燧ヶ岳
燧ヶ岳の3つの登山コース(注)のうち、沼尻から燧ヶ岳南面を直登するナデッ窪コースは、以前、尾瀬沼を一周して歩いた際、沼尻から間近に迫って聳える燧ヶ岳を仰ぎ見て、これは登ってみたいと思ったコースである。
(注:温泉小屋道は廃道。見晴新道は土砂災害のため通行禁止で、現在、代替コースの整備が検討されているとのこと。)
また、燧ヶ岳には御池から残雪期にテレマークで登ったことがあるが、そのときは俎嵓までで、急な雪斜面にビビって最高点の柴安嵓には登っていない。やはり柴安嵓は踏まないと、燧ヶ岳は登頂済とは言えないだろう。
という訳で、今回は柴安嵓に登ることを目的とし、往路にナデッ窪コース、復路に長英新道をとって、大清水から日帰りで歩いてきました。
桐生を夜中の2時に車で出発。鎌田にある最後のコンビニで朝食を買うつもりだったが、まだ開いてなくて、朝食を取り損ねる。まあ、尾瀬ならば途中のどこかの休憩所で適当な食べ物が購えるだろう。
大清水には未明の4時に到着。奥の第2駐車場に入ると既に満車に近く、ハイカーさん達がごそごそと出発の準備をしている。そう言えば、今日は海の日三連休の中日だった。辛うじて数台分の空きを見つけ、車を置く(なお、大清水の手前にも大きな駐車場あり)。
まだ暗いが、一ノ瀬までは未舗装の車道(R401)なので、ヘッドランプなしで歩き始める。それに、以前は酷い凸凹があった道が、拡幅整備されて歩き易くなっている。看板があり、大清水〜一ノ瀬間でシャトルバス(低公害車両)が営業運行されているらしい。今の時間帯はさすがに営業外だが、帰りは使えるかも。一ノ瀬のバス停で時刻表を確認すると、日中は30分間隔で運行しているから、これは利便性が高い。
三平橋を渡って登山道に入る。冬路沢を渡って右岸を登ると、途中に「岩清水」と称する水場がある。ここの案内看板も新しい。2ℓプラティパスを清水で満タンにしておく。
十二曲と呼ばれるジグザグの急登をこなすと尾根上に出て、白尾山や四郎岳を望む。上空は雲が広がってパッとしない天気。樹林の中の木道を緩く登って三平峠に着くが、休憩せずに尾瀬沼に下る。
尾瀬沼のほとりの三平下で一休みする。早立ちのハイカーさんをちらほら見かける。尾瀬沼山荘の食堂では宿泊客が朝食を取っているようだ。腹減ったなあ。休憩所の売店は、まだ朝早くて開いていない。非常食のミニドーナツを食べて凌ぐ。湖畔に出て対岸の燧ヶ岳を眺める。頂上は厚い雲で覆われて、天気は依然としていまいちのままだ。
三平下から尾瀬沼南岸を通って沼尻に向かう。このルートは傾いた木道が続き、歩きにくい。富士見峠への登山道を分け、やがて小沼湿原に入ると木道も平らになって歩きやすくなる。湿原の周囲の樹林ではシャクナゲが咲き、蕾もあるからまだ見頃が続きそうだ。湿原にはワタスゲの白い果穂とナガバノモウセンゴケを多く見かけるが、その他の花はあまりない。
ほどなく、沼尻休憩所に到着する。チップ制(100円)のWCあり。売店は開いていて、休憩するハイカーさんで賑わっている。ドーナツと沼尻ドック(カスタードクリーム入り)各150円を1個ずつ買って、朝食の代わりとする。これでようやく人心地がついた。
ここからが私にとって初めて辿る道だ。沼尻平を真っ直ぐ燧ヶ岳に向かって突っ切る木道を歩く。こちらの道に入ると、ハイカーさんはぐっと数が減る。湿原にはトキソウがポツポツ咲いているが、キンコウカはまだ蕾で、やはり花は少ない感じ。時期がちょっと早いのだろうか。
