岩山(鹿沼)
最近の週末は、天気が悪かったり、所用があったりで、半日行程の軽い山歩きが続いた。今週末も同じパターンで、日曜の午後だけ空きがある。どこに出かけようかなと考えて、鹿沼の岩山に行くことにした。市街地に隣接する標高328mの低山なので夏向きの山ではないが、凝灰岩の岩場が多く、ハイキングコースとしてもロッククライミングのゲレンデとしても人気がある。行程も3時間ちょっとと短く、散歩感覚で楽しめそうである(が、実際はそう甘くはなかった)。栃木百名山の一座でもある。
桐生を車で11時半に出発。高速を鹿沼ICで降り、登山口の日吉神社に向かう。表通りから日吉神社へ進入する道の入口はとても分かりにくい。古峰原街道沿いの食事処「しなこ」の左脇の細い路地に、歩道を横断して入る。ハイトスさんの岩山の記事とGoogleストリートビューで予習しておいたのが役に立った。日吉神社前の駐車スペースには他に3台の駐車があり、入山者がいるようだ。低山で暑いのを見越して、今日はバミューダパンツにトレランシューズという軽装で出発する。
まず、日吉神社に参拝する。祭神は大山咋神(おおやまくいのかみ)、祭日は2月11日。1057年に宇都宮城中に創建され、1104年にこの地に移遷したとのこと。なかなか由緒ある神社である。
神社前の車道を左に進み、「岩山ハイキングコース」の道標から杉林の中の登山道に入る。最初は笹や草藪の間の道を緩く登る。蜘蛛の巣がしょっちゅう顔にかかるし、一週間後に投票日を控えた参院選の候補者を拡声器で連呼する声がガンガン響いて来るし、如何にも市街地の裏山という雰囲気の中を歩く。
さらに進んでようやく下界の喧騒から離れると岩場が現れる。急な個所には丁寧にステップが刻まれ、登るのは易しい。稜線に向かって岩場を登り上げると、右の岩峰(A峰)の上からクライミングロープが垂れ下がっている。ロッククライミングの練習に来ている人がいるようだ。
A峰には簡単に登れ、天辺からは帆立貝の殻を立てたようなB峰やC峰の岩峰、振り返って鹿沼市街の眺めが良い。B峰の基部を巻いてC峰に登ると、ヘルメットやハーネスを付けたおじさん、おばさんクライマーの一団が、岩登りや沢登りの教本を見ながらロープワークの練習中。今日は暑いですねー、と挨拶を交わす。
岩峰群を過ぎると樹林に入る。岩場を縫うように登ると、「三番岩275m」の山名標のあるピークに登り着く。樹林に覆われて展望はない。
三番岩からの縦走路も樹林の中に岩場が連続し、巻いたり岩の割れ目をすり抜けたり、変化のある道が続く。それにしても今日は暑い。稜線上では少しは涼しい風が吹くかなと期待していたのだが、ほとんど無風で湿度が高い。標高差100mしか登っていないのに大汗をかいて、既にグロッキー気味。途中のベンチで休憩して、ペットボトルのお茶を飲む。
岩場のある稜線をアップダウンすると、ちょっと高い鉄梯子が架かる岩場があり、これを登ると眼前にもっこりと盛り上がる二番岩の(正確にはその手前の)ピークが現れる。ここから少し傾斜のある岩場の下りとなる。降り着いた鞍部には「二のタルミ」の道標があり、少し先で右に下山道が分岐する。
二のタルミから短い急坂を登り、再び樹林の中の岩場を縫って稜線を進むと、「二番岩」のプレートのある岩場に着く。
二番岩からも岩場を交えた縦走路が続く。一のタルミから短い急坂を登って岩山(一番岩)の頂上に着いた。
岩山の頂上はその名の通り岩場からなり、中央にコンクリ製の三角点標石が埋め込まれている。展望が開け、北西には二股山、南東には辿ってきた稜線と奥に鹿沼市街を望む。
それにしても今日は気力が削がれるレベルで暑い。この先に難所の猿岩が控えているので、僅かな木陰に座り込んで休憩する。30分も休んでようやく汗が引いてきた。そろそろ気合を入れて行きますか。
「クサリ場」あるいは「クサリ場・迂回ルート」というプレートに導かれて猿岩に向かう。大きな岩屋を過ぎると細尾根となり、左に迂回ルート(鎖場の下に抜ける)を分ける。少し下った岩稜の突端が猿岩だ。正面は切れ落ちて、眼下にゴルフ場の芝生とクラブハウスを俯瞰する。そして左のスラブが問題の難所、猿岩の鎖場だ。
この鎖場は、上部の斜度はさほどでもないが、途中から急になって、下が見えない。しかし、よく見ると下に立ち木があり、その根元がテラスになっている。念のために30mロープとハーネス、エイト環を持って来ているので、無理せず懸垂下降で行くことにする。ロープを垂らすとギリでテラスに届いたので、1ピッチ目は15mあることになる。
テラスまで降りると、さらに鎖場が続く。2ピッチ目は立木の根っこを支点にし、途中の足場の良いところまで7mくらい下る。
3ピッチ目は上から見ると垂直に近い。鎖は浅いU字状ルンゼの中に張られており、岩の表面が湿っていて滑り易い。ここが一番危ないと思う。ロープの長さギリギリで懸垂下降する。4ピッチ目で樹林中の急斜面を5mほど懸垂下降して、安全圏に下り着く。いやー、この鎖場は面白かった。難所とは聞いていたが、長く急で、予想以上の難所だった。妙義山系の鎖場と比較しても高難度と思う。
鎖場を下ればもう麓は近い。道標に導かれて分岐を右折するとゴルフ場に突き当たる。ネットに沿って踏み跡を辿ると、やがて車道に出る。あとはゴルフ場の芝生や池を眺めながら緩く下るだけだ。途中に「まむしに御注意下さい」との看板があり、ビビる。「防雷シェルター」という避雷針付きの小屋があるのは、落雷の多い地域ならでは。
ゴルフ場を抜けると畑地の広がる谷戸に出、右手に岩山の稜線を仰ぎながら車道を歩く。4時を回って、暑さもだいぶ和らいできた。石段を登り、日吉神社の駐車地点に戻った。
帰りは鹿沼市高齢者福祉センターに日帰り入浴で立ち寄る。さっぱり汗を流したのち、鹿沼ICから高速に乗って帰桐した。
なお、帰宅後にこの日の最高気温を調べたら、鹿沼で32.3℃、桐生は35.3℃。いずれも最も暑い時期を上回る最高気温だった。道理で暑かった訳だ。次はもう少し涼しい山に行くことにしよう。