神流川金山沢
Mさんから、Oさんと両神山の金山沢に沢登りに行くので参加しませんか、というメールを頂いた。金山沢は、秩父市中津川の神流川(神流町の神流川と同じく「かんながわ」と読む。紛らわしい)の支流で、落合で左俣(八丁沢)と右俣に分かれる。どちらも遡行対象となり、特に今回登る予定の右俣はナメ滝を連ねて両神山に突き上げ、初心者でも楽しめる沢として知られている。私は1992年秋に遡行したことがあるが、昔過ぎるせいかトンと記憶がないので、再訪でも新鮮だろう。ということで、同行させて頂いて登ってきました。Mさんの記事はこちら→両神山、Oさんの記事はこちら→両神山(金山沢)です。
桐生を車で出発して、道の駅めぬまでOさんと合流。鬼石、万場を経由し、志賀坂トンネルを抜けて金山志賀坂林道に入る。濃い霧に包まれて、周囲は真っ白。何も見えない。八丁隧道を抜けて下り、上落合橋を渡ったすぐ先に広い駐車スペースがあり、ここに車を置く。地元警察や消防の車両が数台あり、中の人は出払っている。何があったのかしらん。
雨こそ落ちていないが、上空は厚い灰色の雲に覆われて肌寒く、沢登り日和とは言い難い。車内でしばらく様子見をしたが、まあ行ってみますかー、ということになり、渓流足袋に履き替えて出発する。
上落合橋の袂から左俣を下り、落合橋の下を潜ると左岸から右俣が出合う。右俣に入るとすぐに小滝が現れる。紅葉のピークには早いが色付き始めた樹林に覆われ、豊富な水が岩盤を洗う様に流れ落ちて、しっとりした美渓である。さらに小滝とナメが連続する。板状の節理が逆層だが、どれも簡単に越えることができる。
やがて右岸から大きな支流がナメ滝をかけて出合う。本流にもナメ滝が連続するので、ここで全員メットを被る。苔がついて滑り易いが、傾斜が緩いので慎重に歩けば問題ない。
やがて岩盤を優美に流れ落ちるナメ滝が現れる。この滝は傾斜が急な上に逆層で、直登は難しい。岩盤の僅かな凹凸を手がかり足がかりにして、右側から越える。
次のナメ滝は、傾斜は緩いがツルツルで、直登しようとすると滑る。私は右側の大岩の下に潜り込んで突っ張り、滑りながらも強引に登る。MさんとOさんは左側から越えるが、岩の上に積もった落ち葉で、そちらも滑りそうだ。
このナメ滝の上から、いよいよハイライトの大ナメ滝(120m)が始まり、小さな屈曲と緩急を繰り返してナメ滝が延々と続く。傾斜の緩い岩盤を渓流足袋のフリクションでヒタヒタと快適に登って行く。
大ナメ滝の終点にも大岩があり、その先は苔むした転石が積み重なるガレ沢となる。徐々に傾斜が増すと、右に荒れたガリー状の枝沢が分岐するので、これに入る。小さな涸れ滝を登り、急傾斜のガリーを四つん這いで登ると稜線上の小鞍部に出て、遡行終了なる。一休みして、パン等の軽い昼食をとる。
遡行終了点から稜線を僅かに辿ると登山道に出て、両神山頂上へはあと300m程の距離である。頂上は幸運にも雲海の上で、甲武信三山から雲取山辺りまでの奥秩父主脈が遠望できる。周辺の紅葉は、ちょうど見頃といったところ。日本百名山だけあって、あまり日和が良くなくても4、5組はハイカーさんがいて、意外な好展望に歓声があがっていた。
下山は鎖場が連続する八丁尾根を経由して、八丁峠から落合へ登山道を下る。頂上から下り始めの左の小ピークの上には、御嶽山信仰の「御嶽山國常立尊」や「普寛霊神」の石碑が建っていた。
ベンチのある東峰から連続する鎖場を下ると、龍頭(りょうかみ)神社奥社に着く。ここには尾ノ内沢からの登拝路があり、以前歩いたことがある(山行記録)。険しく、また見所も多くて面白い経験者向けコースである。
奥社から長い鎖場を降り、キレットから鎖場を交えた急登で西岳に登り着く。この先も鎖場が断続し、行蔵峠の標識のある小ピークで一休み。振り返ると、雲間に両神山の頂上稜線が見え隠れする。
行蔵峠からもいくつか鎖場が続き、少々疲れて八丁峠に到着する。両神山頂上からここまでの間、鎖場が濡れると滑って危険である。雨に降られなかったのはラッキーだった。
八丁峠から山腹につけられた登山道をジグザグに降りて、左俣(八丁沢)に下り着く。こちらの沢もナメが連続する奇麗な沢だ。沢沿いに下り、最後は木の階段で上落合橋の袂に降り、駐車地点に戻った。警察・消防は依然出動中。やはり遭難救助関連だろうか。
帰りの途中で、こちら方面の山歩きの際は恒例、長井屋製菓で名物のまんじゅうを買い求める。道の駅めぬまでOさんと別れて、桐生に帰った。