二子山(足尾)
桐生から近くて行き易く、奥山の魅力もたっぷりの足尾の山々だが、登ったことのない山はまだまだ多い。二子山もその一つ。袈裟丸山のメインルートから外れて一般登山道はないが、ネット上には多くの山行記録がある。それによると今頃はツツジの花が咲き、新緑が奇麗そう。新緑とツツジを楽しみに、まずはスタンダード?なルートで、沢入トンネルから県界尾根を往復して登って来ました。
桐生を車で発ち、R122を日光方面に走って、沢入トンネル手前の広い駐車スペースに車を置く。トンネル入口左側の落石防護網に扉があり、ネットの情報によるとここから侵入して山に取り付けるが、傾斜がきつい上、大難(おおな)峠のかなり上に出るらしい。大難峠(別称、大名峠)はかつての銅街道が越えた古い峠ということで興味があり、立ち寄りたい。旧国道から大難峠に上がれるという情報もあるので、そちらから登ることにする。
旧国道を歩いて100m程で水流の少ない小さな谷があり、その左岸の高みに大きな石碑が建っている。hisiyamaさんの記事に記載されている大日如来・馬頭観世音の石碑で、「明治廿二年十二月吉日」との銘がある。他にも二基の小さな石碑があり、「馬頭大士」、「馬頭…」と刻まれている。
石碑の裏手の小尾根を登る。道はないが藪もなく歩き易い。途中に切り通しのような個所があり、左側には谷に向かって道型があるが、右側は崖で、真下に渡良瀬川の河原とわ鐵の線路が見える。直進して小尾根を登ることも可能だが、ここは左の道型を辿ってみる。しかし、谷の中をしばらく行くと道型は消えたので(そもそも道だったのかも怪しい)、ザレた斜面を急登して大難峠直下で小尾根に復帰した。
小尾根を直進していても登れたのか気になるので、少し下ってみると送電鉄塔(日開渡良瀬上線)があり、白浜山や大萱山の眺めが良い。この先は急降下となっているが、小尾根通しに歩くことはできそうだ。引き返して登り、県界尾根に合流したところが大難峠である。小さなケルンが置かれ、かつての峠道の痕跡が南北どちら側にも確かにある。
県界尾根を二子山に向かうと、幅広い防火帯道の緩い登りとなる。藪がなくて歩き易い。新緑の雑木林の中にぽつりぽつりとヤマツツジの赤い花が咲き、いいアクセントになっている。
921m標高点付近で防火帯道が終わると、針葉樹に覆われた細い尾根となる。この辺りからぽつぽつとシロヤシオの白い花が咲き、トウゴクミツバツツジの紫の花も混じる。点々と花崗岩の露岩のある細尾根を登ると、徐々に尾根が広くなり、淡い新緑の雑木林に入る。
標石のあるピークに登り着くと、行く手に木立を透かして二つの丸い頂が並んだ二子山が眺められる。ここが1160m三角点峰かと思って一休み。しかし、この標石は「山」標石でしたー。緩く下って登り返すと1160m三角点峰(高鳥屋と呼ぶそうな)で、立派な三角点標石がある。
鮮やかな新緑の中にシロヤシオやトウゴクミツバツツジが点在し、何とも気分の良い尾根だ。小さなアップダウンのあるなだらかな尾根を辿ると、右斜面にカラマツ林が現れる。カラマツの新緑もなかなか奇麗だ。あちこちに露岩があり、ロックガーデンのよう。後日、地質Naviで調べると、この辺りの地質は白浜山と同じで、マグマが地下の深いところで冷えて固まった花崗閃緑岩だそうだ。
なだらかな尾根の途中に水が染み出た水溜りがあり、小さなオタマジャクシがたくさん泳いでいる。しかしここはヌタ場ではなかろうか。無事に成長することを願う。
露岩が点在するカラマツ林を抜けると、背丈の低い草地に覆われた開けた平地に出る。小川が流れ、二子山を間近に仰ぐ別天地だ。桐生みどりさんの記事(末尾の参考URL)では、二子平と呼んでいる。小川はケモノの水場にもなっていそうな感じで、飲めるかどうかは判らないが、確かにテントを張ったら気持ち良さそうなところである。草原にはワラビが大量に出ている。この辺は山菜採って食べる人がいないんだろうなあ…。
