大峰〜秋葉山

天気:
メンバー:T
行程:越後湯沢駅 8:20 …薬師堂 8:40 …湯沢高原ロープウェイ山頂駅 9:45 …展望台 11:20 …大峰(1172m) 11:50 …秩父第十三番 12:35 …秩父第二十一番 13:00 …秋葉山登山口 13:55 …秋葉山(590m) 14:15 …坂東第三十一番 14:30 …山麓に出る 15:00 …越後湯沢駅 15:25
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

大峰は越後湯沢の温泉街の裏手に聳える標高1172mの山である。一般には湯沢高原スキー場がある山として知られ、頂上直下まで車道が通じていることもあって、山歩きの対象にはあまりなっていない。温泉街から中腹(標高870m)までスキー場のロープウェイ(通年運行)が架かり、山頂駅の周辺には高山植物園アルプの里をはじめとするリゾート施設があって、グリーンシーズンも多くの観光客を迎えている。山頂駅を起点として数本のトレッキングコースがあり、ハイカーさんによく歩かれているが、大峰の最高点は藪に覆われて道がなく、訪れる人は稀である。

大峰についてネットで調べていて、『大峯百番観音』というサイトを見つけた。このサイトによると、湯元より大峰にかけて西国三十三観音、大峰から七谷切(ななたぎり)にかけて秩父三十四観音、七谷切から秋葉山を経て熊野にかけて坂東三十三観音を祀り、これら合わせて百の観音像を巡礼する路があるとのこと。詳細な地図と道案内も掲載されていて、大変参考になる。観音様を巡りつつ大峰と秋葉山に登れば、がっつり山歩きが楽しめそうである。

(後日知ったことであるが、深田久弥は終戦翌年の秋に妻と5歳の息子を伴って観音巡礼路で大峰に登り、その登山記を『山さまざま』の「湯沢の一年」の章に著している。子供にはきつい登りで、観音様が現れる毎に歩かせたり負ぶったりを替えて登ったことが書かれている。また、『日本百名山』の苗場山の項にも「終戦後私は越後湯沢に住んだことがあって、その裏の大峰に幾度か登ったが、…」と記している。)

という訳で大峰百番観音巡礼路に興味をもち、紅葉の時期を見計らって歩いてきました。

JRで桐生6:24発。高崎で7:37発の上越新幹線に乗車して、越後湯沢8:06着。西口に出る。温泉街の背後に見上げる山は紅葉しており、青空に映えていい感じである。駅前の通りを右(北)に進み、温泉街の外れから湯坂を上がる。

越後湯沢駅西口
湯坂入口

共同浴場「山の湯」を過ぎて坂の終点に至ると、「百番観音霊場登口」と刻まれた石柱と石段がある。急な石段を上がって、薬師堂の前に出る。冬の積雪の重みで屋根がひしゃげて痛々しい。周囲には数体の石仏や庚申塔がある。

百番観音霊場登口
薬師堂

薬師堂の左脇から山道に入ると、すぐに急登となる。刈り払いされて良く手入れされた道だが、つるぺたの急坂なので、雨後はズルズル滑り落ちそう。「西國秩父坂東観世音供養」と刻まれた石碑を過ぎ、最初の観音像に着く。台座には「西國第一番」と右書きで刻まれ、長方体の石に如意輪観世音菩薩が浮き彫りにされている。また、その側面には西国観音札所第1番の寺号と御詠歌が刻まれている。

以降、急な尾根道を登る間に、同じ様式の観音像が次々と現れる。お参りしたものは全てカメラに収めたが、その一部で綺麗に撮れたものだけを選んでご覧頂く。

西国第七番
西国第七番
如意輪観世音菩薩

標高が上がるにつれて、周りの樹林は色付いてくる。緑に混じる黄と赤が美しい。西国第八番を過ぎると尾根道は一段と急になり、小さくジグザグを切って登って行く。

西国第八番
急峻な尾根を登る

ジグザグ坂を登りきった所に西国第九番と第十番が並んで建つ。そのすぐ奥に三角点標石があり、続いて西国第十一番を過ぎると、湯沢高原スキー場のゲレンデに出る。

ロープウェイ山頂駅までゲレンデ内を登る。中級者向けの良さそうな斜面が続く。今度、スキーで来ようかな。特に道型はなく、綺麗に刈り払われた草地の中を適当に登って行く。展望が開け、振り返れば魚沼盆地を俯瞰し、小さいながらも天を突き刺すように聳える飯士山を望む。この辺りにあった第十二番以降の観音様は、スキー場が開発された際に別の場所に移されたので、山頂駅まで観音像はない。

