万太郎山

天気:のち
メンバー:T
行程:駐車場 9:15 …吾策新道入口 9:20 …大ベタテ沢の頭 10:40 …井戸小屋沢の頭 11:15 …万太郎山(1954m) 12:00〜12:55 …井戸小屋沢の頭 13:30 …大ベタテ沢の頭 13:55 …吾策新道入口 14:50 …駐車場 14:55
ルート地図 GPSのログ(赤:往路、青:復路)を地理院地図に重ねて表示します。

この日曜日も天気予報は曇りで、あまり芳しくない。谷川連峰の三国山辺りを軽く歩くつもりで、朝7時過ぎという比較的遅い時刻に桐生を車で出発する。ところが赤城ICから関越道に乗ると、高曇りの空の下、行く手に谷川連峰の主稜線が端から端までくっきりと見えている。これは想定外に良い天気で、軽い山歩きじゃ勿体ない。行き先を変更し、天気が良い場合の候補に考えていた吾策新道から万太郎山往復をやることにする。

湯沢ICで高速を降り、土樽方面に向かう。新潟側も高曇りで、万太郎山の端正な金字形の山容が眺められる。土樽PAの脇を通って、万太郎谷沿いの林道を上がる。1km程で鎖が張られて通行止めとなるので、その手前の広場に車を置く。万太郎谷の奥に谷川連峰の主稜線が屛風のごとく聳えているのが眺められ、なかなか登高意欲をそそる山岳展望だ。

他の車は広場に1台きりで、吾策新道を登っている人はやはり多くないようだ。林道を歩き出すと、道端で何やら採っている工事関係の親父さんがいた。何を採っているのか伺うと、マタタビの実で塩漬けにするそうだ。にゃあ、ごろごろ。

すぐに吾策新道入口の標識が立つ登山口に着く。標高769mと記してあり、万太郎山頂上までの標高差は約1200mだ。コースタイムは登り4時間半、結構タフな登りである。出発がだいぶ遅れたので、ペース上げ気味で登り始める。今日は高曇りで涼しいのは幸いだ。


吾策新道駐車場
後方のピークは大障子沢の頭


吾策新道入口

入口は夏草に覆われているが、杉林の中の登山道はしっかり踏まれていて藪はない。日陰に群れて咲いているエゾアジサイやトリアシショウマを眺めながら、高度を上げる。やがてブナ林に入り、小尾根上を登る。展望はほとんどなく、単調な登りにしばし没入する。


エゾアジサイ咲く杉林を登る


ブナ林を登る

傾斜が緩くなると万太郎尾根に登り着く。ブナ林に覆われた尾根上の窪地が舟窪という場所らしいが、水は流れていない。尾根を辿って登ると、やがて樹林の切れ間から仙ノ倉山や茂倉岳、谷川岳が見えて来る。振り返ると、万太郎谷の車を停めた辺りや、その先の土樽PAが俯瞰される。だいぶ登って来たが、先はまだまだ長い。


舟窪付近


仙ノ倉山を望む


この花は何?


土樽PA付近を振り返る

樹林が低くなると、行く手に万太郎山(正確には手前のピーク。頂上はその後に隠れて見えない)のすっくとした山容が現れる。小さなピークを幾つか越え、露岩があって眺めの良い細い尾根を緩く登る。この辺りから谷川連峰の展望が開け、万太郎谷を取り囲む茂倉岳から谷川岳、オジカ沢の頭にかけての主稜線や、毛渡沢を隔てて仙ノ倉山など、心躍る山岳パノラマが展開する。

樹林の中をひと登りして、大ベタテ沢の頭に到着。登山道の途中のような場所で、Gさん山名標があるだけだが、展望は良いし、登り半分の地点なので休憩とする。ここまでコースタイム2時間10分のところを1時間25分で来たから、出発の遅れはかなり挽回できた。


大ベタテ沢の頭(手前)と万太郎山


大ベタテ沢の頭のGさん山名標

大ベタテ沢の頭からは、少し下ったのちに急登に差し掛かる。左側は万太郎谷に切れ落ちる草付きの急斜面で、枝沢の底には雪渓が白く光る。右側は毛渡沢の支流の源頭が食い込んで来ている。両側を急斜面に挟まれた痩せ尾根を急登する。尾根道はザレて滑り易いが、危険個所にはトラロープが張られている。


大障子沢の頭(左)と万太郎山を仰ぐ


ザレた尾根をロープ伝いに登る

痩せ尾根を登り切ると、短い笹に覆われた小ピークに着く。頂上には錆びた鉄骨の枠だけになった何かの看板が立つ。実はここが井戸小屋沢の頭で、看板にGさん山名標も付いていたのだが、それには気がつかずに通過。さらに頭上に見えている鋸状の岩峰群(実は万太郎山の手前のピーク)が井戸小屋沢の頭と勘違いしてガンガン登る。


