唐沢山〜三倉山〜大倉山
この週末は那須岳の西に連なる三倉山(みくらやま)〜大倉山の稜線を歩いてきました。
車にマイ自転車Radon I号を積み込み、桐生を深夜1時頃に出発。東北道を白河ICで降り、R4沿いの吉野家で朝食を摂ったのち、R289で福島県南会津郡下郷町に向かう。県境を抜ける甲子トンネル(2008年開通)は初めて通る。林道大峠線に入り、大峠登山口に向かう。舗装終点に自転車をデポし、未舗装区間(Radon I号で走ったら確実にパンクする)を少し進んで、大峠登山口に車を置く。既に駐車が1台あり。中の方は仮眠中のご様子。林道はさらに奥に延びるが、この先は悪路のため、通行止になっている。
歩く準備を整えて出発。林道を戻り、自転車のデポ地からサイクリングで音金登山口に向かう。ほぼ下り坂で漕ぐ区間は僅かだが、スピードが出過ぎて、かけっぱなしのブレーキが心配になる。今朝は快晴で、林道のところどころから青空を背景に流石山(ながれいしやま)や三倉山の稜線を高く仰ぐ。加藤谷川を渡ると緩い登りとなり、ギヤをローに落として上がる。行く手に田植えを終えたばかりの水田に山影を映して唐沢山が聳え、山麓の稲荷神社の赤鳥居を目指してペダルを踏む。
稲荷神社に到着。参拝して、駐輪させて頂く。神社右脇の林道が三倉山登山道入口で、そう記した道標と登山届のポストがある。なお、毎年7月中旬には「三倉山々開き」が開催され、ここから林道大峠線終点までバスで移動し、大峠→大倉山→三倉山→唐沢山と歩いてここに戻る行程(今日の予定と逆コース)で実施されるので、これに参加する手もある。
林道に入り、墓地を過ぎると舗装が切れて、未舗装道を登る。途中に2台分の駐車スペース有り。その先は草が伸びて荒れた林道となる。周囲の樹林からセミの声が盛んに聞こえる。林道終点から小さな沢沿いの道となる。シダと苔むした転石の間に細く不確かな踏み跡が続き、なかなかワイルドな道のりだ。
やがて水流が尽き、瑞々しいシダが生えた樹林中の斜面を登る。左にトラバースして、尾根の上に出る。道標有り。樹林の間から朝日が差し込んで眩しい。音金登山口からちょうど1時間登った。休憩して水を飲む。
ここから尾根をほぼ一直線に急登する。最初は笹が下生えの雑木林を登る。刈り払いされて、良い道が続く。樹林に覆われて展望はほとんどない。ヒバの樹林帯に入ると一旦傾斜が緩み、「中間点 標高1480m」の道標がある。
再び急登となり、ヒバやダケカンバ、イヌブナに覆われた尾根を登る。シャクナゲがあるが、花はほぼ終わり。標高が上がると樹林が低く疎らな高山的雰囲気となり、東側に二岐山や旭岳が眺められる。また、行く手には三倉山のピークも見え始める。
小広く開けた唐沢山頂上に登り着く。三角点標石と「空沢山」と記した古い山名標識がある。展望が良く、北には山麓の音金地区を俯瞰し、南は樹林の間に三倉山の三つのピークが眺められる。急登に次ぐ急登で大汗をかいた。しばし休憩。標高が上がったので、じっとしていればヒンヤリと涼しい。
さて、三倉山に向かおう。残りの標高差は約200mで、尾根上の緩い登りである。ところどころで開ける爽快な展望を楽しみながら登る。森林が低くなってハイマツが現れると一ノ倉の頂上は近い。ハイマツには小さなイチゴのような赤い雄花がたくさん咲いていて、これは初めて見た。なかなか綺麗である。
一ノ倉のピークに登り着くと、流石山とその奥の那須連山が初めて視界に入ってくる。三倉山はあと少しの距離だ。
一ノ倉から緩く登り、一投足で三倉山の頂上に到着する。頂上は共に御影石製で真新しい石祠と山名標柱(「平成二十年七月吉日三倉山々開き実行委員会」との銘がある)を中心に広々と開け、360度の展望が得られる。北には登ってきた一ノ倉、唐沢山とその向こうに下郷町の平野部を望む。右に視線を転じると、二岐山や那須連山の旭岳、三本槍岳、茶臼岳、南月山、黒尾谷山のピーク。那須連山の手前には流石山が緩やかな稜線を広げ、北の大倉山へ繫がって行く。