湯沢高原スキー場に出て
ゲレンデを登る
ゲレンデから飯士山を望む

山頂駅の周辺には足湯やアルプスの山小屋風のレストランがあり、まだ午前中の早い時間帯だが、ロープウェイで上がってきた観光客をちらほらと見る。アルプの里に向かい、赤そばと真っ赤に紅葉したコキアの花壇の間を下る。

湯沢高原ロープウェイ山頂駅
コキア(左)と赤そば
後方は高津倉山

途中、左手のブナ林の際に西国第三十番と「百番観音供養塔」がある。その先のブナの木の下に「湯沢高原の湧水」と書かれた水場があり、急登で乾いた喉を冷たい水で潤す。ゴーカート場の右の車道を辿ると、道端に5基の観音様が纏めて祀られている。

西国第三十番
西国第26〜29,31,32番

このすぐ先が高山植物園アルプの里だ。観光施設なのでそんなに期待していなかったのだが、ここから眺める周囲の山肌は見事に紅葉しており、あやめヶ池の静まり返った水面に映る逆さ紅葉は絶景と言って良い。

池の縁の木道を辿り、ロックガーデン(高山植物園)を通り抜けて、左手の山腹を大きくジグザグに登る。途中、サマーボブスレーのコースの脇を通り、おばちゃんが次々に滑り降りてくるのを目撃する。慎重にブレーキをかけてトロトロのスピードしか出ていないが、皆さん楽しんでおられて何より。

アルプの里あやめヶ池
ジグザグに登る

ジグザグ登りのカーブ地点に8基、次のカーブには6基の観音様がある。ここを左に行けばゲレンデに出る。右はちょっと遠回りになるが、ブナ林の中の気持ち良いトレッキングコースだから、こちらがお勧め。林の中にはジップラインのコースがあり、ちょうど子供達が滑り降りてくるところだった。これも楽しそう。

西国第18〜25番
西国第12〜17番
トレッキングコースを登る
ゲレンデを直登

黄葉したブナ林を抜け、ゲレンデに出て直登する。急坂を登りきると大峰の頂上直下の車道に出る。芝原峠から車で上がって来られるので(ただし、この先は通行止め)、マイクロバスに乗ったご年配の団体や、バイクのツアラーなど、人がわらわら。駐車場のすぐ近くに展望台があり、皆さん大展望を楽しんおられる。

展望台からの眺めは素晴らしい。大峰の中腹は見事の紅葉し、遥か下に湯沢市街を俯瞰する。飯士山が鋭く聳え、巻機山から谷川連峰にかけての山並みを遠望する。

展望台から湯沢市街と飯士山を望む
展望台から谷川連峰を望む

大展望を堪能したところで、大峰の頂上(最高点)を目指そう。車道のすぐ上に無線中継局があり、その裏手のブナ林の中に秩父第一番と第二番の観音様が並んでおわす。

大峰の無線中継局
秩父第1,2番

頂上は観音様の先だが、笹と低木の藪で道型は全くない。越後の山の藪はやっぱりえぐいなあ。頂上まではほぼ平坦、距離は約200m。Let's go ahead! 覚悟を決めて突入する。豪雪でねじ曲がった低木と蔓に引っ掛かりつつ苦労して進むと、笹の中に標石を見出す。角が丸くて「主三」の文字が見えるから、これは主三角点だ。山頂の証になるものがあって、かなり嬉しい。

大峰の頂上に向かう
大峰頂上の主三角点標石

無線中継局に戻り、缶ビールとパンで軽く昼食を済ませたのち、秩父第三番の観音様を探す。この場所が分かりにくい。無線中継局前の坂の途中に「百番観音参道」の標識があり、草深い踏み跡に入る。すぐに左に分岐すると、ブナの木の根元に秩父第三番がある。

秩父第三番へはここを入る
秩父第三番

秩父第四番は展望台の下にある。展望台の右奥の東京電力大峰山無線中継所の裏手に回ると「百番観音参道」の標識があり、ここから山道に入って緩く下る。笹が刈り払われて、良く整備されている。秩父第五番から第九番までの観音様を順に道端で見ると舗装道に出、しばらく車道を下る。