井戸小屋沢の頭


井戸小屋沢の頭から
万太郎谷と谷川岳を望む

井戸小屋沢の頭から、さらに急登が続く。途中、ロープのないザレた斜面があり、距離は短いが歩きにくい。草付きの斜面にはいろいろな花が咲いていて、立ち休みがてら写真を撮りつつ登る。


ウツボグサ


オオバギボウシ


万太郎山への急登


ミヤマカラマツ

やがて岩峰群の頂上に近づき、右側から回り込んで岩場を急登する。この辺りで、下って来たハイカーさん数パーティと交差する。岩峰群の一角に登り着くと、その先にも小さな岩峰がポコポコと連なり、一番奥の台形状のピークには道標らしい柱が立っているのが見える。ここに至って、あの道標の立つピークが主稜線で、井戸小屋沢の頭は疾うに過ぎていることに気がつく。いやー、道理でなかなか着かなくて、くたびれるはずである。万太郎山の頂上はあと少しだから、そこまで頑張ってしまおう。


コキンレイカ


万太郎山(右奥)への登り

ここからは緩くアップダウンを繰り返しながら徐々に登って行く。左には谷川岳、右には仙ノ倉山に連なる谷川連峰の主稜線を望み、左側には万太郎谷を覗き込む絶壁が続き、素晴らしい景観だ。大展望を楽しみながら登って、主稜線の縦走路に合流する。右へ平坦な稜線を歩くと、万太郎山の頂上はすぐだ。


ハナニガナ


コバイケイソウ


縦走路に登り着く
右奥が万太郎山頂上


万太郎山頂上

頂上からは正に360度の大展望。東方向には、V字に切れ込んだ万太郎谷と雪渓が細長く残る赤谷川本谷に挟まれて谷川連峰主稜線が続き、谷川岳、茂倉岳に連なる。その奥には巻機山、燧ヶ岳や至仏山、日光白根山、武尊山、皇海山が遠望できる。

南には赤城山や榛名山、妙義山、浅間山など群馬県北の主要な山を一望。西には仙ノ倉山がどっしりと構え、背景には苗場山の平らな頂きが望まれる。北面には越後湯沢の市街を見おろし、遥か遠くに米山の山影まで見える。頂上は爽やかな風が吹き渡って涼しく、酷暑の下界とは別天地。夏にこれだけクリアな展望が得られるのは、かなり運が良い。


茂倉岳と谷川岳(右)


赤谷川本谷の雪渓


赤城山(中央奥)を遠望


仙ノ倉山と苗場山(右奥)

大展望を肴に、まずは缶ビール。うまーい。それからラ王を作って昼食とする。食べ終わってまったりしていると、単独の男性ハイカーさんが登って来た。話を伺うと、谷川岳から縦走して来て、この万太郎山で群馬百名山が完登になるとのこと。また、前日には日帰りで丹後山〜中ノ岳を周回されたらしい。2日連続でハードな行程をこなすとはすごい人だなあ、とびっくりする(後日、ハイトスさんの掲示板で「なかさん」という方であると知る。やはり、その筋の方でした^^;)。

下山は往路を戻る。吾策新道の下り始めは、岩峰群を渡り歩きながら緩く下る。谷川連峰北面の展望が素晴らしいの一言。岩峰群が終わると、井戸小屋沢の頭への急降下となり、滑り易い足元に気が抜けない。井戸小屋沢の頭で急坂は一息つくが、その先にも急降下が待っている。少し登り返して大ベタテ沢の頭に着けばひと安心、あとは樹林帯の比較的緩い下りである。ポリタンの水を少しだけ残して飲み干す。


吾策新道分岐
左奥に巻機山


吾策新道の通る万太郎尾根を俯瞰


井戸小屋沢の頭へ急降下


井戸小屋沢の頭(手前のピーク)


井戸小屋沢の頭から
谷川連峰の主稜線を仰ぐ


大ベタテ沢の頭への下り

高曇りだった天気は、この頃には青空が広がって、すっかり良くなった。ブナ林に入り、登山道を快適に下って吾策新道入口に降り着く。正面に足拍子岳の鋭峰を眺めながら(あれもいつか登らねば)車道を下って、駐車場に戻る。今日は天気に恵まれて谷川連峰の大展望を満喫した。行き先を変えて正解、充実した山歩きだったなあ。


すっかり晴れた


吾策新道入口に降り着く
正面の鋭峰は足拍子岳

帰りは途中の岩の湯(400円)に入る。首筋が日に焼けて湯がしみる。汗をさっぱり流したのち、湯沢IC近くの酒屋で越後ビールと八海山泉ビールを買い込んで、帰途についた。