湿原から樹林帯に入り、水のないガレ沢を登る。道端にはズダヤクシュやオオバミゾホオズキの花が多い。樹林の中の展望のない登りが延々と続く。標高が上がると、振り返ってようやく尾瀬沼の展望が得られる。しかし、ここから上は雲の中だ。
ガスの中、ガレ沢の一直線の登りが続く。すれ違うハイカーさんの数が増えてきた。湿気と急登で大汗をかく。小雨まで降り出したので雨具を着る。ますます暑くてたまらん。しかし、雨具を着ると雨が止むの法則が発動し(^^;)、すぐに雨具を脱げたので助かった。
標高が上がると樹林が低くなって、稜線に近づいた雰囲気がする。傾斜が緩くなり、下生えの草地にいろいろな花が咲く樹林を登ると、長英新道の8合目に着く。
ここから長英新道に合流して登る。ハイカーさんの数が俄然多くなり、すれ違い待ちも頻繁に発生する。道端の草地には意外と花が多く、シャクナゲやキヌガサソウ、サンカヨウ、キブシなどを見かける。
9合目の標識を過ぎると岩が多い急坂となり、俎嵓の頂上に登り着く。岩が堆積した頂上には三角点標石の他、古い石祠や石碑がある。ガスに覆われて展望は全くなし。すぐに柴安嵓に向かう。
俎嵓から急降下し、緩く広い鞍部から柴安嵓に登り返す。かなりの急坂で、積雪期に登るのはやはりちょっと怖いかも。岩場をよじ登り、立派な山名石碑の建つ柴安嵓頂上に着く。
頂上には西に向かって緩斜面の広場があり、大人数でも休憩できる。その一角の岩に腰を下ろして昼食とする。風があるので、防寒のため長袖シャツと雨具の上を着込んだのち、まずは缶ビール。それから湯を沸かしてカップ麺の野菜入りラーメンを作って食べる。休んでいる間にもどんどんハイカーさんが登って来て、広場はほぼ満員の大賑わいとなる。
頂上でしばらく過ごすが、結局ガスは晴れずしまいで展望はゼロ。まあ、尾瀬は桐生から近いから、天気の良い時にまた来る機会もあるだろう。ますますハイカーさんが増える柴安嵓を辞し、俎嵓を経て、長英新道を下る。
ミノブチ岳辺りで雲の下に出て、周囲の雪渓や森林の様子を眺める。また、尾瀬沼を俯瞰するポイントもある。道端の草原にはコバイケイソウの花が多い。マルバダケブキも見かけるが、まだ蕾だ。
緩く快適な下りが続くが、下るにつれて泥濘が多くなる。特に2合目辺りからが酷い。オオシラビソ林の緩斜面を下っていくが、1合目の標識を過ぎてからが長く感じる。1合目から約35分かかって尾瀬沼北岸の登山道に降り着く。立派に整備された木道を東に辿ると、大江湿原に出て景色が開ける。
大江湿原のニッコウキスゲはちょうど見頃だ。沼山峠からの道と合流する辺りを中心に、黄色い花が群れ咲いて見事。ハイカーさんも多く、皆、写真を撮るのに余念がない。いいタイミングで再訪できて良かったと思う。
長蔵小屋周辺は大勢のハイカーさんで観光地並みの賑わいだ。売店で何か冷たい物でも買おうかと思ったが、ここはグッと我慢。
行動時間が10時間を越えて、さすがに疲れた。三平下で大休止とする。この頃にはすっかり晴れて青空が広がり、尾瀬沼越しに望む燧ヶ岳は頂上に僅かに白い雲がかかるのみだ。休憩所で花豆ジェラード(500円)を買って食べる。さっぱりした甘さで冷たく、元気を回復。三平峠への最後の登り、頑張ろう。
三平峠から下って一ノ瀬休憩所に到着。復路はシャトルバスを利用させて貰う。係員が居て、バス待ちのハイカーさんを数えてバスの台数を手配している。定刻より約10分遅れで4台のワゴン車が来た。運賃は前払いで700円也。約10分の乗車で大清水に着く。こりゃ楽だ。大清水で駐車場の料金500円を払い、帰宅の途につく。
途中、鎌田の寄居山♨ほっこりの湯に立ち寄って汗をさっぱり流したのち、帰桐した。