なので、登る前に葛生化石館に立ち寄る。9時の開館を待って入館(無料)。葛生に分布する石灰岩から見つかった化石や、内外の化石、鉱物が展示されている。特に、石灰岩に生じた洞窟や裂罅(れっか=割れ目や裂け目)に土砂と共に堆積して出来たという哺乳類の化石が興味深い。また、入館記念として、フズリナ入りの石灰岩の欠片を一人につき一個貰える。
化石館をじっくり見学したのち、アド山登山口の金蔵院に向かう。仙波交差点南の「アド山城跡2.3K」と「佐野市立常盤小」の道標から細い脇道に入り、「金蔵院」の道標に従って道なりに進む。途中で潜る橋梁跡(橋台のみが残る)は、かつて羽鶴の石灰石鉱山と葛生駅を繫いでいた鉄道(日鉄鉱業羽鶴専用線)の跡だそうだ。
金蔵院(正式名称は清滝山金蔵院聖法寺)の広い駐車場の隅に車を置かせて貰い、まずは本堂に参拝。境内は公園のように整備されて、風景が良い。本堂の背景には明るい雑木林とアド山に繫がる稜線、その上に青空が広がる。今日は快晴で風もなく、絶好のハイキング日和である。
山門から石仏が建ち並ぶ山道を戻ると「アド山城跡1.7K」の道標があり、ここから防獣フェンスを開閉して山道に入る。最初は笹原の踏み跡を辿るが、やがて笹原は消えて、明るい雑木林の尾根の登りとなる。約20分程で一つめの堀切を通る。結構深い堀切だ。
先に立って登っていたKさんだが、久し振りの山歩きでペースが摑めず、お疲れのご様子。先頭に代わって、ゆっくり登る。左(北)側には木立を透かして、白くなった女峰山〜赤薙山が遠望される。今日は雪山を登っている人も、絶好の天気に恵まれているだろう。
小さなコブを越えると、行く手にアド山が木の間越しに見えてくる。明るい雑木林の中を登り、二つめの堀切を通る。少し傾斜が増して、雑木林に榊等の常緑樹が混ざる。右側に石垣を見て、三つめの堀切を通れば、アド山の頂上は近い。頂上直下には古い石祠があり、お神酒をお供えしたらしい空の盃がおかれている。
登り着いたアド山頂上は北東方向に細長く痩せた稜線となり、南東面は足元から斜面が切れ落ちて、そちら方面に素晴らしい展望が開ける。頂上には三角点標石の他に丸太を利用したベンチがあり、休憩にうってつけである。まずはベンチに腰掛けて少し早い昼食とし、Kさんが用意して下さったパンとコーヒー、ゆで卵、ペッパーハム、サラダ、ハッサクを美味しく頂く。
頂上から東を眺めると石灰石鉱山が広がり、その中に432m三角点峰(点名:天狗岩)がポッコリと円頂を擡げる。この円頂は安蘇山塊のあちこちから見かけて、遠くからでもそれと判る特徴的な山容の山なので、ちょっと気になっている。その右側の山麓にも鉱山が広がり、発破直後なのか白煙がたなびいている。その右には微かに筑波山の山影が遠望できる。南には葛生の市街が広がり、背景に諏訪岳から唐沢山への山並みが低く連なる。
食事と展望を楽しんで、頂上で小一時間のんびり過ごす。下山は南に延びる尾根をミニ縦走し、途中から枝尾根上のサブコースを下って金蔵院に戻るコースをとることにする。
頂上稜線を先へ辿ると末端で道が二手に分かれ、左には「←迂回路へ」との道標がある。また、右には「注意して下さい」との看板があり、その先は急坂となっている。ここは右が面白そうだ。すぐに短い鎖場となり、これを下ると左から迂回路が合流する。さらにロープや鎖が固定された長い急坂を一直線に下る。ようやく傾斜が緩まった地点には、逆コースの人向けに「もうすこしガンバツテ アド山↑」という手作り感溢れる道標がある。
ここからは里山らしく小さな登降のある緩やかな尾根となり、リラックスして歩ける。やがて小ピークに着き、「金蔵院駐車場へのサブコース」が右(西)に分岐する。帰りはそちらに下るが、少し先に展望台があるそうなので、立ち寄って行こう。
分岐を直進するとすぐに大きな岩場に突き当たる。この岩場を右から巻いて尾根上に出、左の岩場に登ると展望台に着く。アド山や会沢(あいさわ)の石灰石鉱山、大鳥屋山方面の眺めが開ける。丸太のベンチもあって、こちらも休憩適地。四方山話で、のんびり30分程を過ごす。
分岐に戻り、サブコースを下る。急な坂はないが、小さなコブがいくつもあって、やはり里山らしい尾根道が続く。振り返れば、木立を透かしてアド山の丸い頂が眺められる。
尾根上を辿るのでコースは概ね明瞭だが、末端は尾根が緩く広がって、踏み跡が消える。疎らな赤テープを追うと薄暗い杉植林帯の緩斜面を下って、金蔵院の前を流れる川に突き当たる。川沿いに下ると防獣フェンスが設置された橋があり、川を渡って駐車場に帰着する。最後はどうもコースを外れて怪しい所を歩いたようだが、ま、結果オーライ。
好天の下、変化と展望に富んだ尾根歩きができ、Kさんも久し振りの里山を楽しまれたようである。帰りは「道の駅どまんなかたぬま」に立ち寄って、お土産を物色。佐野ラーメンを買って帰る。翌日の日曜日の昼食に早速、作って食べる。麺がもちもちでコシがあり、大変美味しかった(^^)