浅間山(上神梅)
先日、ネットを徘徊していて、大間々町上神梅に浅間山(せんげんやま)という山があるとの情報を得た。中腹をかつての銅(あかがね)街道が通り、山麓には深沢宿があるという。ネット上の情報はこれだけで、登ったという記録もなく、全く知られていない山のようだ。地形図で該当する山を探すと、上神梅駅の北西、469m標高点のある尾根がそれらしい。もちろん、山名の記載はない。小さな山だが、未知の山なので興味を惹かれる。
この日曜日は午後だけ空き時間があり、近場の里山を探索するにはちょうど良い機会だ。という訳で、Kさんに同行頂いて、早速出かけて来ました。
桐生を12時半に発ち、途中のコンビニで買った肉まんで簡単に昼食を済ませ、R122を北上して上神梅に向かう。上神梅には福寿草畑があり、例年ならばこの時期が見頃と聞いていたので、まずそちらに立ち寄る。R122から左折して新里に向かう県道に入り、旧神梅小学校前を過ぎて直ぐの斜め左に分岐する細い路地に入る(最初、この分岐を行き過ぎて、付近を一周してしまった)。約70m進んで左折、私道に入って農家の中庭が駐車場となっている(ルート地図中に場所を記載)。
福寿草畑に入るが、まだポツポツとしか咲いていない。栽培している農家の奥さんの話では、今年は寒い日が続いているので開花が遅く、見頃はもう少し後だろうとのこと。それでも先駆けで咲いている福寿草と、見頃のロウバイを見ることができ、春の兆しを感じる。
福寿草鑑賞のついでに、農家の方に浅間山のことをお尋ねすると、一家のお爺さんがご存知とのことで、わざわざ玄関先まで出て頂いて、あの山だよと指差して教えてくれた。赤城山の山裾からちょこんと突き出た小尾根の末端のピークで、頂上付近は松が生えている。そして予め浅間山と目星を付けていた山に違いないことが確認できた。駐車場なら山麓に運動公園があるからそこが良いよ、とのアドバイスも親切に頂き、お礼を述べて浅間山に向かう。
教わった通りに山際の農道を走って、浅間山東山麓の運動公園(開設当初は神梅運動公園、現在は命名権を売って、グンエイ神梅グラウンドと称するらしい)に着く。小さなグラウンドながらも駐車場、WC等の設備が整っている。今日は誰もいなくて、がらんとしている。グラウンドの裏手には、浅間山が間近に聳えている。
グラウンドに隣接して六合神社があるので、先にお参りする。下から立派な石段の参道が通じており、由緒ありそうな神社なのだが、社殿は覆屋の中で内部は窺えない。
参拝後、浅間山の登り口を探す。直登ルートがあれば頂上まですぐなのだが、どこもかしこもシノダケの酷い藪だ。いくつかの踏み跡に踏み入るものの、密藪で撃退される。グラウンドに沿って歩きながら取り付けそうな所を探るが、全くなさそう。グラウンドの反対側まで行き、諦めて引き返す。このグラウンドは高台にあるので、赤城の山裾の高原と冠雪した袈裟丸山が良く眺められる。R122からとはまた違った視点の展望で、新鮮だ。
運動公園からの直登は断念し、南面を回り込む破線路を辿って、適当な場所から浅間山の尾根を目指すことにする。農道を少し戻ると養豚場跡の廃屋があり、その前から左に入る山沿いの道を辿る。轍のついた作業道を進むと、すぐに神梅配水池の建物があり、Y字路となる。ここは山間に向かう右の道に入る。道の左側は放擲された農地が湿地化して、けもののヌタ場になっている。Kさんが心配して熊鈴を付けるが、まあ心配ないでしょう。
道の右側の斜面を登れば浅間山の尾根に至るが、笹藪が続いて取り付けそうなところはない。杉林に覆われた山間の道をずっと辿る。ちょっと山懐に入っただけで、この辺りはそれなりに山らしい。
山道はやがて左に大きく曲がって山腹を登っていくので、山道から離れて右の浅い谷を詰める。笹藪があるが、薄いので問題ない。
短いが急な斜面を越えて尾根に登り着く。すぐ左は赤城ロマンドの別荘地の隅で、木立の間にチラホラとコテージが見え、番犬が我々の気配に感づいたのか、盛んに吠えている。別荘地まで車で上がることも可能だが、それだとさすがに歩行距離が短過ぎて物足りないだろう。尾根上には大きな檜が一列に立ち並び、微かな道型がある。尾根を右に辿って、緩く下って行く。
途中、小さな瘤を越えた辺りが469m標高点だろうか。そこからさらにゆるゆると下ると、尾根の末端に着く。ここが浅間山の頂上のようだ。期待もしていなかったが、山名標やマーキングの類は全くない。この真下が運動公園だが、密な笹藪に覆われてやっぱり道はなさそうだ。
背丈のある藪越しだが、北から東にかけて展望が開け、袈裟丸山や丸山〜鳴神山の稜線が眺められる。藪をちょっと刈り払えば、お誂え向きの展望台になるだろう。
少しでも藪を避けて展望の写真を撮ろうとして、頂上のあっちこっちを歩いているうちに、桜の木の根元に倒れて埋もれかけた小さな石祠を偶然見つける。台座の上に塔身と屋根を戻して立て直す。特に銘はなくて年代不詳だが、古そうな祠だ。
頂上でKさん差し入れのホットコーヒーと菓子類を頂いてのんびりしたのち、尾根を戻って赤城ロマンドの一角に出る。飛び出たところはとある別荘の庭先で、またしても犬に吠えられながら、こそこそと表の車道に向かう。
山小屋風のコテージが点在する明るい雑木林の中の車道を歩く。オフシーズンのせいか、ひと気がなくて侘しさが漂う。夜になると、ちょっと怖いかも。
赤城ロマンドの別の一角から、地形図上の破線路を下ってみる。山腹を少し下ったところまで別荘があり、日陰の坂道には薄く雪が残っている。未舗装の作業道に入って道なりに下ると、柵止めと私有地につき立ち入り禁止の標識に突き当たる。これはまずいということで、少し戻ってルートを探すと、笹に覆われた作業道が分岐し、これが破線路らしい。入口がとても判りにくい。
この道に入ると、地形図の破線路の通り、山腹をジグザグに下り始める。正しいルートに乗ったことが判り、安心。深く掘り込まれた作業道で道型は明瞭だが、あちこちで倒木が折り重なって道を塞ぐ。最近、人が通った痕跡は全くない。しかし、落ち葉がフカフカに積もり、こういう道を歩くのは案外好きだ。
山麓に降り着くとY字の分岐があり、ここは左の道に入る。密な笹藪の中に、最近きれいに刈り払われた山道が続いている。これを辿ると神梅配水池に出て、往路の作業道に合流する。あとは車道を歩き、運動公園までは僅かの距離だ。わずか2時間ちょっとの散歩だったが、未知の山でルートを探しながら歩き、いろいろ発見もあって面白かった。
帰りに六合神社の参道入口に立ち寄る。ここは深沢宿の片端にあたり、一直線に続く旧街道が見通せる。付近には大きな庚申塔や立派な石祠がある。いつか街道に沿ってじっくり探索してみたいところだ。ここからR122に向かって下ると、坂の途中に深沢の角地蔵がある。堂の中を覗き込むと、頭が四角い岩のままという大変珍しい地蔵が祀られている。
深沢宿からちょっと足を延ばして、久しぶりに水沼♨に立ち寄る。湯船にゆっくり浸かってよく温まったのち、桐生への帰途についた。