愛宕山〜難台山〜吾国山
JR常磐線岩間駅からスタートし、愛宕山、難台山、吾国山(わがくにさん)を縦走して、JR水戸線福原駅をゴールとする人気のハイキングコースを、GWの一日を利用して歩いてきました。
桐生を車で5時半に出発。北関東道を走って笠間西ICで降り、福原駅に7時前に到着。駅前の市営駐車場(1回210円)に車を置く。外に出ると、早朝の空気がひんやり冷たくて心地良い。今日は穏やかによく晴れて、駅から吾国山がくっきりと見える。
山歩きの準備を整えて、7:15発勝田行の列車に乗車。10両編成の車両には、高校生を中心に乗客が多い。車窓から丘陵に囲まれた田園風景を眺めて、短い鉄道の旅を楽しむ。4駅目の友部で品川行に乗り換え、次駅の岩間に7:46着、下車する。
駅前には「あたご山桜まつり」のピンク色の幟が立っているが、今年はさすがに桜はもう終わりだろう。駅前通り(すずらんロード)から見る愛宕山も、緑一色である。道標に従って市街を通り抜け、愛宕山の山麓から近道の山道に入る。つづら折れの車道と数度交差して山道を登ると、参道石段の登り口に着く。その左脇には「篤胤歌碑」がある。国学者・平田篤胤の所縁の石碑だが、何が書かれているか、いまいち判らない。
後日調べると、江戸時代後期の文政三年、幼い頃に天狗に連れ去られて岩間山(現在の愛宕山)で修行し、呪術を身につけたと言う寅吉少年が数々の奇跡を起こして江戸で評判となり、篤胤が寅吉から修行の様子を聞き出して「仙境異聞」という本を著したことから、岩間山が天狗信仰で賑わうようになったのだとか。現代的に言うとオカルトブームかな。
石鳥居を潜り、一直線で急かつ長い石段を登る。それにしても、神社に石段は付き物だよなあ。先週も自在神社で登ったし。石段が凄い神社のランキングを作ったら面白いかも。
登り着いた境内には、愛宕神社の立派な社殿が建つ。その裏手は一段高くなっており、さらに石段を登ると奥社の飯綱神社、その右には龍神社、左には松尾神社があり、山頂に神様が多数集結している。飯綱神社の裏手が愛宕山の最高地点で、岩場の上に青銅造の六角堂が建つ。これは芸術的にも見事な一品。その背後には十三天狗祠がある。数えてみたら確かに13基あった。中央の一番大きな祠には「文政七(1824)年歳甲申正春二十四日」の銘がある。
愛宕神社の社務所の前には展望所があり、山腹の鮮やかな新緑や岩間市街の眺めが良い。目を凝らすとスタート地点の岩間駅もわかる。既に結構歩いて来たなと思うが、始まったばかりで先は長い。
愛宕山参拝を終え、社殿に向かって左側の階段を降りると広い駐車場に出る。振り返れば、深い緑に包まれた愛宕山がこんもりと盛り上がっている。この駐車場を中心とするあたり一帯に遊歩道や東屋等が整備され、あたご天狗の森と称する公園となっている。フォレストハウス(管理棟)で公園とハイキングコースの案内図をいただく。これは後々、参考になって役立った。
駐車場の展望テラスからの眺めも良く、八重桜もまだ咲き残っている。テラスの下には「天狗の池」という小さな池があり、人工物ながら良い風景だ。
尾根を巻く遊歩道を進むと、尾根の上にスカイロッジと称するログハウスが建ち並んでいるのが見える。グループで宿泊できるそうで、展望がなかなか良さそうである。
遊歩道から車道に合流した地点が乗越峠で、その少し先からハイキングコースに入る。左に鐘転(かねころばし)山への道を分けると、なだらかな尾根上の幅広い道となる。新緑に覆われ、鳥が盛んに鳴いている。基本的にこんな感じの気持ち良い道がずっと続く。これはトレラン向けの道だなあ、と思ったら、案の定、数人のランナーとすれ違ったり抜かれたりする。もちろん、人気のハイキングコースなので、一般のハイカーさんも多い。
短い急坂を登ると南山展望台のピークで、展望台に登ると、愛宕山とその背後に広がる緑に覆われた平野が一望できる。難台山は木の梢が邪魔をして、残念ながら見えない。
尾根道を緩く下ると、「←至鳴滝20分」との道標があり、左に鳴滝への道を分ける。往復するときつそうなので、今回は割愛。小さな上下を繰り返して、林道が通る団子石峠に下り着く。直進して尾根道を登ると道の脇に丸い巨石があり、これが団子石だが、まあ特に変哲もない大岩だ。
長い急坂を登り上げると標高432m三角点峰の頂上で、「団子山」の山名標がある。一旦下り、手摺のロープが張られた急坂を登り返す。しばらく緩い登降が続くと「獅子ヶ鼻」の道標がある。左(西)斜面に突き出た岩鼻があり、かつては展望が効いたそうだが、現在は前の木が育って何も見えない。
少し進むと「天狗の奥庭」の道標があり、ここも左斜面に突き出た岩場(天狗の鼻の標識有)で、こちらは八郷(やさと)盆地を隔てて加波山の眺めが良い。周囲は深い森林に覆われ、岩壁を交えた険しい斜面となり、深山の雰囲気がある。