二子平から地形図上の破線(実際には道はない)に沿って急な山腹を登り、尾根上に出る。二子山へはもう一段、背丈の低い笹原の急坂を上がる。ここが今日のコースで一番の急登だ。この途中で、右側斜面のカラマツ林の中を下っている単独行のハイカーさんを見かける(距離があるので声は掛けなかったが、後日、みつまんさんと判った)。
稜線に登り着き、笹原を緩く登って二子山の頂上に着く。疎らな樹林の間から袈裟丸連峰や皇海山が眺められ、明るくて雰囲気が良い。小丸山に向かう稜線には道型がある。小丸山まで足を延ばしてアカヤシオを見ようかとも思ったが、静かな山歩きの末にハイカーさんで大賑わいの場所に行くものナンだな、と理由をつけて行くのは止めにする。
二子山で少し休憩したのち、二子山の東峰(通称、台石山)に向かう。雑木林とカラマツ林の境界を下り、笹が下生えのカラマツ林の急斜面を適当に登る。傾斜が緩んで頂上まであと少しのところに、高さ3mくらいの尖った大岩がある。チョッケン岩と呼ばれているそうだ。
登り着いた東峰は、ひねこびた疎らな樹林の間に露岩が点在し、休憩に持ってこいの頂だ。樹林の切れ間から、袈裟丸山、皇海山、庚申山、男体山にかけての眺めが良い。少しだけだがアカヤシオも咲いていて、展望の前景になっている。アカヤシオはここで見られたから、まあ満足だ。
台石山という通称の元となったテーブル状の岩の端に腰掛けて、まずは缶ビールと鯖味噌煮缶を開ける。昼食のラーメンを作っていると、すぐ近くの梢にホトトギスが飛んで来て、ケキョー、ケキョーと盛大に鳴き始めた。ラーメンを食べながら囀りに聞き惚れる。
のんびり休憩したのち、下山にかかる。東峰の東斜面を適当に下り始めると、登って来た3人パーティーに出会う。そのうちの一人が顔見知りの野峰さんで、白岩山神社以来、2年振りの再会でビックリである。あとのお二人はいつもブログを拝見していたノラさんとFM大野さんと紹介頂き、またまたビックリ。実に奇遇である。
付記:この日、たそがれさんも二子山に登っていて、東峰頂上でみつまんさんに会っていたそうである。同じ日に二子山に登っていた4パーティ6人全員がネットで情報発信している「その筋」の人とは驚きであるが、マイナーな山で出会った人がその筋の人であったということは、これまでも度々経験していることではある。
一行と別れて、笹原とカラマツ林の急斜面を下り、緩斜面を右寄りに進んで二子平に出る。あとは往路を大難峠へ戻る。気温が上がって、ツツジの花も往路より開いている感じだ。写真を撮りながらのんびり下る。
県界尾根の下りでは、高鳥屋の先で南に緩く下る枝尾根に引き込まれ易い。ルート地図にも、間違って入りかけた軌跡が記録されているので、ご笑覧あれ。ネット上の他の山行記録でもここで間違う人が多いようだ。
大難峠からは、南側の峠道を探索して下ってみることにする。最初は山腹をトラバースして峠道が続いている。落ち葉に埋もれているものの、道型は明瞭だ。しかし、沢に出合って道型は消える。沢を横切ってそのまま急斜面をトラバースし、峠道か獣道か判然としない踏み跡を辿ると、断続的に幅広い道型が現れる。小尾根を乗り越し、送電鉄塔の直ぐ脇を通ると道型は消滅する。沢入トンネル入口から取り付いて左寄りに登ると、この送電鉄塔に出るようだ。
この先は道型が不明となる。落ち葉に埋もれた斜面をそろりそろりとトラバースして沢に降りる。この沢は角ばった花崗岩が散乱しているが、傾斜が緩く下るのは容易だ。最後は山道が現れ、すぐにR122に出る。ゲートのある地点で、駐車スペースの僅かに手前(南側)である。
帰りは水沼♨に立ち寄る(600円)。湯船に浸かると首筋がヒリヒリする。一日中良く晴れていたので、日焼けしたようだ。最後の怪しい廃道歩きで被った埃をさっぱり洗い流し、桐生への帰途についた。
参考URL:オッサンの山旅「二子山」、ハイトスさん「二子山」、やまの町桐生「二子山と大難峠、小難峠」など多数。