十勝岳
札幌に所用があり、それに続く13〜15日の三連休も道内に滞在して、それぞれ日帰りで計3座の山に登ってきました。最初の山は十勝岳。この夏、ハイトスさんが登られたのと同じコースを取りました。
所用が終わった後の12日(金)、札幌からレンタカーで出発し、この晩の宿泊地の上川郡美瑛町白金温泉へ向かう。このところの北海道は天候が不安定で、途中の道央道では局所的な土砂降りに遭う。旭川、美瑛を経由し、そぼ降る雨の中、夕暮れの白金温泉に到着。十勝連峰の山麓にあり、白樺林の中に宿が点在する閑静な温泉だ。その中の「山辺の家族」というペンション風の宿に泊まる。
早速、温泉へゴー。少し白濁した、温泉らしい良い湯だ。もちろん源泉掛け流し。白樺林に面して露天風呂もあり、のんびり浸かる。
温泉の後は夕食。風呂上がりのビールが美味い。地元産の野菜と魚を中心にした家庭的料理が出され、ヘルシーかつ美味い。夕食後、もう一度温泉に入り、山歩きの準備を済ませると、何もすることがなくなる。明日は天気が良くなることを願いつつ、21時過ぎに就寝する。
翌朝、期待に反して上空は灰色の厚い雲に覆われている。天気予報によれば大崩れはなさそうだから、まあなんとか行けるだろう。8時に朝食をがっつり頂いたのち、車で出発。登山口の十勝岳望岳台はすぐ近くで、10分程の距離だ。
望岳台の広い駐車場は、既に九割方車で埋まっている。登山の用意をしているハイカーさんをちらほら見かけるが、これらの車の皆が皆、十勝岳に登っている訳ではないようだ。駐車場に隣接してレストハウスもあるが、そちらの方は閉鎖され、営業していない。十勝岳の方向を望んでも濃い霧に閉ざされて、稜線はおろか山腹すらも見えない。まあしかし、行ってみるしかない。
準備を整えて出発。砂礫の緩斜面につけられた幅広い道を登る。葉が黄色や赤に色づいたオンタデと、大粒の白く丸い花が咲いたシラタマノキが一面に群生している。風が冷たく、北海道の山はもう冬に向かっている感がある。
雲ノ平分岐で美瑛岳への登路を左に分け、少し傾斜を増したガレ道を登ると、白い霧の中から忽然と十勝岳避難小屋が姿を現す。
登山道は避難小屋を過ぎると左にちょっとトラバースして、岩がゴロゴロ堆積した少しばかり急な尾根を登り始める。「十勝岳→2.7km 標高1380m」の標識があるから、頂上までの標高差はまだ700mもある。霧に覆われて先が見えず、どれくらいの登りが残っているのか感覚的に摑めていなかったので、まだそんなにあるのかとちょっと驚く。
黄色いペンキのマーキングに導かれて、溶岩ゴロゴロの斜面を細かくジグザグを切りつつ一直線に登って行く。少しずつだが霧が薄くなり始め、右側は急な谷で、白く硫黄が析出していることが見て取れる。登るに連れて礫が小さくなり、黒い火山礫をザクザクと踏んで行く。漸く傾斜が緩まり、細かいスコリアに覆われた広い台地状の尾根に登り着く。
すると周囲の霧が急速に切れ始め、右側にはその名の通り広大な凹地となったグラウンド火口が現れる。また、左手にはこれも名の通り、急斜面で深く落ち込むスリバチ火口、そして眼前には十勝岳の金字形のピークと頂上に連なる主稜線が姿を現す。この火山的景観は素晴らしい。二つの火口の間を花道のように続く尾根を緩く登る。
十勝岳の直下は急坂となり、溶岩ゴロゴロの斜面を黄ペンキに導かれてジグザグに登る。肩に登り着き、さらに急坂をひと登りすれば十勝岳の頂上に着く。
頂上には大きな溶岩が積み重なり、山名標柱と「光顔巍々」と刻まれた石碑が建つ。さすがに風当たりが強くて寒く、長袖シャツと薄手のフリースを着込む。岩陰に入れば風を避けることができる。大勢のハイカーさんが風下側の斜面で休憩している。
再び霧が出てきて、残念ながら頂上からの展望は得られそうにない。天気が良ければ美瑛岳まで縦走して周回する気もあったのだが、縦走路を見ると巨岩がゴロゴロで歩き難そうだし、この怪し気な天気では止めておいた方が良さそうだ。パンとペットボトルのお茶を軽く腹に入れたのち、往路を戻って下山することにする。
下り始める頃、稜線上では霧雨が降り始めた。これなら縦走はしないのが吉である。岩ゴロゴロの尾根を一直線に下り、十勝岳避難小屋まで来ると雨も上がって、あとは緩く下るだけだ。
望岳台に近づくと、下界の雲がサーと切れて、パッチワークのような色合いの耕地が広がる富良野盆地が俯瞰できた。今日は展望に関しては恵まれなかったが、この眺めと、頂上付近の火山的景観が見られたから、まあ御の字かな。次の機会には、数十年前に一度敗退しているスキーでの登山に再挑戦したいものである。
宿に戻り、早速、温泉へ。冷えた身体をゆっくり温める。極楽〜。この日の夕食も、地元産豚肉の鍋が美味かった。肉が食べたいと思っていたので、ナイス献立。明日は富良野岳に登ることにして、早めに就寝する。