さらにこの先には「屛風岩」の道標がある。こちらは高さ10m位だろうか、名の通り屛風のような垂壁を見せる大岩で、これには感嘆する。
尾根が痩せて細くなった登山道を登ると、難台山の頂上に着く。頂上は小広く開けて、ハイカーさん数組が休んでおられる。樹林に囲まれて、展望は樹林の切れ間から見える筑波山方面に限られるが、雰囲気は明るい。片隅に国之常立神(国常立尊)を祀る石祠があり、その他に展望盤と三角点標石がある。
広場の芝の上にランチシートを広げて腰を下ろし、まずは鯖味噌煮をつまみに缶ビール。今日は暑くなって喉が渇いていたので、飲料が格別に美味い。昼食は先週食べて美味かったので、今回もカップ麺の鴨だしそば。これは日◯のステマではないので、為念(^^;)。
腹を満たしたところで、後半の行程に入る。新緑に覆われた尾根をグングン下ったのち、急坂を登り返すと、右にすずらん群生地への道を分ける(下り20分)。スズランが咲くのは5月上旬とのことなので、もしかしたら咲いているかな。いずれにしても、往復するには遠いので割愛。
縦走路は急斜面に丁寧にジグザグを切って下る。杉林の中を下るようになると、程なく道祖神(どうろくじん)峠に着く。ここは県道笠間つくば線(通称フルーツライン)が越える峠で、車やバイクの通行が多い。車道に面して「道祖神」とのみ刻まれた石碑がある。
尾根上の林道に平行する歩道を辿ると芝生の広場に出て、正面になだらかな吾国山が現れる。左に建ち並ぶ赤い屋根の建物は、かつての「吾国山洗心館」と称する青少年教育施設だが、H20年度末で閉鎖されて立入禁止となっている。しかし、まだ最小限の手入れはされているようだ。
緩く見えた吾国山だが、登り始めると結構急だ。林道を横切り、擬木の階段を急登する。尾根上に出ると一旦傾斜が緩み、右(北東)斜面が伐採されて、新緑に覆われた山(館岸山の峰続き?)や平野の展望が開ける。
再び尾根上の急登となり、自然林に入ると石垣の上に鎮座まします田上神社に着く。石造りの立派な覆屋の中に祠が収められている。そして、ここが吾国山頂上で、神社の左脇に一等三角点の標石、右脇に「我國山神社 遥拝所建築 玉垣建設 記念 昭和十二年十二月」と刻まれた石碑がある。
神社を囲む土塁の上にはヤマツツジの生け垣が作られていて、今がちょうど見頃だ。神社の脇のヤマツツジも朱色に咲き誇って満開。愛宕山のサクラは時期を外したが、吾国山には(偶々だが)良い時期に来た。
土塁に上がると、八郷盆地や筑波山の眺めが良い。3人のハイカーさんがいらして、茨城の方々らしく、展望を楽しみながら地元の山談義に興じておられる。そのうち、4人組のハイカーさんも到着されて、頂上はますます賑やかになった。ゆっくり休憩したし、そろそろ下山にかかるとしよう。
自然林の尾根を下ると三十三丁目の丁石があり、以降、この丁石を逆順で辿っていく。大覚寺・板敷峠への尾根道を左へ分け、福原駅の道標に従って北面の山腹を下る。「吾国山のブナ林」という標石があり、確かにそれらしい大木が点在する。湧き水が溜まった小さな池があり、傍らには社が祀られている。この辺り、標高500mの低山とは思えない程、深山の雰囲気がある。少し下ると、花期は過ぎているが、カタクリ群生地もある。
新緑が鮮やかな雑木林の中、尾根をゆるゆると下る。やがて林道を横断すると、十九丁目。この前後から杉林に入って、普通の里山らしくなる。椿地区への細い道を右に分け、なおも緩く下ると「吾国山入口」との道標があり、沢を渡って水田に出る。急に明るく開けて、正に飛び出たという感じ。農道を通って、舗装道に出る。
麦畑の中を下り、道標に従って再び農道に入る。八丁目の丁石があるので、ずっと参道を辿っているようだ。振り返れば麦畑の向こうに吾国山がゆったりとした山容を見せ、北海道っぽい景観を示している。
石鳥居を潜り、車道を横断して細い道に入る。途中に三丁目があるので、この道も参道の続きだ。水田の向こうには加波山がどっしりと聳える。やがて集落に入り、車道に合流する。「従是我国山二丁目」と刻まれた丁石があり、ここが参道入口ということになる。
あとはハイキングコースの道標に従い、車道を歩いて福原駅に向かう。水田には田植えを控えて水が張られ、周囲の山と青空を映す。気温も上がって、初夏の陽気だ。山麓の田園風景の中の散歩を堪能して、福原駅の駐車場に帰り着く。
帰りは桜川市のR50沿いにあるスーパー銭湯「ゆららの湯」(土日祝800円)に立ち寄る。ロングコースを歩いたが、先週程には足が凝っていない。だいぶ、リハビリできたかな。さっぱり汗を流したのち、桜川筑西ICから北関東道に乗って、桐生への帰路についた。