高松岳・山伏岳
体育の日3連休は秋田県湯沢市の秋の宮温泉郷に2泊し、周辺の山2座に登ってきました。
連休初日の12日土曜日に桐生を出発。宇都宮から東北新幹線に乗車して車内でS&Sと合流し、正午少し前に古川駅で下車。レンタカーのキューブで秋の宮温泉郷に向かう。途中、国道沿いの蕎麦屋で昼食。鳴子温泉郷を通り、R108(鬼首道路)を経由して、古川から約1時間半で秋の宮温泉郷に到着する。
宿に入るにはまだ早いので、近くの川原毛(かわらげ)地獄に行ってみる。カーブの多い山岳道路(県道秋ノ宮小安温泉線)を走って、川原毛地獄の上の駐車場に着く。眼下に樹木のない剝き出しの灰白色の山肌が広がり、蒸気が吹き上がって硫黄の臭いが鼻を突く。
案内看板によると、川原毛地獄(別名、羽州通融嶮)は、南部の恐山、越中の立山と共に日本三大霊地(現地看板では霊山)の一つとされているそうだ。遊歩道を下って、地蔵菩薩の手前まで散策する。さらに下ると豪快な野湯として知られる川原毛大滝湯があるが、往復するには距離があるので、今回は割愛して引き返す。
秋の宮温泉郷に戻り、今宵の宿の鷹の湯温泉へ。R108から脇道に入って役内川の渓谷へ下ると、突き当たりにひっそりと一軒宿が建つ。チェックインして、早速、お風呂へゴー。建物を出て渓流沿い細道を歩くと、野趣満点の露天風呂がある。
夕食のご馳走を食べて一休みしたのち、次は内湯の大浴場に入る。3つの長方形の深い湯船があり、中でも一番深いものは深さ約130cmの立ち湯となっていて、珍しい。気持ち良く温まって、この晩は渓流の瀬音を聞きながら早々に眠りにつく。
連休2日目、雲が多いものの、時折晴れ間も見えて、天気はまあまあ。当初の計画通り、湯ノ又コースから高松岳に登ることにし、鷹の湯をチェックアウトして出発する。
湯ノ又沢に沿って林道を上がる。湯ノ又温泉跡地から先は未舗装道となり、路面の凸凹でレンタカーの底を擦らないように慎重に走る。途中、駐車スペースがあり、先客が1台あるので、我々も車を置いてここから歩くことにする。「湯ノ又ガンジャ口」、「カニ沢」の標識があり、虎毛山〜高松岳縦走路への山道が右に分岐する。高松岳へは直進して林道を辿る。実はもう少し奥まで、車で行けたようだ。
地元小学生の命名による木橋がいくつか続き、せせらぎ橋を渡った辺りで林道は終点となる。ここまではなんとか車で入れる。
林道終点付近からは、急峻なピークがなかなかの迫力で仰がれる。このピークは、山伏岳から派生するびょうぶ尾根の末端のピークだ。雲間から差し込む陽光が山肌を覆う色付き始めた樹林を照らし出して奇麗だ。ここから湿っぽい作業道を進み、ブナやダケカンバの林を縫って緩く登る。
緩く谷間を登るにつれて道も細くなり、水飲場の道標のある地点で水の少ない沢を渡る。ここからブナ林の中の急登となる。標高が上がるにつれて、木の葉の色付きも深まる。
やがて尾根上に出ると、正面に虎毛山が姿を現す。ドーム状の山容が大きく立派で、周囲の山々から一つ抜きん出ている。いつか登ってみたい山だ。
左に折れて紅葉の尾根を登ると「鼻こすり 急登!ガンバロー」という標識があり、ここから鼻をこするほどではないが急登となる。頂上まではあと一息だが、急坂で足元が不安なS&Sはここでギブアップ。私のみ頂上を目指す。
樹林を抜け、冷たい風に吹かれながら低木とササの尾根を登ると、南北に長く平坦な高松山頂上の南端の小ピークに着いた。「高松山頂上」の標識があるが、北隣りの避難小屋のあるピークの方が見た目に明らかに高くて、1348m標高点もあちらにある。しかし、こちらのピークは南面が小気味良い急斜面となって眺めが良く、大山津見神(おおやまつみ)を祀る石祠もあり、頂上に相応しい。「虎毛山 12.8km」の道標があり、ササの斜面を縦走路が下って行くが、入口はかなり藪っぽい。
S&Sをお待たせしているが、折角の機会なので、頂上台地のササ原の切り開き道を進んで避難小屋を往復する。二階建ての小屋の中はこざっぱりしていて、快適に宿泊できそうだ。WCも有り。こちらが高松岳の最高点だが、ササとハイマツに囲まれて展望はない。