展望を楽しんで一息入れたのち、大倉山に向かう。三倉山から大倉山にかけての稜線の左(東)側斜面は加藤谷川の源流域に切れ落ち、険しい景観を示す。稜線を下って登り返すと、1854m三角点峰の頂上。ここで栃木・福島県境稜線に合流する。西には、笹原に覆われた緩やかな県境稜線が延々と続いているのが眺められ、遠目には歩いたら気持ち良さげ。しかし、登山道はないので、激藪必至である。
1854m三角点峰から大倉山へは県境稜線を南東へ。笹原と低い灌木の稜線を緩く登る。振り返って望む三倉山は衝立のように聳え、見事な山容だ。
大倉山の頂上は、密なハイマツとシャクナゲを切り開いた狭い平地で、樹林に遮られて展望はなく、山名標柱と道標があるだけ。朝食が早かったため、そろそろ腹が減ってきたが、ここは羽虫も多くて居心地はいまいち。もう少し先に進んで昼食にしよう。
大倉山からは、那須連山を背景にして、笹原に覆われた稜線がゆったりと続いている。ここまでは山中で誰にも会わなかったが、大峠から縦走してきたハイカーさんとしばしば交差するようになる。笹原を緩く下ると五葉の泉という小さな池がある。水の中には黄緑色のカエルの卵塊がうじゃうじゃ。また、少し先にはキスゲ小沼という池塘がある。この時期は花は少なく、ハクサンチドリやシナノキンバイがポツポツ咲く程度。ニッコウキスゲの花期にはまだまだ早い。
1792m標高点峰の頂上付近で昼食とする。まずはレトルトのさんま味付煮と大展望を肴に缶ビールを開ける。うまーい。それから、カップラーメンを作って食べる。
空腹を満たしたのち、流石山へゆるゆると登る。南から北へ、稜線を越えて吹き渡る風が涼しくて快適。1813m三角点峰は低い灌木に覆われ、流石山の山名標識がある。流石山を過ぎると再び笹尾根となり、那須連山がぐっと間近となる。那須岳中腹の三斗小屋温泉の建物や、その上の源泉の湯煙も見える。三斗小屋温泉には一度泊まってみたい。
流石山のなだらかな頂上稜線の東端のピーク(大峠山とも呼ばれている)に着くと、標高差約300m下の大峠まで一直線に落ちる笹原の大斜面を見おろせる。大峠の向こうに続く稜線は、同じ位登り返して三本槍岳に至る。これはスケールが大きな斜面だなあ。下って行くと、笹原のあちこちにウラジロヨウラクの丈の低い群落があり、花が満開だ。
下り着いた大峠で一休み。正午になり、日差しが強い。吹き抜ける風で涼む。ここはかつての会津裏街道(松川街道)が越えた峠で、年代はわからないが、風化し首のないお地蔵様が立ち並ぶ。三斗小屋温泉の方から若者グループがやって来て、三本槍岳に登って行った。そっちも面白そうなコースである。
あとは峠道を北側へ下る。ダケカンバなどの樹林帯に入り、緑陰の登山道を下る。トラバース気味でなかなか高度を落とさない。道幅が広くなり、途中に松川街道一里塚の石碑が建つ。石碑の左にある高さ3mくらい盛り上がりが一里塚だそうだ。
鏡ヶ沼からの登山道を合わせ、その先で林道大峠線終点に出る。広い駐車スペースがあり、かつてはここまで車で入れたらしい。荒れた林道をテレテレと下って、駐車地点の大峠登山口に戻る。出発時は2台しか駐車がなかったのに、20台程の車でスペースが満杯になっておりビックリ。人気の高い登山口ということのようです。
帰りはまず音金稲荷神社に行って、Radon I号を回収。他に2台のマウンテンバイクが置かれていたから、私の後を同じ行程で歩いている人がいるようだ。それから道の駅しもごうに立ち寄ってソフトクリームを食べ、甲子温泉大黒屋に立ち寄って日帰り入浴する(700円。大岩風呂でシャンプー石鹼は使えない)。さっぱりしたのち、白河ICから高速に乗って、桐生への帰途についた。