秩父第七番
秩父第九番
如意輪観世音菩薩

車道の分岐(左はアルプの里、右は芝原峠)に3基の観音様が並び、その左から再び山道に入る。すぐに秩父第十三番があり、以降、順番に観音様をお参りしながら、黄葉したブナ林を通して木漏れ日の射す落ち葉の道をゆったり下って行く。秩父第十七番を過ぎると、尾根道は少し細く急になり、ぐんぐん下り始める。

秩父第10〜12番
尾根道を下る
秩父第十九番
秩父第二十一番
聖観世音菩薩

秩父第二十一番は送電鉄塔のすぐ手前の明るく開けた道端にある。このすぐ先でNASPAスキーガーデンのゲレンデに出て、飯士山や谷川連峰を眺めながら右へ車道を辿って下る。

スキー場に出る
スキー場内の車道を下る

緩やかな谷に入り、正面山の鋭鋒を正面に見てゲレンデ沿いの車道を下ると、秩父第二十二番から第三十三番まで12基の観音様と供養塔がずらっと並ぶ。これらの観音像はもちろん、スキー場が開発された際にこの場所に移されたものである。

ゲレンデ内の車道を下り、県道に出て右折。R17の高架下を潜って、七谷切の集落内からR17に出る。スキー場から直接R17に下るルートが判らなくて、グルッと一周する形で遠回りしてしまった。秋葉山登山口はR17沿いにある。交通量が多く、しかもカッ飛んで来る車の多いR17を慎重に横断して、登山道に入る。

秩父第22〜33番
R17と秋葉山登山口

今日、二つ目の山はさすがに疲れが出てきて、擬木の階段の登りがちと辛い。細い尾根上の山道となると坂東第一番の観音様がある。鳥居を潜ると明るく開けた尾根道となる。第四番の観音様を過ぎて急坂を上がると4基の観音様が並ぶ。これは移されて纏められた訳でなく、元々ここに祀られていたようである。

坂東第一番
坂東第四番

小さく上下しながら尾根道を辿り、最後に坂を上がって秋葉山頂上に着く。頂上は小平地となり、2つの御神灯の石柱と石祠、三角点標石、「←七谷切国道17号方面 熊野湯沢温泉方面→」の新しい道標の他に、6基の観音様が並んで祀られる。杉林に囲まれているが、木立の切れ間から越後湯沢の温泉街や駅が間近に眺められる。小さな里山だが、いい雰囲気の山頂である。休んでいると、藪の中からガサガサと一人のおじさんが出てきた。話を伺うと、茸採りをしているのだが、今年は全然出ていない、とぼやいておられた。

秋葉山頂上
坂東第14〜19番
秋葉山頂上から湯沢市街を俯瞰
石祠と石灯籠

頂上から先へ緩やかな尾根道を辿ると、坂東第二十四番を過ぎて石祠と石灯籠のある広い平地に着く。ここは秋葉山頂上に増して展望が良い。

中里と大源太山(中央奥)を望む
大峰を仰ぐ

さらに次々と観音様があり、紅葉に彩られた尾根を下ると坂東第三十一番に着く。荒々しい山肌を見せる飯士山を背景とし、これまで見てきた百番観音の中では一番良いロケーションにある観音像ではないかと思う。

坂東第29,30番
尾根道を下る
坂東第三十一番
十一面観世音菩薩
山腹をジグザグに下る

ここから道は右斜面を下る。尾根から外れるのはおかしいなあ、と思うが、道型は明瞭なので辿っていくと、山腹をジグザグに下って杉林の中に入る。踏み跡は段々怪しくなるが、だいぶ下ってしまったので、これを辿るしかない。最後はあるかないかの藪っぽい踏み跡となって山麓に下り着き、上越線の線路を潜って車道に出た。

杉林内の踏み跡を下る
山麓に出る

尾根上にあるはずの坂東三十二番をロストしたのは痛恨のミス。それにしても第三十一番から先、道はどう続いていたのだろう。シャツやズボンのひっつき虫を取り除きつつ、考え事をしながら歩いていたら、車道の途中にあるはずの坂東、西国、秩父の各ラストの観音様も見逃した(^^;)。秋葉山の熊野側の登山口は道標で確認できたので、こっちから登ればはっきりするだろう。まあ、残り4つの観音様については、またの機会にお参りしなければなるまい。

越後湯沢駅に着き、ぽんしゅ館の風呂で汗を流す。それから、エチゴビール等のお土産を買い、駅構内の店で栃尾の油揚げと生ビール2杯で宴会したのち、新幹線で帰途についた。