下山は往路を下る。1時間程お待たせしていたS&Sと合流し、駐車地点に戻った。
帰りがけに湯ノ又温泉跡地のすぐ近くにある湯ノ又大滝を見学する。車道から僅かに降りた所に観瀑台があり、簾状に流れ落ちるなかなか豪快な大滝を眺めることができる。
この晩は、秋の宮温泉郷のほぼ中心に位置する秋の宮山荘に泊まる。こちらはリゾートホテル風。夕食はレストランで和+洋の料理を美味しく頂く。大浴場も近代的で温泉旅館の風情はないが、宿舎全般が新しくて快適である。
連休最終日は朝から快晴。今日は高松岳の峰続きの山伏岳に高倉沢コースから登ることにする。登り1時間40分の短い行程なので、S&Sも今度は頂上まで登れるかなあ、と。朝食のバイキングをがっつり食べてチェックアウト。2泊とも飯が美味くって、また太るわー。
要所の道標に導かれて、車で山伏岳登山口に向かう。登山口には既に3台の車があり、駐車スペースは満杯。今日は好天なので、ハイカーさんが多いようだ。
林道を少し戻り、路側の広場に車を置く。登山口までは10分程林道を歩くが、開けた谷の奥に山伏岳の頂上を望むことができたから、余分な歩きも悪くない。
登山口から荒れた作業道を奥に進む。作業道はいくつも分岐して、登山ルートが分かりにくい。だいたい谷沿いに進むと、草叢から噴気が上がる場所がある。ここまで来ると行き過ぎで、手前で左に分かれる作業道に入ると、山道の入口がある。あとはこの山道を登る。ジグザグに登る作業道に寸断されるが、杉林の中を真っ直ぐに踏み跡が続いている。
徐々に傾斜が増し、山腹を斜めに登る。作業道が終点となると杉林を抜けてブナ林に入る。ラジオから流れる音楽が聞こえると、ぶどう平に着いた。ラジオの持ち主の作業服のお兄さんが休憩中で、話を聞けば茸採りに来たのだが、全然見つからないとのこと。
ここからびょうぶのコルへは、ほぼ一直線の急坂となる。今日は天気が良いので、ブナの黄葉が陽光に映える。途中で右にびょうぶ尾根を回り込む道が分岐するが、歩く人が少ないらしく、道型は不明瞭だ。
急坂を直進して、びょうぶのコルに登り着く。樹林の切れ間から山伏岳に続く尾根を見上げると、前衛峰の紅葉が鮮やかだ。びょうぶ尾根の方から4人パーティがやって来たので、そっちの道の様子を尋ねたが、藪道で期待した眺めはないとのことだった。
ここまでの急坂がきつかったので、S&Sはここまで。今日も残念ながら私だけ頂上に向かう。昨日の高松山といい、今日の山伏岳といい、この辺りの山は意外と歯ごたえがある。
前衛峰へ、虎毛山や高松岳を眺めながら急登する。振り返れば、多数の襞が刻まれた急斜面を擁するびょうぶ尾根が異彩を放っている。
前衛峰に登り着くと、行く手に山伏岳の頂上が現れる。一旦下って、頂上への最後の登りに取り付く。ササに埋もれた踏み跡を辿って、小気味良く高度を上げて行く。振り返れば前衛峰とびょうぶ尾根は既に眼下となり、その向こうには神室山が眺められる。
快晴の下、三角点標石のある山伏岳頂上に登り着く。頂上は東から北にかけてササと低木の斜面が緩やかに広がっている。360度の展望が開け、西の遠方に冠雪して一際高い秀峰は鳥海山だ。北には横手盆地が広がり、東には高松岳へ穏やかな稜線が続き、ササ原を切り開いて縦走路が延びている。一通り展望を楽しんだのち、往路を下山する。
びょうぶのコルで待っていたS&Sと合流し、軽くパンを食べてから下る。ぶどう平では、行きに会った茸採りお兄さんが親御さんと休憩中で、籠の中に茸がたくさん入っていた。やはり年の功ですかねー。
車に戻り、秋の宮の土産物店に立ち寄って稲庭うどんを買ったのち、あと2泊するS&Sの今晩の宿の東鳴子♨ホテルニューあらおに向かう。ホテルの温泉で汗を流したのち、S&Sと別れ、古川駅でレンタカーを返却して16時過ぎの新幹線に乗車。桐生への帰途についた。P.S. 後日頂いた稲庭うどんは、腰があってつるつる、めっちゃ美味かった。