大源太山〜七ッ小屋山
桐生を早朝に車で出発。関越道を湯沢ICで降りて、大源太山の旭原登山口に向かう。今日は快晴で、行く手には青空の中に大源太山の鋭鋒が聳えている。旭原の集落の外れから「大源太山登山口」の道標に従って林道に入る。道端にはタニウツギのピンクの花がたわわに咲いている。先行する車が1台、間違いなく大源太山に登るハイカーさんの車だ。林道終点が登山口となる。10台分程の駐車場があるが、先行車が最後のスペースに入って満パイになる。みんな出足が早いなあ。林道を少し戻り、路側のスペースに車を置く。
大源太山には一度登ったことがある。前回はここから大源太山のみを往復したが、今日は七ッ小屋山まで行き、シシゴヤノ頭を経て周回する計画である。登山口から杉植林の中に通じる登山道に入る。昨夜は雨が降ったのか、道端の草葉はしずくが付いて濡れている。
やがて北沢を左岸へ渡渉する個所に着く。以前は木橋が架かっていたが、今はない。先行するご夫婦のハイカーさんが、張り渡されたロープを摑んで流れを渡っている。私の番となり、伝っていける飛び石はないので、靴を半分水に浸けるつもりで渡る。登山靴の中には、これ位のことでは水が入らないものである。
沢沿いの道を進むと、「謙信ゆかりの道入口」の道標があり、右に登山道が分岐する。帰りはこの登山道を降りてここに戻ってくる予定。
直進すると枝沢を横断する個所があり、対岸は出水で抉られたのか崖となっていて、アルミ梯子で登って越える。再び北沢の渡渉があり、ロープと飛び石で右岸に渡る。赤テープと道標を目印にして山腹を登る道に取り付き、かなり急で滑りやすい斜面を一直線に登る。ここの登りはなかなかきつい。
ようやく傾斜が緩み、ブナ林を抜けて低木帯の尾根上の登りとなると、四方に展望が開ける。露岩のあるところで一休み。北沢の渓谷を取り囲む大源太山、七ッ小屋山、シシゴヤノ頭を眺める。谷筋には僅かだが雪が残っている。
目指す大源太山は左側(北西面)が切れ落ちた険しい山容を示している。尾根を見上げると、先行するハイカーさんが登っているのが見える。道端にはアカモノの花が多く、ねじくれたネズコが冬の積雪の多さを語っている。鎖の付いた岩場を越え、尾根を急登すると、大源太山の頂上に着く。
頂上からは360度の展望が開ける。5人程のハイカーさんが居て、見える山の同定で賑やかだ。しかし、聞こえてくる山名はちょっと間違っているかもよ(^^;)。頂上から北には険しい稜線が延び、その先には七ッ小屋山がゆったりとした山容で横たわる。その右に見えるのは茂倉岳、一ノ倉岳、さらに金字形の山容が鋭い万太郎山や仙ノ倉山へと続く。
七ッ小屋山の左には朝日岳の大きな山塊がある。そのさらに左には上越国境稜線が緩やかに連なり、途中に檜倉山と柄沢山を起こして巻機山に至る。朝日岳〜巻機山は残雪期に縦走したいと思っているところなので、双眼鏡でじっくり眺める。登ってきたヤスケ尾根を振り返れば高度感があり、湯沢市街や、彼方に妙高山、火打山を遠望する。
ちょっと休憩してミニドーナッツを腹に入れたのち、七ッ小屋山へ向かう。頂上から岩稜を下り始めると、左(東)側は絶壁となって切れ落ちている。覗き込むとクラクラ目眩を感じる。新しい鎖の架かる岩場は問題なし。その次の岩場は途中までしかロープがなく、下部は左脇の樹木を頼りに下る。ここは足場が悪く、ちょっと緊張させられる。あとは難場はない。登山道の脇にシラネアオイが咲いているのを見つける。予期していなかったので、これは嬉しい。
痩せ尾根を下り、七ッ小屋山への登りにかかる。振り返ると大源太山の鋭鋒がすっくと聳えて格好良い。行く手の七ッ小屋山の斜面を覆う笹原の中には、ジグザグに登る道型が見える。かつての峠越えの道だろうか。登山道はジグザグの道型の横を直登する。道端にはイワカガミやシラネアオイが咲く。登り着いた草原の台地は、古いガイドブックによると、大畠と呼ばれている。
大畠からひと登りで縦走路に合流し、平坦な頂上稜線を進んで、七ッ小屋山の頂上に着く。こちらの頂上もハイカーさんで賑わっている。頂上からの展望は、朝日岳と谷川岳方面の山々がますます迫って、素晴らしい。眼下の湯檜曽川本谷は沢登ラーには美渓として知られ、大昔に遡行したことのある懐かしい谷だが、まだ残雪に埋もれている。鯖味噌煮レトルトパウチをつまみにWHITE BELGを飲み、カップ麺の天ぷら蕎麦で昼食とする。
昼食後、七ッ小屋山から蓬峠方面に向かう。笹原の広がる円やかな稜線からの広闊な展望を楽しみながら、のんびり歩く。七ッ小屋山から雪田の横を緩く下ると小さな池塘がある。湿原の花にはまだ時期が早いが、付近の道端にはタテヤマリンドウやツマトリソウが咲いている。コバイケイソウの青々とした葉も出ているが、まだ蕾だ。
小さなアップダウンがあり、1544m標高点から分岐して、シシゴヤノ頭への尾根に入る。この尾根も笹原に覆われて、展望が良い。少し笹は深くなるが明瞭な道型が続く。左手には蓬峠から蓬沢へ下る登山道が笹原の中にくっきりと見える。蓬沢の下方には土樽PAが見え、その後方に万太郎山と仙ノ倉山を望む。この尾根でもあちこちにシラネアオイが咲いている。
小さなピークを2、3越えると、シシゴヤノ頭の頂上に着く。笹原の尾根からの大展望は、ここで見納めとなる。水を飲んでしばし休憩する。
地形図にはシシゴヤノ頭からコマノカミノ頭へ向かう破線路が記載されているが、実際には密藪に覆われて道はない。笹原の尾根を下り、すぐに樹林帯に入る。等高線の間隔からも容易に分かるが、かなりの傾斜の山腹を下る。しかし、道は大きくジグザグを切っているので、意外と歩き易い。ところどころで終盤のタムシバを見る。
下るにつれて斜度が増し、ジグザグ道もところどころで崩壊地の縁を辿る。さらに下ると、雪渓のある谷に沿って下る道となる。雪が残る時期にはアイゼン、ピッケルが必要になりそうなルートである。雪の消えた斜面には、シラネアオイやサンカヨウが咲いている。
長かったジグザグの下りが漸く終わり、ヒロクボ沢に平行に下る道となる。途中に小さな水場があり、冷たい水で喉を潤す。緑深い山腹をトラバースし、雪渓のある小沢を横断すると、往路との分岐点はすぐそこである。あとは北沢を渡渉し、杉林の中を緩く下って登山口に戻る。登山口の駐車場の車は半分くらいに減っていた。
帰りは湯沢♨の岩の湯に立ち寄り(400円)、汗を流してサッパリしたのちに湯沢ICから関越道にのる。途中、月夜野〜昭和IC間が事故通行止となり、迂回したR17で渋滞に巻き込まれるというハプニングがあったが、そう夜遅くならず桐生に帰った。